ひだまりを求めて

空野セピ

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第五章 港町での休息

いこうぜ! ベルトア大陸へ

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 日差しが窓から差し込み、それが目覚ましの合図となりマッドはぼんやりしつつも、意識を覚醒させる。
 小鳥の囀りが聞こえ、朝日が差し込んでいる事を確認すると、ベッドから身体を起こし、部屋を見渡した。

「あれ? ウォックがいねぇ」

 向かい側のベッドで寝ていたウォックの姿が見えなかった。
 元々マッドはかなり早起きな方だが、ウォックもそれなりに早起きの様だ。

(とりあえず、顔洗ってくるか)

 ベッドから降り、洗面所へ向かい顔を洗う。
 水の冷たさで目が一気に覚めると、部屋のドアが開く音が聞こえた。

「お、マッド早いな、起きてたのか」
「おぅウォック。お前も早いじゃねーか」

 顔を洗った直後に開いたドアから、ウォックが入って来た。
 どうやら外に出ていた様で、左手には細長い紙が四枚握られている。

「ウォック、それは?」

 マッドに尋ねられると、ウォックは紙を見せ、小さく微笑んだ。

「船のチケットだ。四人分買ってきたぞ」
「えっ!? と言う事は......!」
「あぁ。ベルトア行きの船が今日出港する。暫くはユーラス大陸とはお別れだ」

 ウォックはカーテンを思い切り開き、眠っているティミーとヴェノルに朝の日差しが照らされる。
 その眩しさにヴェノルは毛布を被り、ティミーは目を覚したのか身体を起こし、眠たそうに窓の方を見つめた。

「んん、もう朝......?」
「おいティミー起きろ! 船が出るってよ!」
「えっ!? 本当!?」
「本当だって! 早く着替えて行こうぜ!」
「う、うん! あっ、待って、身支度が」
「ほらほら、そんなに慌てるな。港は近いしまだ時間にも余裕がある。身支度が出来たら直ぐ行くぞ。ほら、ヴェノルも起きろ!」

 未だに寝ようとするヴェノルを、ウォックは思い切り揺さぶった。
 しかし、毛布を身体に巻き付け更に深い眠りに就こうとする。

「ん~、あと五時間......」
「ふざけるな早く起きろ!」
「ぐぇっ!」

 痺れを切らしたウォックがヴェノルの腹に目掛けて思い切り肘を下ろし、苦しさでヴェノルはカエルのような声を出す。

 その横で二人のやり取りをみていたマッドとティミーは呆れつつも、急いで身支度を整えていた。

「よし、武器も持ったし荷物も持った、忘れ物ねぇぞ俺は!」
「私も大丈夫!」
「準備が早いな、お前ら。残るはお前だけだぞヴェノル」
「えぇ~? みんな早くない?」

 マッドとティミーは素早く準備を整えるも、ヴェノルはのんびりと着替えつつ未だに眠そうにしている。
 何とか準備が整い、マッド達は急いで港へ向かった。

 
 港に向かうと、大きい船が海風を浴び定期的に汽笛を鳴らしている。
 どうやらこの船に乗るらしく、マッド達は余りの船の大きさに感動していた。

「おぉー! でっけぇ~!」
「凄い! これでベルトア大陸に行けるんだね!」
「ふぁ~、きっとご飯も美味しいんだろうね!」

 はしゃぐ三人を横目に、ウォックは船人に人数分のチケットを渡した。
 船人がチケットを確認すると、中へと案内されていく。

「へい毎度! お客さん達の部屋はここだよ。ベルトアまで二日! ゆっくり船旅を楽しみな!」
「ありがとうございます」

 ウォックは丁寧にお礼を言うと、部屋に入り荷物と武器を下ろし、部屋を見渡した。
 四人部屋にしては広く、簡易的だがキッチンもある。
 ヴェノルがお腹を空かせても、何とか料理を作る事が出来そうだ。

「おぉー、いい部屋じゃねぇか!」
「凄い、宿みたいだね!」
「ベッドもフカフカ~!」

 マッド達も部屋の大きさに感動し、ヴェノルに至ってはベッドに飛び乗り、布団の気持ち良さを堪能している。
 暫くすると船が出港の汽笛を鳴らし、海の上で船が動き出した。

「おっ!? 動いたぞ!?」
「船が出港したみたいだな。いよいよベルトアに向けて動き出したんだろ」

 ウォックは部屋にある船内地図を見ると、小さく微笑み窓から見える海を指差した。

「直ぐそこの階段を登れば甲板に行けるぞ。海が見たいなら外に出て見てくるか?」

 ウォックに提案され、マッド達は目を輝かせる。
 
「外に出られるのか!? 行く行く! 行こうぜみんな!」
「海の上を進む所を見られんだね! 凄い! 行く行く!」
「やったー! 早く行こうよウォック~!」
「あぁもう引っ付くな! 分かったから行くぞ」

 テンションが上がるヴェノルに背中を抱きつかれ、乱暴に振り解くとウォックは甲板へと向かう。
 その後に続く様に、マッド達も後を追った。

 階段を登り、ドアを開くと潮の匂いを一気に感じ、視界が青色に覆われる。
 青い海と青い空。境界線はあるものの青く続く大海原に、ウォックを除くマッド達は思わず言葉を失った。

「すっ......げぇ......!」
「綺麗......! 大きい!」

 マッドとティミーは感動の余りか声が上手く出せなくなり、辿々しく言葉を放つ。
 ヴェノルも目を輝かせながら、デッキから身を乗り出した。

「凄い、凄い! 世界はこんなに広いんだね!」
「全く、そこまで感動するのかお前ら」

 余りにも感動する三人にウォックは若干呆れつつ、小さく息を吐く。
 元々港町から近い町に住んでいて、何度かベルナスにも訪れている為、そこまで海自体は珍しくも何とも思っていない様だ。
 だからこそ、余計三人の反応が不思議に思えるが、海を見た事がないのなら当然の反応なのだろうと割り切った。

 マッドは大海原を見つめ、深く息を吸う。
 ここまで来たからには、と、ある決意を秘めて、ティミーの隣へ移動した。
 
「ユーラス大陸が、どんどん離れていくな」
「そうだね。ルグート村のみんな、大丈夫かな」

 不安そうに話すティミーに、マッドは笑顔を向ける。

「アイツらならきっと大丈夫だ。俺も、これからどんな事が待ち受けてようと、必ずレンをぶっ倒しててやる。それでティミーを狙う理由を絶対暴いてやる」
「マッド」
「大丈夫だって。俺が必ずティミーを護るからよ。心配すんな」

 マッドは笑いながらティミーの頭を撫でる。
 ティミーは何処となく恥ずかしそうにしながらも、マッドに笑顔を向けた。

「ありがとうマッド。私も、レンが襲ってきたら立ち向かう。私だって、戦えるんだから」
「無理はすんなよ」

 ティミーの頭をポン、と軽く撫でると、マッドは太陽の光が反射して美しく大海原に向けてニッと笑う。

「行こうぜ、ベルトア大陸へ!」

 マッド達を乗せた船は、ゆっくりと、ベルトア大陸へ向かっていった。

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