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第三章 偽りの婚約者
偽りの婚約者
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「良いところへ来た。
これから呼びに行こうとしていたところだ」
「お久しぶりですね、レイヴ。
この度はあなた方に大変な迷惑をかけましたが、まぁ何でも屋だからこんなことは当たり前よね?
さぁ、お掛けになって」
メイルとアーサーの正面に座ると、もはや婚約者という形ですらない感じを覚え、少し肩の荷が降りたような気もした。
「結局のところ、どうなったんだ?
ディバイルの件やオレ達の今後について」
「それについては、わたくしからお話しましょう。
まずディバイルのことですが、わたくしも衝撃的で。
結果については急死ということで、今までこの国を支えてくれた栄誉を傷つけないよう、心掛けたつもりですわ」
「私の一時の感情とはいえ、皆の前で叛逆者扱いするのもどうかと話し合った結果だ」
二人の恋路だけではなく、国の在り方をも左右してきたのは言わば影の支配者とも取れる存在ではあったが、それも国の為ならば一概に叛逆者とも呼べないとは思う。
「あぁ、それがいいかと思うよ。
最期に二人が仲の良い昔のままだったのを知って、予言に従っていたのは間違いだったかも、と言っていたしな」
「そう、でしたか。
わたくしがもっと悩んで相談していたらと思うと、悔やんでも悔やみきれないわ……」
「メイル……もういい、もう泣かなくて」
女王としての立場と、前王の遺言を背負っていたメイルにとっては、好きな相手だとしても気軽には相談など出来なかったのだろう。
そんなメイルの心情を察し、これ以上悲観しないように言葉をかけた。
「結果としてこうなったが、行動次第ではアーサーが犠牲になっていた結果だったかも知れないし、ディバイルも予言は絶対だと疑いもしなかったかも知れない。
だからあまり自分を責めるな」
そう、たった一つの言動で運命の歯車は早々と動き出してしまう。故に、何が原因なのかは結果を知り初めて分かり得ることだ。
それを嘆いていたら前には進めなくなってしまう。
「えぇ、ごめんなさい。
えっと、何の話でしたかしら?
そうそう、貴方達の事ね。
依頼は達成出来たとして、それなりの報酬はさせてもらうわ。
それから、ゆっくりしていっていいわよ、と言いたいところだけど、偽りの婚約を解消しなければならないから、城の中をウロウロされたら困るのよね」
発表しない限り傍から見ると、婚約者のままで皆が気を使うと言いたいのだろう。
「その点なら明日にでも出て行って構わないさ。
ならこれで依頼完了ってことでいいかな?
本来なら重要な情報を隠してたってことで、追加報酬でも欲しいところ……。
そうだ!
追加報酬は貰えないか?」
「なによ、いきなり。
確かにアーサーとの仲を隠してたけど、それほど重要かしら。
まぁいいわ。
何か欲しい物があるなら言って見なさい」
「欲しい物があるじゃなく、欲しい者がいる、なんだが。
宴の時に歌っていた女性、あの人を連れて行きたいんだが」
「なに?
結局あなたも惚れたの?
男ってこれだから」
「違う違う。
魔力を発していたのに魔者じゃないとしたら、亜人と繋がりがあるかも知れない。
そうなるとミィが亜人界に帰れる手掛かりを、手に入れる可能性が高くなると考えてね。
どうだろう?」
「少し惜しいけど、まぁ、本人次第ね。
一緒に行くと言うなら連れて行っていいわ。
あの子、亜人界に帰っちゃうの?
ふうん。
ホントかしら、ね」
いぶかしげな表情で見つめてくるが、何も疑われるようなことは言ってないが。
「それから、最後にもう一つ。
って、露骨に嫌な顔するなよ。
闘技祭で最初に闘った相手なんだが、騎士が無理なら兵士にでもしてやって欲しいんだ」
「何故負けた者が国に仕えると?」
さすがにこの話題には、騎士としてアーサーが首を突っ込んでくる。
闘いの最中に感じたこと、話したことを告げると、視線を下にずらし考え込んでいる様子だった。
「そうか。
そのような純粋な気持ちで騎士になりたい者もいたのだな。
ならば、兵士にすることは約束しよう。
今後へ繋げる為の試訴としてだがな」
「それでも構わないさ。
オレからの頼みもこれで終わりだ。
あとは明日、呼びにさえ来てくれれば出れるようにしておくよ」
「今日までありがとう、レイヴ」
部屋を出ようと立ち上がったところでふいにメイルが顔を近づけ、頬へと軽く口づけをしてきた。
「これは、単なるお礼よ。
依頼とは別に楽しませてもらったから。
でも、あの子には内緒よ。
言わないほうが、あなたの身の為よ」
メイルらしい冗談に笑って済ませたが、多分、本当に危うくなるだろう。
「っと。
アーサー、少し聞きたいことがあるんだ。
男同士のな」
「別に構わないが。
すぐに戻る」
メイルの自室から少し離れたところで、気になっていたことを口にした。
「立ち話で悪いんだが、あの暗殺者のことについて聞きたかったんだ。
メイルには言ってないんだろ?
このことは」
「その話か。
言っていないな、余計に拗れさせたくなかったからな」
「だと思ったさ。
あの子のことで何か知ってることはないのか?
出身地とか」
「知ってどうする?
復讐にでも行くのか?」
「そんなことはしないさ。
ただ、気になってるだけで、機会があるなら暗殺を止めさせたいってだけの話さ」
「あの暗殺者は、ちょっと特殊でな。
ここからそう遠くない街、我が国と隣国カサレリアの国境に位置するドミニオンに行き、大聖堂にて懺悔を行う際に天に召されたがっている者がいることを告げた後、大司教の質疑に答えればよい」
「そこが、仲介になっているのか。
知っているのはそれだけか?」
「ああ、それだけだ。
あそこはカサレリアの中にある自治領。
我々の目の行き届かないことなど山ほどある」
「そうか。
それだけでも充分な情報だ」
「ならばよいが。
今回のことでは色々と世話になった。
皆にも宜しく伝えておいてくれ」
ドミニオンという街か。
予言者の手掛かりがない以上、立ち寄って探ってみるのも悪くないだろうが、相手は暗殺の天才だ。
皆を危険に晒すことも出来るなら避けたい。
アーサーとも別れミィ達の部屋へ入ると、宴にいた歌姫の姿もあった。
「どうしてここに?」
「何も心配いらないにゃ。
向こうの部屋が狭かったから、こっちの部屋に来てもらってたにゃ」
ミィの言葉だけでは魔者なのか判断が出来たのか疑わしく、ルニに目を向けると大きく頷き笑顔で答えを出してくれた。
「そうか。
オレにも紹介してくれないか?」
「彼女はティティリア。
愛称はティティ、にゃ」
「愛称?
勝手に呼び名まで付けたのか?」
「別に呼びやすい方がいいにゃ。
ティティも気に入ってくれてるにゃ。
ねっ!」
言われて全員が顔を向けると、照れた様子でもじもじしていた。
「は、はい。
とても可愛いお名前を付けて下さって。
すごく気に入っております」
歌声と違って暖かみがある声と喋り方に違和感を感じてしまうが、魔力を使わずして足るほどの魅力はあるように感じる。
それは声だけではなく、美しい容姿も相俟ってのことであろう男性を虜にするには十分過ぎる程だ。
「なら、いいが。
ティティにちょっと相談があるんだが、いいかい?」
「はい、何でしょう?」
「オレ達と一緒に来てくれないか?
長い旅になるかもなんだが」
「わたくしが旅に?
わたくしは、歌うことしか出来ません。
ですので、旅に出ても足手まといにしかなりません。
このお城にいるのが、どなたにもご迷惑をおかけせずに過ごせると思っておりますが。
それに女王様の婚約者様が旅に出られるのですか?」
「そのことは後で詳しく話すさ。
それよりもティティに来て欲しいんだ。
歌うことだけでいい。
その力がミィを助けることになるかも知れないから。
その為には一緒に旅に出て欲しいんだ」
「ミィさんを助ける?
わたくしの歌で?
わたくしにそんな力は……」
「いいんだ、ティティ。
ついてきてくれ」
「私もティティと一緒に旅をしたいな。
歌、教えてくれないかな?」
「でも、女王様が何と言いますか」
引っ込み思案で歯がゆいが、決して一緒に行きたくないのではなく単に不安があるだけなのだろう。
「そこはもうメイルから、本人に任せると聞いてあるよ。
だから、君の気持ち次第だ」
「そう、ですか。
ミィさんを助ける、わたくしの歌で……。
わかりました、行きましょう」
悩んだ末、気持ちに変化が出たのか快諾してくれた。
「やったぁ!
わたしにも歌、教えて欲しいにゃ!」
ティティがついて来てくれることを、全員が喜び暖かく迎え入れてくれている。その様子に心が和み、ここでやるべきことは全て終わったと肩の力が抜けていく。
「それじゃあ、明日城をでるから、今日中に準備しておいてくれ。
さすがに今日はゆっくり過ごさせてもらうよ」
「わかったにゃ。
また明日からの旅に備えておくにゃ。
また明日にゃぁ」
これから呼びに行こうとしていたところだ」
「お久しぶりですね、レイヴ。
この度はあなた方に大変な迷惑をかけましたが、まぁ何でも屋だからこんなことは当たり前よね?
さぁ、お掛けになって」
メイルとアーサーの正面に座ると、もはや婚約者という形ですらない感じを覚え、少し肩の荷が降りたような気もした。
「結局のところ、どうなったんだ?
ディバイルの件やオレ達の今後について」
「それについては、わたくしからお話しましょう。
まずディバイルのことですが、わたくしも衝撃的で。
結果については急死ということで、今までこの国を支えてくれた栄誉を傷つけないよう、心掛けたつもりですわ」
「私の一時の感情とはいえ、皆の前で叛逆者扱いするのもどうかと話し合った結果だ」
二人の恋路だけではなく、国の在り方をも左右してきたのは言わば影の支配者とも取れる存在ではあったが、それも国の為ならば一概に叛逆者とも呼べないとは思う。
「あぁ、それがいいかと思うよ。
最期に二人が仲の良い昔のままだったのを知って、予言に従っていたのは間違いだったかも、と言っていたしな」
「そう、でしたか。
わたくしがもっと悩んで相談していたらと思うと、悔やんでも悔やみきれないわ……」
「メイル……もういい、もう泣かなくて」
女王としての立場と、前王の遺言を背負っていたメイルにとっては、好きな相手だとしても気軽には相談など出来なかったのだろう。
そんなメイルの心情を察し、これ以上悲観しないように言葉をかけた。
「結果としてこうなったが、行動次第ではアーサーが犠牲になっていた結果だったかも知れないし、ディバイルも予言は絶対だと疑いもしなかったかも知れない。
だからあまり自分を責めるな」
そう、たった一つの言動で運命の歯車は早々と動き出してしまう。故に、何が原因なのかは結果を知り初めて分かり得ることだ。
それを嘆いていたら前には進めなくなってしまう。
「えぇ、ごめんなさい。
えっと、何の話でしたかしら?
そうそう、貴方達の事ね。
依頼は達成出来たとして、それなりの報酬はさせてもらうわ。
それから、ゆっくりしていっていいわよ、と言いたいところだけど、偽りの婚約を解消しなければならないから、城の中をウロウロされたら困るのよね」
発表しない限り傍から見ると、婚約者のままで皆が気を使うと言いたいのだろう。
「その点なら明日にでも出て行って構わないさ。
ならこれで依頼完了ってことでいいかな?
本来なら重要な情報を隠してたってことで、追加報酬でも欲しいところ……。
そうだ!
追加報酬は貰えないか?」
「なによ、いきなり。
確かにアーサーとの仲を隠してたけど、それほど重要かしら。
まぁいいわ。
何か欲しい物があるなら言って見なさい」
「欲しい物があるじゃなく、欲しい者がいる、なんだが。
宴の時に歌っていた女性、あの人を連れて行きたいんだが」
「なに?
結局あなたも惚れたの?
男ってこれだから」
「違う違う。
魔力を発していたのに魔者じゃないとしたら、亜人と繋がりがあるかも知れない。
そうなるとミィが亜人界に帰れる手掛かりを、手に入れる可能性が高くなると考えてね。
どうだろう?」
「少し惜しいけど、まぁ、本人次第ね。
一緒に行くと言うなら連れて行っていいわ。
あの子、亜人界に帰っちゃうの?
ふうん。
ホントかしら、ね」
いぶかしげな表情で見つめてくるが、何も疑われるようなことは言ってないが。
「それから、最後にもう一つ。
って、露骨に嫌な顔するなよ。
闘技祭で最初に闘った相手なんだが、騎士が無理なら兵士にでもしてやって欲しいんだ」
「何故負けた者が国に仕えると?」
さすがにこの話題には、騎士としてアーサーが首を突っ込んでくる。
闘いの最中に感じたこと、話したことを告げると、視線を下にずらし考え込んでいる様子だった。
「そうか。
そのような純粋な気持ちで騎士になりたい者もいたのだな。
ならば、兵士にすることは約束しよう。
今後へ繋げる為の試訴としてだがな」
「それでも構わないさ。
オレからの頼みもこれで終わりだ。
あとは明日、呼びにさえ来てくれれば出れるようにしておくよ」
「今日までありがとう、レイヴ」
部屋を出ようと立ち上がったところでふいにメイルが顔を近づけ、頬へと軽く口づけをしてきた。
「これは、単なるお礼よ。
依頼とは別に楽しませてもらったから。
でも、あの子には内緒よ。
言わないほうが、あなたの身の為よ」
メイルらしい冗談に笑って済ませたが、多分、本当に危うくなるだろう。
「っと。
アーサー、少し聞きたいことがあるんだ。
男同士のな」
「別に構わないが。
すぐに戻る」
メイルの自室から少し離れたところで、気になっていたことを口にした。
「立ち話で悪いんだが、あの暗殺者のことについて聞きたかったんだ。
メイルには言ってないんだろ?
このことは」
「その話か。
言っていないな、余計に拗れさせたくなかったからな」
「だと思ったさ。
あの子のことで何か知ってることはないのか?
出身地とか」
「知ってどうする?
復讐にでも行くのか?」
「そんなことはしないさ。
ただ、気になってるだけで、機会があるなら暗殺を止めさせたいってだけの話さ」
「あの暗殺者は、ちょっと特殊でな。
ここからそう遠くない街、我が国と隣国カサレリアの国境に位置するドミニオンに行き、大聖堂にて懺悔を行う際に天に召されたがっている者がいることを告げた後、大司教の質疑に答えればよい」
「そこが、仲介になっているのか。
知っているのはそれだけか?」
「ああ、それだけだ。
あそこはカサレリアの中にある自治領。
我々の目の行き届かないことなど山ほどある」
「そうか。
それだけでも充分な情報だ」
「ならばよいが。
今回のことでは色々と世話になった。
皆にも宜しく伝えておいてくれ」
ドミニオンという街か。
予言者の手掛かりがない以上、立ち寄って探ってみるのも悪くないだろうが、相手は暗殺の天才だ。
皆を危険に晒すことも出来るなら避けたい。
アーサーとも別れミィ達の部屋へ入ると、宴にいた歌姫の姿もあった。
「どうしてここに?」
「何も心配いらないにゃ。
向こうの部屋が狭かったから、こっちの部屋に来てもらってたにゃ」
ミィの言葉だけでは魔者なのか判断が出来たのか疑わしく、ルニに目を向けると大きく頷き笑顔で答えを出してくれた。
「そうか。
オレにも紹介してくれないか?」
「彼女はティティリア。
愛称はティティ、にゃ」
「愛称?
勝手に呼び名まで付けたのか?」
「別に呼びやすい方がいいにゃ。
ティティも気に入ってくれてるにゃ。
ねっ!」
言われて全員が顔を向けると、照れた様子でもじもじしていた。
「は、はい。
とても可愛いお名前を付けて下さって。
すごく気に入っております」
歌声と違って暖かみがある声と喋り方に違和感を感じてしまうが、魔力を使わずして足るほどの魅力はあるように感じる。
それは声だけではなく、美しい容姿も相俟ってのことであろう男性を虜にするには十分過ぎる程だ。
「なら、いいが。
ティティにちょっと相談があるんだが、いいかい?」
「はい、何でしょう?」
「オレ達と一緒に来てくれないか?
長い旅になるかもなんだが」
「わたくしが旅に?
わたくしは、歌うことしか出来ません。
ですので、旅に出ても足手まといにしかなりません。
このお城にいるのが、どなたにもご迷惑をおかけせずに過ごせると思っておりますが。
それに女王様の婚約者様が旅に出られるのですか?」
「そのことは後で詳しく話すさ。
それよりもティティに来て欲しいんだ。
歌うことだけでいい。
その力がミィを助けることになるかも知れないから。
その為には一緒に旅に出て欲しいんだ」
「ミィさんを助ける?
わたくしの歌で?
わたくしにそんな力は……」
「いいんだ、ティティ。
ついてきてくれ」
「私もティティと一緒に旅をしたいな。
歌、教えてくれないかな?」
「でも、女王様が何と言いますか」
引っ込み思案で歯がゆいが、決して一緒に行きたくないのではなく単に不安があるだけなのだろう。
「そこはもうメイルから、本人に任せると聞いてあるよ。
だから、君の気持ち次第だ」
「そう、ですか。
ミィさんを助ける、わたくしの歌で……。
わかりました、行きましょう」
悩んだ末、気持ちに変化が出たのか快諾してくれた。
「やったぁ!
わたしにも歌、教えて欲しいにゃ!」
ティティがついて来てくれることを、全員が喜び暖かく迎え入れてくれている。その様子に心が和み、ここでやるべきことは全て終わったと肩の力が抜けていく。
「それじゃあ、明日城をでるから、今日中に準備しておいてくれ。
さすがに今日はゆっくり過ごさせてもらうよ」
「わかったにゃ。
また明日からの旅に備えておくにゃ。
また明日にゃぁ」
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