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【第三章】HEAVEN'S DOOR
1.止まった時間
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リビングのドアを開けると、部屋の中はそこを出ていったときのまま、何も変わっていなかった。
二人で暮らしていた部屋を眺めて、馨は複雑な気持ちになる。
自分たちの身に起こった不運な出来事が、悪い夢のように思えた。
けれど、抱いた肩の震えで真理の動揺や戸惑いが伝わって、これが現実なのだということを思い知る。
「さあ」と真理を勇気づけるように背中を押して、一緒に部屋に入った。
「ここが、オレたちが暮らしていた部屋だよ。やっぱり、思い出せない?」
二人の愛の巣を見回して、真理は、悲しそうに首を振った。
長い間締めきったままだったカーテンと窓を開けながら馨は言う。
「大丈夫、焦らなくていいよ。今まで通り暮らしていれば、そのうち自然に思い出すから」
新しい風が部屋に入って停滞していた空気を動かすように、真理の中で止まってしまった時間が動き出すことを馨は願った。
***
馨の仕事の都合でフランスに向かった際二人が乗った旅客機が、フィリピン諸島沖に墜落したのは今から半年前のことだ。
搭乗者の半分が死に至るという大事故だったにもかかわらず、二人は奇跡的に助かった。
だが真理の方はかなりの重傷を負い、長い間、昏睡状態が続いた。
生死の境をさ迷いやっと意識を取り戻したとき、真理は記憶を失っていた。
事故直後、生存者が漂流した小さな島の収容施設は大混乱し、生存者の確認が不明瞭だったために、日本では二人は死亡したと誤報が流れた。
馨は逆にそのことを利用して、騒ぎを避けるために自分たちが生きていることを内密にしたまま、真理が移動できるだけの体力を取り戻した後、密かに日本に戻り、大学病院に真理を入院させた。
だが、こうして退院して家に帰ってきた今も、馨は自分たちが生きているということを公にするタイミングを計りかねている。
事故のショックで一時的に失われただけと思われていた真理の記憶は依然として戻らない。
精神的に不安定な真理を、世間の好奇な目に晒したくなかった。
***
「真理?」
明かりもつけないでベッドに浅く腰掛けている真理に、馨はそっと言葉をかける。
「どうかした?」
真理は首を振って、シーツをぎゅっと握りながら不安そうな眼差しで馨を見上げる。
「オレたち、本当に、ここで一緒に住んでいたんだな」
記憶を失った真理に、馨はこれまでの自分たちのことを根気よく事細かに話して聞かせた。
長く一緒に芸能界で仕事をしていたことや、二人が養子縁組することになった経緯のすべてを。
不破のことに触れるとき、こだわりがなかったと言えば嘘になる。
けれど、それを避けるわけにはいかなかった。
真理が同じグループのメンバーの不破と将来の約束をしていたこと、けれど不破がアメリカにいる間に他の女性と結婚したという噂が流れて、傷ついた真理が自殺未遂を図ったこと。
それを発見したのが自分だったこと。
そして自分たちは愛し合うようになって、世間に関係を発表して籍を入れたのだと。
二人での生活は穏やかで幸福だったよ―。
何度も繰り返しそんなふうに話しながら、ふとどこまでが真理にとって真実なのだろうかと馨は思った。
馨に言えるのは、自分の知っている真理の姿だけだから。
本当は何を思い何を感じていたのか、それを知る人は、今はどこにもいない。
「ベッドがひとつしかない。オレたち、ここで一緒に眠っていたんだなって…」
手のひらを冷たいシーツの上に滑らせる。
記憶のない真理の声には何の感情もこもっていない。
「そうだよ、ここで、一緒に眠っていたんだ」
言いながら馨は真理の前に膝をついて屈み、真理の手に自分の手を重ねた。
「ここで何度も君を抱いた。愛してるって、何百回も言った。真理、本当に覚えてない?」
馨は重ねた手をとって、自分の唇に運ぶ。
「……ごめん」
マリッジリングを嵌めた薬指にくちづけられながら真理は俯いて消えそうな声で謝る。
「謝らないで」
馨は真理の横に腰掛けて、そっとその細い身体を包むように抱いた。
「ねえ、真理。オレはまた君を抱いてもいいのかな。そういう関係だった記憶のない君を、抱いてもいいんだろうか」
馨の腕の中で真理は身体を堅くする。
「いや?」
問いかけには首を振って答える。
「そうじゃなくて…」
ちょっと怖い…呟くような声でそう言った真理の額に、クスッと笑いながら馨は小さなキスを落とす。
「真理…可愛い」
真理の閉じられた瞼や頬に掠めるような口づけをして、それからゆっくりと唇を重ねた。
「……ん…う、ん…か、おる…」
深い口づけに、飲みきれない唾液が唇の端から溢れる。
キスは、病院に入院しているときも交わしていた。
馨はいつも側にいてくれて、額や、頬に、頻繁に口づけてくれた。
時々は唇と唇を重ねる口づけもしたけれど、こんな風に舌を絡めるキスははじめてだ。
これがなにを意味するのか、記憶がなくても真理にはわかる。
抱かれる。
自分は、これから馨に抱かれるのだ。
止まらない深い口づけに息が上がっても馨は唇を許してくれない。
隙間なく唇と唇を合わせたまま、器用な指先は真理の身体中を優しく、柔かく触れるように愛撫する。
その指が、パジャマのズボンの中から侵入して昂ぶりに到達した瞬間、真理は身体を震わせた。
「もうこんなに硬くなってる。久しぶりだから、かな」
欲望を指摘されて恥ずかしくて、馨の胸に額をつけて俯く。
「…い、や。恥ずかしい」
「顔、見せて。真理の感じてる顔が見たい」
「…馨」
かつての自分が、どんなふうにこの腕に抱かれたのかはわからない。
思うように乱れれば、少しは記憶に近づくことが出来るだろうか。
おずおずと、顔を上げて、馨を見上げる。
頼りない眼差しが一瞬揺れて、決心したように真理は自分から馨の唇に唇を寄せた。
「…キスして」
キスして、そして抱いて。
どんなふうに抱かれていたのか、思い出させて。
口づけながらベッドに横たえられ、ゆっくりゆっくりパジャマを脱がされていく。
その合間にも、馨の唇は露になっていく肩に、鎖骨に、胸に、丁寧にキスを落としていく。
まるで真っ白な身体に刻印を押されているようだ。
そう思ったとき、なぜか胸がズキンと痛んだ。
その痛みの意味を考える前に、ペニスに強烈な快感を覚えて、真理の思考は止まる。
脚の間に馨の頭が見えた。
自分のペニスを、咥えられているのだとわかって、真理は動揺した。
「あっ!やだっ!…馨っ、そんなこと、しないで、汚い!」
「どうして?真理はこうされるのが、好きだったよ」
「うそ…」
いったん、口を離して、馨は真理の唾液に濡れたペニスを指で擦りながら言う。
「嘘じゃないよ。真理はオレにしゃぶられると、自分から腰を振って悦んだよ」
「いやだ、そんなこと…言わないでっ」
真理の目には涙がにじんだ。
「ごめん、苛めすぎちゃったね。オレはただ、真理に感じて欲しいだけなんだ。恥ずかしがらないで、声を出して、思い切り感じて。身体を開放して」
馨の優しい声は、真理から逆らう気力を奪う。
なにもかも、馨の言う通りにすればいいのだと、頭の奥の方で、声がする。
「だから、ね、舐めてもいい?」
馨の指がペニスの先を、こする。
「…あっ…ん」
促されるように、先走りの露がこぼれて、馨の指を濡らした。
ヌルヌルした感触がたまらない。
でも、温かい口腔に包まれて、舌先でそこを突かれたら、もっと気持ちいいに違いない。
そしてペニス全体を口で吸われたら、どんなに気持ちいいか。
この身体はその快感を知っているのだ。
そう思うと、過去の自分に嫉妬したくなる。
真理は喉を仰け反らせ、両手でシーツを掴んだ。
「な、舐めて、馨。しゃぶって…」
思い切って欲望を口にすることで大胆になれたのか、真理は自分から脚を開いて、舐めてもらいやすくした。
期待していた通りの蕩けるような快感に、長くはもたなかった。
馨の口の中に放ってしまったあとも、馨は柔らかい内腿に執拗なほど舌を這わせている。
吐息が、萎えたペニスにかかるだけで、真理の身体はビクンと震えた。
散々前を舐められたあと、そっと身体を裏返され、馨の舌は後ろの穴までも湿らす。
「ああっ…ん、やあ…か、おる…」
襞を、舌先でくすぐられ腰が痺れた。
馨は両手で真理の尻の肉を左右に広げ、開いた穴の中に舌を差し込んでくる。
指を挿れられて内壁を擦られると、射精して萎えたはずのペニスがまた勃ちあがった。
中が疼くような感覚に真理は混乱する。
こんな快感は知らない。
いや、知っている。
自分はここに、男のペニスを挿れられて達していたのだ。
馨のペニスを。
真理は腰を落とし、尻だけを高くして、馨の前に解されて熟れたその部分を見せつけた。
「か…おる、挿れて…も、う…ちょうだい…、ここに、馨のを…挿れて…」
喘ぎすぎた真理の唇の端から、唾液がシーツに垂れた。
馨に身を任せて快楽に浸ることで、真理は自分の過去を探ろうとしていた。
二人で暮らしていた部屋を眺めて、馨は複雑な気持ちになる。
自分たちの身に起こった不運な出来事が、悪い夢のように思えた。
けれど、抱いた肩の震えで真理の動揺や戸惑いが伝わって、これが現実なのだということを思い知る。
「さあ」と真理を勇気づけるように背中を押して、一緒に部屋に入った。
「ここが、オレたちが暮らしていた部屋だよ。やっぱり、思い出せない?」
二人の愛の巣を見回して、真理は、悲しそうに首を振った。
長い間締めきったままだったカーテンと窓を開けながら馨は言う。
「大丈夫、焦らなくていいよ。今まで通り暮らしていれば、そのうち自然に思い出すから」
新しい風が部屋に入って停滞していた空気を動かすように、真理の中で止まってしまった時間が動き出すことを馨は願った。
***
馨の仕事の都合でフランスに向かった際二人が乗った旅客機が、フィリピン諸島沖に墜落したのは今から半年前のことだ。
搭乗者の半分が死に至るという大事故だったにもかかわらず、二人は奇跡的に助かった。
だが真理の方はかなりの重傷を負い、長い間、昏睡状態が続いた。
生死の境をさ迷いやっと意識を取り戻したとき、真理は記憶を失っていた。
事故直後、生存者が漂流した小さな島の収容施設は大混乱し、生存者の確認が不明瞭だったために、日本では二人は死亡したと誤報が流れた。
馨は逆にそのことを利用して、騒ぎを避けるために自分たちが生きていることを内密にしたまま、真理が移動できるだけの体力を取り戻した後、密かに日本に戻り、大学病院に真理を入院させた。
だが、こうして退院して家に帰ってきた今も、馨は自分たちが生きているということを公にするタイミングを計りかねている。
事故のショックで一時的に失われただけと思われていた真理の記憶は依然として戻らない。
精神的に不安定な真理を、世間の好奇な目に晒したくなかった。
***
「真理?」
明かりもつけないでベッドに浅く腰掛けている真理に、馨はそっと言葉をかける。
「どうかした?」
真理は首を振って、シーツをぎゅっと握りながら不安そうな眼差しで馨を見上げる。
「オレたち、本当に、ここで一緒に住んでいたんだな」
記憶を失った真理に、馨はこれまでの自分たちのことを根気よく事細かに話して聞かせた。
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不破のことに触れるとき、こだわりがなかったと言えば嘘になる。
けれど、それを避けるわけにはいかなかった。
真理が同じグループのメンバーの不破と将来の約束をしていたこと、けれど不破がアメリカにいる間に他の女性と結婚したという噂が流れて、傷ついた真理が自殺未遂を図ったこと。
それを発見したのが自分だったこと。
そして自分たちは愛し合うようになって、世間に関係を発表して籍を入れたのだと。
二人での生活は穏やかで幸福だったよ―。
何度も繰り返しそんなふうに話しながら、ふとどこまでが真理にとって真実なのだろうかと馨は思った。
馨に言えるのは、自分の知っている真理の姿だけだから。
本当は何を思い何を感じていたのか、それを知る人は、今はどこにもいない。
「ベッドがひとつしかない。オレたち、ここで一緒に眠っていたんだなって…」
手のひらを冷たいシーツの上に滑らせる。
記憶のない真理の声には何の感情もこもっていない。
「そうだよ、ここで、一緒に眠っていたんだ」
言いながら馨は真理の前に膝をついて屈み、真理の手に自分の手を重ねた。
「ここで何度も君を抱いた。愛してるって、何百回も言った。真理、本当に覚えてない?」
馨は重ねた手をとって、自分の唇に運ぶ。
「……ごめん」
マリッジリングを嵌めた薬指にくちづけられながら真理は俯いて消えそうな声で謝る。
「謝らないで」
馨は真理の横に腰掛けて、そっとその細い身体を包むように抱いた。
「ねえ、真理。オレはまた君を抱いてもいいのかな。そういう関係だった記憶のない君を、抱いてもいいんだろうか」
馨の腕の中で真理は身体を堅くする。
「いや?」
問いかけには首を振って答える。
「そうじゃなくて…」
ちょっと怖い…呟くような声でそう言った真理の額に、クスッと笑いながら馨は小さなキスを落とす。
「真理…可愛い」
真理の閉じられた瞼や頬に掠めるような口づけをして、それからゆっくりと唇を重ねた。
「……ん…う、ん…か、おる…」
深い口づけに、飲みきれない唾液が唇の端から溢れる。
キスは、病院に入院しているときも交わしていた。
馨はいつも側にいてくれて、額や、頬に、頻繁に口づけてくれた。
時々は唇と唇を重ねる口づけもしたけれど、こんな風に舌を絡めるキスははじめてだ。
これがなにを意味するのか、記憶がなくても真理にはわかる。
抱かれる。
自分は、これから馨に抱かれるのだ。
止まらない深い口づけに息が上がっても馨は唇を許してくれない。
隙間なく唇と唇を合わせたまま、器用な指先は真理の身体中を優しく、柔かく触れるように愛撫する。
その指が、パジャマのズボンの中から侵入して昂ぶりに到達した瞬間、真理は身体を震わせた。
「もうこんなに硬くなってる。久しぶりだから、かな」
欲望を指摘されて恥ずかしくて、馨の胸に額をつけて俯く。
「…い、や。恥ずかしい」
「顔、見せて。真理の感じてる顔が見たい」
「…馨」
かつての自分が、どんなふうにこの腕に抱かれたのかはわからない。
思うように乱れれば、少しは記憶に近づくことが出来るだろうか。
おずおずと、顔を上げて、馨を見上げる。
頼りない眼差しが一瞬揺れて、決心したように真理は自分から馨の唇に唇を寄せた。
「…キスして」
キスして、そして抱いて。
どんなふうに抱かれていたのか、思い出させて。
口づけながらベッドに横たえられ、ゆっくりゆっくりパジャマを脱がされていく。
その合間にも、馨の唇は露になっていく肩に、鎖骨に、胸に、丁寧にキスを落としていく。
まるで真っ白な身体に刻印を押されているようだ。
そう思ったとき、なぜか胸がズキンと痛んだ。
その痛みの意味を考える前に、ペニスに強烈な快感を覚えて、真理の思考は止まる。
脚の間に馨の頭が見えた。
自分のペニスを、咥えられているのだとわかって、真理は動揺した。
「あっ!やだっ!…馨っ、そんなこと、しないで、汚い!」
「どうして?真理はこうされるのが、好きだったよ」
「うそ…」
いったん、口を離して、馨は真理の唾液に濡れたペニスを指で擦りながら言う。
「嘘じゃないよ。真理はオレにしゃぶられると、自分から腰を振って悦んだよ」
「いやだ、そんなこと…言わないでっ」
真理の目には涙がにじんだ。
「ごめん、苛めすぎちゃったね。オレはただ、真理に感じて欲しいだけなんだ。恥ずかしがらないで、声を出して、思い切り感じて。身体を開放して」
馨の優しい声は、真理から逆らう気力を奪う。
なにもかも、馨の言う通りにすればいいのだと、頭の奥の方で、声がする。
「だから、ね、舐めてもいい?」
馨の指がペニスの先を、こする。
「…あっ…ん」
促されるように、先走りの露がこぼれて、馨の指を濡らした。
ヌルヌルした感触がたまらない。
でも、温かい口腔に包まれて、舌先でそこを突かれたら、もっと気持ちいいに違いない。
そしてペニス全体を口で吸われたら、どんなに気持ちいいか。
この身体はその快感を知っているのだ。
そう思うと、過去の自分に嫉妬したくなる。
真理は喉を仰け反らせ、両手でシーツを掴んだ。
「な、舐めて、馨。しゃぶって…」
思い切って欲望を口にすることで大胆になれたのか、真理は自分から脚を開いて、舐めてもらいやすくした。
期待していた通りの蕩けるような快感に、長くはもたなかった。
馨の口の中に放ってしまったあとも、馨は柔らかい内腿に執拗なほど舌を這わせている。
吐息が、萎えたペニスにかかるだけで、真理の身体はビクンと震えた。
散々前を舐められたあと、そっと身体を裏返され、馨の舌は後ろの穴までも湿らす。
「ああっ…ん、やあ…か、おる…」
襞を、舌先でくすぐられ腰が痺れた。
馨は両手で真理の尻の肉を左右に広げ、開いた穴の中に舌を差し込んでくる。
指を挿れられて内壁を擦られると、射精して萎えたはずのペニスがまた勃ちあがった。
中が疼くような感覚に真理は混乱する。
こんな快感は知らない。
いや、知っている。
自分はここに、男のペニスを挿れられて達していたのだ。
馨のペニスを。
真理は腰を落とし、尻だけを高くして、馨の前に解されて熟れたその部分を見せつけた。
「か…おる、挿れて…も、う…ちょうだい…、ここに、馨のを…挿れて…」
喘ぎすぎた真理の唇の端から、唾液がシーツに垂れた。
馨に身を任せて快楽に浸ることで、真理は自分の過去を探ろうとしていた。
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