【完結/R-18】偽りの聖女の身代わり結婚

花草青依

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本編3

29 計画の実行

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 それから私達は、連日、お父様との対峙に備えて綿密な計画を立てた。
 お父様はジェシカに対して危害を加えようとするだろうから、私達はその現場を押さえて、彼を官憲に突き出す。
 お父様は自分の手を汚さず、人を雇うのではないかと思ったけれど、そこはグレアム殿下が上手く取り計らってくれるのだという。
 お父様は私とジェシカの話し合いの場に必ず現れるのだ。

 私はジェシカに私達の計画を教えたかったけれど、皆に反対された。
 そうすれば、計画が漏れる可能性が出てくるし、そうじゃなくても、不審に思ったお父様が現れなくなるかもしれないからだ。
 危険が迫っているのにそれを彼女に教えられないことにやきもきしたけれど、アンディは騎士として、無駄のない人員配置をしてくれた。そして、死角はないから不意打ちで襲われることはないと彼は断言したのだ。







 そして、ジェシカと会う日。

 ━━準備はしっかりしたから大丈夫。

 私は、そう思いながら、彼とともにジェシカとの待ち合わせの場所に向かった。

 私の指定したカフェに、ジェシカとカーライル殿下はすでに来ていた。
 ジェシカは私の隣りにいるアンディを見ると、顔を顰めた。
「お姉様……?」
 なぜ彼がここに? と言いたげに私を見つめる。
 私はそれに反応せずに、アンディとともに席に着いた。

「ジェシカ。あなたに大事な話をしたいから、彼を連れて来たの」
「……そうですか」
 同じ席に着くことまで拒否されなくて良かった。そう思いつつ、店員に私達の分のお茶を頼んだ。

 お茶が来るまでの間は本題を切り出さずにいた。プライベートな話題を他人に聞かれるのは嫌だったから。
 でも、不満気なジェシカと不機嫌そうなアンディの前では、どんな雑談も弾まなかった。

 ━━気まずい。

 振る話題が尽きて、ついに沈黙が訪れた。
 ジェシカとアンディは話をするつもりがないらしく、二人とも黙って店内を見渡している。
 カーライル殿下はジェシカをチラチラと見つめるばかりで何も言わない。
 お茶が来るまでは、10分もかからなかったはずなのに、長い地獄の中にいる気分にさせられた。
 だから、店員がお茶を持ってきてくれた時には心底ほっとさせられた。

 私は、お茶を置いた店員が遠くへ行ったことを確認して、ジェシカにしっかりと向き合った。
「ジェシカ、改めてちゃんと紹介させて。アンドリューよ」
 敬称を付けず、しっかりと彼の名前を呼んだ。
 アンディは軽く頭を下げると、ジェシカもそれに呼応して「こんにちは」と挨拶をした。
 “よろしく”と言わないあたり、彼女の「認めない」という意志が見え隠れする。
 私は苦笑いをしながらも、私の意志を伝えていく。

「私達、王都に来てから、しっかりと話し合ったの。それで、お互いに沢山の誤解が合ったことと、これからもずっと、一緒にいたいと思っていたことを知ったわ。だから、私はアンディと……。夫とは離婚しないわ」
 離婚をしない。そう宣言した途端、ジェシカはアンディを睨み付けた。

「お姉様にどんな脅しをかけたの?」
 アンディに対して怒りを隠さずに問うた。
「何も」
 彼は短く返事をすると、ジェシカはテーブルに手を付いて立ち上がった。
「嘘を吐かないで!! あなたがお姉様をグレアム殿下の所に連れて行ったことを知っているんだから!」
 大声を出したせいで、周囲の目が一斉に彼女に向いた。

「ジェシカ嬢、落ち着いて。大きな声で話していいことじゃないだろう?」
 カーライル殿下が優しく咎めると、彼女は椅子に座り直した。
「ごめんなさい。大声を出して」
 彼女はそう言ってから、気分を落ち着けるためなのかお茶を飲んだ。

 私はジェシカがカップを受け皿に戻したのを確認すると、再び話しかけた。
「ねえ、ジェシカ。あなたは私達のことを誤解しているわ。あなたの言う通り、私とアンディがグレアム殿下と会ったのも事実よ? でもね━━」
「愛人の女も馬車に乗っていたんでしょ?」
 カーライル殿下が私に付けていたという監視の護衛は、そこまで見ていたとは思わなかった。

「違うわ。彼女は愛人じゃない。私の古くからの友達よ」
「お姉様のお友達?」
 ジョルネスの城に閉じ込められて、同世代の子とはまともに付き合いも持てなかったことをジェシカは知っているから。そんなことを言われても、にわかには信じられないのだろう。

「昔、アイネ山にいた頃の友達なの」
「お姉様……。あの頃の記憶があるのですか」
「あなたこそ、まだ小さかったのに、よく覚えているわね」
「いえ、記憶は朧げで、具体的な暮らしの様子は思い出せないのですが……」
 ジェシカはじっと私の顔を見た。

「あの頃のお姉様は、明るくておしゃべりで、笑顔の絶えない人だったってことはよく覚えています」
「そうなの……? 実は、あの頃のことはまだ思い出したばかりで、記憶に残っていないことも多いから、未だに私が明るい人間だと言われても違和感があるの」
 苦笑して言えば、ジェシカは私の手を取った。
「それでも、お姉様があの頃の記憶を少しでも取り戻してくれて良かったです。お母様を亡くしたショックとお父様のせいで、お姉様は……」

 そういったジェシカは、今にも泣き出してしまいそうだ。私は彼女の手を握り返した。
「記憶が戻ったのは、さっき言った友達と、夫のおかげなの。彼女と夫と三人で話しているうちに、私達がかつて友達で、私とアンディは、将来を約束した仲だって思い出したの」
 私の言葉にジェシカは目を丸くさせた。
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