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ルシア12歳、今私にできる事
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婚約披露の儀。
この貴族社会では、ほぼ結婚披露宴と同義で扱われる。
何故ならこの世界、交際期間は何股でもかけ放題だが、婚約はほぼ結婚と同義で扱われるという不思議な風習がある。
おそらくゲームで言う「逆ハーエンディング」を作るために無理に作った設定なのだろう。
結婚式は神に誓うための儀式のため、結婚披露宴は存在せず、婚約披露の儀で貴族社会に広く結婚相手を知らしめる。
婚約披露の儀から結婚式までの期間は、婚約の字の通り「結婚の約束を完了したので、神様に結婚相手を報告する準備のために設けられた期間」なのだ。
ただし、珍しいケースではあるが政治的なバランスや身分の問題などで親や本人同士で正式に決まっている場合でも、理由があって婚約を公にできない場合もある。
私の場合は第2王子ということで婚約者候補が複数いてもおかしくないことと、お父様が「祠を得て」陞爵することで身分をもう少しなんとかしたい、という2つの状態が重なっているため、婚約者候補として見せておく、ということだろう。
…王宮とはきっと、マテオ男爵家の祠を「譲り受け」陞爵することで合意ができたのだ。
しかし、それは13歳の秋、婚約披露の儀を準備している真っ最中の我が家にある一報が入ることで簡単にひっくり返る。
その一報こそが、世渡り人カレンの登場なのだ。
「明後日、王宮に挨拶に向かう。心して支度しておけ。」
「かしこまりました。」
父との会話はそれで終わり、自室へと戻る。
明後日の挨拶というのは、後にアレクス王子の口を通して「初対面から嫌な感じの女だったのだ。冷酷にこちらを眺めてにやりと笑い、こちらを政治の道具としてしか見ていない親子だった」と言わしめる、最悪の出会いだろう。
人間、初対面の第一印象だけで8割が決まる、と言われているほどだ。
きっとゲームの中の私は、その印象を挽回できなかったからこそカレンにアレクス王子を奪われたのだろう。
第一印象を変えておくことは現状でできる最重要課題であることは間違いないはず。
…とはいえ、ここで一つの問題がある。
「…きっと、この顔よね。」
自室に戻った私は鏡の前で精いっぱい「優し気に」「にっこり」「微笑んで」みる。
そこには両サイドにヘーゼル色に近い金のツインドリルを生やし、きつそうに見える翡翠色の吊り目を眇め、ぷっくりとつややかなバラ色に彩られた唇の端を片方だけ吊り上げてニヤリとした、The悪役令嬢がこちらを見ていた。
ダリオお兄様にもお父様にもそっくりだ。
繰り返すが、挨拶は明後日。
…せめて、言葉遣いと話す内容だけでも気を付けようと心に誓った。
この貴族社会では、ほぼ結婚披露宴と同義で扱われる。
何故ならこの世界、交際期間は何股でもかけ放題だが、婚約はほぼ結婚と同義で扱われるという不思議な風習がある。
おそらくゲームで言う「逆ハーエンディング」を作るために無理に作った設定なのだろう。
結婚式は神に誓うための儀式のため、結婚披露宴は存在せず、婚約披露の儀で貴族社会に広く結婚相手を知らしめる。
婚約披露の儀から結婚式までの期間は、婚約の字の通り「結婚の約束を完了したので、神様に結婚相手を報告する準備のために設けられた期間」なのだ。
ただし、珍しいケースではあるが政治的なバランスや身分の問題などで親や本人同士で正式に決まっている場合でも、理由があって婚約を公にできない場合もある。
私の場合は第2王子ということで婚約者候補が複数いてもおかしくないことと、お父様が「祠を得て」陞爵することで身分をもう少しなんとかしたい、という2つの状態が重なっているため、婚約者候補として見せておく、ということだろう。
…王宮とはきっと、マテオ男爵家の祠を「譲り受け」陞爵することで合意ができたのだ。
しかし、それは13歳の秋、婚約披露の儀を準備している真っ最中の我が家にある一報が入ることで簡単にひっくり返る。
その一報こそが、世渡り人カレンの登場なのだ。
「明後日、王宮に挨拶に向かう。心して支度しておけ。」
「かしこまりました。」
父との会話はそれで終わり、自室へと戻る。
明後日の挨拶というのは、後にアレクス王子の口を通して「初対面から嫌な感じの女だったのだ。冷酷にこちらを眺めてにやりと笑い、こちらを政治の道具としてしか見ていない親子だった」と言わしめる、最悪の出会いだろう。
人間、初対面の第一印象だけで8割が決まる、と言われているほどだ。
きっとゲームの中の私は、その印象を挽回できなかったからこそカレンにアレクス王子を奪われたのだろう。
第一印象を変えておくことは現状でできる最重要課題であることは間違いないはず。
…とはいえ、ここで一つの問題がある。
「…きっと、この顔よね。」
自室に戻った私は鏡の前で精いっぱい「優し気に」「にっこり」「微笑んで」みる。
そこには両サイドにヘーゼル色に近い金のツインドリルを生やし、きつそうに見える翡翠色の吊り目を眇め、ぷっくりとつややかなバラ色に彩られた唇の端を片方だけ吊り上げてニヤリとした、The悪役令嬢がこちらを見ていた。
ダリオお兄様にもお父様にもそっくりだ。
繰り返すが、挨拶は明後日。
…せめて、言葉遣いと話す内容だけでも気を付けようと心に誓った。
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