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Another story1 湯桃咲 編
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イズニーは前にみんなで行ってしまったから、今回は違う場所を選んだ。本当に行きたかったのはヘンリオピューロランドだけれど、小夜ちゃんの好みからはあまりにはずれていそう。
ということでやってきたのは、東京タウンアトラクションズ。入園料はなんと無料! 施設ごとのお金はかかるけれど、一日中滞在するのではなくデートの中でちょろっと寄りたいだけの人たちなんかには、特に勝手が良い。派手なアトラクションもいくつかあるしね。小夜ちゃんが気に入ってくれるといいけど。
と、いう心配も特には必要なく。遊園地特有のにぎやかな雰囲気に呑まれた小夜ちゃんは、ジェットコースターやアクアドロップといったたくさんのアトラクションを見て、早速目を輝かせていた。
「ほ、本当になんでも乗っていいのか?」
「いいよー。今日はぜんぶ私の奢り」
「そうか。なら、手始めにあれから……」
彼女が指さしたのは、水上のメリーゴーラウンド。確かに普通の遊園地にあるそれとはちょっと違って、特別感はあるけれど。
「小夜ちゃん、結構子どもっぽいのも好きな感じ?」
「なっ……初めから刺激の強い乗り物へ行くなんて、もったいないだろう。まずはああいうので、心と体を温めるんだ!」
彼女は言い訳するけれど、あふれ出るわくわくオーラは抑えきれていない。そういう可愛さもあるんだね。この遊園地を選んで正解だったかもしれない。
そうして私たちは、メリーゴーラウンドのひとつの馬に二人で乗り込む。小夜ちゃんを先頭に、私がその後ろに抱きつくようにして。なんとも恋人っぽい。頭の中でリズミカルなラブソングが流れてきそう。
馬は回りながら、上下に何度も揺れる。小夜ちゃんはうずうずが止められない子どものように頬を赤らめて、きらきらとした瞳で周りの景色を見つめている。それを見ていると、私も幸せになってくる。私たち、もう付き合ってたっけ? そんな錯覚さえ覚えてしまうような。
その後はジェットコースターに乗り、アクアドロップに乗り、小夜ちゃんのきゃっきゃとした声が聞こえてきそうな子どもらしい一面をとにかく楽しんだ。そうして中のレストランで昼食をとって、さらにはソフトクリームを買って二人で歩き食いをする。かなり心地が良い。小夜ちゃんのような盛り上がり方とは違うけれど、私の心は確かに高揚している。もう抑えてなんていられない。
二人で並んで園内を歩いている最中、私はその腕に抱きついた。本当の恋人みたく、大好きオーラを存分に出しながら。
「ゆ、ゆもも?」
「ん?」
アイスを食べる小夜ちゃんの手は止まる。
「い、いくら練習といえど、こういうのは良くないと思うんだが」
彼女は目を合わせずに言う。その恥ずかしそうな横顔を見るに、だいぶ戸惑っているよう。
「小夜ちゃん、ウブだ」
「うっ……」
私がからかうと、彼女は面食らったような顔をする。こんな一面もまたかわいい。
「まあ、頼んでるのは私の方だし。嫌ならやめざるをえないんだけども」
私自身、彼女の気持ちを尊重したくはあった。一方的な愛を向けてるだけじゃつまんないしね。
「嫌というかだな」
「なに?」
「……なんでもない」
小夜ちゃんは言葉を濁す。しばし沈黙が流れる。なんだか気まずい雰囲気になってしまった。
しかし、問題はない。たとえここまでのプランが失敗に終わっていたとしても、すべてを大逆転できる最高のアトラクションを、私は用意してきている。
「それじゃあ、飛ぼっか!」
「飛ぶ?」
「ごめんねー。せっかく着てもらったんだけど、もう一度前の服に着替えてもらえる?」
とりあえず、アップセットとワンピースの新鮮な小夜ちゃんは存分に拝むことができた。これからその場所に向かうには、小夜ちゃんが自分で着てきた白Tと短パンの方が動きやすくて都合がいい。
「ああ、うん。構わんが」
そう言ってくれた小夜ちゃんに、私はとびきりの笑顔を返す。
アイスは二人とも、もうすぐ食べ終える。その時は刻々と近づいてきている。
もし私と付き合ったら、どんなに楽しいか。恋人の練習相手ではあるけれど、それを思い知らせてやろうと思う。
そして……私たちはとうとう、空の上へとやってくる。
パパに借りたプライベートジェット。全体的に小さく、内装も他のものと比べてかなりシンプルだ。ワインやジュースが入った冷蔵庫もないし、みんなでくつろげるようなソファもない。しかし、今日の目的にはぴったり。申請や許可の取得も既に終えている。
そう。あとはまさに飛ぶだけなのだ。
パラシュートを背負った私は、体に巻きつけるベルトで小夜ちゃんとひとつになっている。ジェット機の開いた扉を前に、私は小夜ちゃんの体を抱きながら座っている。
「な、」
彼女は、ようやくリアリティが湧いてきたのかもしれない。
「なんだこれわあああああ!?」
雲より高いこの大空を前に、小夜ちゃんは叫ぶ。
私たちは今まさに、スカイダイビングの真っただ中にいる。
「じゃあ、みっつ数えたら飛ぶよ!」
私はそう言って、その空へ飛び込む準備をする。
「まてまてまて!! 私たちだけじゃまずいだろう!?」
「大丈夫! 私、インストラクターのライセンス持ってるから!」
両親の教育の賜物だろう。私の持っている謎資格は、他にいくつもある。
花火を打ち上げたあのとき、私はやまとちゃんについていけなかった。正直、それで後悔してしまったことも今回の計画には関係している。
でも、小夜ちゃんと飛んでみたいと思ったことは事実。
扉の両端を持って支えとなっている腕に、力を込める。
「深呼吸して、いくよ!」
「うおっ……」
私たちは、風の中へと飛び込む。
ということでやってきたのは、東京タウンアトラクションズ。入園料はなんと無料! 施設ごとのお金はかかるけれど、一日中滞在するのではなくデートの中でちょろっと寄りたいだけの人たちなんかには、特に勝手が良い。派手なアトラクションもいくつかあるしね。小夜ちゃんが気に入ってくれるといいけど。
と、いう心配も特には必要なく。遊園地特有のにぎやかな雰囲気に呑まれた小夜ちゃんは、ジェットコースターやアクアドロップといったたくさんのアトラクションを見て、早速目を輝かせていた。
「ほ、本当になんでも乗っていいのか?」
「いいよー。今日はぜんぶ私の奢り」
「そうか。なら、手始めにあれから……」
彼女が指さしたのは、水上のメリーゴーラウンド。確かに普通の遊園地にあるそれとはちょっと違って、特別感はあるけれど。
「小夜ちゃん、結構子どもっぽいのも好きな感じ?」
「なっ……初めから刺激の強い乗り物へ行くなんて、もったいないだろう。まずはああいうので、心と体を温めるんだ!」
彼女は言い訳するけれど、あふれ出るわくわくオーラは抑えきれていない。そういう可愛さもあるんだね。この遊園地を選んで正解だったかもしれない。
そうして私たちは、メリーゴーラウンドのひとつの馬に二人で乗り込む。小夜ちゃんを先頭に、私がその後ろに抱きつくようにして。なんとも恋人っぽい。頭の中でリズミカルなラブソングが流れてきそう。
馬は回りながら、上下に何度も揺れる。小夜ちゃんはうずうずが止められない子どものように頬を赤らめて、きらきらとした瞳で周りの景色を見つめている。それを見ていると、私も幸せになってくる。私たち、もう付き合ってたっけ? そんな錯覚さえ覚えてしまうような。
その後はジェットコースターに乗り、アクアドロップに乗り、小夜ちゃんのきゃっきゃとした声が聞こえてきそうな子どもらしい一面をとにかく楽しんだ。そうして中のレストランで昼食をとって、さらにはソフトクリームを買って二人で歩き食いをする。かなり心地が良い。小夜ちゃんのような盛り上がり方とは違うけれど、私の心は確かに高揚している。もう抑えてなんていられない。
二人で並んで園内を歩いている最中、私はその腕に抱きついた。本当の恋人みたく、大好きオーラを存分に出しながら。
「ゆ、ゆもも?」
「ん?」
アイスを食べる小夜ちゃんの手は止まる。
「い、いくら練習といえど、こういうのは良くないと思うんだが」
彼女は目を合わせずに言う。その恥ずかしそうな横顔を見るに、だいぶ戸惑っているよう。
「小夜ちゃん、ウブだ」
「うっ……」
私がからかうと、彼女は面食らったような顔をする。こんな一面もまたかわいい。
「まあ、頼んでるのは私の方だし。嫌ならやめざるをえないんだけども」
私自身、彼女の気持ちを尊重したくはあった。一方的な愛を向けてるだけじゃつまんないしね。
「嫌というかだな」
「なに?」
「……なんでもない」
小夜ちゃんは言葉を濁す。しばし沈黙が流れる。なんだか気まずい雰囲気になってしまった。
しかし、問題はない。たとえここまでのプランが失敗に終わっていたとしても、すべてを大逆転できる最高のアトラクションを、私は用意してきている。
「それじゃあ、飛ぼっか!」
「飛ぶ?」
「ごめんねー。せっかく着てもらったんだけど、もう一度前の服に着替えてもらえる?」
とりあえず、アップセットとワンピースの新鮮な小夜ちゃんは存分に拝むことができた。これからその場所に向かうには、小夜ちゃんが自分で着てきた白Tと短パンの方が動きやすくて都合がいい。
「ああ、うん。構わんが」
そう言ってくれた小夜ちゃんに、私はとびきりの笑顔を返す。
アイスは二人とも、もうすぐ食べ終える。その時は刻々と近づいてきている。
もし私と付き合ったら、どんなに楽しいか。恋人の練習相手ではあるけれど、それを思い知らせてやろうと思う。
そして……私たちはとうとう、空の上へとやってくる。
パパに借りたプライベートジェット。全体的に小さく、内装も他のものと比べてかなりシンプルだ。ワインやジュースが入った冷蔵庫もないし、みんなでくつろげるようなソファもない。しかし、今日の目的にはぴったり。申請や許可の取得も既に終えている。
そう。あとはまさに飛ぶだけなのだ。
パラシュートを背負った私は、体に巻きつけるベルトで小夜ちゃんとひとつになっている。ジェット機の開いた扉を前に、私は小夜ちゃんの体を抱きながら座っている。
「な、」
彼女は、ようやくリアリティが湧いてきたのかもしれない。
「なんだこれわあああああ!?」
雲より高いこの大空を前に、小夜ちゃんは叫ぶ。
私たちは今まさに、スカイダイビングの真っただ中にいる。
「じゃあ、みっつ数えたら飛ぶよ!」
私はそう言って、その空へ飛び込む準備をする。
「まてまてまて!! 私たちだけじゃまずいだろう!?」
「大丈夫! 私、インストラクターのライセンス持ってるから!」
両親の教育の賜物だろう。私の持っている謎資格は、他にいくつもある。
花火を打ち上げたあのとき、私はやまとちゃんについていけなかった。正直、それで後悔してしまったことも今回の計画には関係している。
でも、小夜ちゃんと飛んでみたいと思ったことは事実。
扉の両端を持って支えとなっている腕に、力を込める。
「深呼吸して、いくよ!」
「うおっ……」
私たちは、風の中へと飛び込む。
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