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ゲートシティ3
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リリス達が迷い込んだダンジョンらしき空間。
そのリリス達の前方から竜が近付いて来た。
竜の全長はパッと見で15mほどもありそうだ。
とりあえず防御を固めなくては!
リリスは即座にリンディに指示を出した。
「リンディ! シールドをお願い!」
リンディはうんと頷き、空間魔法でリリスの前方に亜空間シールドを張った。
更にその手前側にも多重にシールドを張り、べリアと共にリリスの側方に立った。
竜は高速でこちらに近付き、その大きな口をカッと開いた。
ブレスが来る!
べリアが念のために闇魔法で3人の周囲にシールドを張ったその時、亜空間シールドに大きな炎の塊が弾着した。
ドドーンと言う衝撃音と共に業火が燃え上がる。
だがシールドはその衝撃に振動する事も無く、何らかの損傷も無さそうだ。
ブレスを吐いた竜はそのままシールドに突撃してきた。
その恐怖で身構える3人。
だがその竜もシールドにぶつかるや否や、魔素に分解される様に消えていった。
「あれは・・・何だったの?」
拍子抜けしたリリスの呟きに、リンディもべリアも首を傾げた。
「まるでホログラムでしたね。」
そう言いながらリンディがシールドを解除したその時、リリス達の背後から低い声が聞こえて来た。
「そうなんだよな。ホログラムと言われても否定出来ないレベルだよなあ。」
その声に驚き3人が振り返ると、カラフルな頭巾を被ったゴート族の老人がその場に立っていた。
何時の間に現われたのだろうか?
警戒して身構えるべリアに老人は手を振り、敵意の無い事を示しながら口を開いた。
「警戒しなくて良い。儂の名はリクード。君達をここに呼び付けた者だ。」
リクードの言葉にべリアは警戒を解いた。
「ゴート族の賢者様ですね。女性の姿の人工知能に案内させたのは貴方ですか?」
べリアの問い掛けにリクードはうんうんと頷いた。
リリスはリクードに名前を告げた上で尋ねた。
「リクード様。ここってダンジョンなのですか?」
リリスの問い掛けにリクードは苦笑いをしながら周囲を見回した。
「そうなのだよ。そうなのだが上手く行かんのだ。ダンジョンコアに問題がある事は分かっているのだがね。」
リクードはそう言うとリリスの方に身体を向けた。
「リリスと言ったね。人工知能の解析で、君の魔力は非常に特殊なものだと分かった。是非とも協力して欲しいのだよ。」
協力しろと言われてもリリスには状況が良く分からない。
首を傾げてう~んと唸るだけだ。
「リクード様。状況が良く分からないので、分かるように説明して下さい。」
リリスの言葉にリクードはハッとして口を開いた。
「そうじゃったな。説明が足りんよなあ。最初から説明しよう。」
リクードはそう言うとリンディの方に向きを変えた。
「リンディ。君は空間魔法で探知を掛け、ここがダンジョンだと把握したようだね。」
「はい。5階層まである事は分かりました。」
そう答えたリンディにリクードは嬉しそうに頷いた。
「獣人で空間魔法を駆使出来るとは驚きだな。確かにここは5階層まである。だがそれ以上に成長出来ないのだ。」
「そもそもここのダンジョンコアは破片に過ぎないのだ。亜空間に漂っているコアの破片を見つけたのが数年前。それを儂の魔力で成長させようとして工夫してきたのだが、その結果は所詮この程度だよ。魔物も形状は産み出せるが存在自体が安定しない。」
「儂の魔力では限界があるのは分かっていたのだがね。」
そう言うとリクードは深くため息をついた。
「儂の専門分野は闇魔法と空間魔法だ。それ以外に魔力の持つ履歴についても研究しておる。」
「魔力の履歴?」
リリスの呟きにリクードはふふふと笑った。
「そうなのだ。魔力にはその構成要素として戦闘履歴が含まれている。それを発見した儂は、読み解くための研究を重ねて来た。」
「例えばリリス。君が今まで闘い倒してきた魔物の持つ魔法やスキル、そしてそれを倒した君の発動させた魔法やスキル。それらが君の持つ魔力に履歴として残されているのだよ。だが・・・」
リクードは急に真顔になった。
「レミア族の遺した豊穣の神殿で放たれた君の魔力は、そのほとんどが解析不能だった。儂の持つデータベースに当てはまらないものが多い。つまり幾つもの解析不能なスキルを持ち、更に多数の属性魔法をも持っていると人工知能は判断した。」
「その結果を受けて、君の魔力ならダンジョンコアの破片を上手く成長させられるのではないかと、儂は判断したのだよ。」
リクードはそこまで話すと一息ついた。
それを聞きながらリンディがリリスに話し掛けた。
「そうですよね。リリス先輩って得体の知れないスキルを沢山持っていそうですものね。」
「リンディ。あなたがそれを言うの? お互い様じゃないのかなあ。」
リリスは失笑しながらリクードに顔を向けた。
「それでどうすれば良いのですか?」
リリスの言葉にリクードはうんうんと頷き、パチンと指を鳴らした。
その途端にリリスの目の前に直径2m程の台座が現われた。
台座の上にはラグビーボールほどの大きさの黒い塊りが浮かんでいる。
「このダンジョンコアの欠片は実物ではない。第5階層の奥に設置されたダンジョンコアのホログラムだ。だが空間魔法で連結しているので、魔力の経路は構成されている。このホログラムに君の魔力を流してくれれば良いのだよ。」
「君の魔力に含まれている多様で多彩な戦闘履歴が、ダンジョンコアの成長に有効になるのは間違いない。勿論、濃厚な君の魔力自体が、ダンジョンコアの成長を大きく促す事も予測出来る。よろしく頼む。」
リクードに促され、リリスは台座の前に立った。
台座の上に浮かんでいるダンジョンコアの欠片。
それを見つめていると、何故か既視感を覚えたリリスである。
「この波動はもしかして・・・・・ユリアに破壊されたギースのダンジョンコアの欠片かも・・・」
破壊されたダンジョンコアが亜空間に逃げ延びたのかも知れない。
そう思いながら目の前の欠片に、リリスは魔力を注いでみた。
その途端にダンジョンコアの欠片がぶるっと震えた。
欠片の全体が赤く光り始め、点滅を繰り返している。
「おおっ! これは上手く行きそうだ。リリス、もう少し魔力を流してくれないか?」
リクードに請われるままにリリスは魔力を流し続けた。
その魔力を受け、欠片は赤く光りながら徐々に形を変え、サイコロ状になって来た。
更にその大きさが増していく。
リリスの持つ魔力の20%ほどを投入した時点で、欠片は一辺が50cmほどのサイコロ状になっていた。
リリスも息が上がり、額にうっすらと冷や汗が滲む。
「うむ。予想以上に効果があったようだ。リリス、ありがとう。ここまで成長出来れば充分だよ。」
リクードはそう言いながら、台座の上に浮かぶダンジョンコアを優しく見つめた。
台座とコアのホログラムを消し去ろうとしたその時、突然リクードの目の前に小さな光が出現した。
突然の事に驚くリクードの目の前で、その光は徐々に姿を変え、小さな子供の姿になった。
性別は分からないが、その子供はリリスに駆け寄り、その腰の周りに抱き着いた。
敵意は全く感じられない。
これは・・・ダンジョンコアの疑似人格だわ!
そう悟ったリリスはその子供の頭を優しく撫でた。
「ほう! これは驚いた。これはダンジョンコアが創り出した疑似人格なのだな。余程リリスに感謝しておるのだろう。」
リクードの言葉にその子供は頷きながら、徐々にその姿を消していった。
「ダンジョンコアに懐かれちゃったんですか? リリス先輩って何でも手懐けちゃうんですね。」
「リンディ。その言い方!」
リリスは苦笑いをしながらリクードの方に向きを変えた。
「リクード様。ダンジョンが正常に成長すれば、ここを公開するのですか?」
リリスの言葉にリクードは嬉しそうに頷いた。
「ああ、そのつもりだよ。イオニアにダンジョンが出来れば、この都市の発展に大きく寄与出来るはずだからね。」
そうよね。
ミラ王国との交易が活発になった上に、ダンジョンまで新たに出現すれば、発展は間違いなしだわ。
リクードは台座とコアのホログラムを消すと、改めてリリスに礼を告げた。
「ところでリリス。君はレミア族の豊穣の神殿を知っていたのだね。」
「ええ、私の実家の領地にもあの神殿があって、現在も稼働しているんです。」
リリスの言葉にリクードは軽く驚いた。
「そうなのか。それでその神殿はどうやって発掘したのかね?」
リクードの問い掛けに、リリスは神殿発掘の経緯を簡略に説明した。
その話を聞きながら、リクードは何度も驚きの表情を見せた。
「そうか。君のご先祖で賢者が居るのだね。そのユリアス殿と一度会ってみたいものだ。」
「ああ、それなら私の方からユリアス様に連絡しておきますよ。レミア族の事で知りたい事があれば、気軽に教えてくれると思います。」
リリスの言葉にリクードは感謝の言葉を告げた。
「それにしてもそのユリアス殿は何故それほどにレミア族の事に詳しいのかね?」
「ああ、それはユリアス様がレミア族の賢者様の研究施設や遺物を受け継いだからです。」
リリスの言葉にリクードは大きく驚き、前のめりにリリスを見つめた。
「そんなものが残っているのか?」
「はい。レミア族の賢者ドルネア様が地下深くに残したものです。そこを管理している人工知能から、ユリアス様はドルネア様の正当な後継者として認証されたのです。」
「ふうむ。それは実に興味深い。」
そう言いながらリクードは周囲を見回した。
「このダンジョンが成長して一段落付けば、儂の方から出向いてみよう。ミラ王国まで転移すれば良いのか?」
「ユリアス様ならドラゴニュートのデルフィ様の研究施設に時々来ますよ。そこで会えば良いかも知れませんね。」
「何だって! ユリアス殿はデルフィ殿とも交流があるのか?」
リクードの言葉にリリスはハイと答えて頷いた。
その様子を見てリクードは若干呆れたような表情を見せた。
「ありがたい事だ。それにしてもリリス、君は他にも色々な種族の賢者を知って居そうだな。もしかして賢者同士のネットワークを構築し、何かを創り上げようとでもしているのか?」
「いえいえ。そんな大それた事を考えてはいませんよ。」
そう答えながらリリスはふと思った。
賢者同士のネットワークねえ。
それを土台にこの世界の新たな自律進化の切り口が増えるのなら、災厄と再生を繰り返すのを食い止める糸口が見つかるかも知れないわね。
それはあまりにも掴みどころの無い思いだ。
だがその思いをこの世界のどこかで何者かが聞いている気がしたのも事実だった。
まあ、妄想に過ぎないわね。
そう思ってリリスは気持ちを切り替えた。
しばらく談笑した後、闇の神殿の前に転送してくれると言うリクードの言葉を受け、リリス達はリクードの前に集結した。
そのリリスにリクードが話し掛けた。
「リリス。このイオニアがゲートシティと呼ばれておるのは知っているな?」
「はい。幾つもの門を持つ都市だと聞いています。」
リリスの返答にリクードはうんうんと頷いた。
「そうなのだ。この都市には儂も関与していない門がまだ存在する。それを訪れてみるのも良いかも知れんな。」
リクードの意味深な言葉を耳にしながら、リリス達は元の闇の神殿の遺跡の前に転送されたのだった。
そのリリス達の前方から竜が近付いて来た。
竜の全長はパッと見で15mほどもありそうだ。
とりあえず防御を固めなくては!
リリスは即座にリンディに指示を出した。
「リンディ! シールドをお願い!」
リンディはうんと頷き、空間魔法でリリスの前方に亜空間シールドを張った。
更にその手前側にも多重にシールドを張り、べリアと共にリリスの側方に立った。
竜は高速でこちらに近付き、その大きな口をカッと開いた。
ブレスが来る!
べリアが念のために闇魔法で3人の周囲にシールドを張ったその時、亜空間シールドに大きな炎の塊が弾着した。
ドドーンと言う衝撃音と共に業火が燃え上がる。
だがシールドはその衝撃に振動する事も無く、何らかの損傷も無さそうだ。
ブレスを吐いた竜はそのままシールドに突撃してきた。
その恐怖で身構える3人。
だがその竜もシールドにぶつかるや否や、魔素に分解される様に消えていった。
「あれは・・・何だったの?」
拍子抜けしたリリスの呟きに、リンディもべリアも首を傾げた。
「まるでホログラムでしたね。」
そう言いながらリンディがシールドを解除したその時、リリス達の背後から低い声が聞こえて来た。
「そうなんだよな。ホログラムと言われても否定出来ないレベルだよなあ。」
その声に驚き3人が振り返ると、カラフルな頭巾を被ったゴート族の老人がその場に立っていた。
何時の間に現われたのだろうか?
警戒して身構えるべリアに老人は手を振り、敵意の無い事を示しながら口を開いた。
「警戒しなくて良い。儂の名はリクード。君達をここに呼び付けた者だ。」
リクードの言葉にべリアは警戒を解いた。
「ゴート族の賢者様ですね。女性の姿の人工知能に案内させたのは貴方ですか?」
べリアの問い掛けにリクードはうんうんと頷いた。
リリスはリクードに名前を告げた上で尋ねた。
「リクード様。ここってダンジョンなのですか?」
リリスの問い掛けにリクードは苦笑いをしながら周囲を見回した。
「そうなのだよ。そうなのだが上手く行かんのだ。ダンジョンコアに問題がある事は分かっているのだがね。」
リクードはそう言うとリリスの方に身体を向けた。
「リリスと言ったね。人工知能の解析で、君の魔力は非常に特殊なものだと分かった。是非とも協力して欲しいのだよ。」
協力しろと言われてもリリスには状況が良く分からない。
首を傾げてう~んと唸るだけだ。
「リクード様。状況が良く分からないので、分かるように説明して下さい。」
リリスの言葉にリクードはハッとして口を開いた。
「そうじゃったな。説明が足りんよなあ。最初から説明しよう。」
リクードはそう言うとリンディの方に向きを変えた。
「リンディ。君は空間魔法で探知を掛け、ここがダンジョンだと把握したようだね。」
「はい。5階層まである事は分かりました。」
そう答えたリンディにリクードは嬉しそうに頷いた。
「獣人で空間魔法を駆使出来るとは驚きだな。確かにここは5階層まである。だがそれ以上に成長出来ないのだ。」
「そもそもここのダンジョンコアは破片に過ぎないのだ。亜空間に漂っているコアの破片を見つけたのが数年前。それを儂の魔力で成長させようとして工夫してきたのだが、その結果は所詮この程度だよ。魔物も形状は産み出せるが存在自体が安定しない。」
「儂の魔力では限界があるのは分かっていたのだがね。」
そう言うとリクードは深くため息をついた。
「儂の専門分野は闇魔法と空間魔法だ。それ以外に魔力の持つ履歴についても研究しておる。」
「魔力の履歴?」
リリスの呟きにリクードはふふふと笑った。
「そうなのだ。魔力にはその構成要素として戦闘履歴が含まれている。それを発見した儂は、読み解くための研究を重ねて来た。」
「例えばリリス。君が今まで闘い倒してきた魔物の持つ魔法やスキル、そしてそれを倒した君の発動させた魔法やスキル。それらが君の持つ魔力に履歴として残されているのだよ。だが・・・」
リクードは急に真顔になった。
「レミア族の遺した豊穣の神殿で放たれた君の魔力は、そのほとんどが解析不能だった。儂の持つデータベースに当てはまらないものが多い。つまり幾つもの解析不能なスキルを持ち、更に多数の属性魔法をも持っていると人工知能は判断した。」
「その結果を受けて、君の魔力ならダンジョンコアの破片を上手く成長させられるのではないかと、儂は判断したのだよ。」
リクードはそこまで話すと一息ついた。
それを聞きながらリンディがリリスに話し掛けた。
「そうですよね。リリス先輩って得体の知れないスキルを沢山持っていそうですものね。」
「リンディ。あなたがそれを言うの? お互い様じゃないのかなあ。」
リリスは失笑しながらリクードに顔を向けた。
「それでどうすれば良いのですか?」
リリスの言葉にリクードはうんうんと頷き、パチンと指を鳴らした。
その途端にリリスの目の前に直径2m程の台座が現われた。
台座の上にはラグビーボールほどの大きさの黒い塊りが浮かんでいる。
「このダンジョンコアの欠片は実物ではない。第5階層の奥に設置されたダンジョンコアのホログラムだ。だが空間魔法で連結しているので、魔力の経路は構成されている。このホログラムに君の魔力を流してくれれば良いのだよ。」
「君の魔力に含まれている多様で多彩な戦闘履歴が、ダンジョンコアの成長に有効になるのは間違いない。勿論、濃厚な君の魔力自体が、ダンジョンコアの成長を大きく促す事も予測出来る。よろしく頼む。」
リクードに促され、リリスは台座の前に立った。
台座の上に浮かんでいるダンジョンコアの欠片。
それを見つめていると、何故か既視感を覚えたリリスである。
「この波動はもしかして・・・・・ユリアに破壊されたギースのダンジョンコアの欠片かも・・・」
破壊されたダンジョンコアが亜空間に逃げ延びたのかも知れない。
そう思いながら目の前の欠片に、リリスは魔力を注いでみた。
その途端にダンジョンコアの欠片がぶるっと震えた。
欠片の全体が赤く光り始め、点滅を繰り返している。
「おおっ! これは上手く行きそうだ。リリス、もう少し魔力を流してくれないか?」
リクードに請われるままにリリスは魔力を流し続けた。
その魔力を受け、欠片は赤く光りながら徐々に形を変え、サイコロ状になって来た。
更にその大きさが増していく。
リリスの持つ魔力の20%ほどを投入した時点で、欠片は一辺が50cmほどのサイコロ状になっていた。
リリスも息が上がり、額にうっすらと冷や汗が滲む。
「うむ。予想以上に効果があったようだ。リリス、ありがとう。ここまで成長出来れば充分だよ。」
リクードはそう言いながら、台座の上に浮かぶダンジョンコアを優しく見つめた。
台座とコアのホログラムを消し去ろうとしたその時、突然リクードの目の前に小さな光が出現した。
突然の事に驚くリクードの目の前で、その光は徐々に姿を変え、小さな子供の姿になった。
性別は分からないが、その子供はリリスに駆け寄り、その腰の周りに抱き着いた。
敵意は全く感じられない。
これは・・・ダンジョンコアの疑似人格だわ!
そう悟ったリリスはその子供の頭を優しく撫でた。
「ほう! これは驚いた。これはダンジョンコアが創り出した疑似人格なのだな。余程リリスに感謝しておるのだろう。」
リクードの言葉にその子供は頷きながら、徐々にその姿を消していった。
「ダンジョンコアに懐かれちゃったんですか? リリス先輩って何でも手懐けちゃうんですね。」
「リンディ。その言い方!」
リリスは苦笑いをしながらリクードの方に向きを変えた。
「リクード様。ダンジョンが正常に成長すれば、ここを公開するのですか?」
リリスの言葉にリクードは嬉しそうに頷いた。
「ああ、そのつもりだよ。イオニアにダンジョンが出来れば、この都市の発展に大きく寄与出来るはずだからね。」
そうよね。
ミラ王国との交易が活発になった上に、ダンジョンまで新たに出現すれば、発展は間違いなしだわ。
リクードは台座とコアのホログラムを消すと、改めてリリスに礼を告げた。
「ところでリリス。君はレミア族の豊穣の神殿を知っていたのだね。」
「ええ、私の実家の領地にもあの神殿があって、現在も稼働しているんです。」
リリスの言葉にリクードは軽く驚いた。
「そうなのか。それでその神殿はどうやって発掘したのかね?」
リクードの問い掛けに、リリスは神殿発掘の経緯を簡略に説明した。
その話を聞きながら、リクードは何度も驚きの表情を見せた。
「そうか。君のご先祖で賢者が居るのだね。そのユリアス殿と一度会ってみたいものだ。」
「ああ、それなら私の方からユリアス様に連絡しておきますよ。レミア族の事で知りたい事があれば、気軽に教えてくれると思います。」
リリスの言葉にリクードは感謝の言葉を告げた。
「それにしてもそのユリアス殿は何故それほどにレミア族の事に詳しいのかね?」
「ああ、それはユリアス様がレミア族の賢者様の研究施設や遺物を受け継いだからです。」
リリスの言葉にリクードは大きく驚き、前のめりにリリスを見つめた。
「そんなものが残っているのか?」
「はい。レミア族の賢者ドルネア様が地下深くに残したものです。そこを管理している人工知能から、ユリアス様はドルネア様の正当な後継者として認証されたのです。」
「ふうむ。それは実に興味深い。」
そう言いながらリクードは周囲を見回した。
「このダンジョンが成長して一段落付けば、儂の方から出向いてみよう。ミラ王国まで転移すれば良いのか?」
「ユリアス様ならドラゴニュートのデルフィ様の研究施設に時々来ますよ。そこで会えば良いかも知れませんね。」
「何だって! ユリアス殿はデルフィ殿とも交流があるのか?」
リクードの言葉にリリスはハイと答えて頷いた。
その様子を見てリクードは若干呆れたような表情を見せた。
「ありがたい事だ。それにしてもリリス、君は他にも色々な種族の賢者を知って居そうだな。もしかして賢者同士のネットワークを構築し、何かを創り上げようとでもしているのか?」
「いえいえ。そんな大それた事を考えてはいませんよ。」
そう答えながらリリスはふと思った。
賢者同士のネットワークねえ。
それを土台にこの世界の新たな自律進化の切り口が増えるのなら、災厄と再生を繰り返すのを食い止める糸口が見つかるかも知れないわね。
それはあまりにも掴みどころの無い思いだ。
だがその思いをこの世界のどこかで何者かが聞いている気がしたのも事実だった。
まあ、妄想に過ぎないわね。
そう思ってリリスは気持ちを切り替えた。
しばらく談笑した後、闇の神殿の前に転送してくれると言うリクードの言葉を受け、リリス達はリクードの前に集結した。
そのリリスにリクードが話し掛けた。
「リリス。このイオニアがゲートシティと呼ばれておるのは知っているな?」
「はい。幾つもの門を持つ都市だと聞いています。」
リリスの返答にリクードはうんうんと頷いた。
「そうなのだ。この都市には儂も関与していない門がまだ存在する。それを訪れてみるのも良いかも知れんな。」
リクードの意味深な言葉を耳にしながら、リリス達は元の闇の神殿の遺跡の前に転送されたのだった。
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