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少年の初恋2
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メリンダ王女からの追及。
その目を見るとリリスはいたたまれなくなってしまう。だがその気持ちをおくびにも出さず、リリスはしらを切った。
「実は私も良く知らないのよ。」
「嘘をついても駄目よ!」
メリンダ王女の鼻息が荒い。
「あんたって嘘をついているときは小鼻が膨らむのよね。隠し切れないわよ!」
やけに観察眼のある王女様だ。
「どんな手段を使ってでも吐かせるわよ!」
笑顔で恫喝するメリンダ王女である。リリスよりも年下とは思えない迫力だ。
権力を持つ王族がそんな事を言わないでよ。
シャレにならないわ。
リリスは止むを得ずリンの素性を話し始めた。
「リンちゃんは・・・・・駄目なのよ。だって・・・・・人族じゃないから。」
リリスの言葉にメリンダ王女は真顔になった。その目には困惑が感じられる。
「人族じゃなかったら何なのよ。まさかバンパイア族? それともドライアドやニンフ? 」
メリンダ王女の言葉にリリスは首を横に振った。
「リンちゃんは・・・・・人化した竜なのよ。覇竜の生き残りで・・・」
リリスの言葉にメリンダ王女はえっ!と叫んでフィリップ王子と顔を見合わせた。フィリップ王子の顔にも困惑が見える。
「どうしてそんなものが仮装ダンスパーティーに居たの? リリスが連れて来たの?」
「いやそれ以前にどうやって会場全体のセキュリティを潜り抜けたんだい?」
矢継ぎ早の二人の問い掛けに、リリスは泣きそうな表情で、
「ユリアが連れて来たのよ。」
リリスの返答にフィリップ王子は少しうんざりした表情を見せ、
「そうか。亜神の仕業なら防ぎようも無いか。奴らは自分達の都合に合わせて物理法則をも捻じ曲げるからね。」
そうなのよ、そうなのよ。
リリスは自分の思いを代弁してくれたフィリップ王子に、心の中でエールを送った。
だがメリンダ王女は納得していない。
「そのリンって言う子はリリスに親し気に纏わり付いていたって聞いたわよ。どう言う関係なの?」
「それは・・・・・」
リリスは止む無くリンの出自を簡単に説明した。その言葉にメリンダ王女も興味深そうに聞き入っていた。
「リリスの魔力って竜をも育てるのね。」
「その言い方はあながち間違ってはいないけどね。」
そう言いながらポリポリと頭を掻くリリスである。
「そうなると・・・これはどうしたら良いんだ? リトラスにどう説明するんだ?」
そう言いながらメリンダ王女の顔を見つめるフィリップ王子。メリンダ王女はう~んと唸って考え込んでしまった。
リリスはその静寂を破って、
「竜だと説明するしかないわよ。諦めさせるのはかわいそうだけど・・・」
その言葉にフィリップ王子も納得の表情を見せた。
「そうだね。隠していても意味が無い。事実を教えてあげるのが最善だね。」
「そうねえ。この後、リトラスに使い魔を送って説明するわ。」
メリンダ王女はそう言うと、ふうっと深いため息をついた。
その言葉にリリスもほっとして紅茶をみ干し、軽く雑談を交わすとメリンダ王女の部屋から退出した。
リンちゃんって愛嬌があって可愛いからなあ。
同じ年頃の男の子が惹かれるのも無理ないわね。
そう思いながらリリスは下に降りる階段の踊り場に立った。だが周囲を見渡してもセラが居ない。帰りはノーチェックで良いと言う事なのだろうか?
気を取り直して階段に向かうとリノからの念話が届いた。
(リリス様、お帰りですか?)
(ええ。セラさんが居ないけど、このまま帰って良いのね?)
(はい、大丈夫ですよ。私からも伝えておきます。セラさんは今、リリス様のお友達とお茶を飲んでいますから。)
うっ!
またサラを呼び込んでいるのね。
サラって大丈夫なのかしら?
不安を抱きつつもリリスは階段を降り、自室に戻った。
だが、明日の授業の用意をしていると、突然ドアがノックされ、開けるとフィリップ王子の使い魔の小人が入り込んできた。その肩にはメリンダ王女の使い魔の芋虫がへばりついている。何時もの姿だ。
それにしても何事だろうか?
小人は邪魔するよと言いながらソファにちょこんと座った。
芋虫がその目を見開いてリリスを見つめ、
「リリス、駄目だったわ。」
何が駄目なのよ?
「リトラスの説得に失敗しちゃった。竜でも良いからもう一度会いたいって言うのよね。それも涙目で訴えるのよ。」
あらあら。
困ったわね。
「何とか呼び出せないの?」
「そんなに簡単に呼び出せないわよ。向こうの都合もあるからね。一応リンも今居る竜族では姫様と呼ばれている立場だし・・・」
リリスの言葉に芋虫がう~んと唸って考え込んでしまった。
何とかしてあげれば良いのだが、良い方策が浮かんでこない。
リリスは念話で連絡が付かないかと思って試してみたが、何度試しても応答は無かった。
そもそも念話の通じる範囲は限られている。
リンが居るであろう大陸北西部の山脈まで通じる筈も無い。
だが小人と芋虫ががっくりと落胆していると、ドアがバタンと開いて赤とブルーのピクシーが飛び込んできた。タミアとユリアだ。
「あらっ! 先客が居たのね。」
そう言いながら2体のピクシーが小人を両サイドから突いた。
「何だか元気が無いじゃないの。どうかしたの?」
「ええ。実は・・・・・」
小人がそれまでの経緯を話すと、ブルーの衣装のピクシーが急にリリスの傍ににじり寄ってきた。その表情を見ると何かを企んでいそうだ。
「リリス。リンと話がしたいのなら、リンの傍まで送ってあげるわよ。」
「ええっ! どうやって・・・」
リリスもユリアの意図が良く分からない。
「ただし、そのままの姿では無理ね。そもそも人族が高位の竜族のコロニーに入るなんて不可能なのよ。生息環境が全く違う上に、何十体もの竜の強烈な魔力の波動が渦巻いていて、肉体が耐えられないわ。」
「それでね。使い魔の形で送り込んであげるから、リリスの使い魔を呼び出しなさい。」
リリスはユリアの言う通りに使い魔のピクシーを召喚し、リリスと五感を共有させた。リリスの身体はソファに深く座り込み休んでいる状態だ。それでもピクシーの身体とシンクロナイズしていて、ピクシーの身体を通して五感を感じられる。更に魔力の波動も纏わらせているので、他人からはリリスが憑依しているように感じられるはずだ。
ユリアはリリスの準備が整ったのを確認してパチンと指を鳴らすと、ユリアとリリスが透明の球体に包み込まれた。これは移動用のバリアーだろうか?
以前にリゾルタの神殿の地下深くに移動する際に、ユリアが使ったバリアーと同じものだろう。
さあ移動しようと言うその時に、球状のバリアーの壁から赤い火の球がゆっくりと内部に侵入してきた。
「タミア! 勝手に侵入しないでよ!」
ユリアが叫ぶと赤い火の球は弾けて消え、そこにタミアと芋虫を生やした小人が立っていた。
「私達も付いて行くからね!」
タミアの言葉に続いて芋虫が叫ぶ。
「そうよ! 私達を除け者にしないでよね!」
タミアが無理矢理潜入してきたようだ。
「除け者にしたわけじゃあないわよ。」
呆れた口調でユリアはそう言うと、ウッと魔力を集中させた。その途端に球体がブンッと鈍い音を発て、急上昇するかのような重力を感じた。
球体から見えていたリリスの自室の光景が歪み、次の瞬間にふっと消えた。気が付くと球体の周囲が真っ白になっている。
「着いたわよ。普通に会話できるからリンを呼び出しなさい。」
ユリアの言葉にリリスは半信半疑でリンを呼んだ。
「リンちゃん。ここに居るの?」
そう呼ぶと球体の周りの白い光がゆらっと蠢いた。
「あらっ! その声はリリスお姉様ね。どうしてここに? その前にどこに居るの?」
リンの問い掛けにユリアが口を開いた。
「リン。あなたの胸元よ。」
胸元?
そう言われても意味不明だ。
リンは自分の胸元をじっと見つめた。よく見ると白いワンピースの胸元に半透明の小さな球がくっついている。
その半透明の球体はリンの胸元からスッと離れて、目の高さで空中に停止した。
「この距離なら分かるわよね。」
ユリアは球体を移動させたようだ。リリスの目の前にリンの巨大な顔が見えている。
「リンちゃんって・・・こんなに大きかったの?」
リリスの言葉にタミアはアハハと笑い、
「何を言っているのよ、リリス。相手が大きいんじゃないわよ。こっちが小さくなっているだけだからね。」
そうなのか?
「こうしないと時空を超越する際にあんた達に負担が大きくなるのよ。」
う~ん。
良く分からないが、普通の転移とは仕組みが違うようだ。
ユリアは竜のコロニーが激しい魔力で渦巻いていると言っていた。
恐らく普通の転移では潜入できない場所なのだろう。
球体が更に後ろに引くと、リンの上半身が見えてきた。上品なデザインの白いワンピースを着ているようだ。ここでも人化して暮らしているのだろうか?
「リンちゃん。今日はユリアに頼んでここまで連れて来て貰ったの。あなたに話があるのよ。」
「話? ここまで来るなんて、そんなに大事な話ですか?」
「そうなのよ!」
リリスに先んじて芋虫が叫んだ。リリスは小人や芋虫の召喚者を紹介した上で、気持ちがはやるメリンダ王女を制してリンに問い掛けた。
「リンちゃん。先日の仮装ダンスパーティーであなたと踊ったリトラスと言う男の子を覚えている?」
「リトラス・・・・・。誰だっけ?」
そう言ってリンは首を傾げた。その仕草が妙に可愛い。
「・・・ああっ! 思い出したわ。リト君の事ね。」
リト君って呼んでいたの?
それなりに仲良くなっていたのかしら?
「そう。そのリト君よ。彼がリンちゃんにもう一度会いたいって言うのよ。」
えっと驚くリン。その表情には若干の戸惑いが見える。
リリスは話の内容が掴めないリンに、これまでの経緯を順序立てて話したのだった。
その目を見るとリリスはいたたまれなくなってしまう。だがその気持ちをおくびにも出さず、リリスはしらを切った。
「実は私も良く知らないのよ。」
「嘘をついても駄目よ!」
メリンダ王女の鼻息が荒い。
「あんたって嘘をついているときは小鼻が膨らむのよね。隠し切れないわよ!」
やけに観察眼のある王女様だ。
「どんな手段を使ってでも吐かせるわよ!」
笑顔で恫喝するメリンダ王女である。リリスよりも年下とは思えない迫力だ。
権力を持つ王族がそんな事を言わないでよ。
シャレにならないわ。
リリスは止むを得ずリンの素性を話し始めた。
「リンちゃんは・・・・・駄目なのよ。だって・・・・・人族じゃないから。」
リリスの言葉にメリンダ王女は真顔になった。その目には困惑が感じられる。
「人族じゃなかったら何なのよ。まさかバンパイア族? それともドライアドやニンフ? 」
メリンダ王女の言葉にリリスは首を横に振った。
「リンちゃんは・・・・・人化した竜なのよ。覇竜の生き残りで・・・」
リリスの言葉にメリンダ王女はえっ!と叫んでフィリップ王子と顔を見合わせた。フィリップ王子の顔にも困惑が見える。
「どうしてそんなものが仮装ダンスパーティーに居たの? リリスが連れて来たの?」
「いやそれ以前にどうやって会場全体のセキュリティを潜り抜けたんだい?」
矢継ぎ早の二人の問い掛けに、リリスは泣きそうな表情で、
「ユリアが連れて来たのよ。」
リリスの返答にフィリップ王子は少しうんざりした表情を見せ、
「そうか。亜神の仕業なら防ぎようも無いか。奴らは自分達の都合に合わせて物理法則をも捻じ曲げるからね。」
そうなのよ、そうなのよ。
リリスは自分の思いを代弁してくれたフィリップ王子に、心の中でエールを送った。
だがメリンダ王女は納得していない。
「そのリンって言う子はリリスに親し気に纏わり付いていたって聞いたわよ。どう言う関係なの?」
「それは・・・・・」
リリスは止む無くリンの出自を簡単に説明した。その言葉にメリンダ王女も興味深そうに聞き入っていた。
「リリスの魔力って竜をも育てるのね。」
「その言い方はあながち間違ってはいないけどね。」
そう言いながらポリポリと頭を掻くリリスである。
「そうなると・・・これはどうしたら良いんだ? リトラスにどう説明するんだ?」
そう言いながらメリンダ王女の顔を見つめるフィリップ王子。メリンダ王女はう~んと唸って考え込んでしまった。
リリスはその静寂を破って、
「竜だと説明するしかないわよ。諦めさせるのはかわいそうだけど・・・」
その言葉にフィリップ王子も納得の表情を見せた。
「そうだね。隠していても意味が無い。事実を教えてあげるのが最善だね。」
「そうねえ。この後、リトラスに使い魔を送って説明するわ。」
メリンダ王女はそう言うと、ふうっと深いため息をついた。
その言葉にリリスもほっとして紅茶をみ干し、軽く雑談を交わすとメリンダ王女の部屋から退出した。
リンちゃんって愛嬌があって可愛いからなあ。
同じ年頃の男の子が惹かれるのも無理ないわね。
そう思いながらリリスは下に降りる階段の踊り場に立った。だが周囲を見渡してもセラが居ない。帰りはノーチェックで良いと言う事なのだろうか?
気を取り直して階段に向かうとリノからの念話が届いた。
(リリス様、お帰りですか?)
(ええ。セラさんが居ないけど、このまま帰って良いのね?)
(はい、大丈夫ですよ。私からも伝えておきます。セラさんは今、リリス様のお友達とお茶を飲んでいますから。)
うっ!
またサラを呼び込んでいるのね。
サラって大丈夫なのかしら?
不安を抱きつつもリリスは階段を降り、自室に戻った。
だが、明日の授業の用意をしていると、突然ドアがノックされ、開けるとフィリップ王子の使い魔の小人が入り込んできた。その肩にはメリンダ王女の使い魔の芋虫がへばりついている。何時もの姿だ。
それにしても何事だろうか?
小人は邪魔するよと言いながらソファにちょこんと座った。
芋虫がその目を見開いてリリスを見つめ、
「リリス、駄目だったわ。」
何が駄目なのよ?
「リトラスの説得に失敗しちゃった。竜でも良いからもう一度会いたいって言うのよね。それも涙目で訴えるのよ。」
あらあら。
困ったわね。
「何とか呼び出せないの?」
「そんなに簡単に呼び出せないわよ。向こうの都合もあるからね。一応リンも今居る竜族では姫様と呼ばれている立場だし・・・」
リリスの言葉に芋虫がう~んと唸って考え込んでしまった。
何とかしてあげれば良いのだが、良い方策が浮かんでこない。
リリスは念話で連絡が付かないかと思って試してみたが、何度試しても応答は無かった。
そもそも念話の通じる範囲は限られている。
リンが居るであろう大陸北西部の山脈まで通じる筈も無い。
だが小人と芋虫ががっくりと落胆していると、ドアがバタンと開いて赤とブルーのピクシーが飛び込んできた。タミアとユリアだ。
「あらっ! 先客が居たのね。」
そう言いながら2体のピクシーが小人を両サイドから突いた。
「何だか元気が無いじゃないの。どうかしたの?」
「ええ。実は・・・・・」
小人がそれまでの経緯を話すと、ブルーの衣装のピクシーが急にリリスの傍ににじり寄ってきた。その表情を見ると何かを企んでいそうだ。
「リリス。リンと話がしたいのなら、リンの傍まで送ってあげるわよ。」
「ええっ! どうやって・・・」
リリスもユリアの意図が良く分からない。
「ただし、そのままの姿では無理ね。そもそも人族が高位の竜族のコロニーに入るなんて不可能なのよ。生息環境が全く違う上に、何十体もの竜の強烈な魔力の波動が渦巻いていて、肉体が耐えられないわ。」
「それでね。使い魔の形で送り込んであげるから、リリスの使い魔を呼び出しなさい。」
リリスはユリアの言う通りに使い魔のピクシーを召喚し、リリスと五感を共有させた。リリスの身体はソファに深く座り込み休んでいる状態だ。それでもピクシーの身体とシンクロナイズしていて、ピクシーの身体を通して五感を感じられる。更に魔力の波動も纏わらせているので、他人からはリリスが憑依しているように感じられるはずだ。
ユリアはリリスの準備が整ったのを確認してパチンと指を鳴らすと、ユリアとリリスが透明の球体に包み込まれた。これは移動用のバリアーだろうか?
以前にリゾルタの神殿の地下深くに移動する際に、ユリアが使ったバリアーと同じものだろう。
さあ移動しようと言うその時に、球状のバリアーの壁から赤い火の球がゆっくりと内部に侵入してきた。
「タミア! 勝手に侵入しないでよ!」
ユリアが叫ぶと赤い火の球は弾けて消え、そこにタミアと芋虫を生やした小人が立っていた。
「私達も付いて行くからね!」
タミアの言葉に続いて芋虫が叫ぶ。
「そうよ! 私達を除け者にしないでよね!」
タミアが無理矢理潜入してきたようだ。
「除け者にしたわけじゃあないわよ。」
呆れた口調でユリアはそう言うと、ウッと魔力を集中させた。その途端に球体がブンッと鈍い音を発て、急上昇するかのような重力を感じた。
球体から見えていたリリスの自室の光景が歪み、次の瞬間にふっと消えた。気が付くと球体の周囲が真っ白になっている。
「着いたわよ。普通に会話できるからリンを呼び出しなさい。」
ユリアの言葉にリリスは半信半疑でリンを呼んだ。
「リンちゃん。ここに居るの?」
そう呼ぶと球体の周りの白い光がゆらっと蠢いた。
「あらっ! その声はリリスお姉様ね。どうしてここに? その前にどこに居るの?」
リンの問い掛けにユリアが口を開いた。
「リン。あなたの胸元よ。」
胸元?
そう言われても意味不明だ。
リンは自分の胸元をじっと見つめた。よく見ると白いワンピースの胸元に半透明の小さな球がくっついている。
その半透明の球体はリンの胸元からスッと離れて、目の高さで空中に停止した。
「この距離なら分かるわよね。」
ユリアは球体を移動させたようだ。リリスの目の前にリンの巨大な顔が見えている。
「リンちゃんって・・・こんなに大きかったの?」
リリスの言葉にタミアはアハハと笑い、
「何を言っているのよ、リリス。相手が大きいんじゃないわよ。こっちが小さくなっているだけだからね。」
そうなのか?
「こうしないと時空を超越する際にあんた達に負担が大きくなるのよ。」
う~ん。
良く分からないが、普通の転移とは仕組みが違うようだ。
ユリアは竜のコロニーが激しい魔力で渦巻いていると言っていた。
恐らく普通の転移では潜入できない場所なのだろう。
球体が更に後ろに引くと、リンの上半身が見えてきた。上品なデザインの白いワンピースを着ているようだ。ここでも人化して暮らしているのだろうか?
「リンちゃん。今日はユリアに頼んでここまで連れて来て貰ったの。あなたに話があるのよ。」
「話? ここまで来るなんて、そんなに大事な話ですか?」
「そうなのよ!」
リリスに先んじて芋虫が叫んだ。リリスは小人や芋虫の召喚者を紹介した上で、気持ちがはやるメリンダ王女を制してリンに問い掛けた。
「リンちゃん。先日の仮装ダンスパーティーであなたと踊ったリトラスと言う男の子を覚えている?」
「リトラス・・・・・。誰だっけ?」
そう言ってリンは首を傾げた。その仕草が妙に可愛い。
「・・・ああっ! 思い出したわ。リト君の事ね。」
リト君って呼んでいたの?
それなりに仲良くなっていたのかしら?
「そう。そのリト君よ。彼がリンちゃんにもう一度会いたいって言うのよ。」
えっと驚くリン。その表情には若干の戸惑いが見える。
リリスは話の内容が掴めないリンに、これまでの経緯を順序立てて話したのだった。
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