ひだまりを求めて

空野セピ

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第三章 深い森の中で

記憶喪失

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 ティミーの言葉を聞き入れたのか、マッドと少年は睨み合いながらもその場に座り込んだ。
 ティミーも安心したのかホッとし、腰を下ろす。
 とりあえずこの少年の事を少しでも聞いた方が良いだろうと、ティミーは少年に問い掛けた。 
「えっと……君、名前は?」

 ティミーが訪ねると少年は顔を上げ、口を開く。

「俺はヴェノルっていう名前だよ」

「ヴェノルか……俺はマッド・クラーデン。宜しくな」

「私はティミー・マルデス。そっか、ヴェノルはどうしてこの森に居るの?」

「えっとね、実はその……迷子になっちゃって……」

「へ……?」

 マッドとティミーは顔を合わせた。
 ヴェノルはただ苦笑している。

「迷子って……何処から来たんだ?」

「んーとね。分からない。どうやら俺、記憶が無いみたいなんだよね」

「記憶が無いって……お前、記憶喪失か!?」

「えっ!?」

 記憶が無い、というヴェノルの言葉に、マッドとティミーは戸惑いを隠せなかった。
 しかし、ヴェノルは話を続けていく。

「だから何処で産まれたかも分からないし……唯一、名前と歳は分かるんだけどね。何でか解らないけど。でもそれ以外の事は何も分からないんだ」

 ヴェノルは寂しそうな表情を浮かべ、小さく笑う。
 すると、ティミーも悲しそうな顔を浮かべ、その表情が見られないように俯いた。

「そうなんだ……。私も昔の記憶あんまり無いんだ。両親も多分、いない……と思うし」

「ティミー! まだいないなんて解らないだろ!?」

「いないよ……それに私、捨てられたんだよ……?」

「……」

マッドは泣きそうな声で喋るティミーの肩にそっと手を置いた。

「……ティミーも、親いないんだ?」

 ヴェノルも泣きそうな顔をしている。
 泣きそうな二人に、マッドはどうすれば良いのか悩んでいた。

(どうする……? こんな時どうしたら良いんだ? 話を反らせば良いのか? だけど、下手に話しかけたら……傷つけちまうんじゃねえか?)

 マッドが悩みまくっているとヴェノルは立ち上がり、不安を取り払うように首を左右に振った。

「ま、でも! 親がいなくたって楽しく生きてりゃそれで良いじゃん!」

「……え?」

 突然開き直ったのか、ヴェノルは立ち上がりニッコリと笑う。

「お前……立ち直り早くねぇか?」

 マッドは恐る恐るヴェノルを見る。
 するとヴェノルは更に笑みを浮かべた。

「だって、今更過去の事を気にしてたら楽しく生きていけないよ? 人生は楽しく生きなきゃ!」
「……」

 先程の悲しい表情は何処にいったのか、ヴェノルの顔は嫌と言うほど満便の笑みだった。

「どういう性格してんだよ、お前……」

「さぁ? まぁ、今日位は泊まって行きなよ。食材も何も無いけどさ」

「いや、だから泊まれとか言う権利無いだろ! ここ普通の鍾乳洞だから!」

 ヴェノルの発言に、マッドは大胆に溜め息を付いた。
 ティミーはそんなヴェノルに苦笑いしながらマッドの肩に手を置く。

「マッド……一先ず泊まって行こう? 折角だし」

「そうだな。じゃあお言葉に甘えて……って言う必要は無いか」

「あ、ご飯食べる? お腹空かせてたよね?」

「あ~、そうだな」

「え! ご飯あるの!? 俺も食べる食べる~!」

「元気だなぁ、お前……」

 ご飯、の言葉にヴェノルは食いつき、ティミーの袖を引っ張りながら目を輝かせた。

「お肉食べたい! でっかい熊の丸焼きがいい! 沢山食べたいの!」

「ま、待ってヴェノル。今、パンとチーズしか無いからサンドイッチしか作れな」

「やった~! いただきまぁす!」
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