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第二章 旅立ちの決意
早朝の散歩
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マッドは必死に叫んだが、二つの光はそれに答える事無く暗闇に消えていく。
次第に訪れる息苦しさに、マッドは目を見開いた。
寝起きで重たい体を無理矢理起こし、ぼやける視界に眼をしかめながら辺りを見回すと、窓からうっすらと青い月の光が入り込んでいるのが見え、マッドの意識は次第に明確になってきた。
「……夢、か」
先程とは違う、確実に光が見える風景にマッドはゆっくりと息を吐く。
前髪を掻き上げると額に汗が滲み出ていて、その感触に顔をしかめた。
「くそっ……久々に見たな」
小さく溜め息を吐くと、一度起こした体を力無くベッドに沈め、再び眠ろうと眼を閉じた。
しかし、一度覚醒した意識は素直に言うことを聞いてくれず、眠る所か完全に眼が覚めてしまったようだ。
窓の外から小鳥達の囀りが微かに聞こえ、二度寝を諦めたのか、マッドはゆっくりと伸びをすると毛布の上に広げた上着を羽織り、ベッドから降りると大きな欠伸をしながらゆっくりと階段を降りていった。
下に降りるなり、マッドは洗面所に向かう。
水を引き顔全体に何度か水を浴びせると、さっぱりしたのか清々しく息を吐いた。
早朝だけあって水は痛い位に冷たかったが、それが逆に刺激となり、今まで眠そうにしていたオレンジ色の瞳がしっかりと開き、マッドはニッコリと微笑んだ。
「うっし! 眼も醒めたし、薬草と木の実でも取りに行くか」
誰も居ない家の中で一人元気に呟くと、机に立て掛けてあるポーチと剣をベルトに下げ、玄関の扉を開き鍵を閉め、マッドは自分の家を後にした。
「……う~ん。流石にこの時間だと誰も居ない、か」
家を出て薄暗い道をのんびりと歩きながら、マッドは辺りを見回した。
まだ早朝だけあって、人の影が全く無い。
東の空は微かに赤いがまだ朝日は昇らず、月の光が辺りを青く照らしている。
吐く息は白く、辺りの温度は氷点下になっていて、所々に霜柱が立っていた。
(まだ太陽も登ってねぇのか。そりゃ、誰も居ない筈だよな)
いつも早起きのマッドだが、流石に今日は少し早すぎたようだ。
静寂と冷たい空気が辺りを支配する中、ふと横に建っている大きな家の後ろに小さな人影が見えた。
その人影を見るなりマッドは微笑むと、足音を忍ばせながらゆっくりと家の後ろへと向かっていく。
「よっ! スーばあさん」
「誰じゃ!? って、なんじゃ、マッド坊やか」
「随分早いじゃんかよ。また石鹸作りか?」
「そうじゃよ。特注が入ったからね」
前かがみになりながら、マッドは目の前にいる人影の正体である小柄の老人女性スーに対し、小さく微笑んだ。
小柄だけれど、村の老人の中では一番元気が有り、花や木の実を用いて作り上げるスーの洗剤は、ルグートの村人達全員に愛されている。
良い香りと洗剤としての質が格段に良い為、人気が高い為か、特注が入る事も少なく無かった。
「成る程な。特注が入ったから朝早いのか」
「うむ。坊やこそどうしたんじゃ? いつも早起きとは言え、今日は早すぎる位じゃよ?」
「はは……ちょっと嫌な夢見ちまってな」
頭を掻きながら小さく呟くと、スーは背伸びをしてようやく届くマッドの頭に手を届かせると、その頭をゆっくりと撫でた。
「悪い夢を見た時は、レトンの実を細かくしてお茶と一緒に混ぜて飲むと良いよ。香りが良くて、心を落ち着かせるからね」
「はは、さんきゅ、スーばあさん」
頭を撫でられる温もりにマッドは眼を細めると、東の空から眩しい光が差し込んだ。
長い夜の終わりを告げ、新しい一日の始まりの象徴である朝の日差しが、山の影からゆっくりと姿を見せ始めたようだ。
「ん、太陽が上り始めたか」
「そうじゃのう。坊やはこれから何処に行くんだい?」
「ああ、森に行くんだよ。今日の昼過ぎにティミーやアクス達が来るから、木の実やお茶の元を多めに採っておこうかと思ってね」
「ほっほ。若者は皆楽しそうじゃのう。今度、私も混ぜておくれ」
優しく微笑むスーに親指を上に立て「まかせとけ」と言うと、マッドは朝日が昇る方向へと歩いて行った。
次第に訪れる息苦しさに、マッドは目を見開いた。
寝起きで重たい体を無理矢理起こし、ぼやける視界に眼をしかめながら辺りを見回すと、窓からうっすらと青い月の光が入り込んでいるのが見え、マッドの意識は次第に明確になってきた。
「……夢、か」
先程とは違う、確実に光が見える風景にマッドはゆっくりと息を吐く。
前髪を掻き上げると額に汗が滲み出ていて、その感触に顔をしかめた。
「くそっ……久々に見たな」
小さく溜め息を吐くと、一度起こした体を力無くベッドに沈め、再び眠ろうと眼を閉じた。
しかし、一度覚醒した意識は素直に言うことを聞いてくれず、眠る所か完全に眼が覚めてしまったようだ。
窓の外から小鳥達の囀りが微かに聞こえ、二度寝を諦めたのか、マッドはゆっくりと伸びをすると毛布の上に広げた上着を羽織り、ベッドから降りると大きな欠伸をしながらゆっくりと階段を降りていった。
下に降りるなり、マッドは洗面所に向かう。
水を引き顔全体に何度か水を浴びせると、さっぱりしたのか清々しく息を吐いた。
早朝だけあって水は痛い位に冷たかったが、それが逆に刺激となり、今まで眠そうにしていたオレンジ色の瞳がしっかりと開き、マッドはニッコリと微笑んだ。
「うっし! 眼も醒めたし、薬草と木の実でも取りに行くか」
誰も居ない家の中で一人元気に呟くと、机に立て掛けてあるポーチと剣をベルトに下げ、玄関の扉を開き鍵を閉め、マッドは自分の家を後にした。
「……う~ん。流石にこの時間だと誰も居ない、か」
家を出て薄暗い道をのんびりと歩きながら、マッドは辺りを見回した。
まだ早朝だけあって、人の影が全く無い。
東の空は微かに赤いがまだ朝日は昇らず、月の光が辺りを青く照らしている。
吐く息は白く、辺りの温度は氷点下になっていて、所々に霜柱が立っていた。
(まだ太陽も登ってねぇのか。そりゃ、誰も居ない筈だよな)
いつも早起きのマッドだが、流石に今日は少し早すぎたようだ。
静寂と冷たい空気が辺りを支配する中、ふと横に建っている大きな家の後ろに小さな人影が見えた。
その人影を見るなりマッドは微笑むと、足音を忍ばせながらゆっくりと家の後ろへと向かっていく。
「よっ! スーばあさん」
「誰じゃ!? って、なんじゃ、マッド坊やか」
「随分早いじゃんかよ。また石鹸作りか?」
「そうじゃよ。特注が入ったからね」
前かがみになりながら、マッドは目の前にいる人影の正体である小柄の老人女性スーに対し、小さく微笑んだ。
小柄だけれど、村の老人の中では一番元気が有り、花や木の実を用いて作り上げるスーの洗剤は、ルグートの村人達全員に愛されている。
良い香りと洗剤としての質が格段に良い為、人気が高い為か、特注が入る事も少なく無かった。
「成る程な。特注が入ったから朝早いのか」
「うむ。坊やこそどうしたんじゃ? いつも早起きとは言え、今日は早すぎる位じゃよ?」
「はは……ちょっと嫌な夢見ちまってな」
頭を掻きながら小さく呟くと、スーは背伸びをしてようやく届くマッドの頭に手を届かせると、その頭をゆっくりと撫でた。
「悪い夢を見た時は、レトンの実を細かくしてお茶と一緒に混ぜて飲むと良いよ。香りが良くて、心を落ち着かせるからね」
「はは、さんきゅ、スーばあさん」
頭を撫でられる温もりにマッドは眼を細めると、東の空から眩しい光が差し込んだ。
長い夜の終わりを告げ、新しい一日の始まりの象徴である朝の日差しが、山の影からゆっくりと姿を見せ始めたようだ。
「ん、太陽が上り始めたか」
「そうじゃのう。坊やはこれから何処に行くんだい?」
「ああ、森に行くんだよ。今日の昼過ぎにティミーやアクス達が来るから、木の実やお茶の元を多めに採っておこうかと思ってね」
「ほっほ。若者は皆楽しそうじゃのう。今度、私も混ぜておくれ」
優しく微笑むスーに親指を上に立て「まかせとけ」と言うと、マッドは朝日が昇る方向へと歩いて行った。
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