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1章 神様が間違えたから
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「何か問題でも?」
「・・・・・・いえ。そういう考え方もあるんですね」
エレノアは苦笑した。
「私は、嫌だな・・・・・・。自分の好きな人に別の女がいるだなんて」
私は首を捻った。それを見たエレノアは怪訝な表情をした。
「レイチェル嬢は、ニコラス様の事が好きだから、今の関係になったんですよね? 愛してるんでしょう?」
私は吹き出してしまった。
━━どいつもこいつも、愛だの恋だの・・・・・・。馬鹿馬鹿しい。
私は余程、嫌な笑い方をしていたのだろうか。エレノアは顔を引き攣らせていた。
「ごめんなさい。おかしくて・・・・・・。我慢できませんでした」
「あ・・・・・・。はい」
「私個人の彼に対する感情をお話すればよろしいのですか」
「ええ。よければお話してくれませんか」
「大嫌いです」
「え?」
「大嫌いです」
私はもう一度、はっきりと、同じ言葉を繰り返した。
エレノアは驚愕している。けれど、そんなに驚く事なのだろうか。
「私が好き好んで彼の愛人をやっているとでも? そうならざるを得ない状況だったから、そうしたまでです。彼の事は嫌いで当然です。だって、今の私のこの状況を作ったのは、間違いなく彼なんですもの!」
早口で捲し立てたせいで頭痛が更に酷くなった。ズキズキとする痛みを少しでも抑えようと、私は目を閉じて眉間を指で押した。
━━頭が痛い。・・・・・・イライラする。
エレノアは何が聞きたいのだろう。私に何を望み、この話には何の意味があるのだろうか。
私にはまるで理解できない。
「ごめんなさい」
エレノアの謝罪に反応して、私は目を開けた。
「私はてっきり、二人が愛し合っているとばかり・・・・・・」
「そうですか」
「ニコラス様は、ずっと昔からレイチェル嬢を愛していると言っていました」
「・・・・・・」
「その話をされた時、私は身を引くと言ったんですけど、彼は頑なに『そんな事はしなくていい』の一点張りで」
「そうでしょうね。今、モニャーク公爵家の支持がなくなるのは困るでしょうから」
私が言うと、エレノアは俯いた。
「何かご不満が?」
「不満、というか。その・・・・・・。そもそもレイチェル嬢って、私と同じ転生者ですよね?」
「は?」
いきなり何を言い出すのだろう。
「『夢見る乙女のメモリアル』という作品を知りませんか」
「知っているわ」
この世界の元となった乙女ゲームの名前を忘れた事などなかった。
「やっぱり! ゲームのレイチェルとレイチェル嬢は全然性格が違うから、きっと私と同じ転生者なのだと思っていました」
「・・・・・・」
それが今していた話と何の関係があるのかしら?
「レイチェル嬢も私と同じ様に、婚約を機に訪れる『バッドエンド』から逃れようとしていたのですよね?」
「そうですね」
私はケイン殿下が後継者争いに勝利し、彼の唯一無二の正妻となる事で、それから逃れようとしていた。
しかし、それが難しいと感じたから、別の道を模索し始めた。その過程で予想外の事が起こり、まさかニコラス殿下の側につくとは思いもよらなかったけれど・・・・・・。
「今の状況なら、私達にはゲームのようなバッドエンドを訪れませんわ。・・・・・・まさか、私がミランダに代わり、モニャーク公爵令嬢を破滅に導くとお思いで?」
「そんな事、思ってません」
「それなら、どうしてこんな話を?」
「レイチェル嬢はこのままいけば、『側室』という不名誉な立場になってしまいます。本当にそれでいいんですか。あなたなら、ゲームの知識を使って家門の使命という呪縛から逃れられるのではないかと・・・・・・。私はそう思うのです。だから、家同士の関係とか、後継者争いとか。そんな物を抜きにして、自分の事をもっと大事になされてはいかがでしょう?」
今までのやり取りに比べたら、最もらしい事を言うけれど。それでも、やっぱりこう思わざるを得なかった。
━━ああ、この子は本当に愚かだわ。
ずんと頭を殴る様な痛みに、私は顔を顰めた。
「レイチェル嬢・・・・・・?」
「少し頭痛がしただけです。気にしないで下さい」
私はお茶を飲み、ゆっくりと息を吐いた。
「ゲームの知識を使って家門の使命という呪縛から逃れる、とおっしゃいましたよね?」
「はい」
「私はそんな事をしません。する必要もないですから」
「どうして・・・・・・?」
戸惑うエレノアに私は笑いかけた。
「この世界は今の私達にとっては『現実』です。バーチャルな仮想空間でないのは当然の事ですし、人々には血が通っていて魂が宿り、それぞれが独自の考えで毎日を生きています」
私の言葉にエレノアは頷いた。
「そうですね。攻略対象も、そうでない名前を付けられていなかった人達も、みんな一人の人間として生きています」
「その『名前を付けられていなかった人達』を・・・・・・。私の家族を裏切り、破滅させる事など、私にはできないです」
エレノア嬢は目を丸くした。
「・・・・・・いえ。そういう考え方もあるんですね」
エレノアは苦笑した。
「私は、嫌だな・・・・・・。自分の好きな人に別の女がいるだなんて」
私は首を捻った。それを見たエレノアは怪訝な表情をした。
「レイチェル嬢は、ニコラス様の事が好きだから、今の関係になったんですよね? 愛してるんでしょう?」
私は吹き出してしまった。
━━どいつもこいつも、愛だの恋だの・・・・・・。馬鹿馬鹿しい。
私は余程、嫌な笑い方をしていたのだろうか。エレノアは顔を引き攣らせていた。
「ごめんなさい。おかしくて・・・・・・。我慢できませんでした」
「あ・・・・・・。はい」
「私個人の彼に対する感情をお話すればよろしいのですか」
「ええ。よければお話してくれませんか」
「大嫌いです」
「え?」
「大嫌いです」
私はもう一度、はっきりと、同じ言葉を繰り返した。
エレノアは驚愕している。けれど、そんなに驚く事なのだろうか。
「私が好き好んで彼の愛人をやっているとでも? そうならざるを得ない状況だったから、そうしたまでです。彼の事は嫌いで当然です。だって、今の私のこの状況を作ったのは、間違いなく彼なんですもの!」
早口で捲し立てたせいで頭痛が更に酷くなった。ズキズキとする痛みを少しでも抑えようと、私は目を閉じて眉間を指で押した。
━━頭が痛い。・・・・・・イライラする。
エレノアは何が聞きたいのだろう。私に何を望み、この話には何の意味があるのだろうか。
私にはまるで理解できない。
「ごめんなさい」
エレノアの謝罪に反応して、私は目を開けた。
「私はてっきり、二人が愛し合っているとばかり・・・・・・」
「そうですか」
「ニコラス様は、ずっと昔からレイチェル嬢を愛していると言っていました」
「・・・・・・」
「その話をされた時、私は身を引くと言ったんですけど、彼は頑なに『そんな事はしなくていい』の一点張りで」
「そうでしょうね。今、モニャーク公爵家の支持がなくなるのは困るでしょうから」
私が言うと、エレノアは俯いた。
「何かご不満が?」
「不満、というか。その・・・・・・。そもそもレイチェル嬢って、私と同じ転生者ですよね?」
「は?」
いきなり何を言い出すのだろう。
「『夢見る乙女のメモリアル』という作品を知りませんか」
「知っているわ」
この世界の元となった乙女ゲームの名前を忘れた事などなかった。
「やっぱり! ゲームのレイチェルとレイチェル嬢は全然性格が違うから、きっと私と同じ転生者なのだと思っていました」
「・・・・・・」
それが今していた話と何の関係があるのかしら?
「レイチェル嬢も私と同じ様に、婚約を機に訪れる『バッドエンド』から逃れようとしていたのですよね?」
「そうですね」
私はケイン殿下が後継者争いに勝利し、彼の唯一無二の正妻となる事で、それから逃れようとしていた。
しかし、それが難しいと感じたから、別の道を模索し始めた。その過程で予想外の事が起こり、まさかニコラス殿下の側につくとは思いもよらなかったけれど・・・・・・。
「今の状況なら、私達にはゲームのようなバッドエンドを訪れませんわ。・・・・・・まさか、私がミランダに代わり、モニャーク公爵令嬢を破滅に導くとお思いで?」
「そんな事、思ってません」
「それなら、どうしてこんな話を?」
「レイチェル嬢はこのままいけば、『側室』という不名誉な立場になってしまいます。本当にそれでいいんですか。あなたなら、ゲームの知識を使って家門の使命という呪縛から逃れられるのではないかと・・・・・・。私はそう思うのです。だから、家同士の関係とか、後継者争いとか。そんな物を抜きにして、自分の事をもっと大事になされてはいかがでしょう?」
今までのやり取りに比べたら、最もらしい事を言うけれど。それでも、やっぱりこう思わざるを得なかった。
━━ああ、この子は本当に愚かだわ。
ずんと頭を殴る様な痛みに、私は顔を顰めた。
「レイチェル嬢・・・・・・?」
「少し頭痛がしただけです。気にしないで下さい」
私はお茶を飲み、ゆっくりと息を吐いた。
「ゲームの知識を使って家門の使命という呪縛から逃れる、とおっしゃいましたよね?」
「はい」
「私はそんな事をしません。する必要もないですから」
「どうして・・・・・・?」
戸惑うエレノアに私は笑いかけた。
「この世界は今の私達にとっては『現実』です。バーチャルな仮想空間でないのは当然の事ですし、人々には血が通っていて魂が宿り、それぞれが独自の考えで毎日を生きています」
私の言葉にエレノアは頷いた。
「そうですね。攻略対象も、そうでない名前を付けられていなかった人達も、みんな一人の人間として生きています」
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エレノア嬢は目を丸くした。
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