ひだまりを求めて

空野セピ

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第一章 穏やかな日常

賑やかなティータイム

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「あ……やっぱり怒ってる……よね?」

「……別に。丁度腹も減ってたし、もう怒ってねえよ」

 小さく息を吐きながら呟くとティミーは申し訳なさそうに微笑み、オーブンの中からこんがりと焼き上がったクッキーを取り出した。 
 ふわりと甘い香りが広がり、それに反応したのかマッドのお腹から小さな音が聞こえ、マッドは左手でお腹を押さえる。 

「やだマッド、お昼にあのシチュー食べたのにもうお腹空いたの?」

「うるせえな、熊狩ってたんだから仕方ねえだろ」

 頭を掻きながら言葉を吐くと、マッドは台所の端に熊の肉が入った袋と剣を置いた。 
 ティミーは小さく苦笑すると、クッキーをお皿に移し、テーブルの上にコトリと置いていく。 
 どれだけ生地を練ったのかは分からないが、様々な形のクッキーが大きなお皿に並べられている。 
 エプロンを外すと綺麗に畳み、マッドの背中を軽く押しながら椅子へ座らせた。 

「はい、お茶入れるから座って待ってて。アクスとルチアも、もう直ぐだから席に座ってて」

「はぁ~い。もうルチアお腹ペコペコだよ~」

「おれも腹減ったなあ」

「お前ら、昼飯ちゃんと喰ったんだろうな」

「食べたよー! ルチア苦手な野菜もきちんと食べたもん」

 椅子に座るなり、マッドと幼い兄弟アクスとルチアは雑談を始めた。
 しばらくするとティミーが紅茶が入ったカップをトレイに乗せ、マッド達の手元にそれを置くとティミーも椅子に座って一息ついた。

「お待たせ。さ、ティータイムにしよっか」

「おう、じゃ、早速頂くとするか」

「わ~い! いただきまーす!」

 アクスとルチアはお行儀良く手を合わせると、沢山のクッキーの山から一枚ずつ取り、小さな口を大きく開けて食べた。 
 マッドとティミーもクッキーを口に含むと、香ばしい香りと甘みが口の中で広がり、無意識に口元が笑み、もう一枚とクッキーの山に手を伸ばしていく。

「やべえ、めちゃくちゃ美味いんだけど。木の実使ったか?」

「うん、今回はチュロの実を使ったんだ。今が熟成の時期だから、甘さが強くて栄養も豊富なんだよ」

「へえ、チュロの実はそのまま食べてたが、焼くとまた甘味が出るんだな」

「ティミーお姉ちゃん物知り~」

「すっげえ美味しい! そうか、チュロの実を使えば良かったのか」

 チュロの実と呼ばれる木の実に関心したのか、マッドとルチア、アクスは満遍の笑みを浮かべながら、次々とクッキーを食べていった。
 
 暫く四人で雑談をしながらクッキーを食べていると、玄関のドアからコンコンとノックの音が聞こえた。 
 ふいに聞こえた音にマッドは、口の中に入れようとしていたクッキーをティーカップのお皿に置き、ゆっくりと立ち上がる。

「ん、誰だろ?」

「さあな。また茸の仕分けとかじゃねえの。ちょっと出て来るわ」

「行ってらっしゃーい」

 アクスとルチアに元気良く見送られながら、マッドは玄関へと向かった。

「はいはい、今開けますよっと」

 ゆっくりとドアを開くと、金色の髪を靡かせながら、軽く会釈する女性──アクスとルチアの母親アミルが立っていた。 

「こんにちは、マッド君」

「アミルさん?」

「急にごめんなさいね。アクスとルチア、此方に来ているかしら?」

「ああ、いるぜ?」

 マッドが言葉を返すと、後ろからドタドタと足音を立てながらアクスとルチアが此方に向かって来た。 

「あー! ママだあ!」

「母さん、どうしたの?」

 アクスとルチアはアミルにしがみつくと、アミルは二人の頭を優しく撫でながら微笑んだ。 

「お父さんが狩りから帰って来たの。それで、家に帰って来たら、二人の息子達が居ないー! って叫んでいるから、早く合わせてあげようかと思って」

「あー……カージさん親バカだからなぁ」

 マッドが小さく呟くと、アミルは小さく苦笑した。
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