【完結/R-18】偽りの聖女の身代わり結婚

花草青依

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本編3

28-1 アドバイス

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「ああ、そうだよ。俺達は再会してから、色々と誤解してたんだ。だから、今までどうやって暮らしてたのかも、昨日まで知らなかった」
 アンディは堂々と言ってのけたけれど、そんな風に言える内容じゃない。
 そう思ったのは、私だけではなかったようだ。第二王子殿下は苦笑いを浮かべた。

 しかし、苦い反応を前にしても、アンディは言葉を続ける。
「でも、今は違う。俺もシアも変わろうと決めたんだ。俺は頭も悪いし、気も利かないし、器用でもないから……。すぐには変われないが……」
 そこまで言って、しどろもどろになったアンディに対し、フェイは頭を抱えた。

 しかし、第二王子殿下の反応は悪くなかった。
 彼は静かにアンディの言葉を肯定したのだ。そして、アンディに変わって言葉を続ける。
「大事なのは過去じゃなくて“今”だ。そして、今の積み重ねが未来になっていく」
 殿下の言葉が胸に沁みた。

「私は、これからも彼と一緒にいたいです。彼との未来を見ているんです」
 私の言葉に殿下は目を細めた。
「どんな未来?」
「二人で領地の経営に勤しみながら、静かに、けれど、明るく暮らすことです。時には森に出て、みんなでおおはしゃぎして……」
「お姫様なのに、それじゃあ昔と大して変わらないんじゃないか」
 アンディはそれでもいいのかと言いたげに私を見た。

 確かに、お姫様にしては地味な暮らしなのかもしれない。
 でも、物語の結末で一番重要なのは、“みんなの幸せ”のはずだ。決して、主人公の贅沢な暮らしではないはず。

 不意に殿下が笑った。
「二人の思い描く未来に齟齬があるようだね。後で意見の擦り合わせをしておいた方がいい」
 反論の余地もない言葉に私は頷いた。
「だが、君達の物言いからして、今の“夫婦”という関係に二人とも不満はないんだね?」
「勿論だ」
 即答したアンディに続き、私も「はい」と返事をした。

「それなら、俺も協力しようか」
「協力って……、お前まさか」
 驚くアンディに対して、殿下は不敵な笑みを向けた。
「カーライルとジェシカ嬢の考えを改めさせるための知恵を借りに来たんだろう? 君の小さな脳みそで考えたことなんてお見通しさ」
 そう言って彼はブドウをつまんだ。

「うん、美味しいね」
 そう言って彼はもう一粒、口にする。
 その様子を見ていたら、焦れったい気持ちに駆られる。
「それで、俺は何をすれば?」
 アンディの質問からは急いた気持ちが表れていた。かくいう私も、早く教えて欲しかったのだけれど。
 そう思っていると、殿下の視線が私に向けられた。

「夫人から見た、ジェシカ嬢の印象を教えてくれる?」
 問われて私はあの子のことを頭に思い浮かべた。
「とても優しい子です。責任感と正義感が強くて……。ジョルネス城の中では私のことを唯一心配してくれる存在でした」
 思ったままに語れば、殿下は頷いた。

「それでいて少し思い込みが強い所がある。違うかい?」
 そう言われて、私は苦笑した。
「そうかもしれませんね。行動力もあるので突っ走ってしまうこともあります」
「なるほど。俺の聞いている通りの人物なわけか」
 誰から何を聞いたのか。そんな疑問は今はどうでも良かった。

「そういう人間に対しては、下手な小細工をするより、誠実な対応をした方がいいだろう。君達の今に至るまでの経緯や、互いに対する想いを彼女に打ち明ければいい」
 それは、言われなくともそうするつもりでいた。ただ、話をしてジェシカが納得してくれるのかが問題だ。

「ジェシカ嬢に納得してもらえるか、不安なのかい?」
 殿下の問いに、私は頷いた。
「妹は夫が私に危害を加えようと企んでいると思い込んでいるんです。私がそれを否定しても、信じてくれるかどうか」

 カフェで話をした時、ジェシカは私の「そんなはずはない」という意見を批判していた。
 次に話をした時、私がいくらそうではないと言っても、また「のんき」だと否定されてしまうような気がする。私がアンディに脅されてそう言わされていると思われる可能性だって十分にある。

「家族の話は君達でケリをつけてもらいたいところだけど……」
 殿下は腕を組んだ。
「もし、どうしても、話し合いが平行線をたどるのなら、カーライルに向かってこう言えばいい。『グレアムはカルベーラ夫妻の婚姻の有効を主張する』ってね」
 それにすかさずアンディが反応した。
「第三王子と争う気でいるのか」
 殿下はふっと笑うと首を振った。

「まさか。脅しをかけるだけさ」
「効くのか」
「ああ。カーライルは穏やかな性格だからね。わざわざ争いになるようなマネは避けるはずさ」
「ハッタリというわけか」
 アンディのつぶやきに殿下はふっと笑った。

「俺は争ってやってもいいが、それは最終手段だ。今後のことを考えれば、なるべく平和的に解決するんだな」
「努力はするが、できるかどうか……」
「何、ジェシカ嬢は君達の敵ではない。むしろ、味方だ。そうだろう?」
 殿下の言葉に私は頷いた。
「そうですね。ジェシカは私の身を心配するあまり、夫を信用できないでいるだけですから」
「それなら、共通の敵を前にすれば、彼女はきっと、アンドリューを見直すはずさ」
 殿下の意味深な言葉に、アンディの表情が硬くなった。
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