HEAVENーヘヴンー

フジキフジコ

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【第一章】シャングリラ

プロローグ

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登場人物

アイドルグループ「ROSY」メンバー
不破尊(ふわ・たける)
水波真理(みずなみ・しんり)
有沢馨(ありさわ・かおる)
湯河大輔(ゆかわ・だいすけ)
佐々木歩(ささき・あゆむ)
月村暁(つきむら・さとる)





人気アイドルグループ「ROSYロージー」の不破尊ふわたけるの渡米が決まったのは夏のツアーが終わって間もない初秋のことだった。

本格的なハリウッド映画への出演、その準備と撮影のために最低でも1年間は帰国できないというその仕事を引き受けるにはグループとしての活動は休止せざるを得なかった。

事務所とメンバーの間では何度も話し合いの席がもたれ、結果的にメンバーの賛成と強い後押しがあって、不破は渡米を決心することができた。
外国で単身の仕事をすることに不安はなかったが、恋人と離れることだけが不破の決心を長い間鈍らせていた。


***


「本当はオレ、真理しんりのこと連れていきたいよ」
日本を離れる前日、迎賓館の前の並木道を並んで歩いていて不意にそう言われた。
それが出来ることなら自分だってついて行きたいと、もう少しで声に出そうな本心を真理は唇を噛んで打ち消す。

「なに言ってるんだよ。オレはおまえがいない間、ROSYを守らなきゃ。オレたち、解散するわけじゃないんだから。おまえが戻ってこれる場所を、オレは必死で守るよ」
「真理…」

不破尊と水波真理はアイドルグループ「ROSY」のメンバーであり、もう随分長い間、世間に隠れて愛し合っている。

出会って間もない十代の頃は、意見の食い違いなどで何かと衝突を繰り返していたが、それがお互いに過剰に意識し合っているせいだと気づいてから身体を重ねるようになるまで、それほど時間はかからなかった。

それは運命的な、激しくて甘い恋だった。
はじめはメンバーさえも欺いて隠れるように逢瀬を繰り返すことにはひどく罪悪感が伴ったし、もしマスコミに知られたらアイドルとしてとり返しのつかないことになるという不安も付き纏った。
けれど、どんなに大きなリスクを背負っても、離れることは出来なかった。

「ねえ真理、オレのこと、待っててくれる?」
真理の手をとって、真摯な瞳で不破は聞く。
「帰ってきたら、一緒に暮らそう。もう、こそこそして付き合うのはやめて、オレたちのことみんなに発表して、ずっと一緒に生きていこう」
真理は涙が込み上げてきて、返事をすることが出来なかった。
不破の手をぎゅっと握り返して、その胸に飛び込む。
「待ってる…オレ、待ってるから」

その日のことを思えば、1年なんて長くない。
お互いを想う気持ちは、そんなに短い間に変わることなどありえない。
この愛は永遠に誓うことが出来る。

それが蜃気楼のように目に見える幻だなんて、思えるはずがなかった。



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