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開祖の魔剣2
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開祖の所有していた魔剣。
その不気味な雰囲気を肌身に感じているリリスを見ながら、メリンダ王女が訥々と話を続けた。
「この魔剣は残念ながら刀身が朽ちていて、纏っている魔力もかなり弱くなってきているわ。」
「でもね。チェストの中に文字の刻まれた金属のプレートが一緒に入っていたのよ。」
そう言いながらメリンダ王女は変色した薄い金属のプレートを取り出した。見た目からかなり古いものだと分かる。
「このプレートに刻まれた文字は古い文字なので全部は解読出来ないの。でも解読出来た部分もあって、それによるとやはり開祖エドワード王の所有物だと書かれていたわ。しかも闇の亜神から授かったとも書かれているのよ。」
えっ!
それってゲルがエドワード王に授けたって事?
リリスは目の前に置かれた魔剣の出処を知り、メリンダ王女が関心を寄せている理由を理解した。
「要するに歴史的遺物って事ね。でもこの魔剣って修理出来ないの?」
リリスの問い掛けにメリンダ王女は表情を曇らせた。何か訳ありな様子だ。
「それがねえ。持ち運び程度なら問題ないんだけど、修理しようとすると拒まれるのよ。」
「拒むって?」
「柄の部分から雷撃が放たれるのよ。王家の工房の職人が何人もそのせいで大怪我しちゃったわ。」
へえ~。
そんな事があるのね。
まるで意志を持っているような魔剣だ。だがそれなら修理をしてくれる事を理解しそうな気もするが・・・。
授けたゲルに似て人見知りするのかしら?
そう思うと増々修理してやりたくなるリリスである。だからと言って魔金属錬成などと言う稀有なスキルを、最近手に入れたとも言えるわけも無い。
どうしたものかと思って魔剣を見つめていると、メリンダ王女は話の本題に入ってきた。
「それでね。チェストに入っていたプレートの最後にこう書かれていたのよ。『魔剣の修復は闇の亜神に任せよ』ってね。」
その言葉でリリスはメリンダ王女の最終的な要件を理解した。
要するにゲルを呼び出して欲しいと言う事だ。
リリスの反応を見つめるメリンダ王女の視線が熱い。期待に満ちた表情が見え見えだ。
リリスはしばらく考え込んだ上で話を切り出した。
「ゲルは簡単に呼び出せる相手じゃないからねえ。以前の方法で上手くいくとは限らないのよ。それで・・・」
リリスは一息入れた。
「より良い方法を考えるので少し時間を頂戴。でも必ず何とかして見せるわ、安心して。」
リリスの力強い言葉にメリンダ王女はふっと安堵のため息をついた。
「なるべく早くね。」
「分かってるって。」
リリスは席を立ち、メリンダ王女とレオナルド王子の使い魔に挨拶をして部屋を出た。
リリスは当初サラの亜神召喚のスキルを使えば何とかなると考えた。だがサラをこの話に巻き込むのはどうかと言う不安が高まって来て、メリンダ王女には即答が出来なかった。
どうしても手段方策が無ければチャーリーに頼むと言う手もあるが、そうたびたび奴に頼むわけにもいかない。あまり土の亜神に借りを作りたくないとリリスは考えたのだ。
それならどうするのか?
王族からの要請だと言わない限り、いくらサラでもおいそれと協力してくれるとは思えない。
あれこれと考えながら廊下を歩くと、一段と探知の波動が飛んできた。考え事があるんだから煩わしいのは勘弁してよと心の中で叫びつつ、リリスは急ぎ足で廊下を歩いた。
その時突然解析スキルがリリスの脳内で警告を発した。
『魔装を発動してください!』
何事かと思いながら即座に非表示で魔装を発動させると、その途端に強めの精神波がリリスの脳内に届いてきた。
ちょっと!
これって何なの?
『拙いですね。こちらが探知を全て跳ね返しているので、ロイヤルガード達がムキになったみたいです。』
それにしても今の精神波って、軽い攻撃レベルじゃないの?
『本気で精神誘導を仕掛けたのでしょう。』
そこまで私って危険人物視されているの?
『今回は所持品まで目を付けられましたね。』
所持品って?
『魔金属のスローイングダガーですよ。』
あんなの、護身用よ。どこにでもありそうじゃないの?
『彼等にしてみれば未知の武器ですよ。こちらの鑑定スキルですら分析不能な成分を含む魔金属で、しかも火魔法の効果まで付与されているのですから。』
そうかあ。
それは拙かったわね。
『連中はあのスローイングダガーの出処を聞き出そうとして、必死になっているのでしょう。』
そうなると長居は無用だ。リリスは歩調を速め、階段の手前で待機していたメイドからスローイングダガーを受け取ると、即座に階段を降りようとした。
だが一歩踏み出したその時、グンと身体をゆさぶられ、リリスは思わず階段の手すりに掴まって踏みとどまった。
今のは何なの?
これって完全に攻撃レベルじゃないの!
魔装を発動しているから圧迫を感じるだけで済んだけど、今のは尋常じゃないわね。
リリスは歯を食いしばり、階段の一段目から廊下を睨んだ。すでにメイドの姿は無い。それでもこのままでは腹立たしい。
リリスは自分の頭部に大きく魔力を集中させるとカッと目を見開き、誰も居ない廊下に向けてフルパワーで邪眼を発動させた。
不気味な静寂が一瞬の間を包み込む。
気のせいか、ロイヤルガード達の探知が途絶えたような気がする。
フンと鼻息を荒げ、リリスは階段を降りた。気休めかもしれないが、何もしないで帰るのが癪だったのだ。
魔装を解き、自分の階に戻る渦中、リリスは解析スキルを発動させた。
さっきの攻撃はどう思う?
『完全に報復すべきレベルの精神波でしたね。』
うんうん。そうよね。
でも思わず邪眼を放ったけど、意味なかったかしら?
『いえ、その真逆ですよ。効果絶大でしたね。』
えっ?
でも目を合わせるような相手は誰も居なかったわよ。
『大勢のロイヤルガード達がこちらの様子を注視していましたよ。見えないように気配を消していただけです。』
そうだったのね。
『邪眼の効果時間が切れた時の連中の慌てぶりを思うと滑稽ですね。多分、未知の攻撃を仕掛けられたとか言ってパニックを起こしますよ。』
それは痛快だけど邪眼って本当に知られていないスキルなの?
何処にでもありそうなんだけど。
『時代と共に失われた魔法やスキルもあるのですよ。邪眼もそのうちの一つです。それ故に古代魔法を放たれたとでも思うかもしれませんね。』
そうなのね。でも・・・・・これでもう最上階には出入り禁止になるかもね。
『それは無いと思います。王族の要請があれば出入り禁止には出来ないでしょうね。貴族の娘ですから王族が許可している限り、無下に扱うわけにはいきませんから。』
『ロイヤルガード達には良い牽制になったと思いますよ。これでもうこちらに無暗に手出し出来ない筈です。』
それなら良いんだけどね。
でも必要以上に疲れちゃったわ。
ずっしりと背中に重荷を負ったような疲労感だ。これだから王族と関わると苦労するのよねと自分に言い聞かせながら、リリスは深くため息をついて自室に辿り着いたのだった。
翌日の放課後、リリスは学舎の地下の訓練場に居た。
結局リリスはサラに王族からの要請があった事を伝え、サラの手助けが必要な事を伝えたのだった。サラも当初は亜神召喚のスキルを使う事を躊躇っていたが、王族からの要請と言う言葉に素直に従ってくれた。
そこはやはり王家に仕える貴族の娘である。
幼い頃から王家に仕える事を教育されてきたので、心情的に抵抗は無い筈だ。
サラの亜神召喚スキルで呼び出されてきたガーゴイルは、闇の亜神に取り次ぐ使い魔だとリリスは説明した。概ね嘘ではない。ゲルもあえてその姿で現れたくは無いだろう。後でゲルにその姿でサラの前に現れないように釘を刺しておけば良いだけだ。
サラを亜神達の騒動に巻き込みたくない。それはリリスの他意の無い配慮だった。
学舎の地下の訓練場を選んだのは、近場で安全な場所を確保する為の配慮で、午後は関係者以外立ち入り禁止と言う事になっている。これはメリンダ王女に依頼して王家から伝達して貰った。
この場に居るのはリリスとサラ、メリンダ王女にレオナルド王子、そして王家の親衛隊の騎士20名である。
騎士達を準備して貰ったのはリリスの演出だ。勿論王族が此処に居るので、護衛の騎士が傍に居るのは当然と言えば当然なのだが。
サラには不測の事態に備えるために騎士が来ていると説明してある。
準備が整ったところでサラに亜神召喚のスキルでゲルの使い魔を呼び出してもらった。
ここでサラとレオナルド王子がその場を離れて訓練場の隅に待機し、その前に護衛の騎士10名が立ち並び、不測の事態に備えると言う形になった。
他方、離れた場所でゲルとリリスとメリンダ王女が対峙し、その周りに10名の騎士たちが少し離れて待機している。この状態なら話の内容等をサラに聞かれる心配も無い。
ガーゴイルが不機嫌そうに口を開いた。
「どうしたんだよ。こんなところに呼び出して。」
ガーゴイルはぐるりと周囲を見回した。その様子にメリンダ王女も少し緊張している。
「ごめんなさいね、ゲル。でもあなたにどうしても見て欲しいものがあるのよ。」
そう言いながらメリンダ王女は騎士の一人に目配せをし、ガーゴイルの傍に魔剣を持ってこさせた。
それを見て、ガーゴイルの表情が少し変わった。
「これは・・・・・僕がエドワードにあげた魔剣じゃないか。こんなものがまだ残っていたのかい?」
ゲルは覚えていたようだ。
「そうなのよ、ゲル。王家の宝物庫の片隅に封印されていたのよ。ようやく取り出せたの。」
メリンダ王女はその魔剣の鞘を慈しむように軽く撫でた。
「この魔剣の修復はあなたに任せる様にと伝言を添えられていたのよ。」
その言葉にガーゴイルはえっと驚きの声を上げた。だがメリンダ王女がチェストに入っていたプレートを見せると、ガーゴイルの表情も変わった。
「エドワードの奴はそんな風に書き残したんだね。少し話の趣旨が違うんだけどねえ。」
ガーゴイルはそう言いながら頭をポリポリと掻いた。話の趣旨が違うとはどう言う意味なのだろうか?
メリンダ王女もリリスも若干不安になり、ガーゴイルの目をじっと見つめていた。
その不気味な雰囲気を肌身に感じているリリスを見ながら、メリンダ王女が訥々と話を続けた。
「この魔剣は残念ながら刀身が朽ちていて、纏っている魔力もかなり弱くなってきているわ。」
「でもね。チェストの中に文字の刻まれた金属のプレートが一緒に入っていたのよ。」
そう言いながらメリンダ王女は変色した薄い金属のプレートを取り出した。見た目からかなり古いものだと分かる。
「このプレートに刻まれた文字は古い文字なので全部は解読出来ないの。でも解読出来た部分もあって、それによるとやはり開祖エドワード王の所有物だと書かれていたわ。しかも闇の亜神から授かったとも書かれているのよ。」
えっ!
それってゲルがエドワード王に授けたって事?
リリスは目の前に置かれた魔剣の出処を知り、メリンダ王女が関心を寄せている理由を理解した。
「要するに歴史的遺物って事ね。でもこの魔剣って修理出来ないの?」
リリスの問い掛けにメリンダ王女は表情を曇らせた。何か訳ありな様子だ。
「それがねえ。持ち運び程度なら問題ないんだけど、修理しようとすると拒まれるのよ。」
「拒むって?」
「柄の部分から雷撃が放たれるのよ。王家の工房の職人が何人もそのせいで大怪我しちゃったわ。」
へえ~。
そんな事があるのね。
まるで意志を持っているような魔剣だ。だがそれなら修理をしてくれる事を理解しそうな気もするが・・・。
授けたゲルに似て人見知りするのかしら?
そう思うと増々修理してやりたくなるリリスである。だからと言って魔金属錬成などと言う稀有なスキルを、最近手に入れたとも言えるわけも無い。
どうしたものかと思って魔剣を見つめていると、メリンダ王女は話の本題に入ってきた。
「それでね。チェストに入っていたプレートの最後にこう書かれていたのよ。『魔剣の修復は闇の亜神に任せよ』ってね。」
その言葉でリリスはメリンダ王女の最終的な要件を理解した。
要するにゲルを呼び出して欲しいと言う事だ。
リリスの反応を見つめるメリンダ王女の視線が熱い。期待に満ちた表情が見え見えだ。
リリスはしばらく考え込んだ上で話を切り出した。
「ゲルは簡単に呼び出せる相手じゃないからねえ。以前の方法で上手くいくとは限らないのよ。それで・・・」
リリスは一息入れた。
「より良い方法を考えるので少し時間を頂戴。でも必ず何とかして見せるわ、安心して。」
リリスの力強い言葉にメリンダ王女はふっと安堵のため息をついた。
「なるべく早くね。」
「分かってるって。」
リリスは席を立ち、メリンダ王女とレオナルド王子の使い魔に挨拶をして部屋を出た。
リリスは当初サラの亜神召喚のスキルを使えば何とかなると考えた。だがサラをこの話に巻き込むのはどうかと言う不安が高まって来て、メリンダ王女には即答が出来なかった。
どうしても手段方策が無ければチャーリーに頼むと言う手もあるが、そうたびたび奴に頼むわけにもいかない。あまり土の亜神に借りを作りたくないとリリスは考えたのだ。
それならどうするのか?
王族からの要請だと言わない限り、いくらサラでもおいそれと協力してくれるとは思えない。
あれこれと考えながら廊下を歩くと、一段と探知の波動が飛んできた。考え事があるんだから煩わしいのは勘弁してよと心の中で叫びつつ、リリスは急ぎ足で廊下を歩いた。
その時突然解析スキルがリリスの脳内で警告を発した。
『魔装を発動してください!』
何事かと思いながら即座に非表示で魔装を発動させると、その途端に強めの精神波がリリスの脳内に届いてきた。
ちょっと!
これって何なの?
『拙いですね。こちらが探知を全て跳ね返しているので、ロイヤルガード達がムキになったみたいです。』
それにしても今の精神波って、軽い攻撃レベルじゃないの?
『本気で精神誘導を仕掛けたのでしょう。』
そこまで私って危険人物視されているの?
『今回は所持品まで目を付けられましたね。』
所持品って?
『魔金属のスローイングダガーですよ。』
あんなの、護身用よ。どこにでもありそうじゃないの?
『彼等にしてみれば未知の武器ですよ。こちらの鑑定スキルですら分析不能な成分を含む魔金属で、しかも火魔法の効果まで付与されているのですから。』
そうかあ。
それは拙かったわね。
『連中はあのスローイングダガーの出処を聞き出そうとして、必死になっているのでしょう。』
そうなると長居は無用だ。リリスは歩調を速め、階段の手前で待機していたメイドからスローイングダガーを受け取ると、即座に階段を降りようとした。
だが一歩踏み出したその時、グンと身体をゆさぶられ、リリスは思わず階段の手すりに掴まって踏みとどまった。
今のは何なの?
これって完全に攻撃レベルじゃないの!
魔装を発動しているから圧迫を感じるだけで済んだけど、今のは尋常じゃないわね。
リリスは歯を食いしばり、階段の一段目から廊下を睨んだ。すでにメイドの姿は無い。それでもこのままでは腹立たしい。
リリスは自分の頭部に大きく魔力を集中させるとカッと目を見開き、誰も居ない廊下に向けてフルパワーで邪眼を発動させた。
不気味な静寂が一瞬の間を包み込む。
気のせいか、ロイヤルガード達の探知が途絶えたような気がする。
フンと鼻息を荒げ、リリスは階段を降りた。気休めかもしれないが、何もしないで帰るのが癪だったのだ。
魔装を解き、自分の階に戻る渦中、リリスは解析スキルを発動させた。
さっきの攻撃はどう思う?
『完全に報復すべきレベルの精神波でしたね。』
うんうん。そうよね。
でも思わず邪眼を放ったけど、意味なかったかしら?
『いえ、その真逆ですよ。効果絶大でしたね。』
えっ?
でも目を合わせるような相手は誰も居なかったわよ。
『大勢のロイヤルガード達がこちらの様子を注視していましたよ。見えないように気配を消していただけです。』
そうだったのね。
『邪眼の効果時間が切れた時の連中の慌てぶりを思うと滑稽ですね。多分、未知の攻撃を仕掛けられたとか言ってパニックを起こしますよ。』
それは痛快だけど邪眼って本当に知られていないスキルなの?
何処にでもありそうなんだけど。
『時代と共に失われた魔法やスキルもあるのですよ。邪眼もそのうちの一つです。それ故に古代魔法を放たれたとでも思うかもしれませんね。』
そうなのね。でも・・・・・これでもう最上階には出入り禁止になるかもね。
『それは無いと思います。王族の要請があれば出入り禁止には出来ないでしょうね。貴族の娘ですから王族が許可している限り、無下に扱うわけにはいきませんから。』
『ロイヤルガード達には良い牽制になったと思いますよ。これでもうこちらに無暗に手出し出来ない筈です。』
それなら良いんだけどね。
でも必要以上に疲れちゃったわ。
ずっしりと背中に重荷を負ったような疲労感だ。これだから王族と関わると苦労するのよねと自分に言い聞かせながら、リリスは深くため息をついて自室に辿り着いたのだった。
翌日の放課後、リリスは学舎の地下の訓練場に居た。
結局リリスはサラに王族からの要請があった事を伝え、サラの手助けが必要な事を伝えたのだった。サラも当初は亜神召喚のスキルを使う事を躊躇っていたが、王族からの要請と言う言葉に素直に従ってくれた。
そこはやはり王家に仕える貴族の娘である。
幼い頃から王家に仕える事を教育されてきたので、心情的に抵抗は無い筈だ。
サラの亜神召喚スキルで呼び出されてきたガーゴイルは、闇の亜神に取り次ぐ使い魔だとリリスは説明した。概ね嘘ではない。ゲルもあえてその姿で現れたくは無いだろう。後でゲルにその姿でサラの前に現れないように釘を刺しておけば良いだけだ。
サラを亜神達の騒動に巻き込みたくない。それはリリスの他意の無い配慮だった。
学舎の地下の訓練場を選んだのは、近場で安全な場所を確保する為の配慮で、午後は関係者以外立ち入り禁止と言う事になっている。これはメリンダ王女に依頼して王家から伝達して貰った。
この場に居るのはリリスとサラ、メリンダ王女にレオナルド王子、そして王家の親衛隊の騎士20名である。
騎士達を準備して貰ったのはリリスの演出だ。勿論王族が此処に居るので、護衛の騎士が傍に居るのは当然と言えば当然なのだが。
サラには不測の事態に備えるために騎士が来ていると説明してある。
準備が整ったところでサラに亜神召喚のスキルでゲルの使い魔を呼び出してもらった。
ここでサラとレオナルド王子がその場を離れて訓練場の隅に待機し、その前に護衛の騎士10名が立ち並び、不測の事態に備えると言う形になった。
他方、離れた場所でゲルとリリスとメリンダ王女が対峙し、その周りに10名の騎士たちが少し離れて待機している。この状態なら話の内容等をサラに聞かれる心配も無い。
ガーゴイルが不機嫌そうに口を開いた。
「どうしたんだよ。こんなところに呼び出して。」
ガーゴイルはぐるりと周囲を見回した。その様子にメリンダ王女も少し緊張している。
「ごめんなさいね、ゲル。でもあなたにどうしても見て欲しいものがあるのよ。」
そう言いながらメリンダ王女は騎士の一人に目配せをし、ガーゴイルの傍に魔剣を持ってこさせた。
それを見て、ガーゴイルの表情が少し変わった。
「これは・・・・・僕がエドワードにあげた魔剣じゃないか。こんなものがまだ残っていたのかい?」
ゲルは覚えていたようだ。
「そうなのよ、ゲル。王家の宝物庫の片隅に封印されていたのよ。ようやく取り出せたの。」
メリンダ王女はその魔剣の鞘を慈しむように軽く撫でた。
「この魔剣の修復はあなたに任せる様にと伝言を添えられていたのよ。」
その言葉にガーゴイルはえっと驚きの声を上げた。だがメリンダ王女がチェストに入っていたプレートを見せると、ガーゴイルの表情も変わった。
「エドワードの奴はそんな風に書き残したんだね。少し話の趣旨が違うんだけどねえ。」
ガーゴイルはそう言いながら頭をポリポリと掻いた。話の趣旨が違うとはどう言う意味なのだろうか?
メリンダ王女もリリスも若干不安になり、ガーゴイルの目をじっと見つめていた。
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