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第零章 全ての始まり
新たなる世界へ
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マリアの手から放たれた光が、ルーゼの左腕へと静かに吸収されていく。
出血は止まったものの、傷と火傷の痕は完全には消えず、傷の酷さにマリアは微かに視線を逸らした。
「すまない、マリア」
「いえ……でも、止血しか出来ませんでした」
「大丈夫だ。血の流し過ぎの心配が無くなった。体の痛みもだいぶ無くなったよ」
俯くマリアの肩にそっと手を置くと、ルーゼはゆっくりと起き上がり、辺りを見回す。
「……ガーネは砕いた。後は大きな破片とこの場所を封印するだけだ」
ルーゼの言葉に、マリアは疑問を感じた。
「ガーネに封印術をかけたのに、再び術をかけるのですか? それに、砕くまでしなくても、封印術で封印だけすればよかったのでは……? このガーネは、精霊の核とも言われているものです。砕いてしまっては、精霊達が更に暴走してしまうのでは」
「砕いたのは三大陸にそれぞれ封印する為だ。力も分散するし、仮に封印が解けても天変地異を引き起こす程の暴走が起こる事はまず無いだろう。砕いた所で精霊達は力を失わないし、世界に影響が出るわけでもない。だからワザと三つに砕いたんだ」
ルーゼは三つに砕けたガーネの大きな破片に視線を向けた。
釣られる様に、マリアもガーネの破片に視線を向ける。
そして、三つに砕かれたガーネは一瞬にしてその場から消えた。
ルーゼが移動陽術で異空間に一時的に移動させたのだ。
「そうすれば精霊達や大地は……」
「ああ。力が分散されるから、精霊の暴走は止まり、大地は戻ってゆく。時間は掛かるだろうがな」
「……素敵な世界になると良いですね」
マリアは優しく微笑み、釣られてルーゼも微笑んだ。
辺りを見回し小さく息を吐くと、ルーゼは右手でマリアの左手を握り、ガーネに視線を戻す。
「さあ……フォルンの大地に新たなる芽吹きを願おう」
「はい。そして、この場所が二度と、開かれないように」
二人が強く言葉を放つと、二人の足元から金色の魔法陣が出現した。
それと同時に、壁に無数の紋様が光によって刻まれていく。
ルーゼはマリアの左手を握る力を更に込めた。
マリアもルーゼの力に負けない位に手を握り、ゆっくりと息を吐く。
「……フォルンの大地、それに精霊達が美しく、穏やかになる事を願います」
「さあ、最後の仕上げだ。全力でやるぞ!」
「はい!」
ルーゼが強く言葉を放つと、お互いに握っていた左右の手を放し、床に強く打ち付けた。
すると、打ち付けた所から金色の光が溢れ、やがて床から無数の小さな光が二人のいる空間にゆらゆらと踊り始め、壁に刻まれた紋様が強く輝き出した。
高等封印紋様術──。あらゆる物を封印出来る高等陽術だ。
ルーゼは壁に刻まれた紋様を見ると、小さく息を吐き辺りを見回した。
壁全体に紋様が刻まれ、辺りは金色から段々と青白い光へと変わっていく。
封印紋様術で封印が完了した証だ。
「よし、後は外から結界を張れば大丈夫だ。早く脱出するぞ」
「はい……きゃっ!?」
ルーゼがマリアの手を引きながら入り口へと向かおうとするが、同時に下から突き上げるような揺れが二人の足元をフラつかせる。
「くそっ……急がないとまずいな」
「急ぎましょう。出口まで行かないと移動陽術が使えません」
「ああ、分かった」
ルーゼとマリアは、急いで空間から脱出し、細い道へと出た。
それと同時に天井が崩れ、先程まで二人がいた空間に続く入り口は塞がれてしまった。
封印術の衝撃波が空間に亀裂を入れたのだろう。
ルーゼはそれを見つめると微かに笑い、マリアのペースに合わせて走っていった。
(丁度あの空間の入り口は塞がれた。もう二度と、この様な事は起こらないだろう……)
「ルーゼ! 見えました、出口です!」
ぼんやりと考えていると、マリアの声が頭に響いた。
辺りを見回すと、いつの間にか透明の壁で覆われた空間に出ていた。
透明の壁の外側には青く澄んだ水が漂い、微かに光が差し込んでいる。
マリアは小さな魔法陣を描き、ルーゼの手をしっかり握った。
「さあ、帰りましょう。地上のみんなが……私達の帰りを待っています」
「ああ。そして見つめよう。見つめ直そう。フォルンの世界と、俺達人間のしてきた行いを」
「はい……では、いきます!」
マリアが強く手を握ると、二人の足元に描かれた麻痺陣が輝き、二人は光と共にその場所から姿を消した。
(……まだだ。まだ終わってない)
ルーゼとマリアが移動陽術で脱出すると、何処からか声が聞こえた。
(世界も精霊も美しくなる……? 笑わせてくれる。汚したのも汚していくのも愚かな人間達だと言うのに)
誰もいない筈の空間に、謎の声が響き渡る。
辺りは小さな光が漂い、床にはガーネを砕いた際に散った破片が散らばっていて、壁にはルーゼとマリアが施した複雑な紋様が刻まれていた。
誰も居ない筈のその空間から、声が響く。
同時に、ガーネの細かい破片が赤黒く輝き、やがて一つの大きな光となった。
(ガーネがどの様な物かを人間は知らぬからフォルンと精霊達は汚染されていったと言うのに)
赤黒い光は小さく円を描くと三つに分裂し、空間を突き抜けていく。
水の中を、そして空高くへとその光は舞い上がり、やがてそれは見えなくなってしまった。
ルーゼとマリアはその光を確認する事無く、前へと進んでゆく。
自分達にも、そして他の人々にもやるべき事が有るから──。
精霊達の暴走も収まり、長い年月を経て緑が芽生え花が咲き、気候も段々安定していく。
時は過ぎルーゼア暦2450年。 フォルンは美しい緑と水の大地を取り戻した。
再び起こりうる、人間達の争いで再び大地が蝕まれていくと言う事を知らずに──。
出血は止まったものの、傷と火傷の痕は完全には消えず、傷の酷さにマリアは微かに視線を逸らした。
「すまない、マリア」
「いえ……でも、止血しか出来ませんでした」
「大丈夫だ。血の流し過ぎの心配が無くなった。体の痛みもだいぶ無くなったよ」
俯くマリアの肩にそっと手を置くと、ルーゼはゆっくりと起き上がり、辺りを見回す。
「……ガーネは砕いた。後は大きな破片とこの場所を封印するだけだ」
ルーゼの言葉に、マリアは疑問を感じた。
「ガーネに封印術をかけたのに、再び術をかけるのですか? それに、砕くまでしなくても、封印術で封印だけすればよかったのでは……? このガーネは、精霊の核とも言われているものです。砕いてしまっては、精霊達が更に暴走してしまうのでは」
「砕いたのは三大陸にそれぞれ封印する為だ。力も分散するし、仮に封印が解けても天変地異を引き起こす程の暴走が起こる事はまず無いだろう。砕いた所で精霊達は力を失わないし、世界に影響が出るわけでもない。だからワザと三つに砕いたんだ」
ルーゼは三つに砕けたガーネの大きな破片に視線を向けた。
釣られる様に、マリアもガーネの破片に視線を向ける。
そして、三つに砕かれたガーネは一瞬にしてその場から消えた。
ルーゼが移動陽術で異空間に一時的に移動させたのだ。
「そうすれば精霊達や大地は……」
「ああ。力が分散されるから、精霊の暴走は止まり、大地は戻ってゆく。時間は掛かるだろうがな」
「……素敵な世界になると良いですね」
マリアは優しく微笑み、釣られてルーゼも微笑んだ。
辺りを見回し小さく息を吐くと、ルーゼは右手でマリアの左手を握り、ガーネに視線を戻す。
「さあ……フォルンの大地に新たなる芽吹きを願おう」
「はい。そして、この場所が二度と、開かれないように」
二人が強く言葉を放つと、二人の足元から金色の魔法陣が出現した。
それと同時に、壁に無数の紋様が光によって刻まれていく。
ルーゼはマリアの左手を握る力を更に込めた。
マリアもルーゼの力に負けない位に手を握り、ゆっくりと息を吐く。
「……フォルンの大地、それに精霊達が美しく、穏やかになる事を願います」
「さあ、最後の仕上げだ。全力でやるぞ!」
「はい!」
ルーゼが強く言葉を放つと、お互いに握っていた左右の手を放し、床に強く打ち付けた。
すると、打ち付けた所から金色の光が溢れ、やがて床から無数の小さな光が二人のいる空間にゆらゆらと踊り始め、壁に刻まれた紋様が強く輝き出した。
高等封印紋様術──。あらゆる物を封印出来る高等陽術だ。
ルーゼは壁に刻まれた紋様を見ると、小さく息を吐き辺りを見回した。
壁全体に紋様が刻まれ、辺りは金色から段々と青白い光へと変わっていく。
封印紋様術で封印が完了した証だ。
「よし、後は外から結界を張れば大丈夫だ。早く脱出するぞ」
「はい……きゃっ!?」
ルーゼがマリアの手を引きながら入り口へと向かおうとするが、同時に下から突き上げるような揺れが二人の足元をフラつかせる。
「くそっ……急がないとまずいな」
「急ぎましょう。出口まで行かないと移動陽術が使えません」
「ああ、分かった」
ルーゼとマリアは、急いで空間から脱出し、細い道へと出た。
それと同時に天井が崩れ、先程まで二人がいた空間に続く入り口は塞がれてしまった。
封印術の衝撃波が空間に亀裂を入れたのだろう。
ルーゼはそれを見つめると微かに笑い、マリアのペースに合わせて走っていった。
(丁度あの空間の入り口は塞がれた。もう二度と、この様な事は起こらないだろう……)
「ルーゼ! 見えました、出口です!」
ぼんやりと考えていると、マリアの声が頭に響いた。
辺りを見回すと、いつの間にか透明の壁で覆われた空間に出ていた。
透明の壁の外側には青く澄んだ水が漂い、微かに光が差し込んでいる。
マリアは小さな魔法陣を描き、ルーゼの手をしっかり握った。
「さあ、帰りましょう。地上のみんなが……私達の帰りを待っています」
「ああ。そして見つめよう。見つめ直そう。フォルンの世界と、俺達人間のしてきた行いを」
「はい……では、いきます!」
マリアが強く手を握ると、二人の足元に描かれた麻痺陣が輝き、二人は光と共にその場所から姿を消した。
(……まだだ。まだ終わってない)
ルーゼとマリアが移動陽術で脱出すると、何処からか声が聞こえた。
(世界も精霊も美しくなる……? 笑わせてくれる。汚したのも汚していくのも愚かな人間達だと言うのに)
誰もいない筈の空間に、謎の声が響き渡る。
辺りは小さな光が漂い、床にはガーネを砕いた際に散った破片が散らばっていて、壁にはルーゼとマリアが施した複雑な紋様が刻まれていた。
誰も居ない筈のその空間から、声が響く。
同時に、ガーネの細かい破片が赤黒く輝き、やがて一つの大きな光となった。
(ガーネがどの様な物かを人間は知らぬからフォルンと精霊達は汚染されていったと言うのに)
赤黒い光は小さく円を描くと三つに分裂し、空間を突き抜けていく。
水の中を、そして空高くへとその光は舞い上がり、やがてそれは見えなくなってしまった。
ルーゼとマリアはその光を確認する事無く、前へと進んでゆく。
自分達にも、そして他の人々にもやるべき事が有るから──。
精霊達の暴走も収まり、長い年月を経て緑が芽生え花が咲き、気候も段々安定していく。
時は過ぎルーゼア暦2450年。 フォルンは美しい緑と水の大地を取り戻した。
再び起こりうる、人間達の争いで再び大地が蝕まれていくと言う事を知らずに──。
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