ひだまりを求めて

空野セピ

文字の大きさ
5 / 108
第一章 穏やかな日常

晴天の下で

しおりを挟む
 穏やかな風が吹き、白い雲が所々に散らばる青い空の下、草花が生い茂る広い丘に銀色の髪を奏でながら寝転がる青年がいた。
 風で草花が揺れる度に心地よい音が静かに辺りに広がる中、青年は両腕を限界まで空へ向けて伸ばし、大きく伸びをする。

「ん~、今日も良い天気だなぁ」

 芝生に寝転がる青年は、オレンジ色の瞳を細め青い空をボーッと見つめていたが、時間が経つにつれ草花の擦れる音と小鳥の囀りが心地良く響き、ゆっくりと眼を閉じた。
 段々と眠気がやって来るのを感じていると、青年のお腹から小さな音が鳴る。 
 空腹に耐えきれずぼんやりと眼を開くと、風と共に何処からか声が聞こえたような気がした。

「……そろそろアイツが来る頃か」
 青年はぼんやりとしながら眼を細め、小さく息を吐く。
 太陽の光と草花の香りで瞼が重く感じる中、先程僅かに聞こえた声が段々と大きくなってきた。

「――ッド? 何処に居るの~?」

 聞き覚えのある声に、青年は眠気で重たい体を無理矢理起こし、勢いよく飛び上がった。

「ティミー、此所にいるぞー?」

 睡魔で微妙に重たい体を起こし、自分を探している澄んだ細い声の持ち主を、辺りを見回し探していく。 暫くすると、声の持ち主である少女が青年を見つけた。

「マッド、やっと見つけた……」

「何だよティミー。俺は何時もこの場所にいる事知ってるだろ?」 

「分かってるけど……ちょっとお昼用に山菜と木の実を集めていたから何時もと違う道から来たの。だから、少し迷っちゃって」

「ああ、やっぱりもう昼なんだな。通りで腹が鳴る訳だ」
 
 マッドと呼ばれた青年は、自分のお腹を触りながら苦笑する。 
 ティミーと呼ばれた少女も、マッドにつられて苦笑し、二つに縛った焦げ茶色の髪を揺らし髪と同じ色の瞳を細めながら空を見上げた。
 その細い腕には、沢山の木の実と山菜が抱えられていて、サワサワと擦れる音にマッドは眼を細め、ティミーと同じように空を見上げる。

「今日も良い天気だね」

「そうだな。穏やかで風も気持ち良い。昼寝に最適だな」

「また昼寝してたの? 午前中なのに」

「いや、寝てはいねえけど……寝そうになってたな。それより、昼飯か?」

「うん。だから呼びに来たんだよ」

 ティミーは木の実と山菜を抱え直し、小さく微笑んだ。

「今日はマッドの大好物のキノコシチューにしたよ」「え、マジか!?」

「本当本当、だから、早く戻ろう?」

 ティミーが微笑むと、マッドは勢い良く飛び上がった。 
 それに驚いた小鳥達が、マッドとティミーの回りから一斉に空へ飛び立ち、二人は空を見上げると小鳥達は空高くへと舞い、やがて姿が見えなくなっていく。
 静かに吹く風がマッドとティミーの髪を揺らし、ようやく二人は村へと歩き出した。
 辺りに広がる草花と、所々にポツリとある大きな岩。 
 その美しい風景が見渡す限り続いているこの場所は、マッドとティミーが暮らす村の人達からは【癒しの丘】と呼ばれていた。

 此処ユーラス大陸は、大陸全体の気候が寒帯で、北部側は亜寒帯と言って一年中吹雪が舞う地方も有る。
 そんな中、此処ルピチア地方は南部にあり、昔から温帯よりの寒帯気候となっていた。
 周辺に高い山がそびえ立っていて、冷たい空気は高い山で雪となり、ルピチア地方は一年の中でも数ヶ月しか雪が降らない。
 今は少し暖かい時期であり、風は穏やかで日差しも暖かく、過ごしやすい気温の為、マッドは良くこの丘で昼寝をするのが日課となっていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

処理中です...