ひだまりを求めて

空野セピ

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第二章 旅立ちの決意

怖い夢

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 月明かりが村をうっすらと青白く照らし、虫の鳴き声が外から聞こえる中、マッドは何度か寝返りをうった。
 寝付けていない訳ではないが、どこか寝苦しさ……と言うよりは、息苦しさを感じながら、それを振り払うように再び寝返りをうつ。

「――――――」

「う……」

 ふと、何処からか声が聞こえ、マッドは眼をゆっくり開けながら起き上がる。
 だが、寝る前につけていたランプの光が消えてしまったのか、辺りは真っ暗だった。
 それでも、寝る前に雲一つ無い空だった為、窓から月明かりが入り込む筈だ。真っ暗とは考え難い。

「何で……暗い、んだよ……」

 マッドは、恐る恐る立ち上がったが、何処からか浮遊感を感じた。
 辺りは暗く、小さな灯火、光すら無い。 
 上を見ても闇。右を見ても闇。左を見ても闇。 
 自分の手足すら見えず、今、自分が何処にいるのかすら解らなかった。
 ──少なからず、ここが自分の家では無い事は確信出来た。 

 それならば、夢の中だろうか。 
 マッドは歩こうとしたが、脚が震え、思うように体を動かせない。 
 それだけでなく、息苦しさを感じ、こめかみから汗が流れ落ちた。 

「どこだ……どこだよ、ここ……」

 喉に何かが引っかかっているような感覚に耐え、声を震わせながらマッドは辺りを見回した。
 しかし、依然として辺りは暗闇に包まれ、マッドは力無くその場に座り込み、震える体を小さく護るように丸める。

「嫌だ……何処なんだよ、ここは……」

 発した声は闇の中に消えていき、次第に吐き気と嫌悪感がマッドの体を駆け巡る。 
 体が熱くなり、流れる汗の量も増えていき、呼吸が上手く出来ないのか、息を吸う速度が上がっていった。 

(同じだ……あの時と)

 マッドは震える足に力を入れ、浮遊感を感じつつも、ゆっくりと前へ歩いていく。 

「駄目だ……ここにいちゃ、いけねえ」

 歩く速度を上げようとしたが、マッドの足は急に止まり、やがてその場に崩れるように座り込んでしまった。
 こめかみから沢山の汗が流れ落ち、過呼吸気味になりながらマッドはキツく眼を閉じる。 
 すると、マッドの目の前に二つの小さな光が現れた。 
 マッドは恐る恐る顔を上げると、二つの光はゆっくりとマッドの周りを円を描くように周り、やがてマッドを包むように暖かな光を放ち始める。 

「何だ、この光……」

 ゆっくりと顔を上げると、マッドは自分を照らす二つの光を見上げた。 
 掌程の二つの光は、優しくマッドを包み込むように強く輝き、その暖かさにマッドは目を細める。
 過去にも、似たような暖かさを感じていた事が有った。 
 それは一瞬ではなく、毎日、長い時間。 

「そうか……この光は……」 
 ゆっくりと目を開くと、誰かに抱き締められる感覚を感じた。 
 周りを見ても姿が見えなかったが、その感覚にマッドは微かに微笑みを零す。 

「夢の中だけなら……許してくれるかな……村の奴らは」

 二つの光にそっと手を近づけると、その暖かさはより一層強くなり、マッドは軽く息を呑んだ。 
 一秒でも早くこの暗闇から抜け出したい。 
 でも、もう少しだけここにいたい。 
 その矛盾した考えに戸惑っていると突如、二つの光はマッドの元を離れ、上へと上がっていった。

「なっ……待ってくれ! まだここにいてくれ!」

 マッドは無意識のうちに必死に叫ぶ。 
 あの光が何なのか、マッドは何となく感じていた。 
 昔は当たり前のように近くにいて、今ではもう手も、声すらも届かない場所にいるもの。 
 二度と、逢うことが出来ない存在──。

「待てよ……置いて行くなよ! 俺だけを置いていかないでくれ!」
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