水曜日の彼女

揣 仁希

文字の大きさ
18 / 39

夏の予定と想定外の火曜日

しおりを挟む


いつものように、仕事帰りの鈴羽がうちのリビングで、会社の同僚にはとてもではないが見せれないような姿で寛いでいる。

暑くなってきたので今日の鈴羽は、ショートパンツにTシャツだ。スラリとした綺麗な足を惜しげもなく見せてくれる。


「もう7月だね~夏休みって皐月君は何するの?」
「そうだね、夏期講習があるし、あとはバイトかな?出来れば車の免許を取りたいかな」
「学生さんは大変だね~」
「鈴羽は?ずっと仕事なの?」
夏休みに入ると、僕の予定は結構余裕のあるものになる。先日から僕等は夏休みになったら2人で旅行をする計画を考えていた。

「平常通りだよ。あっお盆はお休みかな。あとは・・・皐月君とお出かけ」
「僕は鈴羽の休みに合わせるからね」
えへへ、と鈴羽が絡みついてくるので、よしよしと頭を撫でる。
2人でいるときの鈴羽は、すごく甘えてくる。もう密着具合が大変なことになってくる。
我慢できなくなりそうだが、そういうことは朝まで一緒にいれる日にってことでお預け中だ。

「皐月君はお盆に実家に帰ったりしないの?」
「うん。高校入ってから帰ってないし、両親も帰ってこいって言わないから。今年も帰らないね」
「ご両親、会いたいとかは?」
「特にないね」
少し険のある言い方になってしまったのか、鈴羽が悲しそうに俯いてしまった。
僕は肩を抱き寄せながら、仲が悪いとかじゃなくて、ちょっと居心地がね。と以前にも話した理由を言う。

「ずっと帰らないわけでもないんだし、鈴羽が
気に病むことでもないよ」
僕は努めて明るく言った。

決して帰りたくないってわけじゃないんだけどね。
どうも実家に僕の居場所がないっていうか、両親はそんなつもりはないのかもしれないけど、やっぱり居づらいんだよね。

「それより、鈴羽はいつ頃まとめて休むつもりなの?」
「えっ、えっとね、多分8月の末くらいなると思うよ。1週間とかは無理だけど3~4日は大丈夫」
「じゃあ僕もそのあたりは予定入れないでおくね。バイトも前半に頑張っておくよ」
「うん。どこに行くかは考えておくね。楽しみにしててね」
大丈夫。言われなくても楽しみだから。

「あっ、そういえばすっかり忘れてたけど、皐月君のお友達君に紹介する件、梓ちゃんも杏奈ちゃんもOKだって。」
「おっ、リョータが喜ぶなぁ」
「仕事帰りにでもご飯食べに行きましょうって言ってたから近いうちに日にち決めるね」
「今月中になりそうかな?」
「う~ん、8月入ってからかな。梓ちゃん達の都合聞いとくね」



夕食後、まったりと寛いでから鈴羽を見送る。
玄関のドアの前で、わかれを惜しんでからね。


鈴羽が帰ったあと、1人部屋にいると妙に広く感じられる。
ほぼ毎日、来てるからなぁ。晩御飯も一緒が当たり前みたいになってきたし、鈴羽の荷物も増えたよなぁ。
ソファに横になってそんな事を考えていると

「~~~♪」

「ん?誰だろ?鈴羽かな?」
スマホが着信を知らせる。
表示された名前は、母だった。

「ふぅ」
僕は何故だか身構えて電話に出る。

「もしもし、母さん?どうしたの?珍しい」
「あっ、お兄ちゃん?緋莉あかりです!パパが、パパが倒れたの!でね、ママがお兄ちゃんに連絡してって!お兄ちゃん帰って来れる?」
電話の向こうからは、母ではなく妹の緋莉が早口でまくしたててくる。
「父さんが倒れた?」


緋莉を落ち着かせて話を聞いたところ、大事には至っていないらしいが、用心の為しばらくは入院することになったらしい。

帰ることを約束して電話を切る。

大したことはないらしいが、父さんも心配だし一度帰ることにするか。

僕は思わぬ事態で実家に帰ることになった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

フローライト

藤谷 郁
恋愛
彩子(さいこ)は恋愛経験のない24歳。 ある日、友人の婚約話をきっかけに自分の未来を考えるようになる。 結婚するのか、それとも独身で過ごすのか? 「……そもそも私に、恋愛なんてできるのかな」 そんな時、伯母が見合い話を持ってきた。 写真を見れば、スーツを着た青年が、穏やかに微笑んでいる。 「趣味はこうぶつ?」 釣書を見ながら迷う彩子だが、不思議と、その青年には会いたいと思うのだった… ※他サイトにも掲載

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...