ひだまりを求めて

空野セピ

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第五章 港町での休息

買取屋

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 一方ウォックとヴェノルは、骨董品を売る為に買取屋に向かっていた。
 魔物達の角や爪は骨董品扱いとなり、種類によっては高く買い取ってくれる場合がある。
 今後の旅資金の為に、ベルナスに着くまでに魔物を倒して集めた骨董品は、それなりの量が有る。
 高く買い取ってくれる事を願いながら、ウォックは地図を見ながら買取屋と自分達の位置を確認していた。

「ここの角を左に曲がれば、買取屋が有る。行くぞヴェノル」
「え~、ちょっと待ってよウォック~! これ重たい! 少し休憩しようよ~」
「何言ってるんだ、さっき休憩しただろ!」

 ヴェノルは骨董品が入った袋を下ろすと、近くのベンチに腰掛けた。
 それなりの量が入っている為重たいのは事実だが、先程も休憩したばかり。
 中々先に進まず、ウォックも少し苛立っていた。

「全く、そんなに大食いの癖して体力は無いんだな」
「煩いなぁ、だって疲れたものは疲れたんだもん」
「ほら、あの角を曲がればもう着くから頑張れ。先行くぞ」
「あっ、待ってよウォックー!」

 文句を言うヴェノルを無視してウォックはさっさと買取屋へ向かった。
 慌ててヴェノルも追いかけ、なんとかお店の前へ辿り着く。

 入り口を開くと、老女が優しい笑顔で出迎えてくれた。

「いらっしゃい。おや、若い子達とは珍しいねぇ」
「こんにちは。すみません、骨董品を売りたいのですが」

 ウォックは丁寧にお辞儀をすると、骨董品が入った袋を机の上に乗せて広げた。
 沢山の魔物の角や蹄、身体の一部に埋め込まれた宝石が姿を現し、老女は思わず声を上げる。

「ほぅ、沢山持ってきたねぇ。どれも価値が高そうな物ばかりだよ」
「牛やウルフの魔物から剥ぎ取った物だからな。どれも武器や防具の素材になる筈だ」
「ほっほ、では鑑定するからちょっと待っていておくれ。はい、お茶をどうぞ」
「あ、お構いなく」
「わーい! ねぇねぇ、甘い物が食べたい!」
「ごめんねぇ坊や。今はこのキャンディーしかしか無いんだ。これで良いかい?」
「やったー! はーい!」
「じゃあ、私は鑑定してくるから待っていておくれ」

 ヴェノルは元気良く返事をしてお行儀良く椅子に座り、そんなヴェノルに呆れつつも、ウォックも椅子に座り小さく息を吐く。
 その様子を確認すると、老女は骨董品を鑑定する為にお店の奥へと入っていった。

「お前な、少しは遠慮しろよ」
「だってお腹空いてたんだもん」
「全く、お前のその食欲は一体どうなっているんだ」
「分かんない! どうしても常にお腹空いちゃうんだよねぇ」

 ヴェノルの食欲は尋常では無く、大人7人前は軽く平らげる程のもので、毎回ウォックとティミーは悲鳴を上げていた。
 上手く誤魔化して量増ししているものの、摘み食いもされる為どれだけ警戒していてもキリがない様だ。
 そんな事を気にする事もなく、ヴェノルは老女が入っていったお店の奥を見詰めていた。

「ねぇウォック。さっきの人はどうしてあんなにシワシワなのかな?」
「は? お前それ凄く失礼だぞ」
「え~? でも、俺達とは見た目も違うよ? 性別が違うだけじゃ無いの?」
「いや、歳を取ると誰でもあんな感じになるだろ」
「んー、そうなのかなぁ?」

 不思議そうにしているヴェノルに、ウォックは何処となく不信感を覚えた。

「お前、まさか歳を取った人を見た事無いのか?」
「えー、分からないなぁ。記憶を失う前に見た事はあったのかもしれないけど、なんか新鮮な感じがするなぁ」
「......お前、そこまで記憶が無いのか」

 ヴェノルの言葉に、ウォックは何とも言えない表情をした。
 記憶喪失、と聞いてはいたが、日常的な事も知らない素振りをする事がしばしば見受けられる。
 
(本当に、自分の名前と年齢しか分からないんだな。そこまで記憶喪失になる程の事がコイツに有ったのか?)

 不思議そうにヴェノルを見るも、ヴェノルは先程貰った飴を美味しそうに舐めていた。

「甘ーい! ウォックも舐める? イチゴの飴だよ」
「いらん! 大人しく待ってろ」
「はぁ~い」

 ヴェノルは気にする様子もなく飴を舐め続ける。
 どう見ても、童顔の少年にしか見えない。

(記憶喪失で人格も変わる場合も有るらしいが......何かキッカケが有れば思い出すものか?)

 深く考えようとしていたが、これ以上考えても今は何も分からないだろう。
 ウォックはお茶を口にして、外を見る。
 すると、老女の声が奥から聞こえた。

「お待たせ。全部鑑定が終わったよ。全部で15,000ニルでどうだい?」

「充分です。ありがとうございます」

 鑑定が終わり、ウォックは老女からニルを受け取る。
 思ったよりも高く売れた様で、微かに笑みを浮かべた。

「ウォック、嬉しそうだね」
「思ったより売れたからな」
「よーし! これでアイス食べに行こー!」
「ふざけるな、今後の旅資金だっての! 大体お前の食費に七割消えそうなんだからな!」

 老女の前でワイワイ騒いでいると、老女は思わず笑みを浮かべた。

「ほっほ。元気な坊や達だねぇ」
「すみません煩くて。もう帰りますので」
「また来ておくれ。孫の顔を見られた気分で嬉しいよ」
「はは、ありがとうございます」

 老女に握手を求められ、ウォックは優しく握り返す。
 ヴェノルも嬉しそうに握手すると、ドアを開き買取屋を後にした。

「さて。これだけ有れば少しは食い繋げられる。宿屋に戻ってゆっくりしようか」
「うん! そうだ、ティミーがパンケーキ作ってくれるんだったね!」
「はいはい、行くぞ」

 相変わらずご飯の事ばかりしか考えていないヴェノルに溜息を吐き、ウォックとヴェノルは宿屋へ向かった。
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