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夏の予定と想定外の火曜日
しおりを挟むいつものように、仕事帰りの鈴羽がうちのリビングで、会社の同僚にはとてもではないが見せれないような姿で寛いでいる。
暑くなってきたので今日の鈴羽は、ショートパンツにTシャツだ。スラリとした綺麗な足を惜しげもなく見せてくれる。
「もう7月だね~夏休みって皐月君は何するの?」
「そうだね、夏期講習があるし、あとはバイトかな?出来れば車の免許を取りたいかな」
「学生さんは大変だね~」
「鈴羽は?ずっと仕事なの?」
夏休みに入ると、僕の予定は結構余裕のあるものになる。先日から僕等は夏休みになったら2人で旅行をする計画を考えていた。
「平常通りだよ。あっお盆はお休みかな。あとは・・・皐月君とお出かけ」
「僕は鈴羽の休みに合わせるからね」
えへへ、と鈴羽が絡みついてくるので、よしよしと頭を撫でる。
2人でいるときの鈴羽は、すごく甘えてくる。もう密着具合が大変なことになってくる。
我慢できなくなりそうだが、そういうことは朝まで一緒にいれる日にってことでお預け中だ。
「皐月君はお盆に実家に帰ったりしないの?」
「うん。高校入ってから帰ってないし、両親も帰ってこいって言わないから。今年も帰らないね」
「ご両親、会いたいとかは?」
「特にないね」
少し険のある言い方になってしまったのか、鈴羽が悲しそうに俯いてしまった。
僕は肩を抱き寄せながら、仲が悪いとかじゃなくて、ちょっと居心地がね。と以前にも話した理由を言う。
「ずっと帰らないわけでもないんだし、鈴羽が
気に病むことでもないよ」
僕は努めて明るく言った。
決して帰りたくないってわけじゃないんだけどね。
どうも実家に僕の居場所がないっていうか、両親はそんなつもりはないのかもしれないけど、やっぱり居づらいんだよね。
「それより、鈴羽はいつ頃まとめて休むつもりなの?」
「えっ、えっとね、多分8月の末くらいなると思うよ。1週間とかは無理だけど3~4日は大丈夫」
「じゃあ僕もそのあたりは予定入れないでおくね。バイトも前半に頑張っておくよ」
「うん。どこに行くかは考えておくね。楽しみにしててね」
大丈夫。言われなくても楽しみだから。
「あっ、そういえばすっかり忘れてたけど、皐月君のお友達君に紹介する件、梓ちゃんも杏奈ちゃんもOKだって。」
「おっ、リョータが喜ぶなぁ」
「仕事帰りにでもご飯食べに行きましょうって言ってたから近いうちに日にち決めるね」
「今月中になりそうかな?」
「う~ん、8月入ってからかな。梓ちゃん達の都合聞いとくね」
夕食後、まったりと寛いでから鈴羽を見送る。
玄関のドアの前で、わかれを惜しんでからね。
鈴羽が帰ったあと、1人部屋にいると妙に広く感じられる。
ほぼ毎日、来てるからなぁ。晩御飯も一緒が当たり前みたいになってきたし、鈴羽の荷物も増えたよなぁ。
ソファに横になってそんな事を考えていると
「~~~♪」
「ん?誰だろ?鈴羽かな?」
スマホが着信を知らせる。
表示された名前は、母だった。
「ふぅ」
僕は何故だか身構えて電話に出る。
「もしもし、母さん?どうしたの?珍しい」
「あっ、お兄ちゃん?緋莉です!パパが、パパが倒れたの!でね、ママがお兄ちゃんに連絡してって!お兄ちゃん帰って来れる?」
電話の向こうからは、母ではなく妹の緋莉が早口でまくしたててくる。
「父さんが倒れた?」
緋莉を落ち着かせて話を聞いたところ、大事には至っていないらしいが、用心の為しばらくは入院することになったらしい。
帰ることを約束して電話を切る。
大したことはないらしいが、父さんも心配だし一度帰ることにするか。
僕は思わぬ事態で実家に帰ることになった。
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