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【第二章】エデンの果実
2.呪文
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「馨、ワインでいい?」
リビングで水槽の魚に餌をやっていた馨の背中に問いかけると、馨は振り返って「いいよ」と微笑んだ。
有り合わせのつまみを添えて、真理はワインを用意した。
「ありがとう」
ソファにくつろいで腰掛けている馨にグラスを手渡してからも、真理は馨の前でじっと立っている。
「真理、どうかした」
「オレ、ごめんな。なんにもちゃんとできなくて。全然馨の役に立てない」
「なに言ってるの」
真剣な顔で言う真理に、馨はクスクスと漏れる笑いをかみ殺している。
「オレはね、君がいてくれるから仕事も頑張れるし、とても幸せだよ」
「なんで…」
言葉で説明するのは難しいというような、困った顔で馨は真理の手を握って、指にくちづける。
「おいで」
言いながら真理の腰に腕を回して引き寄せ、自分の膝の上に乗せた。
「か、馨」
恥ずかしがって暴れる真理の腰を強く抱いて、馨は離さない。
「決まってる。君を愛してるから」
「馨…」
目が合って、馨は柔かな微笑を口許に浮かべ、ちょうど自分の唇の近くにある真理の鎖骨に口づけた。
ついさっき口に含んだワインのせいか、唇が冷たい。
「…あっ」
敏感な身体が跳ね上がる。
馨の唇はパジャマの上から真理の身体をくすぐるように移動して胸の突起の上で止まった。
布越しに、軽く歯を立てられて噛まれ、身体がビクンと震える。
真理は馨の頭を抱えて、身悶えた。
「はぁ…ん…馨…」
濡れた声で呼んで、口づけをせがむ。
馨が愛撫していた唇を離すと真理のシルクのパジャマは胸のところだけが濡れて、固く尖った乳首が透けて見えていた。
「見て、真理。パジャマが透けて、恥ずかしいところが見えてる」
「やっ…ばか」
恥ずかしがって両手を交差させ隠そうとする真理の腕をそっと解いて、馨は真理の唇に口づけた。
果樹の味のする舌を絡めると、頭の芯が痺れる。
それがアルコールのせいなのか口づけに酔っているせいなのかわからない。
今度は指で、濡れたパジャマの上から突起を嬲られ、一点ばかりを苛む愛撫に真理は馨の腕の中で悶えながら膝を進めて身体を密着させた。
「やぁ…もう、馨…焦らさないで」
馨の首に腕を絡めて耳元に囁きを吹き込む。
早く愛して―と。
「じゃあ、今すぐ、ここで愛してもいい?」
真理は頷いて、自分から馨のパジャマのボタンを外して肩から滑らせた。
馨の膝の上で馨の露になった胸に口づける。
馨にされたように、その小さな突起を舌でくすぐり、唇に含んで吸ってみる。
馨は真理の好きにさせながら、右手で真理のパジャマの上から股間を弄った。
布を押し上げているそれを、ゆっくり掌で擦った。
感じやすい真理はそれだけの刺激でも我慢できなくて、布に染みを作る。
「……馨」
違う刺激が欲しくてねだるように見上げる表情にたまらなく艶がある。
馨は真理をソファに横たえて、逆向きに上になった。
パジャマのズボンを少しだけ下ろし、性器だけを開放して唇であやす。
口の中には含まずに、アイスキャンデーを舐めるように、表面だけを舌で濡らした。
「あっ…ああぁ…、気持ち…いい、…か、おる…」
真理も自分の顔の前にある、馨のそれに手を伸ばした。
馨のそこも固くなって、布を押し上げている。
真理はそれを引きずり出して、両手で包むように握った。
「…オレにも…させて。馨…舐めさせて…」
シックスナインの格好で、お互いのものを口で愛し合う。
ゆっくり、そして確実に頂点に昇りつめる快楽の波に飲み込まれるこの瞬間、頭の中には何もない。
こんなふうに快楽に逃避することでしか苦しみから逃れる手段がない。
束の間だと知りながら、真理は必死になって快感にしがみついた。
満足のいくまで愛し合ったあと、ベッドの中で自分の腕に頭を乗せる真理の額に馨はキスを繰り返す。
いつもこんなふうに馨に愛されていることを実感しながら真理は眠りに落ちる。
「馨、おまえは…なんでそんなに優しいの」
馴染んだ体温と体臭に包まれて、まどろみながら真理は聞く。
愛されて求められることに幸せを感じない人はいないだろう。
けれど身に余る愛情や優しさはときに重荷にもなる。
まして馨を裏切っている真理には馨の優しさは心を癒してくれもするけど、同じ強さで傷つけもする氷の剣のようでもあった。
「オレは別に誰にでも優しいわけじゃないよ。真理だから。愛しているから」
どこか深い淵に落ちるような感覚に、真理はゆっくり瞼を下ろした。
愛してる―それは呪文だ。
甘くて、けれど目に見えない鎖でこの身を縛る呪縛。
「オレも愛してるよ、おまえを…」
そう愛しているから、辛い。
一人しか愛せない心ならよかったのに。
閉じた真理の瞼の縁を、涙が濡らした。
リビングで水槽の魚に餌をやっていた馨の背中に問いかけると、馨は振り返って「いいよ」と微笑んだ。
有り合わせのつまみを添えて、真理はワインを用意した。
「ありがとう」
ソファにくつろいで腰掛けている馨にグラスを手渡してからも、真理は馨の前でじっと立っている。
「真理、どうかした」
「オレ、ごめんな。なんにもちゃんとできなくて。全然馨の役に立てない」
「なに言ってるの」
真剣な顔で言う真理に、馨はクスクスと漏れる笑いをかみ殺している。
「オレはね、君がいてくれるから仕事も頑張れるし、とても幸せだよ」
「なんで…」
言葉で説明するのは難しいというような、困った顔で馨は真理の手を握って、指にくちづける。
「おいで」
言いながら真理の腰に腕を回して引き寄せ、自分の膝の上に乗せた。
「か、馨」
恥ずかしがって暴れる真理の腰を強く抱いて、馨は離さない。
「決まってる。君を愛してるから」
「馨…」
目が合って、馨は柔かな微笑を口許に浮かべ、ちょうど自分の唇の近くにある真理の鎖骨に口づけた。
ついさっき口に含んだワインのせいか、唇が冷たい。
「…あっ」
敏感な身体が跳ね上がる。
馨の唇はパジャマの上から真理の身体をくすぐるように移動して胸の突起の上で止まった。
布越しに、軽く歯を立てられて噛まれ、身体がビクンと震える。
真理は馨の頭を抱えて、身悶えた。
「はぁ…ん…馨…」
濡れた声で呼んで、口づけをせがむ。
馨が愛撫していた唇を離すと真理のシルクのパジャマは胸のところだけが濡れて、固く尖った乳首が透けて見えていた。
「見て、真理。パジャマが透けて、恥ずかしいところが見えてる」
「やっ…ばか」
恥ずかしがって両手を交差させ隠そうとする真理の腕をそっと解いて、馨は真理の唇に口づけた。
果樹の味のする舌を絡めると、頭の芯が痺れる。
それがアルコールのせいなのか口づけに酔っているせいなのかわからない。
今度は指で、濡れたパジャマの上から突起を嬲られ、一点ばかりを苛む愛撫に真理は馨の腕の中で悶えながら膝を進めて身体を密着させた。
「やぁ…もう、馨…焦らさないで」
馨の首に腕を絡めて耳元に囁きを吹き込む。
早く愛して―と。
「じゃあ、今すぐ、ここで愛してもいい?」
真理は頷いて、自分から馨のパジャマのボタンを外して肩から滑らせた。
馨の膝の上で馨の露になった胸に口づける。
馨にされたように、その小さな突起を舌でくすぐり、唇に含んで吸ってみる。
馨は真理の好きにさせながら、右手で真理のパジャマの上から股間を弄った。
布を押し上げているそれを、ゆっくり掌で擦った。
感じやすい真理はそれだけの刺激でも我慢できなくて、布に染みを作る。
「……馨」
違う刺激が欲しくてねだるように見上げる表情にたまらなく艶がある。
馨は真理をソファに横たえて、逆向きに上になった。
パジャマのズボンを少しだけ下ろし、性器だけを開放して唇であやす。
口の中には含まずに、アイスキャンデーを舐めるように、表面だけを舌で濡らした。
「あっ…ああぁ…、気持ち…いい、…か、おる…」
真理も自分の顔の前にある、馨のそれに手を伸ばした。
馨のそこも固くなって、布を押し上げている。
真理はそれを引きずり出して、両手で包むように握った。
「…オレにも…させて。馨…舐めさせて…」
シックスナインの格好で、お互いのものを口で愛し合う。
ゆっくり、そして確実に頂点に昇りつめる快楽の波に飲み込まれるこの瞬間、頭の中には何もない。
こんなふうに快楽に逃避することでしか苦しみから逃れる手段がない。
束の間だと知りながら、真理は必死になって快感にしがみついた。
満足のいくまで愛し合ったあと、ベッドの中で自分の腕に頭を乗せる真理の額に馨はキスを繰り返す。
いつもこんなふうに馨に愛されていることを実感しながら真理は眠りに落ちる。
「馨、おまえは…なんでそんなに優しいの」
馴染んだ体温と体臭に包まれて、まどろみながら真理は聞く。
愛されて求められることに幸せを感じない人はいないだろう。
けれど身に余る愛情や優しさはときに重荷にもなる。
まして馨を裏切っている真理には馨の優しさは心を癒してくれもするけど、同じ強さで傷つけもする氷の剣のようでもあった。
「オレは別に誰にでも優しいわけじゃないよ。真理だから。愛しているから」
どこか深い淵に落ちるような感覚に、真理はゆっくり瞼を下ろした。
愛してる―それは呪文だ。
甘くて、けれど目に見えない鎖でこの身を縛る呪縛。
「オレも愛してるよ、おまえを…」
そう愛しているから、辛い。
一人しか愛せない心ならよかったのに。
閉じた真理の瞼の縁を、涙が濡らした。
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