紅蓮の鬼神と華印の乙女〜神隠しにあった穢れモノの私が、最愛に出逢うまで〜

五城楼スケ(デコスケ)

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14 母の死の謎

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 お母様が陰陽省の重要人物で、あらゆる術式に守られていたと、西園寺さんが教えてくれた。
 でも私はお母様の死因が病気ではなく、呪いの類だったのではないかと思い至る。

 だって、人を守る術式には穢れた物から身を守ってくれるものや、無病息災を願うものもある。それなのに病気で亡くなるなんて怪しすぎる。

(どうしよう……西園寺さんに相談してみようかな……)

 西園寺さんはきっと、陰陽省でも偉い人なんじゃないかな、って思う。だけどとても公平な目で人を見ているから、私の話でもちゃんと聞いてくれるような……そんな気がする。

「あの、母の死因で気になることがあるんです。話を聞いていただいてもいいですか?」

 私は勇気を出して西園寺さんにお願いした。

「えっ、柚葉さんの死因、ですか? それは……」

 西園寺さんは少し驚いたような表情をすると、言葉を濁してしまう。

「……ここでは人目がありますから、良ければ私の馬車でお話を聞きましょう」

「っ、はい!」

 西園寺さんの様子に断られるものだとばかり思っていた私は、了承を得られてホッとする。

 そして西園寺さんと一緒に、彼が乗ってきたという立派な馬車が停まっているところまでやって来た。
 私は馬車に乗り込むと、西園寺さんと向かい合わせに座る。

「──では、先程の話を聞かせていただいてもよろしいですか? この馬車は防音の術式が掛けられていますから、どうぞご安心下さい」

「はい、実は──」

 そうして私は母が床に伏せてから、亡くなるまでを西園寺さんに説明した。
 ついさっきまで元気だったお母様が、みるみる内に衰弱していく様子も、すべて。

「ふーむ……。確かに琴葉さんの指摘通り、柚葉さんの容態は不自然ですね。そもそも柚葉さんに掛けられた術式には<無病息災>はもとより<無事息災>も含まれていたはずです。ですから病気や事故で亡くなることはないはずです」

「……と、言うことは、やっぱり母が病死したというのはおかしいのですね……」

 病気だけでなく、災害などすべての災いがないように、と術式で守られていたにも関わらず、衰弱していったお母様……。

 ──一体、お母様に何が起こっていたのだろう……?

「柚葉さんの訃報には陰陽省も衝撃を受けていました。特に柚葉さんに関わったことがある人間ほどショックだったと思います」

「え、そうなのですか? お母様がみなさんに慕われていたならすごく嬉しいです」 

「はい、真っ直ぐな心根で優しく美しい柚葉さんは、皆に好かれていましたね。それに彼女は陰陽五摂家や陰陽七清華家から婚姻を結びたい、と請われるほどの方だったのですよ」

 私は西園寺さんの言葉に驚いた。
 陰陽五摂家を筆頭に陰陽七清華家などの家門は、日ノ本國の社会の中でも最上位の家格を有している。

 お母様がそんな高貴な方々から求婚されるほどだったなんて、思いもしなかった。

「あやかしにも優しく接していらっしゃいましたしね、良くあやかしたちに懐かれていましたよ」

「え、あやかし、ですか?」

 話には聞いていたけれど、私はまだあやかしを見たことがない。
 人とは違う姿をしているあやかしもいれば、美しい人の姿をしているあやかしもいるらしいので、一度見てみたいと思っていたけれど。

「ああ、天花寺家はあやかしを使役しない家門ですから、琴葉さんはご覧になったことがないのですね。それにこの一体にはあやかしが入ってこられないように結界が張られていますから、尚更でしょう」 

 話を聞いていると、他の家門と違って天花寺家はあやかしを避けているように感じるのだけれど、気のせいかな……?

「それでも結界は万能では有りませんからね。結界の隙や綻びを見付けて侵入する輩もいますから、くれぐれも油断なされませんよう、お気をつけ下さい」

 私は西園寺さんの話を聞いて、塀が崩れていたのを思い出す。
 私が神隠しに遭った後、あの塀は修復されたけれど、他にもそんな場所があるかもしれない。

「あの、結界に穴が空いていた場合、どうやって修復すれば良いのでしょうか。お恥ずかしながら、私は何も知らなくて……」

 本当なら当主だったお母様に教えてもらうべき事柄なのだろうけど、もうすでにお母様はこの世にいない。お父様は婿養子だし、そもそも霊力を持っていない普通の人だから知らないと思う。

「え、術式を知らない? そんなはずは……。各家門には陰陽省から権博士ごんのはくじが赴任しているはずです。……そう言えば、屋敷内には陰陽史生おんようのししょうの姿もありませんでしたね」

 西園寺さんに教えてもらったことによると、権博士は先生のような役職で、家門の後継者を教育する役割を担っているそうで、陰陽史生は権博士を補佐する人のことだそうだ。

「……あ。以前はそんな人たちがいて私に学問を教えてくれていました。お母様が亡くなった時、昔から働いてくれた使用人たちと一緒に解雇されたのかもしれません」

「権博士たちを解雇……? そんな話は聞いたことが有りませんね。私と管轄が違いますから時間がかかるかもしれませんが、陰陽省に戻り次第その件を調べてみましょう」

「有難うございます、どうぞよろしくお願いします!」

 それから私は西園寺さんに何度もお礼を言って、帝都に戻る馬車を見送った。

 今日一日でたくさんのことを知った私の頭は、情報がいっぱいで破裂しそう。

 ──だけど新たに知った事実に、私はお母様の死について真実を明かしたい、と強く思った。
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