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【第三章】HEAVEN'S DOOR
3.欲望の強さ
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『真理?』
電話越しの声でも、それが誰かすぐにわかることが真理を不思議な気持ちにさせる。
相変わらず他のことはなにひとつ思い出せないのに、不破のことだけわかるのはどうしてなのか。
自分自身に問いかけても答えは見つからない。
「不破…」
ため息と同時にその名を口にする。
自然に、呼び慣れたように出る名前。
『会いたい。真理、会いたい』
不破尊―それがかつてどんなに愛した人でも、今自分には馨というパートナーがいて、不破にも杏理という妻がいる。
「…うん」
頭では理解出来ても、すべてに実感のない真理には、不破の誘いに応えることが馨を裏切るとは思えなかった。
ただ自分の記憶の鍵を握る不破と会って、過去を取り戻せるなら取り戻したかった。
待ち合わせのホテルの地下駐車場で不破は助手席に真理を乗せると車を走らせた。
「馨は?」
サングラスの下の表情の見えない顔で聞かれて、責められているように感じたのか真理は脅えたように「仕事」と答えた。
不破と杏理と再会してすぐ、馨は会見をおこない、自分たちが生きていたことやそれを隠さなければならなかった事情を説明した。
そのあとはブランクを埋めるように毎日仕事に出て帰りも遅い。
「おまえ、毎日一人で家にいるの?」
「……仕方ない」
馨は言葉ではなにも言わないけれど、自分が不破のことだけ思い出したことを怒っているのではないかと真理は感じていた。
真理自身も馨に後ろめたい気がして、二人の関係はぎくしゃくして最近あまりうまくいってない。
車は高速に乗って、都心をどんどん離れていく。
どこに着くのだろうと内心の不安を隠していると、まだ新しいマンションに着いた。
「ここは……?」
「やっぱり覚えてないんだな」
不破の後を追って、マンションの一室に入る。
部屋の中は人が生活できそうな物が揃っていたが、長い時間使用されていないようにテーブルやソファーは白い布で覆われていた。
「ここは、オレたちの部屋だよ」
「…それ、どういう意味?」
ソファーの布をとって、不破は真理をそこに座らせる。
「オレたちは、おまえが事故にあう直前まで会ってたんだ。ここで…」
それがどういう意味なのか、考えて真理は愕然とする。
不破がアメリカに行ったあと自分たちはそこで終わったのだと思っていた。
そのあとも、馨と暮らすようになったあとも不破と会っていたということは、馨を裏切っていたということになる。
自分がそんな大胆な罪を犯していたことなど思いもよらない真理は、ただうろたえるばかりだった。
「これ、おまえからの手紙。気づいたときはもう、事故のあとで」
不破が差し出した紙には、自分たちが乗った飛行機の出発時刻や、フランスに行くことになった理由が真理の字で走り書きされていた。
「これを読んだときは胸が潰れそうだったよ。もし、オレがこれに気付いて空港に行っておまえを引きとめていればって」
「…不破」
「おまえもそうして欲しくて、これを書いたんだろ?」
真理は激しく首を振った。
今となっては自分がどんな気持ちでこれを書き残したのかわからなかったが、そんなふうに馨を裏切っていたとは思いたくなかった。
「違う!」
ソファーから立ち上がって、真理は叫んだ。
「真理」
動揺する真理の気持ちを落ち着かせるように、不破は真理を抱きしめる。
「おまえが死んだって、そう知ったときオレがどんなに悲しかったか、わかる?すげえ後悔した。たとえ人を傷つけても、おまえを奪っておくべきだったって。何度も何度も、自分を責めた」
首筋にかかる息遣いに、真理の鼓動が早まる。
「愛してる…真理」
背中を撫でる不破のてのひらが愛撫に変わって、身体に熱が帯びはじめる。
確かに覚えのある感覚に、真理の身体は素直な反応を示して小刻みに震えた。
心ではそんなはずはないと思いながら、身体が、不破を安々と受け入れようとしている。
馨がいながら、こうして不破に抱かれていたんだと、記憶よりも身体がそれを証明しているようで、そんな自分を否定したくて真理は不破の腕の中で激しく抗った。
「嘘…だ。嘘だ!オレは…違う、馨を裏切ってなんかない!」
終わっていたのだ。
不破とは、もう終わっていた。
自分は有沢馨を選び、馨を愛し、馨と二人で幸福に暮らしていた。
馨がそう言った。
それが今の自分にとってはたったひとつの真実だ。
「真理……」
真理の抵抗に不破は傷ついたように、表情を引き攣らせる。
けれど次の瞬間、その瞳に凶暴な光が宿った。
「だったら、思い出させてやるよ。その身体に、思い出させてやる」
不破は真理の身体を力づくでベッドルームに押し込むと、そのままベッドの上に押し倒した。
「嫌っ!」
両腕を握ったまま、激しい口づけで真理の抵抗を封じ、その味を思い出せるように舌を絡める。
「……っん」
不意に不破が唇を離した。
唇に血が滲んでいる。真理に噛まれたのだ。
「真理…。そんなに嫌か、オレに抱かれるのは」
不破の眼差しの中に苛立ちを感じた。
静かに、そして激しく不破は怒っている。
「おまえがオレに抱かれるのを嫌がるのなんて、はじめてだな。でも、たまにはこういう趣向も悪くない」
薄く笑って意地悪く、言った。
それでも不破を怖いとは思わなかった。
その瞳の中に、怒りよりももっと深い悲しみが視えたから。
「不破……」
「ごめん、真理。優しく出来ない」
「あっ、いや…やだっ、やめろ…っ!」
不破は真理の身体を裏返し、ズボンをアンダーウエアごと脱がせた。
片手で真理の両手を押さえ、もう一方の手は、シャツの裾を捲りあげ、剥き出しの白い尻を撫でる。
真理の股に膝を割り込ませ、脚を開かせた。
「ほら、舐めて」
不破の指が口の中に入ってくる。
「ちゃんと舐めないと、おまえがツライよ」
指で舌を絡めるように口の中で動かされて、そうしたくないのに、唾液で濡らしてしまう。
自分が湿らせた不破の指が、後ろの孔に触れた。
「いやっ!不破っ、いやだ!やめてっ、挿れないでっ!」
「なに期待してんだよ、挿れないよ」
すぐに挿ってくると思った不破の指は、もったいぶったように入口を軽く押すだけで、真理は緊張を解いた。
けれど襞をくすぐるような指先の動きが、むず痒く、じっとしていられなくて尻を動かしてしまう。
「尻、動いてるぜ。挿れて欲しいみたいだな」
「ち…違うっ」
不破は指で孔の周りを弄りながら、顔を真理の顔に近づけて、髪をかきあげ、白いうなじに口づけた。
「…ああっ…」
舌で舐めまわされるような愛撫に、真理は声を抑えることが出来ない。
「ホントは挿れて欲しいんだろ」
耳の中に、囁くように吹き込まれる。
返事が出来ないでいると、不破の指が、中に挿ってきた。
「こうして、欲しかったんだろ。中からここ触ってやると、感じたよな」
「いや…っ、いやだ…不破…」
不破のその言葉通り、不破の指がポイントに触れると、シーツに押し付けている真理のペニスはたちまち形を変えた。
「感じてきたじゃん。ん?」
「…はぁ…あ…ん…、いやぁ…だっ…はぁ…っ」
「手が足りなくてそっちは可愛がってやれないんだ。でも真理は後ろだけでイケるよね」
2本に増やされた指が孔を広げるように動いて、指よりも存在感のある不破自身が挿ってくる。
「いっ…やめっ…不破…やめっ…て、それは、挿れないで…っ!」
「そうやって、もっとオレの名前呼んで思い出せよ。真理…オレの名前を、呼べ」
「尊!」
いきなり奥まで突かれて、絶叫してしまった。
どうしてこの名前のことならわかるのだろう。
不破、尊。
かつて愛した男。
自分には、その想いが過去だけのものなのか、今も続いているのかすらわからない。
それなのに、不破を受け入れて、身体は間違いなく悦んでいる。
強引で乱暴な不破の激しさを、官能に変えて悦んでいた。
「ああ…っ」
真理のこめかみを涙が伝った。
「…うっ…うう…」
真理の両手首を拘束していた手を解いて、不破はシャツの下の素肌を撫でながら腰を回した。
「…真理…ああ、真理…、おまえをまた抱けるなんて、夢みたいだ」
不破の手は、忙しなく真理の身体に触れる。
乳首を抓られた瞬間、真理の身体は痙攣した。
「あっ、んっ!もう…出るっ、出ちゃう…」
「いいよ、イケよ」
何度も奥まで突かれて、シーツに擦られていただけの真理の欲望が弾けた。
締めつけられ、不破も真理の中で放った。
身体の奥深い場所に不破の熱い飛沫を感じて、背中に甘い快感が走る。
不破に抱かれていたに違いない自分を、真理は確信した。
***
「真理、オレたち一緒になろう」
ベッドの中で真理を腕に抱いたまま不破が言った。
それが一番いいと思う、そうつけくわえて。
なにがいいのか真理にはわからない。
失った記憶の中で、自分が本当に愛したのは誰で、なにが望みだったのかわからない今、真理が自身で選べることはなにもなかった。
「おまえが、フランスに行く前に決着をつけておけばよかったんだ」
覚悟も決心も出来ていたという口調に、真理はどう返事を返していいのかわからない。
自分の気持ちは闇の中にあるのだから。
それでも何か言わなければいけないような気がして、口を開いた。
「なんて」
「え?」
「…オレ、おまえのこと、なんて呼んでたの」
「そうだな、普段は不破って、二人だけのときは時々、尊って」
「そう…か。……尊」
呼んでみると、甘い痛みが胸に走った。
大切なことを忘れているような気がして自分自身がたまらなくもどかしくなる。
「尊…」
けれど、思い出すことも怖い。
自分はどれだけ怖ろしい罪を犯していたのだろう。
馨を裏切り、杏理を傷つけ、世間さえも欺いて……。
強く抱きしめられて、裸で触れ合ったお互いの下半身がまた熱を帯びはじめている。
求め合う、この欲望の強さだけは確かに本物だった。
電話越しの声でも、それが誰かすぐにわかることが真理を不思議な気持ちにさせる。
相変わらず他のことはなにひとつ思い出せないのに、不破のことだけわかるのはどうしてなのか。
自分自身に問いかけても答えは見つからない。
「不破…」
ため息と同時にその名を口にする。
自然に、呼び慣れたように出る名前。
『会いたい。真理、会いたい』
不破尊―それがかつてどんなに愛した人でも、今自分には馨というパートナーがいて、不破にも杏理という妻がいる。
「…うん」
頭では理解出来ても、すべてに実感のない真理には、不破の誘いに応えることが馨を裏切るとは思えなかった。
ただ自分の記憶の鍵を握る不破と会って、過去を取り戻せるなら取り戻したかった。
待ち合わせのホテルの地下駐車場で不破は助手席に真理を乗せると車を走らせた。
「馨は?」
サングラスの下の表情の見えない顔で聞かれて、責められているように感じたのか真理は脅えたように「仕事」と答えた。
不破と杏理と再会してすぐ、馨は会見をおこない、自分たちが生きていたことやそれを隠さなければならなかった事情を説明した。
そのあとはブランクを埋めるように毎日仕事に出て帰りも遅い。
「おまえ、毎日一人で家にいるの?」
「……仕方ない」
馨は言葉ではなにも言わないけれど、自分が不破のことだけ思い出したことを怒っているのではないかと真理は感じていた。
真理自身も馨に後ろめたい気がして、二人の関係はぎくしゃくして最近あまりうまくいってない。
車は高速に乗って、都心をどんどん離れていく。
どこに着くのだろうと内心の不安を隠していると、まだ新しいマンションに着いた。
「ここは……?」
「やっぱり覚えてないんだな」
不破の後を追って、マンションの一室に入る。
部屋の中は人が生活できそうな物が揃っていたが、長い時間使用されていないようにテーブルやソファーは白い布で覆われていた。
「ここは、オレたちの部屋だよ」
「…それ、どういう意味?」
ソファーの布をとって、不破は真理をそこに座らせる。
「オレたちは、おまえが事故にあう直前まで会ってたんだ。ここで…」
それがどういう意味なのか、考えて真理は愕然とする。
不破がアメリカに行ったあと自分たちはそこで終わったのだと思っていた。
そのあとも、馨と暮らすようになったあとも不破と会っていたということは、馨を裏切っていたということになる。
自分がそんな大胆な罪を犯していたことなど思いもよらない真理は、ただうろたえるばかりだった。
「これ、おまえからの手紙。気づいたときはもう、事故のあとで」
不破が差し出した紙には、自分たちが乗った飛行機の出発時刻や、フランスに行くことになった理由が真理の字で走り書きされていた。
「これを読んだときは胸が潰れそうだったよ。もし、オレがこれに気付いて空港に行っておまえを引きとめていればって」
「…不破」
「おまえもそうして欲しくて、これを書いたんだろ?」
真理は激しく首を振った。
今となっては自分がどんな気持ちでこれを書き残したのかわからなかったが、そんなふうに馨を裏切っていたとは思いたくなかった。
「違う!」
ソファーから立ち上がって、真理は叫んだ。
「真理」
動揺する真理の気持ちを落ち着かせるように、不破は真理を抱きしめる。
「おまえが死んだって、そう知ったときオレがどんなに悲しかったか、わかる?すげえ後悔した。たとえ人を傷つけても、おまえを奪っておくべきだったって。何度も何度も、自分を責めた」
首筋にかかる息遣いに、真理の鼓動が早まる。
「愛してる…真理」
背中を撫でる不破のてのひらが愛撫に変わって、身体に熱が帯びはじめる。
確かに覚えのある感覚に、真理の身体は素直な反応を示して小刻みに震えた。
心ではそんなはずはないと思いながら、身体が、不破を安々と受け入れようとしている。
馨がいながら、こうして不破に抱かれていたんだと、記憶よりも身体がそれを証明しているようで、そんな自分を否定したくて真理は不破の腕の中で激しく抗った。
「嘘…だ。嘘だ!オレは…違う、馨を裏切ってなんかない!」
終わっていたのだ。
不破とは、もう終わっていた。
自分は有沢馨を選び、馨を愛し、馨と二人で幸福に暮らしていた。
馨がそう言った。
それが今の自分にとってはたったひとつの真実だ。
「真理……」
真理の抵抗に不破は傷ついたように、表情を引き攣らせる。
けれど次の瞬間、その瞳に凶暴な光が宿った。
「だったら、思い出させてやるよ。その身体に、思い出させてやる」
不破は真理の身体を力づくでベッドルームに押し込むと、そのままベッドの上に押し倒した。
「嫌っ!」
両腕を握ったまま、激しい口づけで真理の抵抗を封じ、その味を思い出せるように舌を絡める。
「……っん」
不意に不破が唇を離した。
唇に血が滲んでいる。真理に噛まれたのだ。
「真理…。そんなに嫌か、オレに抱かれるのは」
不破の眼差しの中に苛立ちを感じた。
静かに、そして激しく不破は怒っている。
「おまえがオレに抱かれるのを嫌がるのなんて、はじめてだな。でも、たまにはこういう趣向も悪くない」
薄く笑って意地悪く、言った。
それでも不破を怖いとは思わなかった。
その瞳の中に、怒りよりももっと深い悲しみが視えたから。
「不破……」
「ごめん、真理。優しく出来ない」
「あっ、いや…やだっ、やめろ…っ!」
不破は真理の身体を裏返し、ズボンをアンダーウエアごと脱がせた。
片手で真理の両手を押さえ、もう一方の手は、シャツの裾を捲りあげ、剥き出しの白い尻を撫でる。
真理の股に膝を割り込ませ、脚を開かせた。
「ほら、舐めて」
不破の指が口の中に入ってくる。
「ちゃんと舐めないと、おまえがツライよ」
指で舌を絡めるように口の中で動かされて、そうしたくないのに、唾液で濡らしてしまう。
自分が湿らせた不破の指が、後ろの孔に触れた。
「いやっ!不破っ、いやだ!やめてっ、挿れないでっ!」
「なに期待してんだよ、挿れないよ」
すぐに挿ってくると思った不破の指は、もったいぶったように入口を軽く押すだけで、真理は緊張を解いた。
けれど襞をくすぐるような指先の動きが、むず痒く、じっとしていられなくて尻を動かしてしまう。
「尻、動いてるぜ。挿れて欲しいみたいだな」
「ち…違うっ」
不破は指で孔の周りを弄りながら、顔を真理の顔に近づけて、髪をかきあげ、白いうなじに口づけた。
「…ああっ…」
舌で舐めまわされるような愛撫に、真理は声を抑えることが出来ない。
「ホントは挿れて欲しいんだろ」
耳の中に、囁くように吹き込まれる。
返事が出来ないでいると、不破の指が、中に挿ってきた。
「こうして、欲しかったんだろ。中からここ触ってやると、感じたよな」
「いや…っ、いやだ…不破…」
不破のその言葉通り、不破の指がポイントに触れると、シーツに押し付けている真理のペニスはたちまち形を変えた。
「感じてきたじゃん。ん?」
「…はぁ…あ…ん…、いやぁ…だっ…はぁ…っ」
「手が足りなくてそっちは可愛がってやれないんだ。でも真理は後ろだけでイケるよね」
2本に増やされた指が孔を広げるように動いて、指よりも存在感のある不破自身が挿ってくる。
「いっ…やめっ…不破…やめっ…て、それは、挿れないで…っ!」
「そうやって、もっとオレの名前呼んで思い出せよ。真理…オレの名前を、呼べ」
「尊!」
いきなり奥まで突かれて、絶叫してしまった。
どうしてこの名前のことならわかるのだろう。
不破、尊。
かつて愛した男。
自分には、その想いが過去だけのものなのか、今も続いているのかすらわからない。
それなのに、不破を受け入れて、身体は間違いなく悦んでいる。
強引で乱暴な不破の激しさを、官能に変えて悦んでいた。
「ああ…っ」
真理のこめかみを涙が伝った。
「…うっ…うう…」
真理の両手首を拘束していた手を解いて、不破はシャツの下の素肌を撫でながら腰を回した。
「…真理…ああ、真理…、おまえをまた抱けるなんて、夢みたいだ」
不破の手は、忙しなく真理の身体に触れる。
乳首を抓られた瞬間、真理の身体は痙攣した。
「あっ、んっ!もう…出るっ、出ちゃう…」
「いいよ、イケよ」
何度も奥まで突かれて、シーツに擦られていただけの真理の欲望が弾けた。
締めつけられ、不破も真理の中で放った。
身体の奥深い場所に不破の熱い飛沫を感じて、背中に甘い快感が走る。
不破に抱かれていたに違いない自分を、真理は確信した。
***
「真理、オレたち一緒になろう」
ベッドの中で真理を腕に抱いたまま不破が言った。
それが一番いいと思う、そうつけくわえて。
なにがいいのか真理にはわからない。
失った記憶の中で、自分が本当に愛したのは誰で、なにが望みだったのかわからない今、真理が自身で選べることはなにもなかった。
「おまえが、フランスに行く前に決着をつけておけばよかったんだ」
覚悟も決心も出来ていたという口調に、真理はどう返事を返していいのかわからない。
自分の気持ちは闇の中にあるのだから。
それでも何か言わなければいけないような気がして、口を開いた。
「なんて」
「え?」
「…オレ、おまえのこと、なんて呼んでたの」
「そうだな、普段は不破って、二人だけのときは時々、尊って」
「そう…か。……尊」
呼んでみると、甘い痛みが胸に走った。
大切なことを忘れているような気がして自分自身がたまらなくもどかしくなる。
「尊…」
けれど、思い出すことも怖い。
自分はどれだけ怖ろしい罪を犯していたのだろう。
馨を裏切り、杏理を傷つけ、世間さえも欺いて……。
強く抱きしめられて、裸で触れ合ったお互いの下半身がまた熱を帯びはじめている。
求め合う、この欲望の強さだけは確かに本物だった。
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