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リリアのストレス発散1
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リリスの部屋を訪れたウィンディ。
その表情が冴えないのが気になる。
「リリアの体調がそんなに悪いの?」
リリスの言葉にウィンディは何故か苦笑いをした。
「まあ、結論から言うとストレスなんですよね。精神的な鬱屈から体調に影響が出てきているんです。」
ストレス?
授業についていけないとか、ハブられているとか・・・。
「それでも授業を休むほどだから、鬱っぽくなっているの?」
「いえ。リリアは落ち込んではいません。う~ん。どう言って説明したら良いのか・・・・・」
ウィンディはふうっと大きくため息をついた。
「全ての原因はリリアの持つ加護なんです。加護による破壊衝動を抑えるのが、リリアのストレスになっているって言っていました。」
「でもそれってマキちゃんの聖魔法でかなり軽減されたんじゃないの?」
リリスの言葉にウィンディはうんうんと頷いた。
「それはそうなんですけど、リリアの中で加護の力が大きくなりつつあると感じているそうです。さすがに取り込まれる事は無いですが、たまには大量の魔物を焼き尽くしたいと言っていました。」
「それってダンジョン探索にでも参加すれば良いわよ。でもそれで授業を休むのが良く分からないわね。」
リリスの言葉にウィンディは少し考え込んだ。
説明する言葉を探しているような仕草をしている。
「まあ、リリアの言葉を借りれば、息をするように火を噴きたくなると言う事です。」
「それってやっぱり加護に取り込まれているんじゃないの?」
「本人は否定しています。だから大丈夫だとは思いますよ。実際本人と話をしていても、挙動に不審なところは有りませんから。」
う~ん。
本人に会わないと、状況が良く分からないわね。
「まあ、いずれにしてもダンジョンチャレンジを繰り返すのが良いわね。」
リリスの言葉にウィンディは首を横に振った。
「残念ながら、シトのダンジョンでは物足りないそうです。」
へええええ~。
リリアにしては生意気な事を言うわね。
でもそれだけ火魔法に自信を持てるようになってきたのかしら。
「たまにで良いので、大量の魔物を焼き払いたいそうです。」
それってまるでタミアの言いそうなセリフだわ。
それにしても大量の魔物ねえ。
リリスの脳裏にふと思いついたのは、獣人の国アブリル王国での魔物の駆除だ。
ワームホールから湧き出て来る大量の魔物の定期的な駆除を、ミラ王国の軍に依頼していたのだった。
リリスはエリスやリンディと共に向かったアブリル王国の魔物駆除の件を、ウィンディに簡単に説明した。
その話を聞いてウィンディは終始目を輝かせていた。
「それって軍の活動の一部なんですよね。それならリリアのお兄様にお願いすれば、話が付くんじゃないですか?」
「ああ、マーティンさんの事ね。軍人だし面倒見の良いお兄様だから、リリアが頼めば手を打ってくれるかもね。」
そうよ!
それが良いわ。
ジーク先生に直に頼まなくても済むわね。
「私、リリアに話をしてみます。」
ウィンディは自分の気持ちに急かされるように立ち上がり、リリスに礼を言って部屋を出て行った。
慌ただしい子ねえ。
リリスはそう思いながらもジークの顔を思い浮かべた。
実際にアブリル王国に行くとなると、ジークが同行するのは間違いない。
それでもジークに直接借りを作る事は避けたい。
借りを作った際の代償を考えると憂鬱になるからだ。
リリスはウィンディとリリアの様子を思い浮かべて、微笑みながら明日の授業の準備を始めた。
そして数日後。
アブリル王国の魔物駆除の機会は意外に早く訪れた。
勿論リリアの兄のマーティンが奔走してくれたのだが、マーティンもリリアの加護の事を知っているので、リリアの精神状態には過敏に反応してしまうのだろう。
この日は休日で、リリス達は学舎の地下の訓練場に集結した。
その場に集まったのはジークとマーティン、そしてリリスとリリアであった。リリスはリリアの監視役と言う事で、ジークからではなく、マーティンから直接同行する事を要請されたのだ。
各自がレザーアーマーにガントレットを装着し、レザーブーツを履いている。
比較的軽装備ではあるが、全員魔法の能力の高いメンバーなので機動力に重点を置いているのだ。
全員が集まったところでいざ出発かと思われたのだが、ジークが勿体ぶった表情で口を開いた。
「今日はもう一人、参加者が居るんだ。そろそろ来るはずなんだがね。」
そう言いながらジークはマーティンの顔を覗き込んだ。
その視線にマーティンは若干たじろぎ、訓練場の片隅に視線を移した。
「ああ、今来ましたよ。」
マーティンの言葉と共に、誰かが転移されてきた。
現われたのは女性のフォルムだ。
白い軍服にレザーアーマーを装着して近付いて来たのは、まだ20歳前後の若い女性だった。
キリッとした顔つきのクールな美人である。
ジークに礼をし、マーティンとリリアに手を振って、その女性はリリスの傍に立ち止まった。
「あなたがリリスさんね。初めまして。リリアの姉のパメラです。よろしくね。」
ニコッと笑いながらも目が鋭い。
目が笑っていないわ、この人。
まるで私を観察してやろうとでも言いそうな視線だわ。
リリスは直感的に苦手な類の人物だと感じた。
「パメラはリリアのすぐ上の姉なんだよ。」
マーティンの説明にジークが捕捉する。
「パメラ君は優秀な軍人でね。苛烈さで男性でも嫌がる南部国境地帯の警備を、自分から志願して引き受けてくれているんだ。勿論それ相応の魔法の能力の高さが裏付けになっているんだけどね。」
リリスはそうですかと感心しながらも、パメラの視線を避けがちなリリアの表情が気になった。
そうか。
この人ともう一人のお姉さんが、リリアの事を蔑み、罵倒していたのよね。
そうすると、今日はリリアの現状を見極めに来たのかしら?
「それじゃあ、出発しようか。先に10名ほどの警護の兵士が現地に行っているが、このメンバーなら必要はないかもね。」
そう言いながらジークは懐から転移の魔石を取り出し、魔力を注いで発動させた。
視界が暗転し、気が付くとリリス達は草原に立っていた。
広い草原の周囲は連なる山々に囲まれ、リリス達以外に人の気配は一切無い。
魔物の多発地帯だから、この地域に足を踏み入れる者など居るはずも無いのである。
「アブリル王国側からの情報ではしばらくワームホールが出現していない。だがこの数日、ワームホールの出現の兆候が多数見られるようになったので、おそらく今日明日にも出現するはずだ。」
そう言いながら、ジークは周囲の山々を見回した。
「うん。早速出現しそうだね。あそこの山のすそ野が怪しい。」
ジークの指さす方向に目を向けると、500mほど離れた山のすそ野が、陽炎のようにゆらゆらとぼやけながら揺れている。
そこに小さな黒い点が現われたかと思うと、あっという間に大きく広がり、直径10mほどの穴となった。ワームホールの出入り口だ。
「早速のお出ましだ。リリア君、準備は良いか? 今日の主人公は君だからね。」
ジークの言葉にリリアは強く頷いた。
「私もじっくりと見させてもらうわよ。」
パメラの言葉は何処までも上から目線だ。
見ててあげるからやってみなさいよと言う思いが伝わってくる。
リリアは身体中に魔力を循環させ、火魔法の準備を整えた。
ワームホールからドドドドドッと言う地響きが聞こえて来た。
その直後出現したのは大量の武装したスケルトンだった。
魔剣や魔弓を持ち、次々にワームホールから溢れ出て来る。
「最初から随分多いね。」
ジークの言葉は軽いが、スケルトンの数は目に見える範囲で既に300を超えているようだ。
「これを全部リリアに任せるのは無理ね。手伝ってあげるから、やれるところまでやってみなさい。」
パメラの言葉にリリアはうんと頷きながら、両手両肩と頭上の5か所にファイヤーニードルの束を出現させた。
ニードルと言ってもかなり太く、ボルトに近い大きさだ。
5本づつそれぞれの場所で回転しているファイヤーニードルを見て、パメラはふうんと声をあげた。
それなりに興味を持ったのだろう。
リリアは魔力を集中させ、計25本のファイヤーニードルを一斉に放った。
それらはキーンと金切り音を立てて高速で滑空し、投擲スキルの補正を受けてそれぞれの目標の魔物に向かって行く。
あるものは弧を描いて斜め上空から襲い掛かり、あるものは地上すれすれを滑空し、魔物の直前でホップアップしながら着弾した。
ファイヤーニードルを撃ち込まれたスケルトンは体内から発火し、あっという間に火達磨となってその場に崩れ落ちた。
間髪を入れずリリアはファイヤーニードルを全弾リロードし、続けざまにそれらを放った。
再び25本のファイヤーニードルがスケルトンに向かって行く。
その動作を数回繰り返すも、魔物の数はあまり減少した印象が無い。
「う~ん。個別に魔物を倒せるようにはなったのね。でもこれだけの魔物となると限度があるわね。」
パメラの言葉にリリアは少し残念そうな表情を見せた。
妹の成長を素直に誉めてあげられないのかしらね?
リリスの思いをスルーするようにジークが口を開いた。
「パメラ君。リリア君の負担をなくすために、少し魔物を減らしてやってくれ。」
ジークの言葉にも少しとげがある。
リリアが力不足だと言っているようなものだ。
パメラはハイと答えて魔力を集中させ、両手を突き出して火魔法を一気に発動させた。
パメラの両手の先に現われたのは高さ1mほどの小さな火の渦だ。
それらは瞬時にスケルトンの軍団に向かい、移動と共に大きくなっていく。
魔物の傍まで近付くと、その火の渦は高さ20mほどの巨大な竜巻となっていた。ファイヤートルネードだ。
幾つもの火の竜巻が縦横無尽に動き回り、片っ端から魔物を焼き尽くしていく。
あっという間に大半のスケルトンが焼き尽くされてしまった。
その光景にリリアも呆然と立ち尽くしていた。
あ~あ。
そこまでやっちゃって・・・。
リリアが自信を無くさなければ良いんだけど。
そう思ったリリスだが、リリアの口から出た言葉は意外なものだった。
「魔物が焼き尽くされていくのって、興奮しちゃうわ。お姉様、ありがとう。」
リリアの言葉にパメラはえっ!と驚き、咄嗟にえへへと照れ笑いをした。
思ってもみなかったリリアの反応に驚いたのだろう。
マーティンも驚いた様子だ。
「リリアの口からあんな言葉が出て来るなんて、意外だねえ。」
リリアは嬉々とした表情で再び魔力を集中させ、ファイヤーニードルを放ち始めた。
残っていたスケルトンはかなり近くにまで近付いていたが、リリアのファイヤーニードルによって確実に仕留められていく。
およそ100体の残存スケルトンはリリアによって全て倒された。
「まあ、最低限の及第点ってところね。」
リリアの戦闘振りを見て、パメラはそう言いながら苦笑いをしていた。
パメラの中でもリリアへの評価が若干上がったのだろう。
マーティンもリリアとパメラの様子を見て和んだ様子で、嬉しそうな表情を見せた。
これで終わりかと思っていたリリスだが、この直後、事態は急変していくのだった。
その表情が冴えないのが気になる。
「リリアの体調がそんなに悪いの?」
リリスの言葉にウィンディは何故か苦笑いをした。
「まあ、結論から言うとストレスなんですよね。精神的な鬱屈から体調に影響が出てきているんです。」
ストレス?
授業についていけないとか、ハブられているとか・・・。
「それでも授業を休むほどだから、鬱っぽくなっているの?」
「いえ。リリアは落ち込んではいません。う~ん。どう言って説明したら良いのか・・・・・」
ウィンディはふうっと大きくため息をついた。
「全ての原因はリリアの持つ加護なんです。加護による破壊衝動を抑えるのが、リリアのストレスになっているって言っていました。」
「でもそれってマキちゃんの聖魔法でかなり軽減されたんじゃないの?」
リリスの言葉にウィンディはうんうんと頷いた。
「それはそうなんですけど、リリアの中で加護の力が大きくなりつつあると感じているそうです。さすがに取り込まれる事は無いですが、たまには大量の魔物を焼き尽くしたいと言っていました。」
「それってダンジョン探索にでも参加すれば良いわよ。でもそれで授業を休むのが良く分からないわね。」
リリスの言葉にウィンディは少し考え込んだ。
説明する言葉を探しているような仕草をしている。
「まあ、リリアの言葉を借りれば、息をするように火を噴きたくなると言う事です。」
「それってやっぱり加護に取り込まれているんじゃないの?」
「本人は否定しています。だから大丈夫だとは思いますよ。実際本人と話をしていても、挙動に不審なところは有りませんから。」
う~ん。
本人に会わないと、状況が良く分からないわね。
「まあ、いずれにしてもダンジョンチャレンジを繰り返すのが良いわね。」
リリスの言葉にウィンディは首を横に振った。
「残念ながら、シトのダンジョンでは物足りないそうです。」
へええええ~。
リリアにしては生意気な事を言うわね。
でもそれだけ火魔法に自信を持てるようになってきたのかしら。
「たまにで良いので、大量の魔物を焼き払いたいそうです。」
それってまるでタミアの言いそうなセリフだわ。
それにしても大量の魔物ねえ。
リリスの脳裏にふと思いついたのは、獣人の国アブリル王国での魔物の駆除だ。
ワームホールから湧き出て来る大量の魔物の定期的な駆除を、ミラ王国の軍に依頼していたのだった。
リリスはエリスやリンディと共に向かったアブリル王国の魔物駆除の件を、ウィンディに簡単に説明した。
その話を聞いてウィンディは終始目を輝かせていた。
「それって軍の活動の一部なんですよね。それならリリアのお兄様にお願いすれば、話が付くんじゃないですか?」
「ああ、マーティンさんの事ね。軍人だし面倒見の良いお兄様だから、リリアが頼めば手を打ってくれるかもね。」
そうよ!
それが良いわ。
ジーク先生に直に頼まなくても済むわね。
「私、リリアに話をしてみます。」
ウィンディは自分の気持ちに急かされるように立ち上がり、リリスに礼を言って部屋を出て行った。
慌ただしい子ねえ。
リリスはそう思いながらもジークの顔を思い浮かべた。
実際にアブリル王国に行くとなると、ジークが同行するのは間違いない。
それでもジークに直接借りを作る事は避けたい。
借りを作った際の代償を考えると憂鬱になるからだ。
リリスはウィンディとリリアの様子を思い浮かべて、微笑みながら明日の授業の準備を始めた。
そして数日後。
アブリル王国の魔物駆除の機会は意外に早く訪れた。
勿論リリアの兄のマーティンが奔走してくれたのだが、マーティンもリリアの加護の事を知っているので、リリアの精神状態には過敏に反応してしまうのだろう。
この日は休日で、リリス達は学舎の地下の訓練場に集結した。
その場に集まったのはジークとマーティン、そしてリリスとリリアであった。リリスはリリアの監視役と言う事で、ジークからではなく、マーティンから直接同行する事を要請されたのだ。
各自がレザーアーマーにガントレットを装着し、レザーブーツを履いている。
比較的軽装備ではあるが、全員魔法の能力の高いメンバーなので機動力に重点を置いているのだ。
全員が集まったところでいざ出発かと思われたのだが、ジークが勿体ぶった表情で口を開いた。
「今日はもう一人、参加者が居るんだ。そろそろ来るはずなんだがね。」
そう言いながらジークはマーティンの顔を覗き込んだ。
その視線にマーティンは若干たじろぎ、訓練場の片隅に視線を移した。
「ああ、今来ましたよ。」
マーティンの言葉と共に、誰かが転移されてきた。
現われたのは女性のフォルムだ。
白い軍服にレザーアーマーを装着して近付いて来たのは、まだ20歳前後の若い女性だった。
キリッとした顔つきのクールな美人である。
ジークに礼をし、マーティンとリリアに手を振って、その女性はリリスの傍に立ち止まった。
「あなたがリリスさんね。初めまして。リリアの姉のパメラです。よろしくね。」
ニコッと笑いながらも目が鋭い。
目が笑っていないわ、この人。
まるで私を観察してやろうとでも言いそうな視線だわ。
リリスは直感的に苦手な類の人物だと感じた。
「パメラはリリアのすぐ上の姉なんだよ。」
マーティンの説明にジークが捕捉する。
「パメラ君は優秀な軍人でね。苛烈さで男性でも嫌がる南部国境地帯の警備を、自分から志願して引き受けてくれているんだ。勿論それ相応の魔法の能力の高さが裏付けになっているんだけどね。」
リリスはそうですかと感心しながらも、パメラの視線を避けがちなリリアの表情が気になった。
そうか。
この人ともう一人のお姉さんが、リリアの事を蔑み、罵倒していたのよね。
そうすると、今日はリリアの現状を見極めに来たのかしら?
「それじゃあ、出発しようか。先に10名ほどの警護の兵士が現地に行っているが、このメンバーなら必要はないかもね。」
そう言いながらジークは懐から転移の魔石を取り出し、魔力を注いで発動させた。
視界が暗転し、気が付くとリリス達は草原に立っていた。
広い草原の周囲は連なる山々に囲まれ、リリス達以外に人の気配は一切無い。
魔物の多発地帯だから、この地域に足を踏み入れる者など居るはずも無いのである。
「アブリル王国側からの情報ではしばらくワームホールが出現していない。だがこの数日、ワームホールの出現の兆候が多数見られるようになったので、おそらく今日明日にも出現するはずだ。」
そう言いながら、ジークは周囲の山々を見回した。
「うん。早速出現しそうだね。あそこの山のすそ野が怪しい。」
ジークの指さす方向に目を向けると、500mほど離れた山のすそ野が、陽炎のようにゆらゆらとぼやけながら揺れている。
そこに小さな黒い点が現われたかと思うと、あっという間に大きく広がり、直径10mほどの穴となった。ワームホールの出入り口だ。
「早速のお出ましだ。リリア君、準備は良いか? 今日の主人公は君だからね。」
ジークの言葉にリリアは強く頷いた。
「私もじっくりと見させてもらうわよ。」
パメラの言葉は何処までも上から目線だ。
見ててあげるからやってみなさいよと言う思いが伝わってくる。
リリアは身体中に魔力を循環させ、火魔法の準備を整えた。
ワームホールからドドドドドッと言う地響きが聞こえて来た。
その直後出現したのは大量の武装したスケルトンだった。
魔剣や魔弓を持ち、次々にワームホールから溢れ出て来る。
「最初から随分多いね。」
ジークの言葉は軽いが、スケルトンの数は目に見える範囲で既に300を超えているようだ。
「これを全部リリアに任せるのは無理ね。手伝ってあげるから、やれるところまでやってみなさい。」
パメラの言葉にリリアはうんと頷きながら、両手両肩と頭上の5か所にファイヤーニードルの束を出現させた。
ニードルと言ってもかなり太く、ボルトに近い大きさだ。
5本づつそれぞれの場所で回転しているファイヤーニードルを見て、パメラはふうんと声をあげた。
それなりに興味を持ったのだろう。
リリアは魔力を集中させ、計25本のファイヤーニードルを一斉に放った。
それらはキーンと金切り音を立てて高速で滑空し、投擲スキルの補正を受けてそれぞれの目標の魔物に向かって行く。
あるものは弧を描いて斜め上空から襲い掛かり、あるものは地上すれすれを滑空し、魔物の直前でホップアップしながら着弾した。
ファイヤーニードルを撃ち込まれたスケルトンは体内から発火し、あっという間に火達磨となってその場に崩れ落ちた。
間髪を入れずリリアはファイヤーニードルを全弾リロードし、続けざまにそれらを放った。
再び25本のファイヤーニードルがスケルトンに向かって行く。
その動作を数回繰り返すも、魔物の数はあまり減少した印象が無い。
「う~ん。個別に魔物を倒せるようにはなったのね。でもこれだけの魔物となると限度があるわね。」
パメラの言葉にリリアは少し残念そうな表情を見せた。
妹の成長を素直に誉めてあげられないのかしらね?
リリスの思いをスルーするようにジークが口を開いた。
「パメラ君。リリア君の負担をなくすために、少し魔物を減らしてやってくれ。」
ジークの言葉にも少しとげがある。
リリアが力不足だと言っているようなものだ。
パメラはハイと答えて魔力を集中させ、両手を突き出して火魔法を一気に発動させた。
パメラの両手の先に現われたのは高さ1mほどの小さな火の渦だ。
それらは瞬時にスケルトンの軍団に向かい、移動と共に大きくなっていく。
魔物の傍まで近付くと、その火の渦は高さ20mほどの巨大な竜巻となっていた。ファイヤートルネードだ。
幾つもの火の竜巻が縦横無尽に動き回り、片っ端から魔物を焼き尽くしていく。
あっという間に大半のスケルトンが焼き尽くされてしまった。
その光景にリリアも呆然と立ち尽くしていた。
あ~あ。
そこまでやっちゃって・・・。
リリアが自信を無くさなければ良いんだけど。
そう思ったリリスだが、リリアの口から出た言葉は意外なものだった。
「魔物が焼き尽くされていくのって、興奮しちゃうわ。お姉様、ありがとう。」
リリアの言葉にパメラはえっ!と驚き、咄嗟にえへへと照れ笑いをした。
思ってもみなかったリリアの反応に驚いたのだろう。
マーティンも驚いた様子だ。
「リリアの口からあんな言葉が出て来るなんて、意外だねえ。」
リリアは嬉々とした表情で再び魔力を集中させ、ファイヤーニードルを放ち始めた。
残っていたスケルトンはかなり近くにまで近付いていたが、リリアのファイヤーニードルによって確実に仕留められていく。
およそ100体の残存スケルトンはリリアによって全て倒された。
「まあ、最低限の及第点ってところね。」
リリアの戦闘振りを見て、パメラはそう言いながら苦笑いをしていた。
パメラの中でもリリアへの評価が若干上がったのだろう。
マーティンもリリアとパメラの様子を見て和んだ様子で、嬉しそうな表情を見せた。
これで終わりかと思っていたリリスだが、この直後、事態は急変していくのだった。
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