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【第三章】HEAVEN'S DOOR
12.小さな希望
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気持ちのすれ違う生活の中で、それでも変化は少しづつ訪れた。
昔、不破が舞台で共演したことのある俳優が、自分の主催する劇団の舞台に出演して欲しいと言ってくれたのだ。
小さな劇場での公演だったが、不破は主役を任された。
「いくら最近仕事してないって言っても、おまえを脇役にしたら主役が食われるだろ。それに、うちは小さな劇団だから、どこからも圧力なんてないんだ。心配するな」
昔の仲間はそう言って笑った。
不破はリスクを承知で自分を使ってくれることを決めてくれた彼のためにも、舞台を成功させようと家でも台本読みに夢中になっている。
そんな不破の姿を側で見つめて、真理は幸福だった。
台本の文字を追う真剣な眼差し、時々唇からこぼれるセリフ。
不破はやっぱり、演じているときが一番いい。
たとえ、はじめの一歩は小さくても、この舞台が成功すれば芸能界復帰の足がかりになるだろう。
不破の姿に明るい未来が見えた気がして、真理の気持ちも弾む。
「真理、こっちに来て、ちょっとこの役、読んでみて」
窓の横の壁にもたれて、台本を読んでいた不破に呼ばれた。
「オレ?やだよ、演技、下手だもん。知ってるだろ」
「いいって。来てほら!」
嫌がる真理の手を引いて、自分の股の間に真理を座らせ、二人でひとつの本を読む。
「…ここ?」
「そう」
「漢字読めなくても、笑うなよ」
小さな部屋で、不破の体温に触れ、耳のすぐ側でその声を聞き、真理は胸が高まった。
「ほら、真理、おまえの番だよ」
「あ、ごめん」
ふと目尻に涙が浮かんで、字がぼやけて読めなくなる。
「真理、どうしたの、泣いてるの?なんで」
「ごめ…ん、なんか、嬉しくて」
不破ははっとしたように、腕の中の真理を見つめて、台本を置くと繊細な壊れ物を包むように真理を抱いた。
「ごめんな。オレ、おまえに少しも優しくできなくて」
「そんなことない。尊は、優しいよ」
「きっと、この舞台成功させて、そしたら仕事いっぱいしてさ、おまえのこと幸せにするから」
「オレは今でも充分、幸せだよ」
不破の体温に包まれて、真理は言う。
嘘ではない。
愛する男と一緒にいて、不幸なはずがない。
「ちゃんと指輪も買う。式もしよう。正式に籍も入れて。ああ、そうだ、養子縁組ってね、年上の方の戸籍に入るんだって。同じ年の場合は、少しでも早い方ってことになるんだってよ。真理のがオレより半年、早いじゃん?だから、オレが、水波尊になるんだよ。なんか、くすっぐったいけど、でも早く、おまえと同じ名前になりたい」
「尊…」
いつか、そんな未来は来るのだろうか。
なぜか、真理には届きそうで届かない夢のような気がした。
けれど、そう言ってくれる不破の気持ちは嬉しかった。
「なんでも買ってあげる。真理の欲しいもの、なんでも」
「オレには欲しいものなんて何もないよ。尊が、おまえがいればいい」
不破の傍で、生きていきたい、ずっと。
叶わない望みではない。
それなのに、涙が止まらないのはどうしてだろう。
不安なのは、なぜだろう。
「好きだよ、真理。愛してる」
真理の耳元に囁きながら不破は、真理の前に回した腕で服のボタンを外しはじめた。
「なに。台詞覚えるんだろ。尊、駄目だよ」
「…ちょっとだけ」
首の後ろにくちづけられて、背筋を甘い衝撃が走る。
肩越しに振り返ると視線が合った。
「……尊」
ねだるような濡れた声で名前を呼んだ唇を塞がれる。
背中を不破に預けて、顔だけ上向きに振り返り、口づけを交わす。
舌と舌を絡め、唾液を飲みこみ口腔を探り合うディープなキスに、制御など利かなくなる。
真理のシャツ隙間から忍んだ不破の指は乳首を弄る。
「…いやあ…尊…」
「いや?ウソ、好きだろ、ここ弄られるの」
「言わないで」
恥ずかしくて、目を閉じて、不破に唇をねだる。
口づけをしている間は、不破も黙っているから。
けれど不破の熱心な指は、愛撫を真理の下半身に伸ばす。
ズボンの上から真理の性器を撫で回したあと、ボタンを外してジッパーを下した。
「やだ、尊、なにするの」
「こっちも遊んでやろうと思って」
言ったときは、下着の中から半勃ちした真理のペニスを取り出して、手の中に握っていた。
窓からは午後の日差しが、部屋を照らしている。
上半身の服を半端に乱され、真昼の陽光の中でペニスまで晒されて、恥ずかしくないはずがない。
「オレだけ、こんなのヤダ…」
「なんで?恥ずかしいの、こうされるの」
不破はマスターベーションするときのように手を上下に動かして、「見て」と真理の耳に吹き込む。
「真理が、自分でしてるみたい」
「違うっ…んっ…」
「どっちがいいの。自分でスルのと、オレがするの」
「…ああ…や…んっ、…もう…出そう」
「もう?早いよ、真理。我慢して、一緒にいこう。オレのも、勃たせてくれる?」
唇を噛んで頷いた真理は、いったん不破から離れて、自分で下半身だけ裸になった。
その格好で、不破の股間に四つん這いに蹲り、不破のペニスを取り出してしゃぶる。
不破の目には、自分の性器を咥える真理の真っ白な尻が見えた。
「真理、すげえ、セクシー」
ペニスを口で愛撫され、視覚でも愉しんだ不破は、いつになく早く限界を感じた。
「来て、真理」
真理の手を引いて、向い合う座位の格好で真理を自分の腰の上に座らせる。
両手で真理の尻を広げ、孔に、自身の先端をあてがった。
「慣らしてないけど、オレの、濡れてるから大丈夫だよね」
真理ももう我慢出来なくて、頷いて、自分から不破を飲みこむために腰を落とす。
「あっ…ああ、…はあん…」
先の濡れた硬い肉をゆっくりゆっくり身体に納めていくことで、真理のペニスも硬さを増す。
「真理のもすごいビンビンじゃん。先っぽから汁が溢れて、棹まで垂れてる」
「いや…そんなこと、言うな…んっ!」
「ここ、触って欲しい?」
ここ、と言って不破の指が裏筋をすっと撫でる。
それだけのことに、真理は身体をビクンとさせ、中の不破を締めつける。
「触って…尊…そこを、弄って」
思い切り大きく脚を開き、不破の膝を跨いで不破を咥え、その上、ペニスを濡らしながら勃てて、「弄って」とねだる。
こんなにも貪欲に快感に身を委ねることの出来る自分が、真理には不思議だった。
自分から不破を奪うものなどないはずなのに、愛しても愛しても足りないような、底なしの欲望が怖い気がした。
昔、不破が舞台で共演したことのある俳優が、自分の主催する劇団の舞台に出演して欲しいと言ってくれたのだ。
小さな劇場での公演だったが、不破は主役を任された。
「いくら最近仕事してないって言っても、おまえを脇役にしたら主役が食われるだろ。それに、うちは小さな劇団だから、どこからも圧力なんてないんだ。心配するな」
昔の仲間はそう言って笑った。
不破はリスクを承知で自分を使ってくれることを決めてくれた彼のためにも、舞台を成功させようと家でも台本読みに夢中になっている。
そんな不破の姿を側で見つめて、真理は幸福だった。
台本の文字を追う真剣な眼差し、時々唇からこぼれるセリフ。
不破はやっぱり、演じているときが一番いい。
たとえ、はじめの一歩は小さくても、この舞台が成功すれば芸能界復帰の足がかりになるだろう。
不破の姿に明るい未来が見えた気がして、真理の気持ちも弾む。
「真理、こっちに来て、ちょっとこの役、読んでみて」
窓の横の壁にもたれて、台本を読んでいた不破に呼ばれた。
「オレ?やだよ、演技、下手だもん。知ってるだろ」
「いいって。来てほら!」
嫌がる真理の手を引いて、自分の股の間に真理を座らせ、二人でひとつの本を読む。
「…ここ?」
「そう」
「漢字読めなくても、笑うなよ」
小さな部屋で、不破の体温に触れ、耳のすぐ側でその声を聞き、真理は胸が高まった。
「ほら、真理、おまえの番だよ」
「あ、ごめん」
ふと目尻に涙が浮かんで、字がぼやけて読めなくなる。
「真理、どうしたの、泣いてるの?なんで」
「ごめ…ん、なんか、嬉しくて」
不破ははっとしたように、腕の中の真理を見つめて、台本を置くと繊細な壊れ物を包むように真理を抱いた。
「ごめんな。オレ、おまえに少しも優しくできなくて」
「そんなことない。尊は、優しいよ」
「きっと、この舞台成功させて、そしたら仕事いっぱいしてさ、おまえのこと幸せにするから」
「オレは今でも充分、幸せだよ」
不破の体温に包まれて、真理は言う。
嘘ではない。
愛する男と一緒にいて、不幸なはずがない。
「ちゃんと指輪も買う。式もしよう。正式に籍も入れて。ああ、そうだ、養子縁組ってね、年上の方の戸籍に入るんだって。同じ年の場合は、少しでも早い方ってことになるんだってよ。真理のがオレより半年、早いじゃん?だから、オレが、水波尊になるんだよ。なんか、くすっぐったいけど、でも早く、おまえと同じ名前になりたい」
「尊…」
いつか、そんな未来は来るのだろうか。
なぜか、真理には届きそうで届かない夢のような気がした。
けれど、そう言ってくれる不破の気持ちは嬉しかった。
「なんでも買ってあげる。真理の欲しいもの、なんでも」
「オレには欲しいものなんて何もないよ。尊が、おまえがいればいい」
不破の傍で、生きていきたい、ずっと。
叶わない望みではない。
それなのに、涙が止まらないのはどうしてだろう。
不安なのは、なぜだろう。
「好きだよ、真理。愛してる」
真理の耳元に囁きながら不破は、真理の前に回した腕で服のボタンを外しはじめた。
「なに。台詞覚えるんだろ。尊、駄目だよ」
「…ちょっとだけ」
首の後ろにくちづけられて、背筋を甘い衝撃が走る。
肩越しに振り返ると視線が合った。
「……尊」
ねだるような濡れた声で名前を呼んだ唇を塞がれる。
背中を不破に預けて、顔だけ上向きに振り返り、口づけを交わす。
舌と舌を絡め、唾液を飲みこみ口腔を探り合うディープなキスに、制御など利かなくなる。
真理のシャツ隙間から忍んだ不破の指は乳首を弄る。
「…いやあ…尊…」
「いや?ウソ、好きだろ、ここ弄られるの」
「言わないで」
恥ずかしくて、目を閉じて、不破に唇をねだる。
口づけをしている間は、不破も黙っているから。
けれど不破の熱心な指は、愛撫を真理の下半身に伸ばす。
ズボンの上から真理の性器を撫で回したあと、ボタンを外してジッパーを下した。
「やだ、尊、なにするの」
「こっちも遊んでやろうと思って」
言ったときは、下着の中から半勃ちした真理のペニスを取り出して、手の中に握っていた。
窓からは午後の日差しが、部屋を照らしている。
上半身の服を半端に乱され、真昼の陽光の中でペニスまで晒されて、恥ずかしくないはずがない。
「オレだけ、こんなのヤダ…」
「なんで?恥ずかしいの、こうされるの」
不破はマスターベーションするときのように手を上下に動かして、「見て」と真理の耳に吹き込む。
「真理が、自分でしてるみたい」
「違うっ…んっ…」
「どっちがいいの。自分でスルのと、オレがするの」
「…ああ…や…んっ、…もう…出そう」
「もう?早いよ、真理。我慢して、一緒にいこう。オレのも、勃たせてくれる?」
唇を噛んで頷いた真理は、いったん不破から離れて、自分で下半身だけ裸になった。
その格好で、不破の股間に四つん這いに蹲り、不破のペニスを取り出してしゃぶる。
不破の目には、自分の性器を咥える真理の真っ白な尻が見えた。
「真理、すげえ、セクシー」
ペニスを口で愛撫され、視覚でも愉しんだ不破は、いつになく早く限界を感じた。
「来て、真理」
真理の手を引いて、向い合う座位の格好で真理を自分の腰の上に座らせる。
両手で真理の尻を広げ、孔に、自身の先端をあてがった。
「慣らしてないけど、オレの、濡れてるから大丈夫だよね」
真理ももう我慢出来なくて、頷いて、自分から不破を飲みこむために腰を落とす。
「あっ…ああ、…はあん…」
先の濡れた硬い肉をゆっくりゆっくり身体に納めていくことで、真理のペニスも硬さを増す。
「真理のもすごいビンビンじゃん。先っぽから汁が溢れて、棹まで垂れてる」
「いや…そんなこと、言うな…んっ!」
「ここ、触って欲しい?」
ここ、と言って不破の指が裏筋をすっと撫でる。
それだけのことに、真理は身体をビクンとさせ、中の不破を締めつける。
「触って…尊…そこを、弄って」
思い切り大きく脚を開き、不破の膝を跨いで不破を咥え、その上、ペニスを濡らしながら勃てて、「弄って」とねだる。
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