君のために、僕は変わることができたんだ

多田光希

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発達障害を抱えている転校生の国見を気にかけていた木崎は、同級生に関係をからかわれ国見につい暴言を吐いてしまう。そんな時、国見との別れが訪れ…

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「みんなに紹介する。今日からこの学校に転校してきた国見璃緒くにみりお君だ。仲良くするように!」
小学3年生になったばかりの新学期、担任に紹介された男の子は、サラサラの黒髪で、目がクリクリしていて、その瞳はキラキラと輝いていた。
「とりあえず、新学期が始まったばかりで、席はあいうえお順になってるから、国見君は木崎きざき君の後ろの席に座って」
担任が言うと、国見君は返事をせずにコクリと頷いて、そしてランドセルを担いだまま、僕の後ろの席へと座った。
「ランドセル、降ろしたら?」
僕が言うと、国見君はハッとしたように僕の顔を見て、ランドセルを背中から降ろした。
「国見君は、新しい学校や友達に慣れるまでに時間がかかる、言いたいこともなかなか言えない、恥ずかしがり屋さんです。だから、みんなでいろいろと助けてあげて下さい。みんなも新しい知らない学校で知らない人たちばかりだと、緊張するだろ?もし自分が国見君の立場だったら、と考えて、優しく思いやりのある行動をするように!」
担任が大きな声で言うと、
「はーい!!」
と、一斉に教室内に元気な声が響き渡ったのだった。

「僕、木崎叶きざき かなう。よろしくね。国見君は、どこの県から来たの?」
「あ...」
口を開くけど、答えはなかった。
「あ、そっか。恥ずかしがり屋さんなんだもんね」
僕が言うと、コクリと頷く。
「じゃあ、これ」
僕は、社会科で使う日本地図を国見君の前で開いた。すると国見君は、黙って1つの県を指差す。
「埼玉県?すごい都会だね」
僕が言うと、国見君は驚いたように目を開いて、そして笑顔になった。その笑顔がとても可愛くて、僕もつられて笑顔になったのだった。

国見君は、毎週木曜日、リハビリセンターと言うところに通っていて、その日だけは国見君のお母さんが学校に迎えに来て、いつも早く帰っていた。他の日は、僕ともう1人の友達、柳瀬朋行やなせともゆき君と3人で一緒に帰るようになった。でも、国見君はあんまり喋らなくて、そのうち、僕とだけはたくさん話してくれるようになって、周りのみんなも、国見君が恥ずかしがり屋さんって分かってるから、国見君への伝言はまず僕へと伝えてくるようになった。地方にある田舎の小さな学校だったから、みんなそんな国見君を受け入れて、優しく気遣いながら学校生活を送っていた。そして僕たちは中学生になった。その頃になると、周りのみんなも、国見君が発達障害を抱えているということに何となく気付き始めていたのだった。

「璃緒。部活終わったら教室で待ってて。一緒に帰ろうぜ」
「うん」
璃緒が嬉しそうに笑う。
「国見、俺も今日は塾ないし、一緒に帰っていい?」
柳瀬が言うと、璃緒が口を閉ざす。
「いや、俺も小3の時からの付き合いなんだけど、まだダメ?」
「…大丈夫…。一緒に、帰ろ」
璃緒が少し戸惑いながら、答えた。
「サンキュ、国見」
ガシッと、肩に手を回す。
その瞬間、ビクッと璃緒の体が硬直した。
「おい、柳瀬!お前いつもガサツすぎるんだよ!璃緒がビックリしてるだろ」
「悪い、つい」
柳瀬が謝ると、首を横に振り、
「大丈夫…」
と言って、璃緒は笑顔を見せた。
よしよし、と言った感じで目を細め、柳瀬が璃緒の頭を撫でた瞬間、また璃緒がビクッと肩をすくめた。
「だから、距離が近いって!」
俺は、いたたまれなくなって柳瀬の手を掴んで、璃緒から離した。
「だって、国見めっちゃ可愛いからさ」
そうなのだ。璃緒のこの可愛さは格別で、まるで造り物の人形のように白くて細くて綺麗で、男の俺でも目を離したくなくなってしまうくらい、見惚れてしまうのだ。
「問題はそこなんだよな。同じ小学校の奴らはともかく、他校から来た奴らとか上級生とかからも男女関係なく、かなり狙われてるっつーか?」
俺がため息交じりに言うと、
「まあ、俺たちで出来る限り側にいてフォローしてくしかないよな」
柳瀬も同調した。
「ごめん」
璃緒が謝る。
「心配すんな。俺と柳瀬だけじゃなくて、同じ小学校の奴らもちゃんと気にかけてくれてるし」
「そうそう!国見の体はみんなで守るから」
「体?」
璃緒が聞き返す。
「お前、変な言い方するな」
俺は小さな声で柳瀬に言うと、
「え?だってそういう事だろ?」
璃緒は、不思議そうに俺たちの会話を聞いていたのだった。
部活終わり、柳瀬と途中で別れ、璃緒と2人で歩き出す。
「部活どう?慣れた?」
「うん。みんな優しいよ」
「そっか。良かった」
安心したように言うと、璃緒がまた笑顔を見せる。その屈託のない笑顔に、俺はつい魅了されてしまう。
「やっぱ、何か心配」
「え?」
「あんま他の人のこと、信じすぎんなよ」
「他の人?」
「俺とか柳瀬とか、同じ小学校の奴らはいいけど」
「うん」
本当に分かってんのか?
俺は思わず小さなため息を吐いたのだった。

何とか中学を無事に卒業し、俺たちは同じ高校に進学したものの、問題は次々と起こり始めた。璃緒は、その容姿と、あまり喋らないことがクールで謎めいてると受け入れられるようになり、かなり注目を集め、人気も出て、いろんな人が寄って来るようになった。
そんな時、いつも側にいる俺に向かって、
「お前、母親かよ!」
とか、
「何か、木崎って国見の保護者?すげぇ邪魔」
などと、いろいろと言ってくる奴らが増えてきたのだ。
そんなある日の夏休み前の出来事だった。2学期最後の清掃を終え、璃緒が自らゴミ出しに行くと言って聞かず、心配ではあったものの、1人で行かせた時に、
「木崎!国見が何人かの男に連れてかれた!」
慌てた様子で同じ中学だった同級生が俺の教室へと走ってやって来た。
「何処に!?」
「たぶん体育館の裏の倉庫辺り」
「柳瀬!!先生呼んで来て!!」
「ああ」
俺は急いで体育館倉庫へと向かって走り出した。

薄暗い倉庫の中、国見を3人の男が取り囲んでいた。国見は怯えた様子で後退り、そして、倉庫に置いてある跳び箱に背中がぶつかった途端、その場に座り込んでしまった。
「そんな怖がらなくていいから」
主犯らしき生徒が、両手をポケットに突っ込んだまま国見へと近付く。
「そっ。俺たち、国見君が本当に男の子なのかどうか確かめたいだけだからさ。ほんのちょっと服脱がすぐらいだし」
もう1人の男が国見へと近付き、しゃがみ込み、顔の位置を国見に合わせた。
「めずらしく1人だったからさ。ついチャンス、って思っちゃったよ」
言いながら、もう1人が見張り番のように扉の前に立った。
「ほんと綺麗な顔してんな。きっと肌もめちゃくちゃ綺麗なんだろうなー」
国見の顎を持ち、上へと向かせる。
「ヤバ…。唇、艶々だし。すげぇ柔らかそう。俺、服脱がすだけじゃ済まないかも」
言いながら、主犯の男の方を見る。
「とりあえず脱がすか」
国見の両腕を動かないように、1人が固定する。国見は、声を出せなかった。そこに、
「璃緒!いるのか!!」
ドンドン!!と、倉庫の扉を激しく叩きながら大声を出す人物が現れた。
「チッ…。木崎だ。早いとこやろうぜ。扉、開かないようにしとけよ」
そして、国見のシャツに手を掛け、引き裂くようにボタンを一気に外した。
「すげ…。めちゃくちゃ綺麗じゃん。乳首も唇と一緒で、ピンク色…」
「いや、マジでヤバいかも。俺めっちゃ興奮してきた。犯っちゃっていい?」
「じゃあ、その次、俺な」
笑いながら国見の肌へと唇を寄せようとした瞬間、
「お前ら、マジでクズだな」
と、声がした。
ムクリと、奥の方に置いてあるマットから男が体を起こした。
「人の昼寝の邪魔してんじゃねーよ」
そして、その男は、2人の生徒に近付くと、額に裏拳で1発ずつ食らわせ、扉の前に立つ男の横の扉を足で蹴飛ばした。
「どけよ」
「は、はい」
そして中から扉を開ける。
「修平!やっぱり中に居たんだな。サボる時は、たまにここで寝てたから」
木崎が安心したように、同級生の林修平はやししゅうへいに駆け寄る。
「ったく、何なんだよ。急にLINEしてきて」
「悪い。ありがとな」
「いや。お前も大変だな」
そう言って、林は両手を制服のスラックスのポケットに突っ込むと、すぐにその場を後にした。

「璃緒!大丈夫か!?」
俺は、上半身が露になった璃緒の姿を見て、つい言葉を失った。
璃緒が、両手で自分を抱き締めるようにして肌を隠す。その頬には、いくつもの涙が伝っていた。
「ごめん。俺が1人で行かせたから…」
そんな璃緒を俺はギュッと抱き締め、ゆっくりと頭を撫でた。
「おい!お前ら、何してる!」
先生が何人かやって来て、扉の前に立つ生徒と、痛がってその場にうずくまっていた2人の腕を掴んだ。
「これは立派な犯罪だぞ!!分かってんのか!!」
俺たちの担任が怒鳴る。
「とにかく、3人とも今から職員室に来い!!国見、大丈夫だったか?」
返事をしない璃緒に代わり、
「今、かなり動揺してるみたいで。落ち着いたらちゃんと家まで送ります」
俺はそう返事をした。
先生たちと一緒に来てくれた柳瀬が、心配そうに、
「大丈夫だったか?何もされてない?」
と、俺たちに声を掛けてきた。
璃緒が俺の腕の中で、コクリと頷く。
「修平が助けてくれたから。じゃなかったら、危なかった」
「修平って、林修平?空手部の?」
「ああ。俺、小・中と空手やってて。違う支部だったけど、試合とかでよく会ってたから」
「へぇ。愛想なくて怖いイメージしかないけど…。とりあえず何もなくて良かったな」
璃緒の両腕が、俺の背中に回る。その手は微かに震えていた。
「璃緒、大丈夫か?立てる?」
璃緒が首を横に振る。そこに、
「あー、良かった。もう大丈夫そうだな」
と、同級生の、空手部所属の岡田聡史おかださとしが息を切らしてやって来た。
「聡史?どうして?」
「いやさ、修平の奴が様子見に行けって。木崎1人でも大丈夫だろうけど、って。マジで人使い荒いよな。国見だっけ?大丈夫か?」
岡田が心配そうに声を掛けた。璃緒が返事をせずにいると、
「まあ、怖いよな。俺らもなるべく気を張るようにするから、あんま心配すんな。たぶん、また国見に何かしたら、今度こそ修平のこと敵に回すことになるだろうし」
「え?何で?」
柳瀬が不思議そうに岡田に尋ねた。
「ん?今、修平と付き合ってる奴が、昔、電車の中でずっと痴漢に遭ってたらしくて。修平が助けたとかって聞いたからさ。あいつ、そういうのマジで許せないみたいで。今も、たぶん心配して俺に行けって言ったんだろ」
「へぇ。冷たそうに見えるのに意外だな」
柳瀬が感心したように呟いた。
「とりあえず、俺たち先に行くな。行こう、柳瀬」
「あ、ああ…」
そして、岡田と柳瀬がその場からいなくなり、しばらくしてから、
「叶…」
と、璃緒が声を出した。
「ん?どうした?」
璃緒を胸からはがし、顔を見る。
「僕、叶じゃないとやだ」
「うん。分かってる。今日も俺が家まで送るから心配すんな」
「叶がいい」
「ああ」
そして、また璃緒を抱き締め、頭を優しく撫でる。璃緒もまた、俺を抱き締める腕に力を込めたのだった。

教室で体操服に着替えさせ、一緒に璃緒の家へと向かって歩き出す。
「叶、僕、もう少し一緒にいたい」
璃緒の家の前に着くと、璃緒が小さな声で呟いた。
「そうだな。今日、怖い思いしたもんな」
そして俺は、璃緒の家へとお邪魔することにしたのだった。
うわっ…。璃緒の部屋に入るの、小学生以来かも。めちゃくちゃいい匂いする。
何だか落ち着かず、ソワソワしてしまう。
「今、飲み物持って来るから座ってて」
そう言って、璃緒が部屋を出て行く。
って言うか…。俺、ヤバくないか?
璃緒を助けに行った時に見た、璃緒の白くて綺麗な素肌が脳裏に焼き付いて離れなかった。そして、抱き締めた時の柔らかさや甘い香りに、一瞬、翻弄されたのを思い出す。
「やっぱ帰ろう!今日みたいな日は一緒にいるのは良くない!」
しっかりしろ、俺。璃緒は男だ。どんなに可愛くて、綺麗で、柔らかくて、いい匂いでも…。
カチャリ、と部屋の扉が開く。お盆の上に、氷の入った麦茶のコップが2つ並んでいた。
「ごめん。暑いよね。冷房の温度もう少し下げる?」
「いや、いい。俺、やっぱ帰るよ」
「え?どうして?」
「…何となく」
「はい、麦茶」
コースターの上にコップを置くと、カラン、と氷の音が鳴った。細くて綺麗な指に、つい目が行ってしまう。
「サンキュ。飲んだら行くよ」
「そんなこと言わないで、しばらく居てよ。ちょっと着替えてくるから待ってて」
ゴソゴソと衣装ケースから服を取り出し、璃緒は部屋から出て行った。
そして俺は、どこかぎこちなくコップを持つと、麦茶を飲み干し、
「落ち着け、俺。こんな時は目を閉じて深呼吸だ」
激しい鼓動を落ち着かせるように、俺は目をゆっくり閉じて深呼吸を始めたのだった。

「ん…?」
「あ、起きた?」
「あれ?俺…」
目を覚ますと、そこは璃緒の部屋だった。
外はもう薄暗くて、俺は慌てて体を起こした。掛けてあったタオルケットが、下の方へとずり落ちた。
「思いっきり、寝てたよ」
「マジで?ごめん…」
そうだ。あのあと、璃緒が『着替えてくる』と言って部屋を出て行ってから、目を閉じて深呼吸してる間に、俺は寝てしまったのか!?その上、俺はパンツを1枚身に纏っていただけで、なぜか制服を着ていなかった。
「って言うか、服!」
ガバッと、タオルケットで体を隠した。
「暑いって言いながら、自分で脱いでた」
璃緒が笑顔で言った。
「え?嘘だろ?全然覚えてない」
何か、すごく幸せな夢を見てたような…
『叶…。僕、叶としたい』
璃緒が耳元で囁き、俺に覆い被さって来て、
『璃緒、いいのか?』
俺が璃緒の頬を包み込んだ。
『うん。僕、叶のこと好きだから』
そして、璃緒の柔らかい唇にキスをして、素肌に吸い付いて…。それから、いろんな部位を愛撫しながら、璃緒を名一杯味わう夢。璃緒の中は、すごく熱くて、気持ち良くて…そして俺は、夢の中で達したのだ。
そんな夢を思い出し、カアッと全身が熱くなる。
「俺、何か他に変なことしなかったか?」
あまりにもリアル過ぎた夢に、今さら動揺する。
「変なこと?」
「いや、何か、かなりリアルな夢見てたの思い出したから」
「え?どんな夢」
璃緒が嬉しそうに俺へと尋ねた。
そんなこと、恥ずかしくて言えるか。しかも、罪悪感で璃緒の顔がまともに見られない。
「遅くまで悪かったな。しかも服まで脱いでたし」
俺は慌てて床に落ちていた制服を拾って、身に纏った。
「ううん。叶の寝顔、可愛かった」
「は!?やめろよ。恥ずかしいだろ」
俺が俯きながら言うと、璃緒が笑ったのだった。

「何か、まだ感触が残ってる感じがする」
家に帰って、湯船に浸かりながら夢の内容を思い出す。すごく幸せで、胸が暖かくなる夢。触り心地も、めちゃくちゃ気持ち良くて、全ての素肌が真っ白で、どこもかしこも滑らかでスベスベしてて、いい匂いだった。だけど、大事なところは、うっすらとピンク色に染まってて…。
「うわっ!!ヤバい!!思い出すな、俺!!」
何か、これからめっちゃ意識しそうで気まずっ!!明日からどんな顔して璃緒に会えばいいんだよ。
俺は、よこしまな考えを払拭するかのように、勢い良く湯船に潜ったのだった。

その次の日から、璃緒のことをかなり意識しながらも、何事もなくいつものように2人して日々を過ごしていた。ただ、璃緒は、あの日以来、なおさら俺の近くにいるようになった。
そして夏期講習の最終日、そろそろ進路のことを本気で考える時期になってきた頃、璃緒が夏休み前に襲われ、俺が助けたことがまたたく間に噂になっていた俺たちは、より周りから『国見のベビーシッター』とか『木崎がいないと、国見は生活すらできない、赤ちゃん』などと、からかわれるようになった。それが知らずのうちに、俺のストレスになっていたのか、つい周囲に対してイライラしてしまう日が増えて来ていた。
それに気付いてなのか、
「国見に近付きたいのに出来ないから気に入らないだけだろ?単なる嫉妬ってヤツ?言いたい奴らには言わせておけばいいんだよ」
柳瀬が明るい調子で言うものの、俺は俺なりに悩んでいた。教室で、璃緒の進路相談が終わるのを待ちながら肩を落とす俺に向かって、
「まあ、確かに過保護すぎると言えば、そうかもしれないけど、国見の方がお前に懐いてんだから仕方ないじゃん」
と、柳瀬が言う。
「それは、そうなんだけど…」
そこに璃緒がやって来る。
「進路相談、終わったのか?」
柳瀬が聞く。
「うん」
「で、どうするんだ?」
柳瀬が璃緒に尋ねた。
「叶と同じ大学に行って同じ学部にするって言った。離れたくないから」
璃緒が嬉しそうに笑う。その瞬間、俺の中で我慢していた何かが弾けた。
「お前、いつまでそんなこと言ってんだよ!俺はお前の母親じゃねーんだよ!いつまでもお守りなんかしてらんねーし!」
「叶…?」
「そんなんじゃ、いつまでたったって自分じゃ何もできねぇだろ!お前は口も聞けるし、耳だって聞こえるし、目だって見えてる。もっともっと大変な病気を抱えて、辛い奴らだって山ほどいるんだよ!俺の弟だって、ずっとてんかんの治療してて、いつどこで倒れるか分かんねーのに、どこにでも遊びに行って、逞しく生活してんだ!お前が自分で変わろうとしなきゃ、何も変わんねーだろ!お前はただ臆病なだけで、全然普通だよ!ずっと『僕は発達障害だから』なんて、自分で自分をそうやって縛って、諦めてるだけだろ!そんなことじゃ、永遠に何もかも自分で決められねぇまま生きてくことになるんだぞ!!」
「おい、木崎…」
柳瀬がうろたえながら、俺へと声を掛ける。
「行こうぜ」
俺は璃緒に背を向け、歩き出した。
「いいのか?1人で帰らせて」
柳瀬が心配そうに璃緒の方を見ながら、俺のあとを付いて来る。
「いいんだよ」
俺はその時、璃緒にはもっとちゃんと自分の道を1人で選べるくらい強くなってもらいたかった。ただ、それだけだった。

そして、夏休み明けの新学期、教室には璃緒の姿がなく、俺は慌てて担任に理由を聞きに行った。
「転校ですか?」
「ああ。親の仕事の都合で埼玉に戻るって。自分でみんなに伝えたいから話さないで欲しいって言われてたから、終業式の日に伝えずにいたんだが...」
担任から聞いた言葉に、俺は愕然とした。
そうか。だからあの日『離れたくないから』と言う理由で、地元の大学に行こうとしてる俺と、同じ進路を選ぼうとしたのか?転校せずに、済むように…。
「ふざけんなよ。ちゃんと言わねぇと分かんねーだろ」
俺は慌ててスラックスのポケットからスマホを取り出し、すぐに璃緒へと連絡をしたが『お掛けになった電話番号は、現在、使われておりません』と、機械的なアナウンスが流れただけだった。その瞬間、スマホを持った俺の腕が、力なく、下へと落ちた。

それは本当に突然の別れだった。俺は今まで、あいつの何を見てきてたんだろう。何を知ってたんだろう。あんなに長く一緒に居たくせに。
まさか、あの日を最後に、会えなくなるなんてこと、思ってもいなかった。
璃緒はどんな思いで俺の元を去ったのか、分かるはずもない理由を必死に考える。
『もう璃緒には会えない』
そう思うだけで胸が張り裂けてしまいそうだった。璃緒だけは絶対に俺から離れて行かないと、ずっと心のどこかで思っていた自分が滑稽に思えて、情けなくなる。俺は足を引きずるようにして廊下を歩きながら、屋上へと向かった。

2時限目の始業の合図のベルが鳴る。
俺は、まだ屋上から動けなかった。
「授業、始まるぞ」
突然、上の方から声がした。
「修平…」
梯子を降りて来る。
「お前もサボリ?」
「そういうワケじゃないけど。ただ、何となく、あいつのいない教室に居たくなくて」
「あいつって、国見?」
修平が、俺の横に立って、手すりに背を向けて寄りかかる。
「俺、最後の日に、璃緒にひどいこと…」
嗚咽のせいで、俺はそこまで言うのがやっとだった。
「良かったんじゃね?お前、ずっと付きっきりだったし。進路も決まったなら、ダチと遊びに行ったりバイトしたり彼女作ったり、これからは自由に好きなことすりゃいいじゃん」
「簡単に言うなよ。そんな気持ちになれるワケないだろ。璃緒のこと、あんなに傷付けたのに。転校のことだって、俺にすら言わずに…」
俺は溢れ出る涙を止めることすらせず、唇を噛み締めた。
「お前たちの関係のことはよく分かんねーけど、国見は自分でお前から離れること決めたんじゃねぇの?」
「え?」
「あと半年で卒業なのに、転校とか?普通、寮に入るだろ。地元の大学行くなら1人暮らしになるし、先にアパート借りて住むとか、ここに残る方法ならいくらでもある」
「それって、つまり…」
「国見が自分の意思でお前から離れた可能性が高いってことだよ。だからお前は国見の気持ちをくみ取って、前向きに生活しとけ」
「何でだよ?やっぱ、俺が璃緒にひどいこと言ったから...」
「自分が負担になってたと思ったとか、そんな感じじゃねぇの?知らねーけど」
「あいつは、俺がいないと本当に何も出来なくて…。俺以外の奴らとは、まともに会話すらできないのに…」
そこまで言った俺に、修平が、
「また空手するか?」
と、唐突に言った。
「暇だと人間は余計なこと考えんだよ。しごいてやるから、毎日うちの部活に練習に来い」
そこまで言うと、修平は屋上を降りる階段へと向かって歩き出した。
「修平は?前に聡史が言ってた、付き合ってる人とは、うまくいってんのか?」
声を掛けると、足を止めて振り向いた。
「は!?何で聡史が知ってんだよ。誰にも言ってねーのに」
めずらしく、修平の表情に感情が出た。
「あいつ、昔から勘がいいからバレたんだろ」
俺は言いながら、思わず笑った。
「最近、会えてなくて。公務員試験終わって合格したら報告に行くつもり」
修平は、口の端を上げ笑って言うと、階段を降りて行った。
「修平が笑うとか、かなり激レアだな…」
好きな人がいるって、きっとそういうことなんだろう、と気付かされる。俺は璃緒のことが好きだった。ずっとずっと好きだった…。
「大好きだったよ、璃緒。最後まで側にいてやれなくて、ごめんな」
俺はそう呟くと、しばらくその場で、溢れる涙を止めることなく、泣き続けたのだった。

その日から、俺は璃緒のいない生活に対してひどく虚無感に襲われ、学校には行っていたものの、まともに教室にいることが出来ず、1人で屋上や特別教室にいたりと、担任にも心配される始末だった。そして、思い知らされたことがあった。俺が璃緒の側にいたんじゃなくて、璃緒が俺の側にいてくれたんだということに…。そして、璃緒のおかげで、毎日が楽しかったということに。
「大丈夫か?」
柳瀬が心配して、理科室へと様子を見に来た。
「ん?ああ」
「もうすぐ文化祭と体育祭もあるし、せっかくの高校生活最後の行事、みんなで楽しもうぜ。いつまでも落ち込んでたって仕方ないだろ」
「分かってんだけどさ…。何かやる気が起きなくて」
そこに、ガラリと勢い良く理科室の扉が開くと同時に、片手に空手着を持った修平が俺に近寄り、腕をグッと握った。
「行くぞ」
俺は、修平に無理矢理引きずられるように、空手の練習場へと連れて行かれたのだった。
体育館の1角にある、空手部の練習場。そこには制服を着た聡史が立っていた。
「何だよ。空手着持ってここに来いって、そういうこと?」
聡史が、道着を俺に向かって投げた。
「この俺が相手してやるんだ。ありがたく思え」
そう言って、修平が目の前で制服を脱ぎ、空手着に着替える。
「文化祭が終わるまで、体育館は使用禁止だろ?」
俺が言うと、
「早く着替えろ。聡史、審判」
修平がキツい口調で言った。
「はいはい」
言いながら、聡史が定位置に立ったのだった。

久しぶりの空手の試合は、かなりキツくて苦しくて、息をするのもやっとだった。
ただ、必死になってる時は何もかもを忘れられていた。修平との試合が終わり、俺は力尽きたかのように大の字になって倒れた。
「修平に有効1つ取れるなんて、たいしたもんじゃん」
聡史が俺へとタオルを渡してくれる。
俺は呼吸を整えるのに必死で、声を出せずにいた。
「お前は結局自分のことしか考えてねぇんだな。シケってんじゃねぇよ。マジでムカつく」
修平は俺に向かってそう言うと、自分の制服をガサツに拾い上げ片手に持ち、体育館を出て行ったのだった。
「あーあ…。相変わらずだな。まっ、あいつなりの優しさだと思って、気にすんな」
聡史が修平をフォローするかのように、俺に向かって言う。
「優しさ…?」
「ほら、あいつもさ、いろいろあって空手やめてた時期あっただろ?その頃、めっちゃ荒れてて。修平、いつも上から目線だし、口も悪いけど、あいつなりにお前と国見のこと心配してるんだと思うんだよ。じゃなきゃ、次期オリンピック候補選手が、わざわざ時間作って、お前と試合なんかしないだろ」
確かに、毎年全国大会や世界選手権で優勝していたくせに、急に試合に出なくなった時期があった。
そして、聡史が続ける。
「お前と国見の話、修平には内緒で、修平と付き合ってる人に話してたんだけど。『ツラいのは、木崎君だけじゃないと思う。国見君って子の方が、絶対にもっとツラいはず。環境だって変わるし、ましてや発達障害抱えてるんだから』って言ってた」
聡史の言葉にハッとする。
俺はゆっくりと体を起こして、流れる汗をタオルで拭き取る。
「俺、マジで自分のことしか考えてなかった。璃緒の方が、きっと、もっとツラい思いをしてるかもしれないのに...」
必死に唇を噛み締めるが、次から次へと涙が溢れてきて止まらなくなった。
「そういうこと。やっと気付いた?」
聡史が少し笑顔になって、俺を見た。
「修平と付き合ってる人と修平って、いろんな意味で、すげぇお似合いなんだな」
俺が俯きながら呟くと、
「お互いに想い合ってんのがめっちゃ分かんのに、付き合ってることがバレてないと2人して思ってるところも、見てて面白いけどな」
聡史が、口元に拳を当て、肩を揺らして笑ったのだった。

修平と聡史のおかげで、気分を切り替えることが出来た俺は、卒業までの間、寂しくて、辛い気持ちを抱えながらも、そして璃緒のことも常に気がかりではあったけれど、今まで出来なかったことを楽しみながら、璃緒のいない高校生活を最後まで、後悔のないように過ごし、卒業を迎えることが出来たのだった。

そして俺は大学生になり、もうすぐ2年が過ぎようとしていた。指定校推薦で行きたかった大学に進み、学びたい学部に所属して、何か物足りなさを感じながらも、それなりに毎日が充実していた。
「さっき、モデルのMIRIがいた!」
「嘘っ!じゃあ、あの噂本当だったんだ」
次の授業に向かおうとしている俺たちとすれ違った女子が、何人か高い声を出して、興奮したように、はしゃいでいる。
「確か、コミュ障で会話は苦手だけど、写真や握手は大丈夫って、公式のインスタに上がってたよね?」
「そう!でも、あの笑顔を近くで見られるだけで、もう十分幸せだよ!」
「学部、どこなんだろ」
「とりあえず、聞いて回るか、捜すしかないよね!」
話しながら、足早に歩いて行く。
「MIRIって、あの、有名なモデルの?めっちゃ背も高くてスタイル良くて、本名や年齢も公表してないし、女か男か分かんねぇくらい、超美形な奴だろ?」
同じ大学に進学した柳瀬が、俺に聞く。
「俺に聞くな」
「だな。お前、結構オシャレなくせに、そういうの興味ないもんな。俺は見てみたいけど」
「授業、遅れるぞ」
俺が足早に歩き出した、その時、
「MIRIだ…」
言って、柳瀬が立ち止まる。
顔を上げると、背の高い、明らかに8頭身以上だと思われる人物が立っていた。
金髪の短めの髪に緩めのパーマをかけ、固めて立ち上げ、耳にはピアスがいくつもしてあって、目の色はグリーンだった。なのに、俺にはそれが誰か、すぐに分かってしまった。
「…璃緒?」
「うん」
「え!?嘘だろ!」
柳瀬が声を上げる。
「久しぶりだな」
「うん」
「学部、こっちじゃないだろ?」
「うん。そのせいで、入学式の日に叶のこと見かけてからずっと捜してたのに、なかなか見つけられなくて」
「そっか。今、モデルやってんだって?」
「うん」
「いや!ちょっと待てよ!お前ら、何普通に会話してんの!?おかしいだろ!」
柳瀬が突っ込む。そこに、
「いた!MIRI だ!!」
と、女性の声がした。振り向くと、何人かの女性が走り寄って来る。
璃緒が、一気に4~5人の女の子に取り囲まれた。笑顔を見せ、握手をして行くと、一緒に写真を撮り始める。
「良かったよ。璃緒が元気で」
「本当だな…。ずっと木崎の後ろでおどおどしてた奴とは思えないな。何か、大事に育てた子供を嫁に出した気分だな」
柳瀬が、切なそうに言った。
「そうだな…。ずっと一緒にいたもんな」
俺が言うと、
「特に、お前はな」
寂しそうに目を細め、柳瀬が俺を見る。俺は、黙ってその場を去ろうと、足を進めた。
「あ!叶、待って!」
その背中を呼び止められる。そして璃緒が、取り囲まれていた合間をくぐり抜け、俺へと駆け寄って来た。
「何だよ」
「もう少し、叶と話したい」
「何をだよ?学生生活も楽しそうだし、1人でも大丈夫そうだし…。何も心配なさそうじゃん。璃緒のことだから、きっとたくさん苦労もしたんだろうけど、ちゃんと乗り越えられたみたいで安心した」
俺は、璃緒の成長を心から嬉しく思った。
「うん。でも、1つだけ、どうしても乗り越えられなかったことがあって。叶に協力して欲しいんだけど、今日の夜、空いてる?」
やっぱり俺は、いつまでも璃緒には甘い…。結局、璃緒のお願いを聞くために、大学が終わってから璃緒のアパートに寄ることになったのだった。

「転校したのに、またすぐにこっちに戻ったのか?」
璃緒のアパートに上がり込み、リビングの床へと腰を下ろすと、璃緒が温かいコーヒーを淹れて、テーブルの上に置いてくれる。
「ううん。父親が9月1日付で転勤になって埼玉に行ったけど、僕は転校しなかったんだ。大学もこっちだったし、その時に、このアパートを契約して、卒業までの間は母親と2人で住んで、いろんなことを1人で出来るように練習してた」
「え?どういうこと?」
「一応、卒業まで在籍って形にしてもらってて。3年の3学期ってさ、進路さえ決まってれば、ほとんど学校行かなくていいでしょ?出席日数も足りてたし、卒業証書も、あとからちゃんと貰った」
「でも、担任が…」
「うん。僕が、転校したことにして欲しいって、先生に無理矢理頼んだから。騙しててごめん」
「何だよ、それ。あのあと、俺がどんな気持ちで毎日を過ごしてたと思ってんだよ。携帯も番号変わってたし」
「本当にごめん。契約者を僕に変更する時に、新規だと安いからって、母親が僕の携帯を買い換えて…。僕、学校に行かなくなってから、言語聴覚士のいる教室に、毎日のように通ってたんだ。最後に叶が言ってくれたあの言葉のおかげで、頑張ろうって思えた。叶にずっと甘えっぱなしだったな、って反省もしたし、発達障害だからって自分の殻に綴じ込もっていたのは、自分自身だったんだ、って気付いて。そこから、苦手なことにも挑戦してみようって思った」
璃緒が、俺の頬を包み込み、親指で涙を拭ってくれる。
「叶?何で泣いてるの?」
「俺、あの時、璃緒にすげぇひどいこと言って、ずっと後悔してた。本当にごめんな」
謝ると、璃緒はあの時のままの、愛らしい笑顔を見せ、首を横に振った。
「教室に通ってる時に、ドラマか何かの撮影に来てた人に、たまたまスカウトされて。大学卒業までの契約でモデルの仕事を始めたのも、叶のおかげだよ。自分の意思で、やってみたい、って初めて思ったんだ。僕は、叶のために、変わろうと思った。叶のために、変わることが出来た。だから、泣かないで」
あんなに臆病だった璃緒が、今はこんなにも逞しくて、強くて…。俺は胸がギュッと熱くなった。
「叶に会えなくなって、すごく辛かったけど、ちゃんと自立してから叶に会いに行こうって決めてた。叶のあの時の言葉に、今は物凄く感謝してる」
「璃緒…」
璃緒が俺を抱き締めてくれる。その暖かい胸と、変わらない璃緒の香りに包まれて、より、涙が溢れて止まらなくなった。
「見た目かなり変わってたのに、よく分かったね」
「そんなの、すぐに分かるだろ。璃緒の雰囲気っていうか、空気っていうの…?どんだけ長く一緒にいたと思ってんだよ」
「うん。そうだね…。叶は、相変わらずイケメンだね。高校時代の短髪もいいけど、そのラウンドマッシュの髪型も、すごく似合ってる。昔から流行に敏感だったもんね」
言って、璃緒の腕に力が込もる。
「なのに、叶って、たまに鈍感だよね?僕が襲われた時、叶じゃないとやだ、って、叶がいいって言ったのに、スルーしたから」
「スルー?何が?」
俺が聞くと、璃緒は俺を胸から離し、優しく微笑んだ。
「あれは、誘ってたんだよ?」
言いながら、俺を押し倒し、上へと覆い被さって来る。
「ちょっと待て!!その前に、乗り越えられなかったことって何だよ!?」
「叶への気持ちだよ。好きだったんだ、ずっと。あの時も、今も…。忘れることなんて出来なかった」
璃緒が、俺へと顔を寄せる。俺は、その璃緒の顔を両手で挟み込み、制御した。
「何か、シチュエーション的に、おかしくないか?」
「何が?」
「どう考えたって、お前の方が可愛いし、綺麗なんだから、その…、えと…逆だろ…?」
「まあ、あの頃のままだったらそうかもだけど、今は背の高さもそんなに変わらないし、スタイル維持のためにトレーニングもして、筋肉もそれなりに付いてるし、叶のことも可愛いいって思うから、こっちでもいいのかな、って」
聞いてるこっちが照れてしまう。
「よく恥ずかし気もなくそんなこと…。何か、言いたいこと、めっちゃ言えるようになってる気がするんだけど?」
「叶にだけは、いつも言えてたよ。叶は、僕にとって特別な存在だったから」
「え?」
顔が一気に熱くなるのが分かった。
「大好きだよ、叶。小学生の頃からずっと好きだった…」
綺麗なピンク色の唇が、ゆっくりと俺の唇をふさいだ。
「お前、手、早すぎ…。今日、久しぶりに会ったのに」
「叶が好き過ぎて、我慢できないんだ」
唇が深く重なり、甘くて柔らかい舌をお互いに味わう。床に横たわったまま、お互いに服を脱がし合い、
「されるのは、初めて?」
璃緒が俺の耳元で聞く。
「そんなこと、聞くな」
俺は恥ずかしくなって、顔を横に向けた。
「でも、する方は、初めてじゃないもんね」
「え?いや、する方も、ないけど…」
俺は思わず璃緒を見た。
「嘘でしょ?」
「何が?」
「え?まだ本気で夢だと思ってるの?」
「何の話だよ」
「呆れた」
璃緒が体を起こし、床へと座り込んだ。
「え?何が?」
「あの日、僕のこと、あんなに優しく抱いてくれたのに、本当に覚えてないの?」
「え?あの日って?」
「僕が学校で襲われた日、帰りに家に寄ってくれたでしょ?その日のことだよ」
「えっと…。お前の部屋で寝た日のこと?」
「うん」
「あの日は、めちゃくちゃリアルな夢を見てて…」
「どんな?」
「璃緒の顔が見られなくなるくらい、恥ずかしい夢」
「そんなに、やらしいことしてたんだ?」
「かなり」
「それ、夢じゃないから」
「え?」
「あの日、僕と叶は、間違いなく、したんだよ」
「した…のか?本当に?確かに、ずっと感触は残ってるような気はしてたけど。夢じゃなくて?」
「夢にしないでよ…。僕にとっては、一生の思い出なんだから...」
璃緒が唇を噛み締めて、俯いた。
「俺、あの時、本当に夢心地で…。夢だったのか現実だったのか、ワケ分かんなくて…」
「ただ、寝ぼけてただけでしょ?」
「…ごめん」
俺は謝ることしか出来なかった。
「ひどいよ…。僕は、大好きな叶とできて、すごく嬉しかったのに。叶、そのあともずっと態度が普通だったし、僕、めちゃくちゃ悩んでて」
「璃緒…マジでごめん。泣くなよ。って言うか、何で2人して泣いてんだろうな…」
今度は、俺が璃緒を思いっきり抱き締め、言葉を続けた。
「俺たち、両想いだったんだな。全然気付いてなかったけど」
「え?」
「俺も、璃緒のことが、ずっと好きだった」
俺たちに、もう迷いはなかった。俺は璃緒の手を握り、そしてベッドへと連れ込むと、ゆっくりと押し倒した。
「やっぱ、俺がしてもいい?璃緒のこと、ちゃんと感じたい」
「うん…」
璃緒が俺の首に両手を回す。
「あ、でもちょっと待って。準備してくる」
「準備?」
璃緒がベッドから体を起こすと、
「今度こそ、絶対寝ないでよ!」
と、脱衣所へと入って行った。
俺はベッドへと腰掛けて、整理整頓されてる部屋を見渡した。
「相変わらず、キチッとしてるな。こういうのにも、いちいちこだわりがあるって、確か璃緒が言ってたっけ」
懐かしがりながら、つい笑みが零れた。
「おまたせ」
そう言って出て来た璃緒は、綺麗なサラサラの黒髪に、黒くて大きな瞳をキラキラさせ、ピアスも外していた。
「え?あれ?」
俺は思わず呆気に取られた。
「あれ、ウィッグなんだ。叶、僕の黒髪、サラサラですごく綺麗だって、前に言ってくれたから、絶対に染めたくなくて」
あの時と、全然変わってない…。そう思った瞬間、ずっと璃緒に対して感じていたときめきが、一気に舞い戻ったような気がした。
「じゃあ、しよっか」
言いながら、璃緒がベッドの横へと腰掛ける。
「いや、ちょっと待て。さすがにムードとかあるだろ。しよっか、って軽すぎね?」
「ムード?」
「そういうのには、疎いんだな」
こんな可愛い顔して、当たり前のようにサラッと誘って来るなんて、反則だろ。
「僕は叶としたい。ずっとずっと会いたかったし、会えて嬉しいから、早くしたい」
「お前…」
俺の方が恥ずかしくなって、真っ赤になる。
「叶は?」
「あー、もう。知らないからな」
勢い良く、璃緒をベッドへと押し倒すと、
「今度はちゃんと覚えとく」
そう言って、璃緒の柔らかい唇に、チュッと軽くキスをした。
「もっとちゃんと…」
璃緒がねだる。
「そんな顔して、俺を煽るな。可愛いすぎるだろ」
そして、もう1度唇を重ねると、そこから激しい口付けに変わり、舌を絡め合う。
「璃緒の舌、めっちゃ甘い…」
何度も吸い付いて、引き込んで、自分の舌を絡める。
「ん…」
時々に洩れる璃緒の吐息に、俺の感情は一気に昂りを見せた。
「璃緒。好きだ」
貪り付くように、璃緒の全身を味わう。もう歯止めが利かなくなった俺は、あらゆる部位で、璃緒を思いっきり、そしてくまなく感じ取ったのだった。

2人して息を切らしながら、ベッドへと横たわる。額にじんわり汗を滲ませ、ぐったりする璃緒の髪にそっと触れ、
「ごめん…。キツかったか?」
と聞くと、
「ううん。気持ち良すぎただけ…」
と、上目遣いで俺を見た。
「え…っと…」
俺は、あまりにも恥ずかしくなり、思わずうろたえてしまった。その姿を見て、璃緒が笑う。
「叶、大好き!僕たち、また一緒にいられるよね?」
言いながら、俺へと抱き付いてくる。
「当たり前だろ。もう絶対に璃緒のこと、離したりしない。2度と、あんな悲しくて辛い思いなんてしたくない」
俺も、迷うことなく、璃緒を強く抱き締めた。

その後、Uber Eatsで夕飯を頼み、2人で向かい合ってキッチンテーブルに腰掛ける。
「叶は、幼児教育学部なんだね」
「ああ。前にも言ったけど、俺の弟、てんかん持ちだったから。今は完治して運転も出来てるけど、そういう子供たちの対応の方法とか、あと発達障害のこととかも、いろいろ勉強したくて。小さい頃から、寄り添ってあげられたら、と思って」
「そっか…」
「お前は?」
「福祉学部。言語聴覚士の資格を取りたくて。自分が発達障害のコミュ障で、うまく言葉も話せなくて、自分の意思をちゃんと伝えられなかったから。そんな人たちの力になりたいな、と思って」
「そっか…。頑張ろうな」
「うん」
「でも、モデルの仕事はどうすんの?」
「大学卒業まで、って決めてるから。仕事も土日祝と春休みとか長期休暇の時しかしないことにしてるし」
「ふぅん。じゃあ、仕事の日だけ東京まで通ってるってこと?」
「うん。新幹線が開通してから、2時間くらいで行けるし、乗り換えもないし。東京に年の離れた兄が住んでて。仕事が休みの日は、いつも駅まで迎えに来てくれて、撮影とか長引く時は泊めてもらってる」
「え?兄貴がいるのか?」
「うん。転校したくないとかで、埼玉に残って、祖父母の家に住んでた。東京の大学卒業して、そのまま東京で就職したから、叶は会ったことないよね」
「そうなんだ。全然知らなかったよ。そういえば、何でMIRI にしたんだ?」
「くにみりおの『み』と『り』を取っただけ。本名とか顔バレとかもしたくなくて、ウィッグとカラコンで分からないようにしてたのに、叶にはすぐにバレちゃったね」
璃緒が、めちゃくちゃ嬉しそうに笑う。
「デレてんのか?」
「うん!さすが叶だな、って」
あー、マジで可愛いすぎるだろ。この可愛さ、1人で部屋にいたら、悶絶するな…。
「さっき、事務所公式のインスタ見たけど、めっちゃ人気あるんだな」
「やめてよ。でも、叶のこと見つけたから、大学ではあの格好はやめる」
「何で?」
「叶と一緒にいたいから、目立ちたくない。大学であの格好してたのも、叶が僕のこと見つけてくれるかも、って思ってしてただけだから。モデル業に専念することになって、退学したことにする」
「ファンが泣くぞ」
「僕、叶さえいてくれればいい。実はずっと肌を出す仕事も断ってて」
「何で?」
「叶じゃないといやだから。叶にしか見せたくない」
俺は、璃緒のストレートなセリフに、思わず咳き込んでしまった。
拳を手に当てたまま、つい黙り込んでしまう。
「大丈夫?」
璃緒が慌てて飲み物を俺へと差し出す。
「お前なぁ…」
「だって、僕は叶だけのものだから」
璃緒が俯く。
あー!だから、可愛いすぎるって!!
「大丈夫。俺も、もう璃緒だけだよ」
璃緒が顔を上げ、嬉しそうに笑う。
「これ食べたらさ、もう1回しよっか」
璃緒が屈託のない笑顔で言ったのだった。

そして、MIRI はモデル業に専念するため、大学を退学したと噂が広がり、璃緒は授業が終わると必ず俺を迎えに来た。
「相変わらず、仲良しだな」
柳瀬が、笑顔になりながら言う。
「もしかして、妬いてる?柳瀬君も、叶と仲良いし…」
璃緒が、心配そうに柳瀬に尋ねた。
「いや。嬉しいだけ。2人がまたこうやって一緒に居るところを見ることが出来て、何か感動してる。こいつ、国見がいなくなってから、授業もまともに出なくなって、落ち込み方が半端なかったから」
柳瀬が言うと、璃緒が照れたように笑った。
「やっぱ、可愛さは健在だなぁ」
柳瀬が呟き、
「そりゃ、木崎もどんな女子に告白されて付き合ったって、続かないはずだよ。国見の方が絶対に上回るもんな」
と続けた。
璃緒の表情が、一気に強張り、曇った。
「叶、僕が居ない間に、誰かと付き合ってたの?」
「そうそう。国見が転校してから、こいつ、急にいろんな女子から告白されるようになってさ。何人かと付き合ってたけど、すぐに別れる感じ」
柳瀬が笑いながら言うと、璃緒が、ふてくされたように黙り込んだ。
「そういうのいいから。璃緒、明日は何時の新幹線?」
「あ…。えと、午後から撮影だから、9時くらいので行こうかなと思ってる」
「じゃあ、車で駅まで送る」
「それなら今日もアパートに泊まってよ。朝、一緒に出たい」
腕をスルリと組み、顔を寄せると、俯いたまま俺の胸へと顔を埋める。俺はつい、咳払いをした。
「いや、お前ら、もう会話と行動が恋人のそれだけど!?」
柳瀬に、思いっきり突っ込まれたのだった。

「何か機嫌悪い?」
「別に」
アパートに着いたものの、璃緒はずっと黙り込んだまま、俺と距離を置いていた。
「璃緒。ちゃんと話せよ。明日からしばらく会えなくなるんだから、気まずいまま離れたくない」
「女の子と付き合って、何したの?」
「え?」
「手は繋いだ?」
「え、あ、まあ」
「キスは?」
「…そりゃ、キスぐらいは…」
「じゃあ…」
「してねーよ!それ以上のことは」
璃緒が、振り返って俺を見た。
「本当に?」
「してないよ。璃緒としか」
涙を流しながら、俺へと抱き付く。
「でも、キスはしたんだよね?」
璃緒の頭を優しく撫でながら、
「したよ。でも、全然、何とも思わなかった。璃緒とのキスみたいに、体が熱くなったり、歯止めが利かなくなるようなことにはならなかったよ」
俺は、本音を言った。
「僕は、叶以外とキスなんてしたくないし、出来ないと思う」
「うん。これからも、そうして。じゃないと、俺、めちゃくちゃ嫉妬すると思うから」
俺は、璃緒の頬を両手で包み込んだ。
「この柔らかいピンク色の唇は、もう俺が独り占めしていいんだろ?だったら、変な嫉妬なんてしなくていいし、泣かなくていい」
そして、ゆっくりと口付けた。
そのまま、2人してベッドへと倒れ込む。
「こんな風になるの、マジで璃緒にだけなんだよ…」
「うん。僕も…」
そして、その日は、朝までお互いの体を必死に求め合ったのだった。

「お疲れ様」
「お疲れ」
2人して、肩を並べて、社員用の駐車場まで歩き出す。
「あ、来週の申し送りでも言うけど、今日のなぎさ君の訓練、前回よりもかなりいい感じだったよ」
璃緒は、自分の経験を生かしながら、毎日、懸命に園児たちと向き合って、仕事に励んでいた。
「そっか。良かった」
大学を卒業し、俺たちは今、私立の同じ幼稚園に勤めている。俺は幼児教育科を卒業し、発達障害児支援士の資格を取り、発達障害の園児を対象にしたクラスを担当していた。璃緒は言語聴覚士の国家試験に合格し、全クラスのコミニュケーションが苦手な園児たちを日替わりで面談し、カウンセリングや訓練をしている。
「璃緒、明日からの連休、東京で撮影だっけ?」
「うん。新幹線のチケット、叶の分も予約してあるから」
そうなのだ。璃緒は結局、まだモデルの仕事を続けている。辞めるとは言ったものの、事務所の社長が直々に俺のところへとやって来て、辞めないように説得して欲しいと頼みに来たのだ。
「社長もずるいよね」
「何で?」
「叶に説得されたら、辞められるワケないじゃん」
「いや、まず、俺たちの関係、普通社長にまで話すか?しかも、俺が付き添いでずっと側にいるならモデル続けるって条件出すってさ。俺はただ、インスタのコメントとか読んでて、お前のことを糧にして毎日頑張ってる奴らがたくさんいるから、と思って説得しただけなのに」
「だって、ずっと一緒にいたいもん。ちょうど土日祝だけ現場に付き添ってくれる、僕専属の担当の人を探してたし、事務所的にも助かったと思うよ。交通費も給料も出るしさ。でも社長としては、叶にもモデルやって欲しいみたいだけど。しつこく僕に頼んでくるから」
「いや、俺はいいよ。璃緒、モデル仲間からも人気あるし、俺も心配だったから付き添うのは別にいいんだけどさ。前に璃緒と一緒に組んで撮影したモデル、距離感近すぎただろ?額くっつけて、頬とか口元とか、必要以上に触るし」
「叶、あのあと、めちゃくちゃ機嫌悪かったもんね」
璃緒が嬉しそうに笑う。
「笑うな」
「だって、妬いてくれて嬉しかったんだもん」
俺は恥ずかしくなって、つい顔を背けた。
そして璃緒が続ける。
「結婚式、楽しみだね」
と。
「ん?ああ」
俺たちは、2ヶ月後の4月7日に、同性同士の結婚式を挙げられる教会を予約してあった。
初めて会った日から、15年の記念日にと、璃緒が教会を探し出し「結婚式を挙げたい!」とお願いして来たのだ。
「璃緒の白いタキシード姿、すげぇ楽しみ」
「叶の黒のタキシード姿も楽しみ。当日まで、見せ合わないようにしようね」
「ああ」
俺は、つい、口元が綻んだ。
璃緒は今でも、環境に慣れるのも、人に慣れるのも、かなり時間がかかる。それでも、出会った頃よりは、ずいぶんと良くなっていて、今じゃ一緒に遊びに行く仲の良い友達も、何人かいたりする。
「ほんと、過保護にし過ぎてたんだな」
発達障害だからと、大事に大切に扱いすぎることが、成長の妨げになるんだということも、そして本人のために自立を促すことも、必要なことだったんだということも、今さらながら理解して、反省する。
「え?何?」
「いや。何でもない」
「…発達障害ってさ、個性が強いだけ、って受け止められることも多いけど、やっぱり1番大事なのは2次障害に繋がらないようにすることだよね」
と、璃緒が唐突に言った。
「そうだな。発達障害が原因で、いろんな事がうまくやれないことに悩んで、不登校や引きこもりにならないように、ちゃんと自己肯定感を上げていかないとな。この仕事で、少しでも俺たちがそういう部分をフォローして行けるといいな」
俺は足を止めて、ゆっくりと空を仰いだ。
「あの頃、転校は不安だったけど、僕は叶のおかげで毎日楽しく学校に行けてたよ。ずっと側にいてくれて、本当にありがとう」
璃緒が俺を見て、笑顔になる。
「いや。俺の方こそ…」
璃緒と過ごしていた毎日が、本当に楽しかった。ずっと側にいてくれて、ありがとうな。
俺は、あまりにも照れくさくて、肝心な言葉は言えなかったけれど、つい口元に笑みが零れた。そして、俯いたまま璃緒と横に並んで、再び歩き出す。

俺たちは今、あの頃とは違う意味で、日々をずっと側で一緒に過ごしている。2人して俺の車へと乗り込むと、手を固く繋いで、目を合わせ、笑顔になる。そして2人で住むアパートへと向かって車を発進させたのだった。〈完〉

*この作品に出て来る林修平はやししゅうへいがメインとなる作品が『上から目線の氷結王子、取り扱います』になります。よろしければ、ぜひそちらも読んでみて下さい。

✳この作品の木崎と国見が『おとなし系の秀才君とやんちゃ系のおバカ君が、恋について本気で考えてみた』で、キーパーソンとして登場します。そちらで、2人が離れていた期間、木崎がどのような気持ちでいたのかが分かります。良かったら、読んでみて下さい。
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