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【第二章】エデンの果実
1.偽装結婚
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「真理」
不意に呼ばれて、真理は読んでいたスポーツ新聞を慌ててベッドの下に隠した。
寝室のドアを開けて入口に立つ馨が聞く。
「ビールが切れてるみたいだけど、他に何か飲みものある?」
「あ、ごめ…。うっかりして」
立ち上がって馨の側まで歩み寄った真理は、バスルームから出てきたばかりなのか前髪を湿らせた馨が、昨夜と同じパジャマを着ていることに気づいた。
「馨、洗濯してあるパジャマあっただろ」
「見当たらなかったけど」
「え…」
そういえばここ数日、洗濯をしていない。
二人暮らしだから毎日する必要はなかったが、さすがに一週間もサボれば替えのパジャマがなくなっても仕方ない。
「ごめん。オレ…」
「そんなにしょげることないよ。別にいいじゃない、一日くらい。オレは全然平気だけど」
優しく言われて余計いたたまれなくなってしまう。
「…飲みもの、用意する」
馨とドアの隙間を擦り抜けて真理は逃げるようにキッチンに向かった。
一人になって動揺する心を静めようと努力する。
けれどそう思えば思うほど、今、目にした記事が頭から離れない。
記事には不破が、近く正式に結婚を発表すると書かれていた。
そのことは連日芸能ニュースで大きく取り上げられていて、その噂のせいでここ数日、家事に身が入らなかったのだ。
この前会ったとき、不破の口から事情は聞いていた。
不破は最近、写真週刊誌の記者に付けまわされ、身動きが出来なくなっていた。
そのため、真理との逢瀬も難しかった。
調度、そんな時に不破は、ある女性から偽装結婚の申し込みを受けた。
相手の女性は実家の後継問題で揉めていて、早急に誰かと結婚しなければ、家に連れ戻され、意に沿わない相手と結婚させられるのだという。
不破はその提案を受けようと思う、と言った。
「だから、結婚したことにすれば、もっとおまえと会いやすくなると思うんだ。別に、本当に籍を入れるわけじゃない。世間に発表するだけだし、お互いに都合がいい偽装結婚だよ」
そう言われても正直に言えばショックだった。
けれど自分が不破のものになれない以上、不破を責める権利は真理にはなかった。
しかし、真理にとって問題だったのは、その相手だ。
不破が偽装結婚の相手に選んだのは、真理の双子の妹の杏理だった。
妹の杏理は雑誌のモデルの仕事をしている。
馨の籍に入ったとき、実家を勘当された真理は、以来、妹とも音信不通ではあったが、田舎の旧家である実家の親族が、杏理に婿を取って跡を継がせるつもりになっているのだろうと、事情は容易に想像は出来た。
けれど、妹の気性を知っている真理には、杏理が偽装結婚でそれを逃れようと考えているとは思えなかった。
「杏理、おまえのことも心配してたよ」
幼い頃に母親と死別した兄妹は、普通の兄妹以上に仲が良く、大人になってからも、同じ芸能界に身を置き、支えながら生きてきた。
杏理はROSYのメンバーの皆とも親しく付き合っていたが、不破と杏理が最近も会っていたとは、真理は思ってもいなかった。
「愛してるのは真理だけだから。信じてくれるだろ」
不安に表情を曇らせる真理を安心させるようにそう言って抱いてくれた。
何度もいかされ、不破は身体で、愛を証明してくれた。
けれど、その同じ腕で、もしかしたら不破は杏理を抱くのかもしれない。
妹を案じる気持ちより、暗い嫉妬心ばかりが膨らむ己の心の狭さに真理は傷ついた。
不意に呼ばれて、真理は読んでいたスポーツ新聞を慌ててベッドの下に隠した。
寝室のドアを開けて入口に立つ馨が聞く。
「ビールが切れてるみたいだけど、他に何か飲みものある?」
「あ、ごめ…。うっかりして」
立ち上がって馨の側まで歩み寄った真理は、バスルームから出てきたばかりなのか前髪を湿らせた馨が、昨夜と同じパジャマを着ていることに気づいた。
「馨、洗濯してあるパジャマあっただろ」
「見当たらなかったけど」
「え…」
そういえばここ数日、洗濯をしていない。
二人暮らしだから毎日する必要はなかったが、さすがに一週間もサボれば替えのパジャマがなくなっても仕方ない。
「ごめん。オレ…」
「そんなにしょげることないよ。別にいいじゃない、一日くらい。オレは全然平気だけど」
優しく言われて余計いたたまれなくなってしまう。
「…飲みもの、用意する」
馨とドアの隙間を擦り抜けて真理は逃げるようにキッチンに向かった。
一人になって動揺する心を静めようと努力する。
けれどそう思えば思うほど、今、目にした記事が頭から離れない。
記事には不破が、近く正式に結婚を発表すると書かれていた。
そのことは連日芸能ニュースで大きく取り上げられていて、その噂のせいでここ数日、家事に身が入らなかったのだ。
この前会ったとき、不破の口から事情は聞いていた。
不破は最近、写真週刊誌の記者に付けまわされ、身動きが出来なくなっていた。
そのため、真理との逢瀬も難しかった。
調度、そんな時に不破は、ある女性から偽装結婚の申し込みを受けた。
相手の女性は実家の後継問題で揉めていて、早急に誰かと結婚しなければ、家に連れ戻され、意に沿わない相手と結婚させられるのだという。
不破はその提案を受けようと思う、と言った。
「だから、結婚したことにすれば、もっとおまえと会いやすくなると思うんだ。別に、本当に籍を入れるわけじゃない。世間に発表するだけだし、お互いに都合がいい偽装結婚だよ」
そう言われても正直に言えばショックだった。
けれど自分が不破のものになれない以上、不破を責める権利は真理にはなかった。
しかし、真理にとって問題だったのは、その相手だ。
不破が偽装結婚の相手に選んだのは、真理の双子の妹の杏理だった。
妹の杏理は雑誌のモデルの仕事をしている。
馨の籍に入ったとき、実家を勘当された真理は、以来、妹とも音信不通ではあったが、田舎の旧家である実家の親族が、杏理に婿を取って跡を継がせるつもりになっているのだろうと、事情は容易に想像は出来た。
けれど、妹の気性を知っている真理には、杏理が偽装結婚でそれを逃れようと考えているとは思えなかった。
「杏理、おまえのことも心配してたよ」
幼い頃に母親と死別した兄妹は、普通の兄妹以上に仲が良く、大人になってからも、同じ芸能界に身を置き、支えながら生きてきた。
杏理はROSYのメンバーの皆とも親しく付き合っていたが、不破と杏理が最近も会っていたとは、真理は思ってもいなかった。
「愛してるのは真理だけだから。信じてくれるだろ」
不安に表情を曇らせる真理を安心させるようにそう言って抱いてくれた。
何度もいかされ、不破は身体で、愛を証明してくれた。
けれど、その同じ腕で、もしかしたら不破は杏理を抱くのかもしれない。
妹を案じる気持ちより、暗い嫉妬心ばかりが膨らむ己の心の狭さに真理は傷ついた。
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