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4 恋とはどんなもの?
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私が何も言わないでいると、エドワード殿下は優しく微笑んだ。その微笑みの意味が分からなかったけれど、私も彼を真似て微笑んでみる。そうしたら、彼は吹き出した。
「かわいい」
そう言って彼は私の頭を撫でた。18にもなって頭を撫でられるなんて不思議な気分だ。子ども扱いされてもおかしくないような顔だったのかしら?
「イザベラの感情表現は本当に愛らしい」
手紙にも書いていたことをエドワード殿下は言ってのけた。
「笑ったつもりだったのですが、変でしたか」
「正直に言ったらね。でも、かわいいからいいよ」
そう言って彼は私の手を引いて歩き始めた。
「エドワード殿下は変わっていますね。みんな私の頓珍漢な表情を見てびっくりするんですよ」
「そうだね」
「無表情でいたらいたで、怖いと言われますし・・・・・・」
━━私ったら、つい愚痴っぽくなってしまったわ。
「そう? お人形さんみたいで綺麗だと思うけど」
━━私が綺麗?
エドワード殿下の言葉に私は首を傾げた。
「勿論、頑張って表情を作ろうとする君や、わずかだけど感情の浮かび上がった顔もかわいいと思うよ?」
エドワード殿下は慌てた様子でそう付け加えたけれど、何が言いたいのかまるで分からない。
「えっと、つまりだね・・・・・・。イザベラは難しく考えずに自然に振る舞えばいいんだよ。今のままで大丈夫。楽しい時は君も笑っているし、悲しい時は落ち込んでいるのが分かるから」
そんな風に言われたことは今まで一度もなかった。「感情が読み取れない」とか、「感情がないんじゃないか」とか、そういう批判ばかり受けていたから。
「そうしていれば、恋心も表現できるようになりますか」
思い切って聞いてみたら、エドワード殿下は目を見開いた。自分の思っている以上に変なことを聞いてしまったらしい。
「うん。きっと。でも、恋心を表現するためには、まずは恋をしないといけないね」
そう言って彼ははにかんだ。
ああ。そうだった。そもそも恋をしなければ、その気持ちが表に出るはずがない。
「でも、どうすれば恋をするのでしょうか」
「形から入ってみる?」
彼の言葉が上手く理解できなくて聞き返したら、エドワード殿下は具体的に話してくれた。
「恋仲のように振る舞えば、心の方もそれに付いてくると思うんだ」
「ああ。なるほど。いいですね」
そうすれば、エドワード殿下の望みも少しは叶えられるかもしれない。
でも、恋仲の人達の何を真似をしたらいいのか分からない。
「それで、何をすればいいんでしょう」
「そうだね・・・・・・。まずは呼び方から変えてみよう。俺のことをエドと呼んでもらえる?」
「分かりました。エド。私のことはベラと呼んで下さい」
「ベラ」
早速呼ばれて、違和感を覚えた。家族以外から愛称で呼ばれることがなかったから仕方がない。何度も呼ばれていたら、そのうち慣れるだろう。
「それから、歩く時は極力、今みたいに手を繋ぐか、腕を組むようにしよう」
「分かりました」
「デートもしよう」
「はい。婚約をしたら妃教育を受けなければならないと思いますので、なるべく早めがいいです」
「分かった。予定を調整してみるよ」
エドはにこにこ笑っている。
━━デートか。
同級生のほとんどは、学生時代に意中の相手とデートを楽しんでいたというのに、私には全く縁のない事だった。
だから、どこに行ったとか何をしてもらったとか、楽しそうに話している同級生達がほんの少し羨ましかった。
「行きたいところはある?」
聞かれて思いつくのは、同級生が話していたおしゃれな飲食店や人気のデートスポットばかりだ。でも、まだ悪い噂が鎮まっていない今は、そんな目立つ場所には行きたくなかった。
「デートは人目につかないところがいいです」
「それなら、自然公園に行こうか。今の季節なら雪遊びができるよ」
「いいですね」
「じゃあ、日程は追って連絡するよ」
エドの言葉に私は頷いた。
「かわいい」
そう言って彼は私の頭を撫でた。18にもなって頭を撫でられるなんて不思議な気分だ。子ども扱いされてもおかしくないような顔だったのかしら?
「イザベラの感情表現は本当に愛らしい」
手紙にも書いていたことをエドワード殿下は言ってのけた。
「笑ったつもりだったのですが、変でしたか」
「正直に言ったらね。でも、かわいいからいいよ」
そう言って彼は私の手を引いて歩き始めた。
「エドワード殿下は変わっていますね。みんな私の頓珍漢な表情を見てびっくりするんですよ」
「そうだね」
「無表情でいたらいたで、怖いと言われますし・・・・・・」
━━私ったら、つい愚痴っぽくなってしまったわ。
「そう? お人形さんみたいで綺麗だと思うけど」
━━私が綺麗?
エドワード殿下の言葉に私は首を傾げた。
「勿論、頑張って表情を作ろうとする君や、わずかだけど感情の浮かび上がった顔もかわいいと思うよ?」
エドワード殿下は慌てた様子でそう付け加えたけれど、何が言いたいのかまるで分からない。
「えっと、つまりだね・・・・・・。イザベラは難しく考えずに自然に振る舞えばいいんだよ。今のままで大丈夫。楽しい時は君も笑っているし、悲しい時は落ち込んでいるのが分かるから」
そんな風に言われたことは今まで一度もなかった。「感情が読み取れない」とか、「感情がないんじゃないか」とか、そういう批判ばかり受けていたから。
「そうしていれば、恋心も表現できるようになりますか」
思い切って聞いてみたら、エドワード殿下は目を見開いた。自分の思っている以上に変なことを聞いてしまったらしい。
「うん。きっと。でも、恋心を表現するためには、まずは恋をしないといけないね」
そう言って彼ははにかんだ。
ああ。そうだった。そもそも恋をしなければ、その気持ちが表に出るはずがない。
「でも、どうすれば恋をするのでしょうか」
「形から入ってみる?」
彼の言葉が上手く理解できなくて聞き返したら、エドワード殿下は具体的に話してくれた。
「恋仲のように振る舞えば、心の方もそれに付いてくると思うんだ」
「ああ。なるほど。いいですね」
そうすれば、エドワード殿下の望みも少しは叶えられるかもしれない。
でも、恋仲の人達の何を真似をしたらいいのか分からない。
「それで、何をすればいいんでしょう」
「そうだね・・・・・・。まずは呼び方から変えてみよう。俺のことをエドと呼んでもらえる?」
「分かりました。エド。私のことはベラと呼んで下さい」
「ベラ」
早速呼ばれて、違和感を覚えた。家族以外から愛称で呼ばれることがなかったから仕方がない。何度も呼ばれていたら、そのうち慣れるだろう。
「それから、歩く時は極力、今みたいに手を繋ぐか、腕を組むようにしよう」
「分かりました」
「デートもしよう」
「はい。婚約をしたら妃教育を受けなければならないと思いますので、なるべく早めがいいです」
「分かった。予定を調整してみるよ」
エドはにこにこ笑っている。
━━デートか。
同級生のほとんどは、学生時代に意中の相手とデートを楽しんでいたというのに、私には全く縁のない事だった。
だから、どこに行ったとか何をしてもらったとか、楽しそうに話している同級生達がほんの少し羨ましかった。
「行きたいところはある?」
聞かれて思いつくのは、同級生が話していたおしゃれな飲食店や人気のデートスポットばかりだ。でも、まだ悪い噂が鎮まっていない今は、そんな目立つ場所には行きたくなかった。
「デートは人目につかないところがいいです」
「それなら、自然公園に行こうか。今の季節なら雪遊びができるよ」
「いいですね」
「じゃあ、日程は追って連絡するよ」
エドの言葉に私は頷いた。
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