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再出発1
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イロナと別れたティナは、アウルムと歩きながらどこへ向かうか考える。
「うーん、栽培場所の候補を上げるなら……やっぱり山の中だよね」
「わふぅ!」
人の言葉がわかるらしいアウルムが、ティナの呟きに返事する。
尻尾を振りながらちょこちょこと歩くアウルムの姿はとても愛らしく、周りの通行人も微笑ましそうにアウルムを見ている。
「ふふっ、じゃあ、ちょっと遠いけどフラウエンロープに行こうか。すっごく大きな山があるんだって」
「わうっ? わふわふっ!!」
アウルムが嬉しそうに返事をする。ずっと森にいたであろうアウルムは、王都ブライトクロイツのような人が多い所より、自然が溢れる場所の方が過ごしやすいだろう。
「よし決まり! じゃあ、今日はもう少し歩いて、良さそうな宿があったら泊まろうね」
「わふわふ!!」
今までずっと、ティナのそばには誰かがいてくれた。だけど今日からティナは一人で冒険することになる。
きっと今は平気でも、ふとした時にひどく一人を寂しく思うかもしれない。
(アウルムがいてくれて本当に良かったな……)
ティナは嬉しそうに横を歩くアウルムを見る。
愛らしい姿にはとても癒されるし、自分の言葉にアウルムが反応を返してくれることが、今はとても有難い。
それからティナはこれからのことを考える。
(えーっと、とりあえずフラウエンロープへ行って、栽培場所を探して……。良さそうな場所がなかったら、イリンイーナへ行ってみようかな)
イリンイーナは両親と一緒に旅行したことがある国だ。クロンクヴィストやセーデルルンドとはまた違った文化圏の国で、見るもの全てが珍しかったと記憶している。
(イリンイーナで見たお月様は綺麗だったなぁ……まるで……ん? あれ?)
ティナは昔のことを思い出そうとして、ふと何かが気になった。思い出そうとした記憶とは違う、別の何かがあるような気がしたのだ。
(何かあったような気がするけど……ま、いっか! そのうち思い出すでしょ!)
気を取り直したティナは、そろそろ宿を取ろうと思い、周りを見渡した。
今ティナがいる場所は、王都ブライトクロイツの端にある街だ。
本来であれば、冒険者ギルドに行ってベルトルドに連絡を入れるところなのだが、もしトールが自分を探していたら、ギルド経由で居場所がバレるかもしれない──そう考えると、ギルドに足を向ける気になれなかったのだ。
とにかくトールと会いたくないティナは、トールがいるかもしれない王宮から、なるべく離れたルートでフラウエンロープへ向かおうと考えていた。
「うーん、どこの宿にしようかなぁ……。アウルムはどこが良いと思う?」
これからの旅のことを考えると、あまり高級な宿に泊まるのはやめた方がいいだろう。
総じて安い宿は防犯がゆるいが、ティナの結界が最強のセキュリティになるのだ。
快適な宿であれば、多少防犯対策が緩くても問題ない。
「清潔で料理が美味しい宿だったらどこでも良いんだけど……外観じゃわからないしなぁ」
クロンクヴィストに来るのが初めてなのと変わらないティナには、評判の良い店がどれなのか全くわからない。
もういっそ勘で選ぶか、とティナが思っていると、アウルムが「わふわふ!」と吠えて駆け出した。
「あっ! ちょっと、アウルム!」
ティナは慌ててアウルムを追いかけた。ここでアウルムを見失う訳にはいかないのだ。
そして角を曲がりアウルムが向かったのは、こぢんまりとした小さい建物で、かかっている看板を見ると宿屋のようだった。
「わふわふ!」
「え、もしかしてここに泊まりたいの?」
「わふぅ!」
アウルムがふりふりと尻尾を振り回している。その顔は何となく誇らしげで、目もキラキラと輝いている。
「うーん、栽培場所の候補を上げるなら……やっぱり山の中だよね」
「わふぅ!」
人の言葉がわかるらしいアウルムが、ティナの呟きに返事する。
尻尾を振りながらちょこちょこと歩くアウルムの姿はとても愛らしく、周りの通行人も微笑ましそうにアウルムを見ている。
「ふふっ、じゃあ、ちょっと遠いけどフラウエンロープに行こうか。すっごく大きな山があるんだって」
「わうっ? わふわふっ!!」
アウルムが嬉しそうに返事をする。ずっと森にいたであろうアウルムは、王都ブライトクロイツのような人が多い所より、自然が溢れる場所の方が過ごしやすいだろう。
「よし決まり! じゃあ、今日はもう少し歩いて、良さそうな宿があったら泊まろうね」
「わふわふ!!」
今までずっと、ティナのそばには誰かがいてくれた。だけど今日からティナは一人で冒険することになる。
きっと今は平気でも、ふとした時にひどく一人を寂しく思うかもしれない。
(アウルムがいてくれて本当に良かったな……)
ティナは嬉しそうに横を歩くアウルムを見る。
愛らしい姿にはとても癒されるし、自分の言葉にアウルムが反応を返してくれることが、今はとても有難い。
それからティナはこれからのことを考える。
(えーっと、とりあえずフラウエンロープへ行って、栽培場所を探して……。良さそうな場所がなかったら、イリンイーナへ行ってみようかな)
イリンイーナは両親と一緒に旅行したことがある国だ。クロンクヴィストやセーデルルンドとはまた違った文化圏の国で、見るもの全てが珍しかったと記憶している。
(イリンイーナで見たお月様は綺麗だったなぁ……まるで……ん? あれ?)
ティナは昔のことを思い出そうとして、ふと何かが気になった。思い出そうとした記憶とは違う、別の何かがあるような気がしたのだ。
(何かあったような気がするけど……ま、いっか! そのうち思い出すでしょ!)
気を取り直したティナは、そろそろ宿を取ろうと思い、周りを見渡した。
今ティナがいる場所は、王都ブライトクロイツの端にある街だ。
本来であれば、冒険者ギルドに行ってベルトルドに連絡を入れるところなのだが、もしトールが自分を探していたら、ギルド経由で居場所がバレるかもしれない──そう考えると、ギルドに足を向ける気になれなかったのだ。
とにかくトールと会いたくないティナは、トールがいるかもしれない王宮から、なるべく離れたルートでフラウエンロープへ向かおうと考えていた。
「うーん、どこの宿にしようかなぁ……。アウルムはどこが良いと思う?」
これからの旅のことを考えると、あまり高級な宿に泊まるのはやめた方がいいだろう。
総じて安い宿は防犯がゆるいが、ティナの結界が最強のセキュリティになるのだ。
快適な宿であれば、多少防犯対策が緩くても問題ない。
「清潔で料理が美味しい宿だったらどこでも良いんだけど……外観じゃわからないしなぁ」
クロンクヴィストに来るのが初めてなのと変わらないティナには、評判の良い店がどれなのか全くわからない。
もういっそ勘で選ぶか、とティナが思っていると、アウルムが「わふわふ!」と吠えて駆け出した。
「あっ! ちょっと、アウルム!」
ティナは慌ててアウルムを追いかけた。ここでアウルムを見失う訳にはいかないのだ。
そして角を曲がりアウルムが向かったのは、こぢんまりとした小さい建物で、かかっている看板を見ると宿屋のようだった。
「わふわふ!」
「え、もしかしてここに泊まりたいの?」
「わふぅ!」
アウルムがふりふりと尻尾を振り回している。その顔は何となく誇らしげで、目もキラキラと輝いている。
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