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久し振りのダンジョンチャレンジ1
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魔法学院の新年度。
リリス達は進級し、新たに新入生が入学してきた。
この時期の一連の行事にはリリスも既に慣れてしまっている。
だがそれでもアクシデントはあるもので、幾つかの小さなアクシデントはあった。
それを何とか処理して行事を進めたのは生徒会の尽力の賜物である。
特に新しい生徒会長になったルイーズがテキパキと処理を進め、大事に至らなかったのは僥倖であった。
ルイーズ先輩って、意外に処理能力が高いわね。
そう思ったのはリリスだけではなかったようだ。
数日間のオリエンテーションの後、新入生達の通常の授業が始まる。
それに対応していた教師達も普段の授業の態勢に入っていった。
そして迎えた生徒会の新年度の顔合わせの日。
新たに生徒会に加わった新入生のクラス委員を見て、リリスはアッと声をあげてしまった。
怪訝そうにリリスを見るルイーズ達に照れ笑いをして誤魔化したものの、リリスの驚きは止まらない。
新入生のクラス委員が、ウィンディによく似た明るい少女だったからだ。
しかも彼女は、
「新入生のクラスのクラス委員になりました、ウィンディ・ミア・エルブライトです。よろしくお願いします。」
そう言って笑顔で席に着いた。
名前までウィンディだなんて・・・・・。
そんな事ってあるの?
驚きを心の中に秘めつつ、リリスはその後の会話に加わった。
「ウィンディは魔法は得意なの?」
興味津々に尋ねるエリスに、ウィンディは小さく頷いた。
「それなりに出来ると思います。私の魔法の属性は風と水ですが、主に得意なのは風魔法ですね。」
はきはきと答えるウィンディにエリスも好感を持った様子だ。
「そう言えばエルブライト領って何処でしたっけ?」
リリスの言葉にルイーズが口を開いた。
「確か・・・北の山岳地帯だったわよね。たくさんの風車が立ち並んだ風の谷が有名だったと覚えているわ。」
風の谷?
アニメを思い出しちゃうわね。
リリスの思いを知る由もなく、ウィンディは嬉しそうな表情を見せた。
「そうなんですよぉ。エルブライト領は美しい山並みとたくさんの風車が有名なんです。」
ウィンディはそう答えると、その場にいた全員に小さな箱を配った。
「これもエルブライト領の特産物です。」
そう言われて箱を開くとガラス製の小さな風鈴が入っていた。
それを取り出すと風鈴はチリンチリンと涼し気な音を奏でた。
その音色と共に僅かながら爽やかな波動が伝わってくる。
どうやら風鈴の頂点の部分に小さな魔石が組み込まれているようだ。
それが癒しの波動を付与しているのだろう。
ヒールに似た波動にリリスも心地良く感じ、ゆったりとした気分になった。
でも気になるわね。
礼を言いながら試しにウィンディを鑑定してみた。
**************
ウィンディ・ミア・エルブライト
種族:人族 レベル13
年齢:13
体力:800
魔力:1500
属性:風・水
魔法:エアカッター レベル3++(高度補正有)
エアストーム レベル2+ (高度補正有)
ウォーターカッター レベル1
ウォータースプラッシュ レベル1
スキル:探知 レベル1
毒耐性 レベル1
風神の加護1(機能制限有)
風神の加護2(鑑定不能)(機能停止中)
風神の加護3(鑑定不能)(機能停止中)
**************
う~ん。
やはり謎の多い少女ね。
この風神の加護って何なの?
でも自分から言っていたように、風魔法はかなり得意のようだわ。
「そう言えばもう直ぐダンジョンチャレンジがあるけど、新入生は心構えが出来ているの?」
嬉しそうに風鈴を振り回しているエリスの言葉に、ウィンディはう~んと唸って口を開いた。
「私は大丈夫なんですけど、私のクラスメイトは魔法に長けている子があまり居なくて・・・・・」
「でも剣術に長けた男子が数人いるので頼りにはなりますね。それにシトのダンジョンの様子が最近変わってきて、出没する魔物も低レベルの魔物に限られているそうです。しかも出没する魔物の個体数まで少なくなったと先生が言っていましたね。」
ふうん。
そうなの?
リリスはウィンディの言葉に疑問を持った。
シトのダンジョンはタミアがダンジョンマスターだったはずだ。
あまり力を入れなくなってしまったのだろうか?
もしかして飽きた?
リリスはそう思いながらしばらく談笑していた。
数日後。
リリスは新入生の担任になったロイドから職員室に呼ばれた。
何だろうと思って職員室に行くと、その場には非常勤講師のジークも同席していた。
リリスの顔を見てニヤニヤしている。
ジーク先生が居る!
嫌な予感がするわね。
勿論その感情を顔には出さず、リリスは笑顔で会釈をしてロイドに用件を尋ねた。
「実はリリス君に頼みがあるんだけどね。」
「新入生のクラス委員のウィンディと一緒に、ダンジョンチャレンジに同行して貰いたいんだよ。」
ダンジョンチャレンジに?
「ウィンディと二人でですか?」
「いや、もう一人、新入生が同行するんだが、この子が魔法や剣術が全く駄目なんだ。でも上級貴族の子女だからダンジョンチャレンジには参加するのが原則でね。念のために君に同行して貰おうと言うジーク先生の提案で・・・・・」
そこまで聞いてリリスは勘付いた。
これはジークの画策だ。
シトのダンジョンの様子を探らせようとしているに違いない。
ダンジョンメイトの自分を利用して、シトのダンジョンに刺激を与えるつもりなのだろう。
「分かりました。」
リリスはそう言うと、ジークの顔をちらっと見た。
「でも、ジーク先生の願われるような結果が出るか否かは分かりませんけどね。」
リリスの言葉にジークはピクッと眉を動かしたが、真顔に戻ってうんうんと頷いた。
どうやら図星のようね。
リリスはそう思いながらも平静を保ちつつ職員室を出た。
その日の昼休み。
学舎の傍の公園スペースでベンチに座ってくつろいでいると、そのベンチの縁に小さな小鳥が飛んで来た。
青い身体に白いストライプの入ったその姿は、紛れもなくレイチェルの使い魔だ。
だが亜神としての気配を消しているようで、リリスですら僅かにしかその気配を感じない。
これはレイチェルの気配りなのだろうか?
(お邪魔だったかしら?)
リリスの脳裏にレイチェルからの念話が届いて来た。
(邪魔じゃ無いわよ。それにしても亜神の気配を感じさせないわね。)
リリスの言葉に小鳥はチチチッと鳴いた。
(こんなところで正体を現わしたら大騒動になるわよね。)
(そうね。それでどうしたの? 私に用件でもあるの?)
(ええ。リリスに話をしておいて欲しいって、タミアから頼まれたのよ。シトのダンジョンの件でね。)
レイチェルの念話にリリスはえっ!と驚いて小鳥の顔を見た。
2時間ほど前にシトのダンジョンの事が職員室で話題になっていたからだ。
(それでどう言う話なの?)
(まあ、簡単に言うとタミアがダンジョンマスターに飽きたって事なのよ。)
う~ん。
思った通りだわ。
あの過激な性格のタミアからすれば、単調なダンジョンマスターなどすぐに飽きても不思議じゃ無いけどねえ。
むしろ今まで継続していた事が不思議なくらいよ。
(それでね。私にダンジョンマスターを代わってくれって言うのよね。)
ここまで聞いてリリスは、最近のシトのダンジョンの魔物が少なくなった理由を理解した。
タミアがダンジョンマスターを放棄して、その上あの怠け者のダンジョンコアだけで運営しているとなれば、ダンジョンとして機能していなくても不思議ではない。
リリスはここぞとばかりにシトのダンジョンのあるべき状態を説明した。
それを聞いてウィンディも了解したようだ。
(要するに、学生用の初歩のダンジョンだから、難易度を上げないでくれって事ね。)
(そう。そう言う事なのよ。)
小鳥はふんふんと頷く動作をした。
(でも、タミアから聞いたけど、リリスってトップクラスのダンジョンメイトなんでしょ?)
(そんな事でトップクラスなんて言われても嬉しくないけどね。)
(そのリリスの影響でダンジョンコアが異常動作をしても、片手間のダンジョンマスターの私には制御出来ないわよ。)
う~ん。
そこまでウィンディに最初から要求するのも無理かも・・・・・。
(まあ、それはそれで良いわよ。それを期待している輩も居るからね。)
そう答えながらリリスはジークを脳裏に浮かべていた。
それにしても意外なのはレイチェルの面倒見の良さだ。
同じ風の亜神の降臨の為の一番目のキーであるウィンディと比べると、その性格が全く違う。
あのウィンディのような風来坊と言った印象が全くない。
まるで風が凪いでいるかのような佇まいのレイチェルである。
「ねえ、レイチェル。タミアの後始末って嫌じゃないの?」
リリスは率直に聞いてみた。
「まあ、タミアはあんなものだからね。仕方が無いのよ。」
レイチェルの大人の対応である。
用件を済ませた小鳥はベンチから飛び立ち、上空に消えていった。
リリスはその様子を見ながら、午後の授業の準備の為に学舎に向かった。
そして迎えたダンジョンチャレンジの日。
リリスは学舎の地下の訓練場に足を運んだ。
レザーアーマーにガントレット、レザーブーツの着用は何時もの通りである。
訓練場の片隅には、同じような装備のウィンディとロイド、その傍に小柄な少女が居た。
「リリス先輩、申し訳ありません。同行させちゃって・・・・・」
そう言いながら頭を下げるウィンディに、リリスは手を横に振り笑顔を向けた。
「良いのよ。気にしないで。」
同行する少女が上級貴族の子女だと聞いていたので、リリスは先ず自分からウィンディの傍に居たその小柄な少女に挨拶をした。
「4年生のリリスです。よろしくね。」
少女ははにかみながら口を開いた。
「新入生のリリアです。今日はよろしくお願いします。」
気弱そうな、物腰の柔らかい少女だ。
それでも一応上級貴族の子女なのだろう。
言葉の端々に気品が感じられる。
とりあえずリリスはリリアを鑑定してみた。
**************
リリア・エル・ウィンドフォース
種族:人族 レベル13
年齢:13
体力:500
魔力:800
属性:風・火
魔法:エアカッター レベル1
ファイヤーボール レベル1
スキル:探知 レベル2
毒耐性 レベル2
投擲 レベル2
(秘匿領域:解析済み)
(火魔法の足枷)
(業火の化身)
**************
うっ!
これって鑑定しちゃダメなパターンなのでは・・・・・。
ステータスに秘匿領域で隠された称号があるのね。
これって私の鑑定スキルではバレちゃっているけど、普通の人には鑑定出来ないだろうなあ。
それにしても業火の化身って何・・・・・。
この子も色々と訳ありな感じねえ。
ステータスに関してはとりあえず黙っておこう。
リリスは作り笑いをしてロイドに挨拶をした。
「ロイド先生。準備は出来ていますよ。さあ、シトのダンジョンに行きましょう。」
リリスの言葉にうんと頷き、ロイドは転移の魔石を発動させたのだった。
リリス達は進級し、新たに新入生が入学してきた。
この時期の一連の行事にはリリスも既に慣れてしまっている。
だがそれでもアクシデントはあるもので、幾つかの小さなアクシデントはあった。
それを何とか処理して行事を進めたのは生徒会の尽力の賜物である。
特に新しい生徒会長になったルイーズがテキパキと処理を進め、大事に至らなかったのは僥倖であった。
ルイーズ先輩って、意外に処理能力が高いわね。
そう思ったのはリリスだけではなかったようだ。
数日間のオリエンテーションの後、新入生達の通常の授業が始まる。
それに対応していた教師達も普段の授業の態勢に入っていった。
そして迎えた生徒会の新年度の顔合わせの日。
新たに生徒会に加わった新入生のクラス委員を見て、リリスはアッと声をあげてしまった。
怪訝そうにリリスを見るルイーズ達に照れ笑いをして誤魔化したものの、リリスの驚きは止まらない。
新入生のクラス委員が、ウィンディによく似た明るい少女だったからだ。
しかも彼女は、
「新入生のクラスのクラス委員になりました、ウィンディ・ミア・エルブライトです。よろしくお願いします。」
そう言って笑顔で席に着いた。
名前までウィンディだなんて・・・・・。
そんな事ってあるの?
驚きを心の中に秘めつつ、リリスはその後の会話に加わった。
「ウィンディは魔法は得意なの?」
興味津々に尋ねるエリスに、ウィンディは小さく頷いた。
「それなりに出来ると思います。私の魔法の属性は風と水ですが、主に得意なのは風魔法ですね。」
はきはきと答えるウィンディにエリスも好感を持った様子だ。
「そう言えばエルブライト領って何処でしたっけ?」
リリスの言葉にルイーズが口を開いた。
「確か・・・北の山岳地帯だったわよね。たくさんの風車が立ち並んだ風の谷が有名だったと覚えているわ。」
風の谷?
アニメを思い出しちゃうわね。
リリスの思いを知る由もなく、ウィンディは嬉しそうな表情を見せた。
「そうなんですよぉ。エルブライト領は美しい山並みとたくさんの風車が有名なんです。」
ウィンディはそう答えると、その場にいた全員に小さな箱を配った。
「これもエルブライト領の特産物です。」
そう言われて箱を開くとガラス製の小さな風鈴が入っていた。
それを取り出すと風鈴はチリンチリンと涼し気な音を奏でた。
その音色と共に僅かながら爽やかな波動が伝わってくる。
どうやら風鈴の頂点の部分に小さな魔石が組み込まれているようだ。
それが癒しの波動を付与しているのだろう。
ヒールに似た波動にリリスも心地良く感じ、ゆったりとした気分になった。
でも気になるわね。
礼を言いながら試しにウィンディを鑑定してみた。
**************
ウィンディ・ミア・エルブライト
種族:人族 レベル13
年齢:13
体力:800
魔力:1500
属性:風・水
魔法:エアカッター レベル3++(高度補正有)
エアストーム レベル2+ (高度補正有)
ウォーターカッター レベル1
ウォータースプラッシュ レベル1
スキル:探知 レベル1
毒耐性 レベル1
風神の加護1(機能制限有)
風神の加護2(鑑定不能)(機能停止中)
風神の加護3(鑑定不能)(機能停止中)
**************
う~ん。
やはり謎の多い少女ね。
この風神の加護って何なの?
でも自分から言っていたように、風魔法はかなり得意のようだわ。
「そう言えばもう直ぐダンジョンチャレンジがあるけど、新入生は心構えが出来ているの?」
嬉しそうに風鈴を振り回しているエリスの言葉に、ウィンディはう~んと唸って口を開いた。
「私は大丈夫なんですけど、私のクラスメイトは魔法に長けている子があまり居なくて・・・・・」
「でも剣術に長けた男子が数人いるので頼りにはなりますね。それにシトのダンジョンの様子が最近変わってきて、出没する魔物も低レベルの魔物に限られているそうです。しかも出没する魔物の個体数まで少なくなったと先生が言っていましたね。」
ふうん。
そうなの?
リリスはウィンディの言葉に疑問を持った。
シトのダンジョンはタミアがダンジョンマスターだったはずだ。
あまり力を入れなくなってしまったのだろうか?
もしかして飽きた?
リリスはそう思いながらしばらく談笑していた。
数日後。
リリスは新入生の担任になったロイドから職員室に呼ばれた。
何だろうと思って職員室に行くと、その場には非常勤講師のジークも同席していた。
リリスの顔を見てニヤニヤしている。
ジーク先生が居る!
嫌な予感がするわね。
勿論その感情を顔には出さず、リリスは笑顔で会釈をしてロイドに用件を尋ねた。
「実はリリス君に頼みがあるんだけどね。」
「新入生のクラス委員のウィンディと一緒に、ダンジョンチャレンジに同行して貰いたいんだよ。」
ダンジョンチャレンジに?
「ウィンディと二人でですか?」
「いや、もう一人、新入生が同行するんだが、この子が魔法や剣術が全く駄目なんだ。でも上級貴族の子女だからダンジョンチャレンジには参加するのが原則でね。念のために君に同行して貰おうと言うジーク先生の提案で・・・・・」
そこまで聞いてリリスは勘付いた。
これはジークの画策だ。
シトのダンジョンの様子を探らせようとしているに違いない。
ダンジョンメイトの自分を利用して、シトのダンジョンに刺激を与えるつもりなのだろう。
「分かりました。」
リリスはそう言うと、ジークの顔をちらっと見た。
「でも、ジーク先生の願われるような結果が出るか否かは分かりませんけどね。」
リリスの言葉にジークはピクッと眉を動かしたが、真顔に戻ってうんうんと頷いた。
どうやら図星のようね。
リリスはそう思いながらも平静を保ちつつ職員室を出た。
その日の昼休み。
学舎の傍の公園スペースでベンチに座ってくつろいでいると、そのベンチの縁に小さな小鳥が飛んで来た。
青い身体に白いストライプの入ったその姿は、紛れもなくレイチェルの使い魔だ。
だが亜神としての気配を消しているようで、リリスですら僅かにしかその気配を感じない。
これはレイチェルの気配りなのだろうか?
(お邪魔だったかしら?)
リリスの脳裏にレイチェルからの念話が届いて来た。
(邪魔じゃ無いわよ。それにしても亜神の気配を感じさせないわね。)
リリスの言葉に小鳥はチチチッと鳴いた。
(こんなところで正体を現わしたら大騒動になるわよね。)
(そうね。それでどうしたの? 私に用件でもあるの?)
(ええ。リリスに話をしておいて欲しいって、タミアから頼まれたのよ。シトのダンジョンの件でね。)
レイチェルの念話にリリスはえっ!と驚いて小鳥の顔を見た。
2時間ほど前にシトのダンジョンの事が職員室で話題になっていたからだ。
(それでどう言う話なの?)
(まあ、簡単に言うとタミアがダンジョンマスターに飽きたって事なのよ。)
う~ん。
思った通りだわ。
あの過激な性格のタミアからすれば、単調なダンジョンマスターなどすぐに飽きても不思議じゃ無いけどねえ。
むしろ今まで継続していた事が不思議なくらいよ。
(それでね。私にダンジョンマスターを代わってくれって言うのよね。)
ここまで聞いてリリスは、最近のシトのダンジョンの魔物が少なくなった理由を理解した。
タミアがダンジョンマスターを放棄して、その上あの怠け者のダンジョンコアだけで運営しているとなれば、ダンジョンとして機能していなくても不思議ではない。
リリスはここぞとばかりにシトのダンジョンのあるべき状態を説明した。
それを聞いてウィンディも了解したようだ。
(要するに、学生用の初歩のダンジョンだから、難易度を上げないでくれって事ね。)
(そう。そう言う事なのよ。)
小鳥はふんふんと頷く動作をした。
(でも、タミアから聞いたけど、リリスってトップクラスのダンジョンメイトなんでしょ?)
(そんな事でトップクラスなんて言われても嬉しくないけどね。)
(そのリリスの影響でダンジョンコアが異常動作をしても、片手間のダンジョンマスターの私には制御出来ないわよ。)
う~ん。
そこまでウィンディに最初から要求するのも無理かも・・・・・。
(まあ、それはそれで良いわよ。それを期待している輩も居るからね。)
そう答えながらリリスはジークを脳裏に浮かべていた。
それにしても意外なのはレイチェルの面倒見の良さだ。
同じ風の亜神の降臨の為の一番目のキーであるウィンディと比べると、その性格が全く違う。
あのウィンディのような風来坊と言った印象が全くない。
まるで風が凪いでいるかのような佇まいのレイチェルである。
「ねえ、レイチェル。タミアの後始末って嫌じゃないの?」
リリスは率直に聞いてみた。
「まあ、タミアはあんなものだからね。仕方が無いのよ。」
レイチェルの大人の対応である。
用件を済ませた小鳥はベンチから飛び立ち、上空に消えていった。
リリスはその様子を見ながら、午後の授業の準備の為に学舎に向かった。
そして迎えたダンジョンチャレンジの日。
リリスは学舎の地下の訓練場に足を運んだ。
レザーアーマーにガントレット、レザーブーツの着用は何時もの通りである。
訓練場の片隅には、同じような装備のウィンディとロイド、その傍に小柄な少女が居た。
「リリス先輩、申し訳ありません。同行させちゃって・・・・・」
そう言いながら頭を下げるウィンディに、リリスは手を横に振り笑顔を向けた。
「良いのよ。気にしないで。」
同行する少女が上級貴族の子女だと聞いていたので、リリスは先ず自分からウィンディの傍に居たその小柄な少女に挨拶をした。
「4年生のリリスです。よろしくね。」
少女ははにかみながら口を開いた。
「新入生のリリアです。今日はよろしくお願いします。」
気弱そうな、物腰の柔らかい少女だ。
それでも一応上級貴族の子女なのだろう。
言葉の端々に気品が感じられる。
とりあえずリリスはリリアを鑑定してみた。
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リリア・エル・ウィンドフォース
種族:人族 レベル13
年齢:13
体力:500
魔力:800
属性:風・火
魔法:エアカッター レベル1
ファイヤーボール レベル1
スキル:探知 レベル2
毒耐性 レベル2
投擲 レベル2
(秘匿領域:解析済み)
(火魔法の足枷)
(業火の化身)
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うっ!
これって鑑定しちゃダメなパターンなのでは・・・・・。
ステータスに秘匿領域で隠された称号があるのね。
これって私の鑑定スキルではバレちゃっているけど、普通の人には鑑定出来ないだろうなあ。
それにしても業火の化身って何・・・・・。
この子も色々と訳ありな感じねえ。
ステータスに関してはとりあえず黙っておこう。
リリスは作り笑いをしてロイドに挨拶をした。
「ロイド先生。準備は出来ていますよ。さあ、シトのダンジョンに行きましょう。」
リリスの言葉にうんと頷き、ロイドは転移の魔石を発動させたのだった。
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