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眷属の暴挙1
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ビストリア公国。
その南部の深い森の中に、3人の女性が歩いていた。
一人はレザーアーマーを装着した色黒の女性で、あとの二人はシルバーのメタルアーマーを装着した女性のパラディンである。
このレザーアーマーを装着した女性こそ、このビストリア公国の王女カテリーナであった。
偽装してお忍びで街に繰り出すのは彼女にとっても良くある事なのだが、さすがに凶悪な魔物の棲む南部の森に入って行くのは初めてだ。
噂に聞く魔物の森は、意外にも緑豊かで吹き抜ける風も心地良い。
雑草や低木の藪を避けながら木漏れ日の中を歩くと、鳥達の鳴き声があちらこちらから聞こえてくる。
「カテリーナ様。周辺に対する警戒は忘れないでくださいね。この森は何時何処から魔物が襲ってくるか、私達にも良く分かりませんから。」
パラディンの一人であるユナがショートソードの柄を握りながら、カテリーナに話し掛けた。
だがカテリーナは平然とした表情でユナに目を向けた。
「あらっ、ユナったら高レベルの探知スキルを持っているのに、分からないなんて事無いわよね。」
「えっ! どうしてそれを・・・」
ユナはカテリーナの言葉に驚き、傍に居たもう一人のパラディンであるレナと顔を見合わせた。
「うふふ。あなた達の事は何でもお見通しよ。聖魔法の修業時代からの付き合いじゃないの。」
そうは言われても納得出来るはずもない。
ユナもレナもこの国の貴族の子女であり、カテリーナとは少女時代から学友として、また聖魔法の修業仲間として苦楽を共にしてきた。だがそれでも自分の持つスキルまで教えた事は無かった。
「ユナの探知スキルは広範囲で魔物の動きを捕えているのね。でも単体の魔物相手ならレナの探知スキルの方が相手の魔力量まで把握出来そうね。」
「それを踏まえて二人に付いてきてもらったんだから、私としては既知の事実なのよ。」
そう言いながら、カテリーナは自身の持つ強化された探知スキルで周囲を隈なく探索した。
前方の森の奥に魔物が居る。
意識をそこに集中するとキラーマンティスが2体居る事が分かった。
体長3mほどの好戦的な昆虫型の魔物で、固い甲殻と強力な鎌が目に浮かぶ。
大きなカマキリが居るわね。
カテリーナはそう思うとニヤッと笑って魔力を循環させ始めた。
その様子にユナもレナも驚いた。
二人共、魔物の存在には気が付いていたが、カテリーナの危険を考慮し、あえて避ける道を選ぼうとしていたからだ。
だがカテリーナは戦う気満々である。
「カテリーナ様。魔物の存在に気が付いているんですね。でも相手は強敵ですよ。私達が仕留めますから。」
レナの言葉にカテリーナは首を横に振った。
「あなた達に任せるくらいなら、ここまで来ないわよ。私はたまたま手に入れた武器庫を試してみたいだけだからね。」
武器庫。
カテリーナはリリスの持つ魔法やスキルや加護を総称してそう名付けた。
だって武器庫そのものじゃないの。
そう思いながら、カテリーナはその両手にファイヤーボルトを2本づつ出現させた。
その火矢の放つ炎熱がユナやレナにも伝わってくる。
元々カテリーナは風魔法と聖魔法を持っていた。
だが持っているはずのない火魔法を発動させる事が出来たのは、ひとえにリリスの眷属となっているからである。
カテリーナはその特殊なスキルにより、眷属化されても精神支配をほとんど受けない。
そのスキルと体質により、眷属化されている間の記憶すら鮮明に残っている。
以前にリリスの眷属となった時の記憶は、カテリーナにとっても驚くべきものであった。
リリスの持つ多彩なスキルや豊富な魔法、それに加えて強力な加護を駆使して、眷属達が王都で警備兵を相手に大きな騒動を起こした。
レベル制限はあるものの、眷属の特権として主の持つ魔法やスキルを活用出来るのだ。
その主の持つ魔法やスキルが膨大で、思わず『これは武器庫だ』とカテリーナは思ったのだった。
火魔法を試してみたい。
魔物を焼き尽くしてやる!
その衝動がカテリーナの心を、今回の森の探索へと駆り立てたのだ。
カテリーナは投擲スキルによる補正を効かせながら、4本のファイヤーボルトを空中に放った。
斜め上空に放たれたファイヤーボルトは、放物線を描きながら魔物に向かって行く。
森の奥でドンッと言う衝撃音と共に爆炎が上がり、地面から振動が伝わってきた。
「うん。命中したわ。」
カテリーナは嬉しそうな表情で森の奥に駆け出した。
その後をユナとレナも追走する。
森の木々を搔き分けて進むと、黒焦げになった2体の大きなカマキリが倒れていた。
その傍の木々も延焼しているので、ユナは水魔法でその火を消し止めた。
剣を抜きとどめを刺そうとしてレナがキラーマンティスに近付いたが、2体ともに既に生命反応は無い。
こいつらって、こんなに簡単に屠れる相手じゃ無いんだけどねえ。
レナはそう思いながら、キラーマンティスの焼け焦げた遺骸を精査した。
彼等の甲殻は頑丈で、剣で倒すとしても強化魔法を駆使しなければ倒せない。
だがカテリーナの放ったファイヤーボルトは、斜め上空からキラーマンティスに向かって行ったにもかかわらず、甲殻に隠れた腹部に命中した痕跡がある。
投擲スキルがそれだけ優秀だと言う事なのだろう。
剣を鞘に戻してレナはカテリーナに話し掛けた。
「お見事です、カテリーナ様。」
「これも眷属の持つ特権なのですか?」
カテリーナはうんうんと頷きながら、黒焦げのカマキリの遺骸を足でとんとんと踏んでみた。
火魔法による初めての狩りだ。
その達成感で心が躍る。
「それにしても眷属化って、いつ解除されるか分からないですよね。今このタイミングで解除されたら困りますよ。」
ユナの言葉にカテリーナは余裕の表情を見せた。
「大丈夫よ。直ぐには解除されないから。」
「眷属とは言いながら、私は主の思いまである程度分かるのよ。リリスさんは今迷っているわ。私を今直ぐに呼び出して眷属を解除する訳にもいかず、どうしたら良いのかと迷っているのよ。」
「リリスさんがビストリア公国に出向いて来るにしても、それまでの時間が相当掛かるわ。それにミラ王国とは国交が無いからこちらに来る理由も直ぐには無いわよね。」
カテリーナはニヤッと笑って森の奥に目を向けた。
「さあ、続きを始めるわよ。まだまだ試したいことが一杯あるんだから。」
そう言って前に進むカテリーナの後姿を追いながら、ユナとレナは呆れ気味にため息をついた。
ユナとレナもパラディンとしては優秀な剣技と強化魔法を持っている。
更に最悪の場合には転移の魔石で王都に戻る準備もしているので、カテリーナの身に危険が及ぶ可能性は極めて少ない。
それでも心配なのはカテリーナの性格である。
カテリーナ様って無鉄砲だからなあ。
そう言う思いが常にユナとレナの心に過るのであった。
魔物の森の探索を続けるカテリーナは、藪の向こうに開かれた場所があるのを感じた。
その向こうにまた森が広がっており、森と森を繋ぐように荒れた土地が存在している。
向こう側の森まで約500mほどだが、向こう側の森の縁辺部に複数の魔物の気配が感じられた。
これは何だろうかと思って意識を集中すると、活発に動き回る犬のような気配がある。
ブラックウルフだ!
森の縁辺部に位置し、こちら側から出てくる相手を襲うつもりなのだろう。
待ち伏せしているのなら、こちらから仕掛けてやるわよ。
そう思ってカテリーナは毒生成のスキルを発動させた。
カテリーナはリリスの持つ毒生成のスキルを活用出来る事を知った時、その自分の認識を疑った。
まさか人族が毒生成スキルを持っているなどとは、到底信じられなかったからだ。
だが現実には存在している。
眷属に課せられたレベル制限により、カテリーナが使えるのは麻痺毒の生成だけだが、それでも驚きを隠せない。
おそらくリリス本人は致死毒の生成も可能なのだろう。
その推測に驚きを越えて恐怖を感じるカテリーナである。
リリスさんって魔王にでもなるつもりなの?
カテリーナはリリスに関する様々な憶測を抱きつつも、毒生成スキルを活性化させ、麻痺毒の生成を開始した。
身体中の魔力が大きく循環し、麻痺毒が生成されていく。
それと共にカテリーナの脳裏に、麻痺毒の付与先を問うスキルからのメッセージが届いた。
それはもちろん風魔法で散布させるわよ。
カテリーナは元々持っている風魔法のトルネードに付与させるように意識した。
麻痺毒の準備を済ませた段階で、カテリーナはユナとレナに話し掛けた。
「向こうの森の傍にブラックウルフが潜んでいるわよ。私が炙り出してやるから剣を抜いて準備していてね。」
突然のカテリーナの言葉にユナもレナも驚いた。
「ブラックウルフが居る事が分かっているんですね。でも炙り出すって危険ですよ。」
「大丈夫。私には秘策があるからね。」
二人が止めるのも気にせず、カテリーナは大声を上げて森から出た。
開かれた荒れ地に出ると、向こう側の森の縁辺部がガサガサと音を立て始め、ほどなく10体ほどのブラックウルフが牙を剥きながら現われた。
ブラックウルフはカテリーナに照準を合わせ、一斉にこちらに向かって駆け出した。
ここだ!
カテリーナは風魔法を発動させ、麻痺毒を付与させたトルネードを幾つも前方に放った。
風の渦が前方にドリルのように突き進み、100mほど先で拡散されていく。
その風の流れに乗って麻痺毒も拡散された。
その効果は直ぐに現われた。
駆け出してくるブラックウルフが突然そのスピードを緩め、ガクガクと身体を震わせながら、千鳥足でこちらに向かってくる。
これはカテリーナにとって格好の標的だ。
素早く火魔法を発動させたカテリーナは、ファイヤーボルトを数本出現させ、動きの鈍ったブラックウルフに向けて放った。
キーンと言う滑空音と共に、炎熱の火矢がブラックウルフに向かっていく。
麻痺毒で動きの鈍った彼等に逃げる隙は無い。
ファイヤーボルトは次々にブラックウルフに着弾し、ゴウッと火柱を立てて燃え上がり、瞬時に数体が駆除された。
「ユナ、レナ、後の残りは任せたわよ。麻痺毒でまともに動けないから、一気に処理してね。」
「麻痺毒ですって?」
「そんな物まで手に入れたんですか?」
唖然としながらも目の前に居る魔物に駆け寄り、ユナとレナは剣で止めを刺した。
それはあまりにもあっけない勝利である。
「ブラックウルフがこんなに簡単に駆除出来るなんて・・・・・」
レナの言葉にユナもただ頷くだけだ。
カテリーナは余裕の表情でその様子を見守っていた。
再び森の中に入った一行は幅5mほどの川のほとりに出た。
過去の探索者の記録に寄れば、この川を辿って奥に進むと、大きな湖があるそうだ。
湖まで行ってみようと言う事になり、カテリーナたちは川沿いの道を進んだ。
その途中で蜘蛛や鳥の形状の魔物に遭遇したが、それほどの脅威では無かった。
小さな魔物の駆除って煩わしいわね。
カテリーナはそう思い、魔物を忌避させるスキルを探した。
だがリリスの持つスキルに魔物除けになるスキルは見当たらない。
何か無いものかと思いつつ、カテリーナはふと物騒な事を思いついた。
そうだわ。
リリスさんって竜の加護を持っているじゃないの。
竜の気配がすれば、小さな魔物なんて直ぐに逃げ出すはずよ。
カテリーナはそう思いながら、リリスの持つ竜の加護の中身を探った。
だが眷属に許されているのは暗黒竜の加護のみであり、カテリーナが使えるのは空間魔法の転移と威圧だけであった。
ブレスって吐けないの?
出来るはずも無い事を考えながら、カテリーナはふと威圧に目を留めた。
そうだわ。
竜の威圧よ。
これなら竜の気配を体現出来るわ。
カテリーナは魔力を循環させ、暗黒竜の加護を発動させた。
眷属に使用可能なリストから威圧を選び強く意識すると、魔力の激しい流れが生み出され、魔力の渦となってカテリーナの頭部を取り巻いた。
これを放てば良いのね。
カテリーナは頭部を取り巻く魔力の渦を、前方に向けて一気に放った。
オオオオオオオオオッと言う低周波の咆哮が前方に放たれ、大地や森全体が細かく震え始めた。
森に潜む鳥達が上空に一気に飛び出し、あらかじめ上空に居た小さな鳥達はそのまま地面に落ちていく。
前方の広範囲に探知を掛けると、大半の魔物の気配は消え去ってしまった。
うんうん。
なかなかの効き目ね。
満足げなカテリーナの様子に、ユナもレナも驚くばかりだ。
「魔物除けに竜の威圧ですか。そんな事まで出来るんですね。」
感心する表情のユナにカテリーナはニヤッと笑った。
「竜の威圧で逃げ出すような小物は今の私の敵じゃないのよ。もっと強い魔物に遭遇したいわ。」
カテリーナの鼻息が荒い。
ユナとレナは呆れた表情でカテリーナを見つめていた。
川沿いの道を歩く事1時間。
カテリーナ達は小さな湖の前に出た。
湖と言うよりは池と言った方が良いかも知れない。
直径50mほどの湖であった。
湖の向こう岸には崖があり、小さな滝が上から流れ込んでいる。
その滝の少し横に大きな洞窟があるのが見えた。
その洞窟の周辺から禍々しい魔力の気配が漂っている。
どうやら強い魔物が潜んでいるようだ。
だが探知に意識を集中しても、その正体は良く分からない。
カテリーナは迷いも無く湖のほとりを歩き、その洞窟に向かって進んだ。
「カテリーナ様。大丈夫ですか? 何となく嫌な予感がするんですけど・・・」
ユナの言葉にカテリーナはアハハと笑った。
「大丈夫よ。この私が居るんだもの。」
カテリーナの言葉にユナはウッと唸って黙り込んだ。
どうしよう。
カテリーナ様が天狗になっているわ。
主の力を過大評価し過ぎているのよ。
ユナの思いはレナにも伝わった。
だがそれを意に介せず、カテリーナは足を進め、洞窟の近くにまで辿り着いた。
さあ、炙り出してやるわよ。出て来なさい!
カテリーナは暗黒竜の加護を発動させ、魔力を集中させて威圧を全力で洞窟の中に放った。
グオオオオオオオオッと言う低い咆哮で、洞窟の内部がガタガタと振動し、その周辺の鳥達も一斉に逃げ出した。
だが、突然洞窟の内部から白い光の筋が飛び出し、カテリーナ達を包み込むと、瞬時に洞窟内部に引き擦り込んでしまった。
突然の事でカテリーナも意識を失い、気が付くと目の前には白い壁に囲まれた広い空間が広がっていた。
カテリーナとユナとレナはその周囲を半透明の光の膜で囲まれ、自分達が何者かに閉じ込められている事が分かった。
ユナは咄嗟に転移の魔石を取り出し、王都への帰還を試みた。
だが転移の魔石は全く反応しない。
転移を阻まれているのだろうか?
ユナが焦る思いで何度も転移を試みるも、全て失敗してしまった。
「拙いですね。閉じ込められちゃったわ。」
ユナの言葉にカテリーナは頷き、周囲を念入りに探知してみた。
自分達の捕らわれている場所は洞窟の入り口の近くで、洞窟の奥の方には大きな魔力の持ち主が群れている事が分かる。
これは想像以上に拙いと思っていると、洞窟の奥の方から3人の若い男が現われた。
彼等は薄いブルーの肌の持ち主で、とても人とは思えない容貌だ。
「我々に竜の威圧を放って、棲み処を荒らしに来たのはお前らか?」
どすの効いた太い声が聞こえてきた。
「私達はここを荒らしに来たのではありません。」
カテリーナの言葉に男達はふんっ!と鼻息を吐いた。
「荒らしに来たのでなければ、何故我等に向けて竜の威圧を放ったのだ?」
「それは・・・魔物が隠れているのではないかと思って・・・・・」
カテリーナの言葉に男達は表情を曇らせた。
「ふざけた奴だ。我々を低級な魔物と同列に扱うとは。」
睨みつける男達にユナが言葉を掛けた。
「あなた達の棲み処を荒そうと言う気は全くありません。信じて下さい。」
「ふん! 人族の言葉など信じられるものか!」
怒りで顔を歪める男達にユナは深々と頭を下げた。
「お怒りになる気持ちは分かります。それであなた達は何者なのですか?」
ユナの言葉を聞き、一人の男が前に出た。
「我々はこの地に棲む水竜の一族だ。」
うっ!
人化した竜だったのね。
彼等が怒るのも無理も無い。
カテリーナは水竜の棲み処に向けて、竜の威圧を掛けてしまったのだ。
事の重大さを悟って、カテリーナは言葉を失いゴクリと息を呑んだのだった。
その南部の深い森の中に、3人の女性が歩いていた。
一人はレザーアーマーを装着した色黒の女性で、あとの二人はシルバーのメタルアーマーを装着した女性のパラディンである。
このレザーアーマーを装着した女性こそ、このビストリア公国の王女カテリーナであった。
偽装してお忍びで街に繰り出すのは彼女にとっても良くある事なのだが、さすがに凶悪な魔物の棲む南部の森に入って行くのは初めてだ。
噂に聞く魔物の森は、意外にも緑豊かで吹き抜ける風も心地良い。
雑草や低木の藪を避けながら木漏れ日の中を歩くと、鳥達の鳴き声があちらこちらから聞こえてくる。
「カテリーナ様。周辺に対する警戒は忘れないでくださいね。この森は何時何処から魔物が襲ってくるか、私達にも良く分かりませんから。」
パラディンの一人であるユナがショートソードの柄を握りながら、カテリーナに話し掛けた。
だがカテリーナは平然とした表情でユナに目を向けた。
「あらっ、ユナったら高レベルの探知スキルを持っているのに、分からないなんて事無いわよね。」
「えっ! どうしてそれを・・・」
ユナはカテリーナの言葉に驚き、傍に居たもう一人のパラディンであるレナと顔を見合わせた。
「うふふ。あなた達の事は何でもお見通しよ。聖魔法の修業時代からの付き合いじゃないの。」
そうは言われても納得出来るはずもない。
ユナもレナもこの国の貴族の子女であり、カテリーナとは少女時代から学友として、また聖魔法の修業仲間として苦楽を共にしてきた。だがそれでも自分の持つスキルまで教えた事は無かった。
「ユナの探知スキルは広範囲で魔物の動きを捕えているのね。でも単体の魔物相手ならレナの探知スキルの方が相手の魔力量まで把握出来そうね。」
「それを踏まえて二人に付いてきてもらったんだから、私としては既知の事実なのよ。」
そう言いながら、カテリーナは自身の持つ強化された探知スキルで周囲を隈なく探索した。
前方の森の奥に魔物が居る。
意識をそこに集中するとキラーマンティスが2体居る事が分かった。
体長3mほどの好戦的な昆虫型の魔物で、固い甲殻と強力な鎌が目に浮かぶ。
大きなカマキリが居るわね。
カテリーナはそう思うとニヤッと笑って魔力を循環させ始めた。
その様子にユナもレナも驚いた。
二人共、魔物の存在には気が付いていたが、カテリーナの危険を考慮し、あえて避ける道を選ぼうとしていたからだ。
だがカテリーナは戦う気満々である。
「カテリーナ様。魔物の存在に気が付いているんですね。でも相手は強敵ですよ。私達が仕留めますから。」
レナの言葉にカテリーナは首を横に振った。
「あなた達に任せるくらいなら、ここまで来ないわよ。私はたまたま手に入れた武器庫を試してみたいだけだからね。」
武器庫。
カテリーナはリリスの持つ魔法やスキルや加護を総称してそう名付けた。
だって武器庫そのものじゃないの。
そう思いながら、カテリーナはその両手にファイヤーボルトを2本づつ出現させた。
その火矢の放つ炎熱がユナやレナにも伝わってくる。
元々カテリーナは風魔法と聖魔法を持っていた。
だが持っているはずのない火魔法を発動させる事が出来たのは、ひとえにリリスの眷属となっているからである。
カテリーナはその特殊なスキルにより、眷属化されても精神支配をほとんど受けない。
そのスキルと体質により、眷属化されている間の記憶すら鮮明に残っている。
以前にリリスの眷属となった時の記憶は、カテリーナにとっても驚くべきものであった。
リリスの持つ多彩なスキルや豊富な魔法、それに加えて強力な加護を駆使して、眷属達が王都で警備兵を相手に大きな騒動を起こした。
レベル制限はあるものの、眷属の特権として主の持つ魔法やスキルを活用出来るのだ。
その主の持つ魔法やスキルが膨大で、思わず『これは武器庫だ』とカテリーナは思ったのだった。
火魔法を試してみたい。
魔物を焼き尽くしてやる!
その衝動がカテリーナの心を、今回の森の探索へと駆り立てたのだ。
カテリーナは投擲スキルによる補正を効かせながら、4本のファイヤーボルトを空中に放った。
斜め上空に放たれたファイヤーボルトは、放物線を描きながら魔物に向かって行く。
森の奥でドンッと言う衝撃音と共に爆炎が上がり、地面から振動が伝わってきた。
「うん。命中したわ。」
カテリーナは嬉しそうな表情で森の奥に駆け出した。
その後をユナとレナも追走する。
森の木々を搔き分けて進むと、黒焦げになった2体の大きなカマキリが倒れていた。
その傍の木々も延焼しているので、ユナは水魔法でその火を消し止めた。
剣を抜きとどめを刺そうとしてレナがキラーマンティスに近付いたが、2体ともに既に生命反応は無い。
こいつらって、こんなに簡単に屠れる相手じゃ無いんだけどねえ。
レナはそう思いながら、キラーマンティスの焼け焦げた遺骸を精査した。
彼等の甲殻は頑丈で、剣で倒すとしても強化魔法を駆使しなければ倒せない。
だがカテリーナの放ったファイヤーボルトは、斜め上空からキラーマンティスに向かって行ったにもかかわらず、甲殻に隠れた腹部に命中した痕跡がある。
投擲スキルがそれだけ優秀だと言う事なのだろう。
剣を鞘に戻してレナはカテリーナに話し掛けた。
「お見事です、カテリーナ様。」
「これも眷属の持つ特権なのですか?」
カテリーナはうんうんと頷きながら、黒焦げのカマキリの遺骸を足でとんとんと踏んでみた。
火魔法による初めての狩りだ。
その達成感で心が躍る。
「それにしても眷属化って、いつ解除されるか分からないですよね。今このタイミングで解除されたら困りますよ。」
ユナの言葉にカテリーナは余裕の表情を見せた。
「大丈夫よ。直ぐには解除されないから。」
「眷属とは言いながら、私は主の思いまである程度分かるのよ。リリスさんは今迷っているわ。私を今直ぐに呼び出して眷属を解除する訳にもいかず、どうしたら良いのかと迷っているのよ。」
「リリスさんがビストリア公国に出向いて来るにしても、それまでの時間が相当掛かるわ。それにミラ王国とは国交が無いからこちらに来る理由も直ぐには無いわよね。」
カテリーナはニヤッと笑って森の奥に目を向けた。
「さあ、続きを始めるわよ。まだまだ試したいことが一杯あるんだから。」
そう言って前に進むカテリーナの後姿を追いながら、ユナとレナは呆れ気味にため息をついた。
ユナとレナもパラディンとしては優秀な剣技と強化魔法を持っている。
更に最悪の場合には転移の魔石で王都に戻る準備もしているので、カテリーナの身に危険が及ぶ可能性は極めて少ない。
それでも心配なのはカテリーナの性格である。
カテリーナ様って無鉄砲だからなあ。
そう言う思いが常にユナとレナの心に過るのであった。
魔物の森の探索を続けるカテリーナは、藪の向こうに開かれた場所があるのを感じた。
その向こうにまた森が広がっており、森と森を繋ぐように荒れた土地が存在している。
向こう側の森まで約500mほどだが、向こう側の森の縁辺部に複数の魔物の気配が感じられた。
これは何だろうかと思って意識を集中すると、活発に動き回る犬のような気配がある。
ブラックウルフだ!
森の縁辺部に位置し、こちら側から出てくる相手を襲うつもりなのだろう。
待ち伏せしているのなら、こちらから仕掛けてやるわよ。
そう思ってカテリーナは毒生成のスキルを発動させた。
カテリーナはリリスの持つ毒生成のスキルを活用出来る事を知った時、その自分の認識を疑った。
まさか人族が毒生成スキルを持っているなどとは、到底信じられなかったからだ。
だが現実には存在している。
眷属に課せられたレベル制限により、カテリーナが使えるのは麻痺毒の生成だけだが、それでも驚きを隠せない。
おそらくリリス本人は致死毒の生成も可能なのだろう。
その推測に驚きを越えて恐怖を感じるカテリーナである。
リリスさんって魔王にでもなるつもりなの?
カテリーナはリリスに関する様々な憶測を抱きつつも、毒生成スキルを活性化させ、麻痺毒の生成を開始した。
身体中の魔力が大きく循環し、麻痺毒が生成されていく。
それと共にカテリーナの脳裏に、麻痺毒の付与先を問うスキルからのメッセージが届いた。
それはもちろん風魔法で散布させるわよ。
カテリーナは元々持っている風魔法のトルネードに付与させるように意識した。
麻痺毒の準備を済ませた段階で、カテリーナはユナとレナに話し掛けた。
「向こうの森の傍にブラックウルフが潜んでいるわよ。私が炙り出してやるから剣を抜いて準備していてね。」
突然のカテリーナの言葉にユナもレナも驚いた。
「ブラックウルフが居る事が分かっているんですね。でも炙り出すって危険ですよ。」
「大丈夫。私には秘策があるからね。」
二人が止めるのも気にせず、カテリーナは大声を上げて森から出た。
開かれた荒れ地に出ると、向こう側の森の縁辺部がガサガサと音を立て始め、ほどなく10体ほどのブラックウルフが牙を剥きながら現われた。
ブラックウルフはカテリーナに照準を合わせ、一斉にこちらに向かって駆け出した。
ここだ!
カテリーナは風魔法を発動させ、麻痺毒を付与させたトルネードを幾つも前方に放った。
風の渦が前方にドリルのように突き進み、100mほど先で拡散されていく。
その風の流れに乗って麻痺毒も拡散された。
その効果は直ぐに現われた。
駆け出してくるブラックウルフが突然そのスピードを緩め、ガクガクと身体を震わせながら、千鳥足でこちらに向かってくる。
これはカテリーナにとって格好の標的だ。
素早く火魔法を発動させたカテリーナは、ファイヤーボルトを数本出現させ、動きの鈍ったブラックウルフに向けて放った。
キーンと言う滑空音と共に、炎熱の火矢がブラックウルフに向かっていく。
麻痺毒で動きの鈍った彼等に逃げる隙は無い。
ファイヤーボルトは次々にブラックウルフに着弾し、ゴウッと火柱を立てて燃え上がり、瞬時に数体が駆除された。
「ユナ、レナ、後の残りは任せたわよ。麻痺毒でまともに動けないから、一気に処理してね。」
「麻痺毒ですって?」
「そんな物まで手に入れたんですか?」
唖然としながらも目の前に居る魔物に駆け寄り、ユナとレナは剣で止めを刺した。
それはあまりにもあっけない勝利である。
「ブラックウルフがこんなに簡単に駆除出来るなんて・・・・・」
レナの言葉にユナもただ頷くだけだ。
カテリーナは余裕の表情でその様子を見守っていた。
再び森の中に入った一行は幅5mほどの川のほとりに出た。
過去の探索者の記録に寄れば、この川を辿って奥に進むと、大きな湖があるそうだ。
湖まで行ってみようと言う事になり、カテリーナたちは川沿いの道を進んだ。
その途中で蜘蛛や鳥の形状の魔物に遭遇したが、それほどの脅威では無かった。
小さな魔物の駆除って煩わしいわね。
カテリーナはそう思い、魔物を忌避させるスキルを探した。
だがリリスの持つスキルに魔物除けになるスキルは見当たらない。
何か無いものかと思いつつ、カテリーナはふと物騒な事を思いついた。
そうだわ。
リリスさんって竜の加護を持っているじゃないの。
竜の気配がすれば、小さな魔物なんて直ぐに逃げ出すはずよ。
カテリーナはそう思いながら、リリスの持つ竜の加護の中身を探った。
だが眷属に許されているのは暗黒竜の加護のみであり、カテリーナが使えるのは空間魔法の転移と威圧だけであった。
ブレスって吐けないの?
出来るはずも無い事を考えながら、カテリーナはふと威圧に目を留めた。
そうだわ。
竜の威圧よ。
これなら竜の気配を体現出来るわ。
カテリーナは魔力を循環させ、暗黒竜の加護を発動させた。
眷属に使用可能なリストから威圧を選び強く意識すると、魔力の激しい流れが生み出され、魔力の渦となってカテリーナの頭部を取り巻いた。
これを放てば良いのね。
カテリーナは頭部を取り巻く魔力の渦を、前方に向けて一気に放った。
オオオオオオオオオッと言う低周波の咆哮が前方に放たれ、大地や森全体が細かく震え始めた。
森に潜む鳥達が上空に一気に飛び出し、あらかじめ上空に居た小さな鳥達はそのまま地面に落ちていく。
前方の広範囲に探知を掛けると、大半の魔物の気配は消え去ってしまった。
うんうん。
なかなかの効き目ね。
満足げなカテリーナの様子に、ユナもレナも驚くばかりだ。
「魔物除けに竜の威圧ですか。そんな事まで出来るんですね。」
感心する表情のユナにカテリーナはニヤッと笑った。
「竜の威圧で逃げ出すような小物は今の私の敵じゃないのよ。もっと強い魔物に遭遇したいわ。」
カテリーナの鼻息が荒い。
ユナとレナは呆れた表情でカテリーナを見つめていた。
川沿いの道を歩く事1時間。
カテリーナ達は小さな湖の前に出た。
湖と言うよりは池と言った方が良いかも知れない。
直径50mほどの湖であった。
湖の向こう岸には崖があり、小さな滝が上から流れ込んでいる。
その滝の少し横に大きな洞窟があるのが見えた。
その洞窟の周辺から禍々しい魔力の気配が漂っている。
どうやら強い魔物が潜んでいるようだ。
だが探知に意識を集中しても、その正体は良く分からない。
カテリーナは迷いも無く湖のほとりを歩き、その洞窟に向かって進んだ。
「カテリーナ様。大丈夫ですか? 何となく嫌な予感がするんですけど・・・」
ユナの言葉にカテリーナはアハハと笑った。
「大丈夫よ。この私が居るんだもの。」
カテリーナの言葉にユナはウッと唸って黙り込んだ。
どうしよう。
カテリーナ様が天狗になっているわ。
主の力を過大評価し過ぎているのよ。
ユナの思いはレナにも伝わった。
だがそれを意に介せず、カテリーナは足を進め、洞窟の近くにまで辿り着いた。
さあ、炙り出してやるわよ。出て来なさい!
カテリーナは暗黒竜の加護を発動させ、魔力を集中させて威圧を全力で洞窟の中に放った。
グオオオオオオオオッと言う低い咆哮で、洞窟の内部がガタガタと振動し、その周辺の鳥達も一斉に逃げ出した。
だが、突然洞窟の内部から白い光の筋が飛び出し、カテリーナ達を包み込むと、瞬時に洞窟内部に引き擦り込んでしまった。
突然の事でカテリーナも意識を失い、気が付くと目の前には白い壁に囲まれた広い空間が広がっていた。
カテリーナとユナとレナはその周囲を半透明の光の膜で囲まれ、自分達が何者かに閉じ込められている事が分かった。
ユナは咄嗟に転移の魔石を取り出し、王都への帰還を試みた。
だが転移の魔石は全く反応しない。
転移を阻まれているのだろうか?
ユナが焦る思いで何度も転移を試みるも、全て失敗してしまった。
「拙いですね。閉じ込められちゃったわ。」
ユナの言葉にカテリーナは頷き、周囲を念入りに探知してみた。
自分達の捕らわれている場所は洞窟の入り口の近くで、洞窟の奥の方には大きな魔力の持ち主が群れている事が分かる。
これは想像以上に拙いと思っていると、洞窟の奥の方から3人の若い男が現われた。
彼等は薄いブルーの肌の持ち主で、とても人とは思えない容貌だ。
「我々に竜の威圧を放って、棲み処を荒らしに来たのはお前らか?」
どすの効いた太い声が聞こえてきた。
「私達はここを荒らしに来たのではありません。」
カテリーナの言葉に男達はふんっ!と鼻息を吐いた。
「荒らしに来たのでなければ、何故我等に向けて竜の威圧を放ったのだ?」
「それは・・・魔物が隠れているのではないかと思って・・・・・」
カテリーナの言葉に男達は表情を曇らせた。
「ふざけた奴だ。我々を低級な魔物と同列に扱うとは。」
睨みつける男達にユナが言葉を掛けた。
「あなた達の棲み処を荒そうと言う気は全くありません。信じて下さい。」
「ふん! 人族の言葉など信じられるものか!」
怒りで顔を歪める男達にユナは深々と頭を下げた。
「お怒りになる気持ちは分かります。それであなた達は何者なのですか?」
ユナの言葉を聞き、一人の男が前に出た。
「我々はこの地に棲む水竜の一族だ。」
うっ!
人化した竜だったのね。
彼等が怒るのも無理も無い。
カテリーナは水竜の棲み処に向けて、竜の威圧を掛けてしまったのだ。
事の重大さを悟って、カテリーナは言葉を失いゴクリと息を呑んだのだった。
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