52 / 379
使い魔達の喧騒3
しおりを挟む
リリスとフィリップ王子が食い入るように見つめる映像は、5人の冒険者がダンジョンに入るところから始まった。
「今のところ5階層までになっているの。でも難易度は高いわよ。その分ドロップアイテムや褒賞もたっぷり用意したわ。」
第一階層は朽ち果てた神殿の内装のままで、暗がりから魔剣を持つオーガファイターやオーガメイジが襲ってくる。その数も多い。倒しても倒しても湧いてくるように襲ってくる敵の数は、総数で20体にも及びそうだ。しかも魔法の攻撃があまり効かない。
「最初からきついわねえ。」
だが冒険者達も奮闘していた。メイジがシールドを幾重にも張って敵の火球を防御し、タンク役のファイターが大きな盾で突破口を開くと、リーダーの戦士が大きな魔剣で問答無用に切り倒していく。更にエルフのアーチャーが火属性や雷属性の矢を放ち、的確に敵を撃ち抜いていく。
その背後でクレリックがパーティ全体の攻撃力を上げ、全員にヒールもかけていく。
流石はAランクの冒険者達だ。
全ての敵を倒してドロップアイテムをマジックバッグにしまい込むと、ポーションをがぶ飲みしながら次の階層に挑んでいった。
第2階層から第4階層までは同じような戦いが続く。どの階層も魔物の総数は20体ほどだが、すべての魔物の魔法耐性が高く、魔法の攻撃があまり効かない。出てくる魔物の種類は体長3mのティラノのような走竜や、小型のサラマンダーやワイバーンであったりするのだが、飛翔系の魔物にもアーチャーの魔弓が威力を発揮して、難なくこなしていった。
「あのエルフのアーチャーは凄いだろ? 彼女の技量はこの大陸でもトップクラスだと思うよ。」
「そうですね。後方からの支援攻撃としては破格ですね。でもあのタンク役のファイターも凄いですね。大盾のバッシュで走竜を食い止めるなんて、どれだけ身体強化しているんですかね。」
フィリップ王子とリリスの言葉に、ブルーの衣装のピクシーもうんうんとうなづいていた。
「でもここからが大変なのよ。」
ピクシーの言葉を耳にしながら映像を見ていると、冒険者達は第5階層に辿り着いた。
この第5階層の入り口には女神の像が立っている。これは水を司る亜神のものだ。
女神の像から声が聞こえてくる。
『よく此処まで辿り着きましたね。』
『この第5階層を踏破する為に、私の力を授けます。発動は1回限りで、浄化の波動を大きく放ち活路を見出しなさい。この階層の先の出口は浄化の波動の発動から5分後に閉じられてしまいます。そこに辿り着けばたっぷりと褒賞を授けましょう。』
女神の像から光が放たれて、リーダーの戦士の魔剣に大きなブルーの光が纏わり付いた。
それと同時にフロアの奥からドドドドドッと怒涛のような地響きが伝わってきた。
よく見ると近付いてくるのはスケルトンの軍団だ。手に魔剣を持ちフルメタルアーマーで武装したスケルトンの総数は数百体にも及ぶ。更にスケルトンのアーチャーまでいるようで、その放つ矢がキーンと金切り音を発てて放物線を描き冒険者達に向かってくる。
もはや冒険者達に余裕はない。
アンデッドには浄化が最適だ。
メイジが幾重にもシールドを掛けてスケルトンの放つ矢を受け止めている間に、リーダーの戦士が魔剣を大きく振りかぶり、前方に向けて浄化の波動を放った。
淡いブルーの波動がびりびりと空気を震わせながら真っ直ぐにフロアの奥まで伸びていく。それが先になるにつれて横にも広がって拡散されていく。
スケルトン達はその波動に巻き込まれて浄化され大半が消えていった。
「今だ! 奥まで突っ走るぞ!」
リーダーの掛け声を合図に冒険者達は全力で奥へと駆け出した。フロアの両側に居て浄化の波動を直接には受けなかったスケルトン達が起き上がり、冒険者達に向かって詰め寄っていく。その残数は50体ほどだ。わずかながらに飛んでくる矢を避けながら、冒険者達はフロアの奥の部屋に駆け込んだ。ここまでで約4分。部屋の入り口は横幅が10mほどで扉や仕切りは無く、冒険者達が駆け込んだ時点で両側から格子状の扉が現われた。それが徐々に閉まっていくのだがそのスピードが遅い。
余裕で部屋に入ったものの、今度はそこに襲い掛かろうとするスケルトン達と戦わなければならない。しかも扉が格子状なので剣も矢も扉を突き抜けて冒険者達に向かってくる。スケルトン達が全力で投げつけてくる魔剣や矢を避けながら、メイジが雷撃を放ちアーチャーが矢を放つが、スケルトン達は属性魔法に対する耐性がかなり強く設定されているようで、冒険者達の攻撃をものともしない。止む無くメイジがシールドを張り、タンク役の戦士が盾で扉の隙間を塞ぎながら、耐え忍ぶこと約1分。
ようやく扉が閉まると共に、そこに群がっていたスケルトン達は跡形もなく消さってしまった。
勝利だ。
冒険者達はその疲労でその場に膝をつき、肩で息をして血や汗を拭った。
程なく部屋の奥が開き、大きな宝箱と出口の扉が出現して映像は終わった。
「フィリップ! 感想は?」
「そうですね。冒険者達からの報告書の内容と一致しています。それにしても・・・・・最後の階層はエグいですね。」
小人の言葉にピクシーがうんうんとうなづいた。
「そうでしょ。単なるタイムトライアルで済まない所がみそなのよ。」
「それに、最後の階層は入ってくるたびに、魔物の種類と構成、攻撃パターンやフロアの構造が微妙に変化するからね。マンネリ化しないわよ。」
「リリス! あなたの感想は?」
話を振られたリリスはう~んと考えた。
「難易度が高いので上級者には評価されそうね。ただ、少し疑問が・・・・・」
ブルーの衣装のピクシーが首を傾げた。
「疑問って何よ?」
「浄化って水属性の魔法だっけ? 聖属性なのでは?」
リリスの疑問にブルーの衣装のピクシーがうっと呻いた。そこに赤い衣装のピクシーが割って入ってくる。
「リリス。そこは演出だからね。細かい事に拘るんじゃないのよ。」
「演出? タミア、それってどういう意味なの?」
「だから演出なのよ。浄化って言った方がありがたみがあるでしょうからね。ユリア、説明してあげてよ。」
話を振られてブルーの衣装のピクシーが口を開いた。
「要するに洗浄魔法の極強化版なのよ。生活魔法の洗浄は水魔法だからね。それを極限近くまで強化したのがあれ、つまり『浄化の波動』なのよ。」
「そうねえ。リリスの記憶領域にあった知識で言うと、『水の超音波振動を利用した洗浄』かしらね。」
ああ、そう言う事なのね。
何となく分かる気がするわ。
ここでピクシー達の踏み付けから逃れ出たノームが、身体のあちらこちらを摩りながら口を開いた。
「ダンジョンに変化をつけるんやったら、僕も手伝ってやろうか? 落とし穴とか底なし沼とか土槍の罠とか、いろいろあるで。」
「遠慮しておくわ。土魔法ってダサいから。」
「ダサいってなんや!そんな言い方はないやろ。リリス!僕の弟子の君からも言うてやってくれ。土魔法を馬鹿にされとるぞ。」
「リリス。あんた、いつからこいつの弟子になったのよ。」
「やだ、リリスったら。このキモイ奴に何かいやらしい事をされたんじゃないの?」
「リリス。それは本当なのか?人族が亜神の弟子になるなんて・・・」
話が混乱してまとまりがなくなってしまった。
リリスは呆れてしまって、少し間を置き大声を上げた
「私はチャーリーの弟子なんかになっていません!」
「いい加減にしてよね。話をまとめるわよ。それであんた達の要件は何なのよ?」
使い魔達が静かになった。
赤い衣装のピクシーが他の使い魔達に小声で話し掛けた。
「リリスったら頃合いを見てまとめ始めちゃったわよ。クラス委員の本領発揮かしらね?」
何を言っているんだろうかと思いつつ、リリスは使い魔達の目をじっと見つめた。
「私はリースの地下神殿のダンジョンの出来栄えを、リリスに聞きに来たのよ。フィリップの感想も聞けたから要件は済んだわ。」
ユリアの使い魔であるブルーの衣装のピクシーがしずしずと答えた。
「私はこいつがリリスのところに行くって言うから、ついでについて来ただけよ。」
タミアの使い魔である赤い衣装のピクシーが答えた。如何にも暇つぶしの要件だ。
「僕はさっきも言うた通り、リリスに授けた土魔法のスキルが適正化されているか確かめに来たんや。それと土魔法を底上げしてあげた結果も見ておきたかっただけや。いずれもリリスの魔力の気配で状態は分かったから要件済みやね。」
チャーリーの使い魔のノームが答えた。
「僕はダンジョン化したリースの地下神殿について、冒険者達から上がってきた報告書の内容をリリスに教えてあげようと思って来たんだよ。でも映像で確認させて貰えるとは思ってもみなかったね。」
フィリップ王子の使い魔の小人が答えた。
「そうすると要件は全て済んだのね。」
リリスは姿勢を正して使い魔達に口を開いた。
「それじゃあ、これで解散!」
リリスの号令にハイハイと答えながら、使い魔達は消えていった。
だがフィリップ王子の使い魔の小人が去り際に立ち止まり、振り返って尋ねた。
「ところでリリス。50インチって何の事だ?」
「ああ、それは亜神の言葉で映像の大きさを表す単位ですよ。気にする必要はありません。忘れて下さい。」
妙なところに引っ掛からないで欲しいわね。
リリスはそう思いつつ小人を送り出した。だが小人が消えると同時にまたノームが現われた。
「チャーリー。まだ何か要件があるの?」
リリスに邪険に問い掛けられたノームはソファに胡坐をかき、サラの眠るベッドを見つめた。
「サラ君の事で気に成る事があるんやけどね。」
「サラの事で?」
「そうや。この子、変わったスキルを持ってるやろ?」
そう言われてリリスもハッとした。
「もしかして亜神召喚の事?」
「そうや。それの事や。これって人族が持つスキルや無いで。普通はダークエルフの持つスキルや。このスキルで召喚されるとしたら、おそらく・・・・・闇属性を司る亜神デスブラッド=ゾル=ダーク。」
ええっ!
闇を司る亜神!
しかもその名前が如何にも禍々しい。
そんなものを召喚してしまうなんて・・・・・。
そう考えるとリリスは青ざめてしまった。
「闇の亜神って・・・・・世界を闇に葬るの?」
リリスの問い掛けにノームはハハハと笑った。
「君は闇の亜神と魔王を混同しとるね。」
「闇の亜神って人見知りで陰キャやで。いつも人前に出るのを避けとるからね。」
「そうなの? もしかして心が闇なのかしら?」
「おっ! 上手い事言うやんか。それに近いね。」
青ざめたリリスの顔が即座に元に戻ってきた。心配する必要もなさそうだ。
それにしても、亜神って変わり者ばかりなの?
呆れるリリスを横目に見ながら、ノームがサラのベッドに近付いた。
「あいつら、サラ君を眠らせるだけで、放置して消えて行きよった。ほんまにええ加減な奴らやで。」
そう言うと、ノームはサラに手を向けパチンと指を鳴らした。
「これで10分後には目が覚める筈や。起きたら水を飲ませてやってな。」
「ねえねえ、チャーリー。タミアとユリアってサラに何をしたの? 意識を奪っただけじゃ無いの?」
「ああ、体密着型の亜空間への隔離による身体機能の強制停止やね。コールドスリープみたいなもんかな。」
サラに何をしてくれるのよ!
永遠に休眠させるつもりだったの?
呆れて言葉も無いリリスにノームが手を振った。
「ほな。」
それって軽いお別れの言葉だっけ?
それにしても関西弁を操る亜神って何なのよ。
私も吉●新喜劇の知識が役立つとは思っていなかったわ。
消え去って行ったノームの方向を見つめながら、リリスはほっと安堵のため息をついたのだった。
「今のところ5階層までになっているの。でも難易度は高いわよ。その分ドロップアイテムや褒賞もたっぷり用意したわ。」
第一階層は朽ち果てた神殿の内装のままで、暗がりから魔剣を持つオーガファイターやオーガメイジが襲ってくる。その数も多い。倒しても倒しても湧いてくるように襲ってくる敵の数は、総数で20体にも及びそうだ。しかも魔法の攻撃があまり効かない。
「最初からきついわねえ。」
だが冒険者達も奮闘していた。メイジがシールドを幾重にも張って敵の火球を防御し、タンク役のファイターが大きな盾で突破口を開くと、リーダーの戦士が大きな魔剣で問答無用に切り倒していく。更にエルフのアーチャーが火属性や雷属性の矢を放ち、的確に敵を撃ち抜いていく。
その背後でクレリックがパーティ全体の攻撃力を上げ、全員にヒールもかけていく。
流石はAランクの冒険者達だ。
全ての敵を倒してドロップアイテムをマジックバッグにしまい込むと、ポーションをがぶ飲みしながら次の階層に挑んでいった。
第2階層から第4階層までは同じような戦いが続く。どの階層も魔物の総数は20体ほどだが、すべての魔物の魔法耐性が高く、魔法の攻撃があまり効かない。出てくる魔物の種類は体長3mのティラノのような走竜や、小型のサラマンダーやワイバーンであったりするのだが、飛翔系の魔物にもアーチャーの魔弓が威力を発揮して、難なくこなしていった。
「あのエルフのアーチャーは凄いだろ? 彼女の技量はこの大陸でもトップクラスだと思うよ。」
「そうですね。後方からの支援攻撃としては破格ですね。でもあのタンク役のファイターも凄いですね。大盾のバッシュで走竜を食い止めるなんて、どれだけ身体強化しているんですかね。」
フィリップ王子とリリスの言葉に、ブルーの衣装のピクシーもうんうんとうなづいていた。
「でもここからが大変なのよ。」
ピクシーの言葉を耳にしながら映像を見ていると、冒険者達は第5階層に辿り着いた。
この第5階層の入り口には女神の像が立っている。これは水を司る亜神のものだ。
女神の像から声が聞こえてくる。
『よく此処まで辿り着きましたね。』
『この第5階層を踏破する為に、私の力を授けます。発動は1回限りで、浄化の波動を大きく放ち活路を見出しなさい。この階層の先の出口は浄化の波動の発動から5分後に閉じられてしまいます。そこに辿り着けばたっぷりと褒賞を授けましょう。』
女神の像から光が放たれて、リーダーの戦士の魔剣に大きなブルーの光が纏わり付いた。
それと同時にフロアの奥からドドドドドッと怒涛のような地響きが伝わってきた。
よく見ると近付いてくるのはスケルトンの軍団だ。手に魔剣を持ちフルメタルアーマーで武装したスケルトンの総数は数百体にも及ぶ。更にスケルトンのアーチャーまでいるようで、その放つ矢がキーンと金切り音を発てて放物線を描き冒険者達に向かってくる。
もはや冒険者達に余裕はない。
アンデッドには浄化が最適だ。
メイジが幾重にもシールドを掛けてスケルトンの放つ矢を受け止めている間に、リーダーの戦士が魔剣を大きく振りかぶり、前方に向けて浄化の波動を放った。
淡いブルーの波動がびりびりと空気を震わせながら真っ直ぐにフロアの奥まで伸びていく。それが先になるにつれて横にも広がって拡散されていく。
スケルトン達はその波動に巻き込まれて浄化され大半が消えていった。
「今だ! 奥まで突っ走るぞ!」
リーダーの掛け声を合図に冒険者達は全力で奥へと駆け出した。フロアの両側に居て浄化の波動を直接には受けなかったスケルトン達が起き上がり、冒険者達に向かって詰め寄っていく。その残数は50体ほどだ。わずかながらに飛んでくる矢を避けながら、冒険者達はフロアの奥の部屋に駆け込んだ。ここまでで約4分。部屋の入り口は横幅が10mほどで扉や仕切りは無く、冒険者達が駆け込んだ時点で両側から格子状の扉が現われた。それが徐々に閉まっていくのだがそのスピードが遅い。
余裕で部屋に入ったものの、今度はそこに襲い掛かろうとするスケルトン達と戦わなければならない。しかも扉が格子状なので剣も矢も扉を突き抜けて冒険者達に向かってくる。スケルトン達が全力で投げつけてくる魔剣や矢を避けながら、メイジが雷撃を放ちアーチャーが矢を放つが、スケルトン達は属性魔法に対する耐性がかなり強く設定されているようで、冒険者達の攻撃をものともしない。止む無くメイジがシールドを張り、タンク役の戦士が盾で扉の隙間を塞ぎながら、耐え忍ぶこと約1分。
ようやく扉が閉まると共に、そこに群がっていたスケルトン達は跡形もなく消さってしまった。
勝利だ。
冒険者達はその疲労でその場に膝をつき、肩で息をして血や汗を拭った。
程なく部屋の奥が開き、大きな宝箱と出口の扉が出現して映像は終わった。
「フィリップ! 感想は?」
「そうですね。冒険者達からの報告書の内容と一致しています。それにしても・・・・・最後の階層はエグいですね。」
小人の言葉にピクシーがうんうんとうなづいた。
「そうでしょ。単なるタイムトライアルで済まない所がみそなのよ。」
「それに、最後の階層は入ってくるたびに、魔物の種類と構成、攻撃パターンやフロアの構造が微妙に変化するからね。マンネリ化しないわよ。」
「リリス! あなたの感想は?」
話を振られたリリスはう~んと考えた。
「難易度が高いので上級者には評価されそうね。ただ、少し疑問が・・・・・」
ブルーの衣装のピクシーが首を傾げた。
「疑問って何よ?」
「浄化って水属性の魔法だっけ? 聖属性なのでは?」
リリスの疑問にブルーの衣装のピクシーがうっと呻いた。そこに赤い衣装のピクシーが割って入ってくる。
「リリス。そこは演出だからね。細かい事に拘るんじゃないのよ。」
「演出? タミア、それってどういう意味なの?」
「だから演出なのよ。浄化って言った方がありがたみがあるでしょうからね。ユリア、説明してあげてよ。」
話を振られてブルーの衣装のピクシーが口を開いた。
「要するに洗浄魔法の極強化版なのよ。生活魔法の洗浄は水魔法だからね。それを極限近くまで強化したのがあれ、つまり『浄化の波動』なのよ。」
「そうねえ。リリスの記憶領域にあった知識で言うと、『水の超音波振動を利用した洗浄』かしらね。」
ああ、そう言う事なのね。
何となく分かる気がするわ。
ここでピクシー達の踏み付けから逃れ出たノームが、身体のあちらこちらを摩りながら口を開いた。
「ダンジョンに変化をつけるんやったら、僕も手伝ってやろうか? 落とし穴とか底なし沼とか土槍の罠とか、いろいろあるで。」
「遠慮しておくわ。土魔法ってダサいから。」
「ダサいってなんや!そんな言い方はないやろ。リリス!僕の弟子の君からも言うてやってくれ。土魔法を馬鹿にされとるぞ。」
「リリス。あんた、いつからこいつの弟子になったのよ。」
「やだ、リリスったら。このキモイ奴に何かいやらしい事をされたんじゃないの?」
「リリス。それは本当なのか?人族が亜神の弟子になるなんて・・・」
話が混乱してまとまりがなくなってしまった。
リリスは呆れてしまって、少し間を置き大声を上げた
「私はチャーリーの弟子なんかになっていません!」
「いい加減にしてよね。話をまとめるわよ。それであんた達の要件は何なのよ?」
使い魔達が静かになった。
赤い衣装のピクシーが他の使い魔達に小声で話し掛けた。
「リリスったら頃合いを見てまとめ始めちゃったわよ。クラス委員の本領発揮かしらね?」
何を言っているんだろうかと思いつつ、リリスは使い魔達の目をじっと見つめた。
「私はリースの地下神殿のダンジョンの出来栄えを、リリスに聞きに来たのよ。フィリップの感想も聞けたから要件は済んだわ。」
ユリアの使い魔であるブルーの衣装のピクシーがしずしずと答えた。
「私はこいつがリリスのところに行くって言うから、ついでについて来ただけよ。」
タミアの使い魔である赤い衣装のピクシーが答えた。如何にも暇つぶしの要件だ。
「僕はさっきも言うた通り、リリスに授けた土魔法のスキルが適正化されているか確かめに来たんや。それと土魔法を底上げしてあげた結果も見ておきたかっただけや。いずれもリリスの魔力の気配で状態は分かったから要件済みやね。」
チャーリーの使い魔のノームが答えた。
「僕はダンジョン化したリースの地下神殿について、冒険者達から上がってきた報告書の内容をリリスに教えてあげようと思って来たんだよ。でも映像で確認させて貰えるとは思ってもみなかったね。」
フィリップ王子の使い魔の小人が答えた。
「そうすると要件は全て済んだのね。」
リリスは姿勢を正して使い魔達に口を開いた。
「それじゃあ、これで解散!」
リリスの号令にハイハイと答えながら、使い魔達は消えていった。
だがフィリップ王子の使い魔の小人が去り際に立ち止まり、振り返って尋ねた。
「ところでリリス。50インチって何の事だ?」
「ああ、それは亜神の言葉で映像の大きさを表す単位ですよ。気にする必要はありません。忘れて下さい。」
妙なところに引っ掛からないで欲しいわね。
リリスはそう思いつつ小人を送り出した。だが小人が消えると同時にまたノームが現われた。
「チャーリー。まだ何か要件があるの?」
リリスに邪険に問い掛けられたノームはソファに胡坐をかき、サラの眠るベッドを見つめた。
「サラ君の事で気に成る事があるんやけどね。」
「サラの事で?」
「そうや。この子、変わったスキルを持ってるやろ?」
そう言われてリリスもハッとした。
「もしかして亜神召喚の事?」
「そうや。それの事や。これって人族が持つスキルや無いで。普通はダークエルフの持つスキルや。このスキルで召喚されるとしたら、おそらく・・・・・闇属性を司る亜神デスブラッド=ゾル=ダーク。」
ええっ!
闇を司る亜神!
しかもその名前が如何にも禍々しい。
そんなものを召喚してしまうなんて・・・・・。
そう考えるとリリスは青ざめてしまった。
「闇の亜神って・・・・・世界を闇に葬るの?」
リリスの問い掛けにノームはハハハと笑った。
「君は闇の亜神と魔王を混同しとるね。」
「闇の亜神って人見知りで陰キャやで。いつも人前に出るのを避けとるからね。」
「そうなの? もしかして心が闇なのかしら?」
「おっ! 上手い事言うやんか。それに近いね。」
青ざめたリリスの顔が即座に元に戻ってきた。心配する必要もなさそうだ。
それにしても、亜神って変わり者ばかりなの?
呆れるリリスを横目に見ながら、ノームがサラのベッドに近付いた。
「あいつら、サラ君を眠らせるだけで、放置して消えて行きよった。ほんまにええ加減な奴らやで。」
そう言うと、ノームはサラに手を向けパチンと指を鳴らした。
「これで10分後には目が覚める筈や。起きたら水を飲ませてやってな。」
「ねえねえ、チャーリー。タミアとユリアってサラに何をしたの? 意識を奪っただけじゃ無いの?」
「ああ、体密着型の亜空間への隔離による身体機能の強制停止やね。コールドスリープみたいなもんかな。」
サラに何をしてくれるのよ!
永遠に休眠させるつもりだったの?
呆れて言葉も無いリリスにノームが手を振った。
「ほな。」
それって軽いお別れの言葉だっけ?
それにしても関西弁を操る亜神って何なのよ。
私も吉●新喜劇の知識が役立つとは思っていなかったわ。
消え去って行ったノームの方向を見つめながら、リリスはほっと安堵のため息をついたのだった。
42
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
生臭坊主の異世界転生 死霊術師はスローライフを送れない
しめさば
ファンタジー
急遽異世界へと転生することになった九条颯馬(30)
小さな村に厄介になるも、生活の為に冒険者に。
ギルドに騙され、与えられたのは最低ランクのカッパープレート。
それに挫けることなく日々の雑務をこなしながらも、不慣れな異世界生活を送っていた。
そんな九条を優しく癒してくれるのは、ギルドの担当職員であるミア(10)と、森で助けた狐のカガリ(モフモフ)。
とは言えそんな日常も長くは続かず、ある日を境に九条は人生の転機を迎えることとなる。
ダンジョンで手に入れた魔法書。村を襲う盗賊団に、新たなる出会い。そして見直された九条の評価。
冒険者ギルドの最高ランクであるプラチナを手にし、目標であるスローライフに一歩前進したかのようにも見えたのだが、現実はそう甘くない。
今度はそれを利用しようと擦り寄って来る者達の手により、日常は非日常へと変化していく……。
「俺は田舎でモフモフに囲まれ、ミアと一緒にのんびり暮らしていたいんだ!!」
降りかかる火の粉は魔獣達と死霊術でズバッと解決!
面倒臭がりの生臭坊主は死霊術師として成り上がり、残念ながらスローライフは送れない。
これは、いずれ魔王と呼ばれる男と、勇者の少女の物語である。
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる