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訪問者の受難
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リリスの自室。
そこにはカテリーナの使い魔が赤い光球に封じ込められていた。
その状況を理解出来ず立ち尽くしていたリリスだが、ふと我に返って周りを見渡すと、ベッドの傍にはサラが倒れていた。
サラの傍に駆け寄り精査すると、サラは魔力切れで意識を失っているのが分かった。
そのサラの手に小さな魔道具が握られている。
黒く焼け焦げたような魔道具だが、その形状から考えると手鏡だ。
何故こんなものが・・・・・。
不思議に思いながらもサラを起こそうとしていると、不意に部屋の片隅に二つの球状の闇が現われた。
闇の転移だ。
誰?
リリスの表情に緊張が走る。
ハンナの使い魔のカラスも空中に飛び上がり、警戒をあらわにした。
だが、その気配が既知の人物であると直ぐに分かったので、警戒を解いた。
闇の転移で現れたのは紫のガーゴイルと紫のフクロウ・・・それはユリアスとラダムの使い魔である。
「驚かしてすまんな、リリス。だが緊急事態だ。」
紫のガーゴイルの言葉が終わらぬうちに、紫のフクロウがサラの傍に近付いた。
フクロウはサラの身体を精査し、ふうっと大きく溜息をついた。
「サラは大丈夫か?」
ガーゴイルの言葉にフクロウは、
「ああ、大丈夫だ。魔力切れで意識を失っているだけの様だ。」
そう言ってサラの掴んでいる魔道具を見つめた。
その見つめる目が異様に大きくなり、その気持ちを代弁しているのが分かる。
「これは・・・儂がサラに持たせた魔道具ではないか。どうしてこんな風に焼け焦げているんだ?」
紫のフクロウは首を傾げ、改めてリリスとサラの部屋のリビングにある赤い光球に目を向けた。
「リリス、この状況は何なのだ?」
紫のガーゴイルの言葉にリリスは無言で首を横に振った。
「私にも分からないんです。部屋に帰ってきたらこの状況で。」
リリスの言葉に紫のガーゴイルも紫のフクロウも、う~んと唸って黙り込んだ。
その様子を見ながら、小さなカラスがリリスの傍に近付いた。
「あのう、リリス様。この二体の使い魔はどなたですか?」
ああ、そうよね。
ハンナさんは知らないわよね。
リリスは改めてハンナに、紫のガーゴイルはリリスの先祖であり賢者のユリアスである事、紫のフクロウはルームメイトのサラの先祖で賢者のラダムである事を伝えた。
その流れでユリアス達には小さなカラスがハンナの使い魔であり、赤い光球に封じられている人形はカテリーナ王女の使い魔である事を伝えた。
双方が驚きを隠せない。
「ビストリア公国の王女様がどうしてここに使い魔をよこしたんだ? まだあの国とは国交すら開かれていないだろうに。」
「そう言う人なんですよね。無鉄砲と言うか・・・」
ガーゴイルの言葉にカラスは項垂れて小さく呟いた。
確かに無鉄砲なのだろうが、現状は極めて異常だ。
紫のフクロウはサラが握り締めていた魔道具を精査し、う~んと唸ってその表情を曇らせた。
「拙いな。魔道具が暴走してしまったようだ。その余波でサラの体内の魔力回路にも支障が生じ始めている。」
「その魔道具って何だったのですか? 何かしら危険性を持ったものだったのですか?」
リリスの言葉に紫のフクロウは首を横に振った。
「そんな危険なものでは無い。召喚術に関するブースターのようなものだ。とは言っても術者のレベルを少し上げる程度なのだがなあ。それがこんな風に焼け焦げてしまうなんて。」
「それってサラの持つ召喚術関連のスキルと相互干渉をしたのでは無いですか?」
リリスはそう言うと、サラの手に握られていた魔道具の残骸を精査した。
そこには確かに召喚術に纏わるような魔力の痕跡が感じられる。
「サラさんの容体が心配だ。ラダム殿、研究施設にあの赤い光球と一緒に運び込もう。」
「うむ。それが良いだろうな。リリス、ハンナさんも一緒に来るが良い。」
紫のフクロウはそう言うと、闇を出現させてサラと赤い光球を包み込んだ。
それを紫のガーゴイルが闇魔法の転移で転移させると、リリスと小さなカラスも転移させた。
視界が暗転して、ユリアスの研究施設の中に変わる。
施設の中央ホールだ。
レミア族の人工知能から賢者ドルネアの後継者として認定され、受け継いだこの研究施設は、リリスにとっては馴染みのある場所だが、ハンナにとっては驚きの光景であった。
様々な機械や魔道具が設置され、数体のホムンクルスが作業を続けている。
ホールのアーチ状の天井から吊るされた巨大な金属球がレミア族の造り上げた人工知能であると聞き、ハンナは驚きの声を上げるだけだった。
そのハンナの使い魔のカラスの前に二人の老人が立っている。
ユリアスとラダムの実体だ。
改めて互いに自己紹介をし直し、ラダムはサラをホムンクルスに運ばせ、医務室へと向かった。
その間、リリスとユリアスはホールの片隅のソファに小さなカラスと共に座った。
サラの回復を待っている間に、カラスはユリアスに問い掛けた。
「ここはミラ王国の施設なのですか? それともユリアス様の私有の施設なのですか?」
「ああ、ここは私がレミア族から受け継いだ施設だが、ミラ王国の者は誰も知らないはずだ。なにせ地下の大深度にあるのだからなあ。」
ユリアスの言葉にカラスはへえ~と感嘆の声を上げた。
「レミア族と言ってもハンナさんは知らないだろうな。彼等は土魔法に長けた部族でそれなりに繁栄していたのだが、2万年前の大災厄で滅んでしまったのだよ。ここはその当時の賢者ドルネア様の遺した研究施設だったのだ。」
「この研究施設には限られた者しか出入り出来ないようになっている。私やラダム殿と交流のある賢者達を招く事もたまにあるのだが、それとは別に勝手に入ってくる奴らも居る。大災厄を起こした張本人ですら使い魔の姿で来るからね。」
ユリアスの言葉にえっ!と驚くカラスだが、その様子を見てリリスは失笑した。
タミアの事ね。
「ユリアス様。それを言ってもハンナさんには分かりませんよ。」
「ああ、そうだな。余計な事を言うと押し掛けてくるかも知れん。」
そう言ってユリアスはハハハと笑った。
その後しばらくビストリア公国の事などをハンナから聞いていたユリアスとリリスの元に、ラダムからの伝達事項を持ったホムンクルスが近付いてきた。
サラが回復したようだ。
ユリアスとリリスとカラスはホールから医務室へと移動した。
医務室に入ると様々な医療機器と思われる魔道具に囲まれたベッドで、サラがすやすやと眠っていた。
その傍に立つラダムの表情も和らいでいるので、大事には至らなかったようだ。
「サラは意識が戻ったのだが、魔道具の暴走のショックで精神状態が不安定になっているので、少し眠らせてあげたよ。薬剤も投与しそれなりの処置もしたので、目が覚めればすっきりしているはずだ。」
そうなのね。
それは良かったわ。
「それでサラからは何が起きたのか聞けましたか?」
「うむ。断片的ではあるが聞き取れたよ。サラが部屋に帰ると直ぐに、あの使い魔の人形が部屋に入ってきたそうだ。ドアをすり抜けてきたと言っていたな。リリスは何処だと聞きながら、サラににじり寄ってきたので、思わず手にしていたあの魔道具を人形に投げつけようとしたところ、魔力が大きく流れて暴走を起こしてしまったと言うのだ。」
「それでサラさんはその場に倒れてしまったと言う事だな?」
ユリアスの言葉にラダムはうんうんと頷いた。
「だがそうだったとして、あの赤い光球は何なのだ? まるで呪詛で封じてしまったような光景だが。」
「それが儂にも良く分からんのだ。あの魔道具がそんな力を持つとも考えられん。リリスが言うように、サラの持つ召喚術関連のスキルと相互干渉した可能性はあると思う。」
ラダムの言葉にユリアスは首を傾げた。
「そんな特殊なスキルをサラさんは持っているのか?」
「それがなあ。彼女のステータスに現われない部分が少なからずあるのだよ。儂の一族の子孫なので、召喚術に関してはかなり特殊なスキルを持っている可能性は高いのだが・・・・」
うんうん。
サラは確かに召喚術に特化した特殊なスキルを幾つも持っているはずよ。
その点は納得出来るわ。
リリスはそう思いながら、眠っているサラの頬を優しく撫でた。
「まあ、サラさんの容体は一安心だとして、問題はあの赤い光球だな。あれをどうするかと言う事だが、リリスに精査して貰おうか。」
ユリアスの言葉に続き、ラダムも口を開いた。
「そうだな。リリスであれば呪詛を解呪するのも容易だろう。」
突然話を振られてリリスはふっと顔を上げた。
そのリリスの顔をカラスがじっと見つめた。
「リリス様。カテリーナ様の使い魔を解放してください。お願いします。カテリーナ様は今も意識が戻らないのです。」
懇願するカラスの様子にうんうんと頷いたのだが、果たして本当に呪詛のようなものなのか?
まあ、とりあえず赤い光球の状態を精査してみよう。
リリスはそう思って医務室を後にし、ホールに戻ってカテリーナの使い魔が封じられている赤い光球の前に近付いた。
光球を取り巻く金色の帯から光球の内部に伸びる剣のような光。
それは如何にも禍々しい呪詛のように見えるのだが、実際にはどうなのだろうか?
リリスは先ず光球の全体を精査しながら、解析スキルを発動させた。
これってどうも呪詛ではないように感じるんだけど、解析出来る?
『確かに呪詛では無さそうですね。検出する魔力の波動がサラのものとほぼ同じですから、スキルによって創り出された現象だと思われます。』
現象って・・・そんなものなの?
もっと特殊なものかと思ったんだけど。
『現象と言う言葉が妥当でなければ、召喚術の根幹部分を極度に凝縮した様相・・・とでも言うのが良いかも知れません。』
増々分からないわ。
簡単に説明してよ。
『分かりました。召喚術はスキルによって対象物を呼び出しますが、その対象物は召喚した瞬間にはまだ不安定な存在なのです。本来そこになかった存在なので、その状態を僅かな時間でも避ける事は出来ません。通常は召喚した環境に対象物が固着される時間は1秒も掛かりません。』
『召喚した対象物を召喚術者の居る環境に固着させるのは、召喚術の根幹部分の中の根幹部分であり、これは主に召喚術者の持つスキルやレベルによって瞬時に自動的に成されます。それ故に召喚術者にとっては、この特殊な作業を自分が常に行っていると言う自覚はありません。』
なるほどね。
何となく分かってきたわ。
その固着化がサラの持つスキルや魔道具の暴走で、極端に具現化しちゃったって事ね。
でもどうしてこの状態を維持出来ているの?
サラが魔力切れで倒れていたので、サラとは魔力のやり取りをしていないと思うんだけど・・・。
『この状態を維持する為に、使い魔の召喚主から魔力を取り込んでいるようです。』
えっ!
それじゃあカテリーナ様から魔力を拝借して維持しているの?
そうか・・・それで使い魔にロックが掛けられて、召喚を解除出来なかったのね。
『そう言う事です。』
そうするとカテリーナ様の魔力が切れると、赤い光球は自然に消滅し、使い魔も召喚を解除出来るのね。
『それが望ましいのですが、召喚主が魔力吸引スキルを持っていると、半永久的に継続してしまいます。』
う~ん。
それは悩ましいわね。
結局どうすれば良いの?
『それに関してですが、暗黒竜の加護が知恵を貸そうかと提案しています。』
また、クイーングレイスさんが?
騒動の予感しかないんだけどねえ。
でも聞いてみる価値はありそうだから、クイーングレイスさんの意図を教えてよ。
『要約すると、カテリーナを再び眷属化すれば、主の権限で強制的に使い魔の召喚を解除出来ると言う事です。召喚解除の後に再度眷属化を解除すれば問題ないだろうと言っています。』
う~ん。
カテリーナ様を再び眷属化するの?
それって大丈夫なのかなあ。
でも今思いつく方法がそれしか無いのなら、仕方が無いのかしらねえ。
リリスはあまり気乗りがしないものの、その事をハンナ達に伝えた。
それを聞いてユリアスもラダムもうんうんと頷いたのだが、ハンナは神妙な表情を見せた。
「う~ん。それしか方法が無いのなら、とりあえずそれでお願いします。でもカテリーナ様の心身の安全は保障できるのでしょうか?」
「うん。それは大丈夫だと思いますよ。むしろ眷属化されると私の保護圏に入りますから。」
あまり確証はないけど、多分大丈夫よ。
リリスはそう思いつつ、暗黒竜の加護を発動させた。
闇魔法の魔力がリリスの身体を包み込む。
その過程で、使い魔を通してカテリーナを眷属化したい旨をクイーングレイスに伝えた。
(承知したわ。)
クイーングレイスの念話がリリスの脳裏に伝わってきた。
それと同時にリリスの身体から魔力の触手が数本突き出してきた。
その触手の先端には眷属化の為の簡単な呪詛が纏わり付いている。
リリスから伸びた魔力の触手は赤い光球の中に抵抗も無く入って行き、封じられている人形の中に入り込んだ。
眷属化の呪詛が撃ち込まれ、人形の中で活性化されると、人形は四方に光を放ち始めた。
それと共に光球の周囲を取り巻く金色の帯が消え、人形の内部に打ち込まれていた剣のような光も消えた。
(引き摺り出して大丈夫よ。)
クイーングレイスの指示に従って魔力の触手を縮めると、人形は何の抵抗も無く光球の壁をすり抜け、リリスの手元にまで戻ってきた。
それを機に赤い光球はふっと消え去った。
手元に引き寄せられた人形は床にすくっと立ち、リリスに向かって一礼した。
だが話が出来る状態では無さそうだ。
「ハンナさん。一応使い魔が解放されたので、カテリーナ様の意識も戻っているはずなんだけど・・・・・」
リリスの言葉にハンナはハッとして、使い魔との五感の共有を解いた。
小さなカラスはその場で動きを止め、待機状態となった。
しばらくしてカラスがピクンと動き、軽く羽ばたいて口を開いた。
「リリス様、ありがとうございます。カテリーナ様が意識を取り戻されました。酷い目にあったと呟いているそうです。」
「ああ、良かったわ。それじゃあ、眷属化を解くわね。」
リリスの言葉にカラスが首を横に振った。
「それが、少し問題が生じておりまして・・・・・」
カラスの口調も曖昧だ。
どうしたの?
何があったの?
「実はカテリーナ様がリリス様の眷属を解除されるのを拒んでいるのです。それで使い魔との五感の共有を断ち切ってしまいました。その為、この使い魔の人形は・・・・・」
カラスの言葉が終わりもしないうちに、人形はその場からすっと消えてしまった。
使い魔の召喚を解除しちゃったの?
何を考えているのよ!
「これはどう言う事だ?」
ユリアスの言葉にリリスも頭を傾げた。
だがカテリーナの行動に、何となく思いつく理由はある。
「眷属化される事で、限定的ではあるものの、主のスキルや能力を活用出来るようになるんですよ。カテリーナ様は特殊なスキルのお陰で、眷属化されている状態でも自我を明瞭に維持出来ます。」
「おそらくあれこれと魔法やスキルを試してみたいのでは・・・・・」
リリスの言葉にカラスは首を傾げたが、ユリアスとラダムはうんうんと頷いた。
「カテリーナ様の気持ちも分からんでは無い。リリスは属性魔法やスキルや能力の宝庫のようなものだからな。そのうえ更に伝説的な竜の加護や世界樹の加護まで活用出来るのであれば、試してみたいと思うのが自然な発想だろう。」
ユリアスの言葉にラダムも同意した。
「使い魔の召喚が断ち切られた以上、眷属化の解除にはこちらから出向くしかあるまい。眷属化されているので主がこちらに来いと強く念じれば、眷属としてはその命に服従するだろうが、相手が相手だからなあ。無理やり呼び出して国家間の紛争の種にならないとも言えんぞ。」
そうよねえ。
眷属とは言え一国の王女様だもの。
リリスは厄介な事になってしまったと思いつつ、カラスの方に目を向けた。
カラスは項垂れて下を向いたままだ。
ラダムの言う通り、こちらに来いと強く念じれば、カテリーナは暗黒竜の加護を活用して空間魔法でこちらに来るだろう。だがそれを突然予告も無くやらせると、王女を拉致されたとも受け止められ兼ねない。行き先を周囲の者に告げたとしても、まだ国交も無い遠方の国に行くのも不自然だ。お忍で出掛ける想定で周囲の者の目から逃れる事も在ったようだが、それでも行動範囲は精々自国内限定だろう。
こうなると使い魔の姿でリリスがビストリア公国を再訪するしかないのか?
項垂れるカラスの姿を見ながら、あれこれと思惑を巡らせるリリスであった。
そこにはカテリーナの使い魔が赤い光球に封じ込められていた。
その状況を理解出来ず立ち尽くしていたリリスだが、ふと我に返って周りを見渡すと、ベッドの傍にはサラが倒れていた。
サラの傍に駆け寄り精査すると、サラは魔力切れで意識を失っているのが分かった。
そのサラの手に小さな魔道具が握られている。
黒く焼け焦げたような魔道具だが、その形状から考えると手鏡だ。
何故こんなものが・・・・・。
不思議に思いながらもサラを起こそうとしていると、不意に部屋の片隅に二つの球状の闇が現われた。
闇の転移だ。
誰?
リリスの表情に緊張が走る。
ハンナの使い魔のカラスも空中に飛び上がり、警戒をあらわにした。
だが、その気配が既知の人物であると直ぐに分かったので、警戒を解いた。
闇の転移で現れたのは紫のガーゴイルと紫のフクロウ・・・それはユリアスとラダムの使い魔である。
「驚かしてすまんな、リリス。だが緊急事態だ。」
紫のガーゴイルの言葉が終わらぬうちに、紫のフクロウがサラの傍に近付いた。
フクロウはサラの身体を精査し、ふうっと大きく溜息をついた。
「サラは大丈夫か?」
ガーゴイルの言葉にフクロウは、
「ああ、大丈夫だ。魔力切れで意識を失っているだけの様だ。」
そう言ってサラの掴んでいる魔道具を見つめた。
その見つめる目が異様に大きくなり、その気持ちを代弁しているのが分かる。
「これは・・・儂がサラに持たせた魔道具ではないか。どうしてこんな風に焼け焦げているんだ?」
紫のフクロウは首を傾げ、改めてリリスとサラの部屋のリビングにある赤い光球に目を向けた。
「リリス、この状況は何なのだ?」
紫のガーゴイルの言葉にリリスは無言で首を横に振った。
「私にも分からないんです。部屋に帰ってきたらこの状況で。」
リリスの言葉に紫のガーゴイルも紫のフクロウも、う~んと唸って黙り込んだ。
その様子を見ながら、小さなカラスがリリスの傍に近付いた。
「あのう、リリス様。この二体の使い魔はどなたですか?」
ああ、そうよね。
ハンナさんは知らないわよね。
リリスは改めてハンナに、紫のガーゴイルはリリスの先祖であり賢者のユリアスである事、紫のフクロウはルームメイトのサラの先祖で賢者のラダムである事を伝えた。
その流れでユリアス達には小さなカラスがハンナの使い魔であり、赤い光球に封じられている人形はカテリーナ王女の使い魔である事を伝えた。
双方が驚きを隠せない。
「ビストリア公国の王女様がどうしてここに使い魔をよこしたんだ? まだあの国とは国交すら開かれていないだろうに。」
「そう言う人なんですよね。無鉄砲と言うか・・・」
ガーゴイルの言葉にカラスは項垂れて小さく呟いた。
確かに無鉄砲なのだろうが、現状は極めて異常だ。
紫のフクロウはサラが握り締めていた魔道具を精査し、う~んと唸ってその表情を曇らせた。
「拙いな。魔道具が暴走してしまったようだ。その余波でサラの体内の魔力回路にも支障が生じ始めている。」
「その魔道具って何だったのですか? 何かしら危険性を持ったものだったのですか?」
リリスの言葉に紫のフクロウは首を横に振った。
「そんな危険なものでは無い。召喚術に関するブースターのようなものだ。とは言っても術者のレベルを少し上げる程度なのだがなあ。それがこんな風に焼け焦げてしまうなんて。」
「それってサラの持つ召喚術関連のスキルと相互干渉をしたのでは無いですか?」
リリスはそう言うと、サラの手に握られていた魔道具の残骸を精査した。
そこには確かに召喚術に纏わるような魔力の痕跡が感じられる。
「サラさんの容体が心配だ。ラダム殿、研究施設にあの赤い光球と一緒に運び込もう。」
「うむ。それが良いだろうな。リリス、ハンナさんも一緒に来るが良い。」
紫のフクロウはそう言うと、闇を出現させてサラと赤い光球を包み込んだ。
それを紫のガーゴイルが闇魔法の転移で転移させると、リリスと小さなカラスも転移させた。
視界が暗転して、ユリアスの研究施設の中に変わる。
施設の中央ホールだ。
レミア族の人工知能から賢者ドルネアの後継者として認定され、受け継いだこの研究施設は、リリスにとっては馴染みのある場所だが、ハンナにとっては驚きの光景であった。
様々な機械や魔道具が設置され、数体のホムンクルスが作業を続けている。
ホールのアーチ状の天井から吊るされた巨大な金属球がレミア族の造り上げた人工知能であると聞き、ハンナは驚きの声を上げるだけだった。
そのハンナの使い魔のカラスの前に二人の老人が立っている。
ユリアスとラダムの実体だ。
改めて互いに自己紹介をし直し、ラダムはサラをホムンクルスに運ばせ、医務室へと向かった。
その間、リリスとユリアスはホールの片隅のソファに小さなカラスと共に座った。
サラの回復を待っている間に、カラスはユリアスに問い掛けた。
「ここはミラ王国の施設なのですか? それともユリアス様の私有の施設なのですか?」
「ああ、ここは私がレミア族から受け継いだ施設だが、ミラ王国の者は誰も知らないはずだ。なにせ地下の大深度にあるのだからなあ。」
ユリアスの言葉にカラスはへえ~と感嘆の声を上げた。
「レミア族と言ってもハンナさんは知らないだろうな。彼等は土魔法に長けた部族でそれなりに繁栄していたのだが、2万年前の大災厄で滅んでしまったのだよ。ここはその当時の賢者ドルネア様の遺した研究施設だったのだ。」
「この研究施設には限られた者しか出入り出来ないようになっている。私やラダム殿と交流のある賢者達を招く事もたまにあるのだが、それとは別に勝手に入ってくる奴らも居る。大災厄を起こした張本人ですら使い魔の姿で来るからね。」
ユリアスの言葉にえっ!と驚くカラスだが、その様子を見てリリスは失笑した。
タミアの事ね。
「ユリアス様。それを言ってもハンナさんには分かりませんよ。」
「ああ、そうだな。余計な事を言うと押し掛けてくるかも知れん。」
そう言ってユリアスはハハハと笑った。
その後しばらくビストリア公国の事などをハンナから聞いていたユリアスとリリスの元に、ラダムからの伝達事項を持ったホムンクルスが近付いてきた。
サラが回復したようだ。
ユリアスとリリスとカラスはホールから医務室へと移動した。
医務室に入ると様々な医療機器と思われる魔道具に囲まれたベッドで、サラがすやすやと眠っていた。
その傍に立つラダムの表情も和らいでいるので、大事には至らなかったようだ。
「サラは意識が戻ったのだが、魔道具の暴走のショックで精神状態が不安定になっているので、少し眠らせてあげたよ。薬剤も投与しそれなりの処置もしたので、目が覚めればすっきりしているはずだ。」
そうなのね。
それは良かったわ。
「それでサラからは何が起きたのか聞けましたか?」
「うむ。断片的ではあるが聞き取れたよ。サラが部屋に帰ると直ぐに、あの使い魔の人形が部屋に入ってきたそうだ。ドアをすり抜けてきたと言っていたな。リリスは何処だと聞きながら、サラににじり寄ってきたので、思わず手にしていたあの魔道具を人形に投げつけようとしたところ、魔力が大きく流れて暴走を起こしてしまったと言うのだ。」
「それでサラさんはその場に倒れてしまったと言う事だな?」
ユリアスの言葉にラダムはうんうんと頷いた。
「だがそうだったとして、あの赤い光球は何なのだ? まるで呪詛で封じてしまったような光景だが。」
「それが儂にも良く分からんのだ。あの魔道具がそんな力を持つとも考えられん。リリスが言うように、サラの持つ召喚術関連のスキルと相互干渉した可能性はあると思う。」
ラダムの言葉にユリアスは首を傾げた。
「そんな特殊なスキルをサラさんは持っているのか?」
「それがなあ。彼女のステータスに現われない部分が少なからずあるのだよ。儂の一族の子孫なので、召喚術に関してはかなり特殊なスキルを持っている可能性は高いのだが・・・・」
うんうん。
サラは確かに召喚術に特化した特殊なスキルを幾つも持っているはずよ。
その点は納得出来るわ。
リリスはそう思いながら、眠っているサラの頬を優しく撫でた。
「まあ、サラさんの容体は一安心だとして、問題はあの赤い光球だな。あれをどうするかと言う事だが、リリスに精査して貰おうか。」
ユリアスの言葉に続き、ラダムも口を開いた。
「そうだな。リリスであれば呪詛を解呪するのも容易だろう。」
突然話を振られてリリスはふっと顔を上げた。
そのリリスの顔をカラスがじっと見つめた。
「リリス様。カテリーナ様の使い魔を解放してください。お願いします。カテリーナ様は今も意識が戻らないのです。」
懇願するカラスの様子にうんうんと頷いたのだが、果たして本当に呪詛のようなものなのか?
まあ、とりあえず赤い光球の状態を精査してみよう。
リリスはそう思って医務室を後にし、ホールに戻ってカテリーナの使い魔が封じられている赤い光球の前に近付いた。
光球を取り巻く金色の帯から光球の内部に伸びる剣のような光。
それは如何にも禍々しい呪詛のように見えるのだが、実際にはどうなのだろうか?
リリスは先ず光球の全体を精査しながら、解析スキルを発動させた。
これってどうも呪詛ではないように感じるんだけど、解析出来る?
『確かに呪詛では無さそうですね。検出する魔力の波動がサラのものとほぼ同じですから、スキルによって創り出された現象だと思われます。』
現象って・・・そんなものなの?
もっと特殊なものかと思ったんだけど。
『現象と言う言葉が妥当でなければ、召喚術の根幹部分を極度に凝縮した様相・・・とでも言うのが良いかも知れません。』
増々分からないわ。
簡単に説明してよ。
『分かりました。召喚術はスキルによって対象物を呼び出しますが、その対象物は召喚した瞬間にはまだ不安定な存在なのです。本来そこになかった存在なので、その状態を僅かな時間でも避ける事は出来ません。通常は召喚した環境に対象物が固着される時間は1秒も掛かりません。』
『召喚した対象物を召喚術者の居る環境に固着させるのは、召喚術の根幹部分の中の根幹部分であり、これは主に召喚術者の持つスキルやレベルによって瞬時に自動的に成されます。それ故に召喚術者にとっては、この特殊な作業を自分が常に行っていると言う自覚はありません。』
なるほどね。
何となく分かってきたわ。
その固着化がサラの持つスキルや魔道具の暴走で、極端に具現化しちゃったって事ね。
でもどうしてこの状態を維持出来ているの?
サラが魔力切れで倒れていたので、サラとは魔力のやり取りをしていないと思うんだけど・・・。
『この状態を維持する為に、使い魔の召喚主から魔力を取り込んでいるようです。』
えっ!
それじゃあカテリーナ様から魔力を拝借して維持しているの?
そうか・・・それで使い魔にロックが掛けられて、召喚を解除出来なかったのね。
『そう言う事です。』
そうするとカテリーナ様の魔力が切れると、赤い光球は自然に消滅し、使い魔も召喚を解除出来るのね。
『それが望ましいのですが、召喚主が魔力吸引スキルを持っていると、半永久的に継続してしまいます。』
う~ん。
それは悩ましいわね。
結局どうすれば良いの?
『それに関してですが、暗黒竜の加護が知恵を貸そうかと提案しています。』
また、クイーングレイスさんが?
騒動の予感しかないんだけどねえ。
でも聞いてみる価値はありそうだから、クイーングレイスさんの意図を教えてよ。
『要約すると、カテリーナを再び眷属化すれば、主の権限で強制的に使い魔の召喚を解除出来ると言う事です。召喚解除の後に再度眷属化を解除すれば問題ないだろうと言っています。』
う~ん。
カテリーナ様を再び眷属化するの?
それって大丈夫なのかなあ。
でも今思いつく方法がそれしか無いのなら、仕方が無いのかしらねえ。
リリスはあまり気乗りがしないものの、その事をハンナ達に伝えた。
それを聞いてユリアスもラダムもうんうんと頷いたのだが、ハンナは神妙な表情を見せた。
「う~ん。それしか方法が無いのなら、とりあえずそれでお願いします。でもカテリーナ様の心身の安全は保障できるのでしょうか?」
「うん。それは大丈夫だと思いますよ。むしろ眷属化されると私の保護圏に入りますから。」
あまり確証はないけど、多分大丈夫よ。
リリスはそう思いつつ、暗黒竜の加護を発動させた。
闇魔法の魔力がリリスの身体を包み込む。
その過程で、使い魔を通してカテリーナを眷属化したい旨をクイーングレイスに伝えた。
(承知したわ。)
クイーングレイスの念話がリリスの脳裏に伝わってきた。
それと同時にリリスの身体から魔力の触手が数本突き出してきた。
その触手の先端には眷属化の為の簡単な呪詛が纏わり付いている。
リリスから伸びた魔力の触手は赤い光球の中に抵抗も無く入って行き、封じられている人形の中に入り込んだ。
眷属化の呪詛が撃ち込まれ、人形の中で活性化されると、人形は四方に光を放ち始めた。
それと共に光球の周囲を取り巻く金色の帯が消え、人形の内部に打ち込まれていた剣のような光も消えた。
(引き摺り出して大丈夫よ。)
クイーングレイスの指示に従って魔力の触手を縮めると、人形は何の抵抗も無く光球の壁をすり抜け、リリスの手元にまで戻ってきた。
それを機に赤い光球はふっと消え去った。
手元に引き寄せられた人形は床にすくっと立ち、リリスに向かって一礼した。
だが話が出来る状態では無さそうだ。
「ハンナさん。一応使い魔が解放されたので、カテリーナ様の意識も戻っているはずなんだけど・・・・・」
リリスの言葉にハンナはハッとして、使い魔との五感の共有を解いた。
小さなカラスはその場で動きを止め、待機状態となった。
しばらくしてカラスがピクンと動き、軽く羽ばたいて口を開いた。
「リリス様、ありがとうございます。カテリーナ様が意識を取り戻されました。酷い目にあったと呟いているそうです。」
「ああ、良かったわ。それじゃあ、眷属化を解くわね。」
リリスの言葉にカラスが首を横に振った。
「それが、少し問題が生じておりまして・・・・・」
カラスの口調も曖昧だ。
どうしたの?
何があったの?
「実はカテリーナ様がリリス様の眷属を解除されるのを拒んでいるのです。それで使い魔との五感の共有を断ち切ってしまいました。その為、この使い魔の人形は・・・・・」
カラスの言葉が終わりもしないうちに、人形はその場からすっと消えてしまった。
使い魔の召喚を解除しちゃったの?
何を考えているのよ!
「これはどう言う事だ?」
ユリアスの言葉にリリスも頭を傾げた。
だがカテリーナの行動に、何となく思いつく理由はある。
「眷属化される事で、限定的ではあるものの、主のスキルや能力を活用出来るようになるんですよ。カテリーナ様は特殊なスキルのお陰で、眷属化されている状態でも自我を明瞭に維持出来ます。」
「おそらくあれこれと魔法やスキルを試してみたいのでは・・・・・」
リリスの言葉にカラスは首を傾げたが、ユリアスとラダムはうんうんと頷いた。
「カテリーナ様の気持ちも分からんでは無い。リリスは属性魔法やスキルや能力の宝庫のようなものだからな。そのうえ更に伝説的な竜の加護や世界樹の加護まで活用出来るのであれば、試してみたいと思うのが自然な発想だろう。」
ユリアスの言葉にラダムも同意した。
「使い魔の召喚が断ち切られた以上、眷属化の解除にはこちらから出向くしかあるまい。眷属化されているので主がこちらに来いと強く念じれば、眷属としてはその命に服従するだろうが、相手が相手だからなあ。無理やり呼び出して国家間の紛争の種にならないとも言えんぞ。」
そうよねえ。
眷属とは言え一国の王女様だもの。
リリスは厄介な事になってしまったと思いつつ、カラスの方に目を向けた。
カラスは項垂れて下を向いたままだ。
ラダムの言う通り、こちらに来いと強く念じれば、カテリーナは暗黒竜の加護を活用して空間魔法でこちらに来るだろう。だがそれを突然予告も無くやらせると、王女を拉致されたとも受け止められ兼ねない。行き先を周囲の者に告げたとしても、まだ国交も無い遠方の国に行くのも不自然だ。お忍で出掛ける想定で周囲の者の目から逃れる事も在ったようだが、それでも行動範囲は精々自国内限定だろう。
こうなると使い魔の姿でリリスがビストリア公国を再訪するしかないのか?
項垂れるカラスの姿を見ながら、あれこれと思惑を巡らせるリリスであった。
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