ひだまりを求めて

空野セピ

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第一章 穏やかな日常

村へ戻ろう

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 程無くして先程までティミーが抱き抱えていた木の実と山菜をマッドが持ち、雑談を交えながら歩いていくと、いつの間にか丘を抜け森の中を歩いていた。
 所々から太陽の木漏れ日が差し込み、森の匂いと小鳥達の鳴き声が何処か穏やかな気持ちにさせてくれる。
 ぼんやりと上を見上げながら、マッドはポツリと言葉を吐いた。

「なあティミー、今日の夕飯、当ててやろうか?」

「えっ?」

「ズバリ! キノコ入りシチューオムライスだろ?」

「な、何で解ったの?」

 本日の夕飯を突然当てられ、ティミーは困惑する。
 図星だったようで、マッドは木の根っ子を指差し得意げに笑った。

「さっき丘に行く前にそこの木の下に3つ生えてたウマイダケが無い。お前が持ってる袋からウマイダケが見えてる。ウマイダケはバターで炒めてライスに入れると絶品で……」

「あ~もう! そうよ、夜はオムライスよ。マッドのキノコ話はもう聞き飽きたから話さないで」

「聞き飽きたって……」

 ティミーの言葉にマッドはうなだれていると、木の葉が擦れる音に混じって水の流れる音が聞こえた。 
 やがて一本の橋に差し掛かり、橋の下には澄んだ水が静かな音をたてながら流れている。
 北にそびえたつ山の雪が解け水となりここまで流れて来ているのだ。
 そしていつしか、此処からは遥か遠くの海へと流れ付くのだろうとマッドはぼんやりと考えながら橋を渡っていった。 

「しっかし、今日は本当に良い天気だな」

「うん、暖かいしこれならシーツも直ぐに乾きそうだね」

「だな。俺もスーばあさんの石鹸で洗って朝一で干して来た」

「あ、私も。何の香りの石鹸使ったの?」

「今日は……あれ、村のガキ共がいるな」 

「本当だ……アクスとルチアじゃない?」

 歩く度に樹で出来た橋が軋む音を聞きながら、マッドとティミーが森の奥を見ると、小さな男の子と女の子が此方に向かって手を振っていた。 

「マッドお兄ちゃ~ん! ティミーお姉ちゃ~ん!」

 深緑の髪を二つに縛った女の子が元気な声を出しながら、マッドとティミーの元へと走ってゆく。
 その後を、金髪の男の子が慌てて追いかけて行った。

「待てよルチア!」

「お兄ちゃん遅いよ! ルチアね、ティミーお姉ちゃんのクッキーが食べたいの! アクスお兄ちゃんの焼いたクッキー不味いの! だから、美味しいクッキー焼いて!」

「うるさいぞルチア! マッド兄ちゃん、母さんが早くキノコの仕分けに来てくれって呼んでるよ! 俺もマッド兄ちゃんと遊びたいし早く行こうぜ!」

 ルチアと名乗る女の子はグイグイとティミーのスカートを引っ張り、アクスと名乗る男の子はマッドの足にしがみつく。
 マッドとティミーはお互いに顔を合わせ苦笑すると、ルチアとアクスに引っ張られながら村へと歩いて行った。 

「おいおい、そんなに引っ張るなよ」 

「良いじゃん! 母さんもマッド兄ちゃんに会いたがってるし!」

「なんで俺なんかに会いたがるのかが分からないんだが」

「ティミーお姉ちゃんは、今日もお店で働くの~?」

「そうよー、今日もお姉ちゃんは沢山お料理作るんだよー」

 アクスとルチルは目をキラキラさせながらマッドとティミーにピッタリとくっ付いて行った。
 段々と森の奥から、どこか香ばしい匂いが広がってくる。 
 樹で出来た小さな柵を跨ぐと、樹で出来た家が所々にあり、元気なおばちゃんが野菜や果物を売っていた。
 所々に大きな牧場があり、ピンクの牛やふわふわの毛皮を纏った羊等、数多くの動物もいる。
 鳥の囀りと、香ばしい匂い、数々の畑に所々溢れる草花が、彼ら村人心を落ち着かせる。 
 そう、ここが【草花の村 ルグート】──。
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