ひだまりを求めて

空野セピ

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第六章 国家軍組織ベルトア

ベルトア大陸へいざ、入港

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 天気は晴天。風も穏やかな日が続き港町ベルナスから大海原を進む事二日。
 マッド達を乗せた船はゆっくりとベルトアへ向かっていた。
 看板で海風に当たりながら、マッドはぼんやりと空を見つめている。

「ついに大陸を越えちまった、か」

 ポツリと呟いた言葉は海の音に掻き消され、そのまま海に向かって手を伸ばす。
 太陽の光を反射してキラキラ輝く水平線に目を細めていると、不意に肩を叩かれた。

「マッド、ここにいたんだね」
「ティミーか、ビックリしたぜ」

 後ろにいたのはティミーのようで、ティミーは微笑むとマッドの隣に移動し同じ様に海を眺める。

「遠くまで来ちゃったね」
「そうだな。俺も同じ事思ってた」
「海を越えるなんて、村にいた時は考えた事も無かったもんね」
「世界は広いもんだな」
「うん。村の皆んなにも見せてあげたいな」

 海風に靡く髪を押さえながら、ティミーは目を細める。
 その表情はどこか寂しそうに見え、マッドはティミーの頭をポン、と叩いた。

「大丈夫だって。レンを倒したら村に帰るんだ。そしたら、村の奴らに海がどんなもんだったか自慢しようぜ。皆んな、海を見た事無い奴らばかりだからな」

 笑顔で話すマッドに、ティミーも思わず釣られて笑顔になり、小さく頷いた。

「うん! 村の皆んなも頑張ってるもんね。私達も頑張らなきゃ」

 笑顔を見せるティミーにマッドは満足したのか、再び大海原に視線を戻す。

(レンを倒して、絶対村に帰るんだ。そうすれば、平穏な日々が訪れる)

 海風の気持ちよさと程良い日差しに、心地良い眠気が訪れる。
 そのまま部屋に戻り眠ってしまおうかと考えていると、再度ティミーに肩を叩かれた。

「どうしたティミー?」
「ねぇマッド! あれ見て!」

 ティミーが大海原へ向けて指を差す。
 その方向を見ると、大きな影が見えて来た。
 ユーラス大陸が離れていく時に見た時と同じ光景だ。
 そしてこの船は、その影に向かって進んでいる。

 そうなると、大海原の先に見える大きな影は。

「もしかして、あれがベルトア大陸か!?」
「もうすぐ着くのかな? う、なんか少し暑くなってきたね」
「そうだな......日差しが強くなって来たか?」
「気候もユーラスとは違うってウォックも話してたもんね」
「よし、急いで部屋に戻ろうぜ!」

 目的地であるベルトア大陸かどうかを確かめるべく、マッドとティミーは部屋にいるウォックの元へ向かった。



「う~ん......」
「ヴェノル、大丈夫か?」

 部屋にいるウォックは、ベッドにぐったりと横たわるヴェノルを心配そうに見ている。
 ヴェノルは乗船した日の夜に船酔いしてしまい、具合が悪いままで初日からずっと部屋で休んでいた。
 食欲も落ちてしまったようで、その分食費は浮いたものの、具合の悪そうなヴェノルを見ているとどうも心配になってしまう。
 ヴェノルの額に乗せたタオルを取り替えようと椅子から立ち上がると、マッドとティミーが勢い良く部屋の中へ入って来た。

「おい、ウォック!」
「何だ騒々しい。ヴェノルがまだ寝ているんだぞ」
「あ、悪りぃ」
「ヴェノル、まだ具合悪いの?」
「あぁ、昨日とあまり変わらないな」

 大きな音を立ててしまいウォックに叱られつつも、マッドは目を輝かせながら入り口に向かい指を向けた。

「なぁ! 外に大きな影が見えたんだ! もしかしてベルトア大陸か!?」

 マッドの言葉に、ウォックは窓から見える大海原を見つめた。
 確かに、大きな影が見える。

「方角的にも間違い無い。あの影はベルトア大陸だな」
「マジか!? やったぜ、やっと着くんだな」
「どんな所なんだろう、楽しみだね。でも、ヴェノルは大丈夫?」

 新たな大陸への期待へ喜ぶ反面、ヴェノルの体調も気掛かりだ。
 普段あれだけ元気な姿が、今となってはぐったりとベッドに身を沈めている。
 ウォックはタオルを水に浸し絞り上げると、ヴェノルの額に手を乗せ大体の体温を確認した。

「熱も下がったし、ベルトアの軍基地に着いたら休ませて貰えば大丈夫だろう。あそこには腕の良い軍医がいるからな」

 軍医、の言葉にマッドはルバナの町での言葉を思い出す。

「そういや、お前の知り合いって軍医なんだっけ?」
「あぁ。ヴェイト・アリュウ大佐だ。ちょっと昔からの知り合いでね」
「へぇ~。で、軍医って何だ?」
「軍医は軍の中で働く医者の事だ。ベルトアの中でもかなりの腕を持つ医者だぞ」

 ウォックの言葉に、マッドとティミーは目を輝かせた。

「すっげーじゃん! ならそのヴェイトって人に診て貰えばヴェノルも直ぐ良くなるんだな!?」
「まぁそうだな。船酔い程度だから、船から降りて少し横になれば直ぐ良くなるとは思うが」
「良かったぁ。ヴェノル、いつもの食欲も無いし全然元気無いから心配してたんだよ」

 ホッとするマッドとティミーに、ウォックも思わず苦笑いを浮かべた。
 確かにいつもあれだけ元気なヴェノルがここまで静かなのも不思議な感じだ。
 あの明るさに手を焼きつつも、いざそれらが無くなると全員少し寂しさも有るようだ。

「ま、とりあえずあと二時間程度でベルトアに着くだろうから荷物をまとめておこう。あぁ、それともう一つ」

 ふと思い出した様に、ウォックはヴェノルの額に濡れタオルを乗せるとなんとも言えない表情をしながらマッドとティミーに視線を向ける。

「どうしたウォック?」
「さっき話したヴェイト大佐以外にも、もう一人軍医がいる。ソイツには気を付けろよ」

 ウォックの言葉に、ティミーはハッと何かを思い出した。

「もしかして、ウォックの家で話していた不良軍医って人?」
「良く覚えていたな。そうだ。ソイツには気を付けた方が良いぞ。喧嘩っ早い上に治療も荒い。間違っても喧嘩吹っかけるような事するなよ。特にマッド」
「あぁ!? 何で俺なんだよ!」
「そう言う所があるからだ」
「ま、まぁまぁ」

 ウォックに掴みかかるマッドを宥めつつも、ティミーは不安そうにベルトア大陸の影を見る。

(いよいよ、ベルトア大陸に着くんだ。レンがまた、襲って来ないと良いけれど......)

 不安を抱えつつも、ベルトア大陸に着くまでの間、マッド達はヴェノルの体調を気にしつつも部屋で雑談を交わしながら港町への入港を待つ。

 二時間後、船内にアナウンスが響き渡った。

「長旅、お疲れ様でした。間も無く、ベルトア大陸ラマ港へ入港します。お忘れ物の無いようお仕度下さい」

 船は港町に入港し、ゆっくりと速度を落としていく。
 
 いよいよ、ベルトア大陸へ足を踏み入れる時が来た。
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