ひだまりを求めて

空野セピ

文字の大きさ
102 / 108
第九章 求める居場所

楽しい時間

しおりを挟む
 夕食が出来上がり、エリシアとティミーはダイニングテーブルに料理を並べていく。
 オムライスや唐揚げ、サラダ等、沢山の料理がテーブルを埋め尽くす。
 匂いに釣られたヴェノルが凄い勢いで部屋の扉を開き、エリシアとティミーの元へ駆け寄った。

「わぁ~!! 凄い!! ご馳走がいっぱい!」
「ママ~! お腹空いた~!」
「はいはい、沢山作りましたからね。おかわりも有るから沢山食べてね」

 ヴェノルとシエンは椅子に座り、涎を垂らしそうにしつつも目を輝かせる。
 少し遅れてヴェイトも姿を表した。
 先程の軍服とは違い、シンプルな服装になっている。
 テーブルに広げられる料理の多さに少し顔を引き攣らせていた。

「凄い量だな」
「ヴェノル君が沢山食べるって聞いたから。ティミーちゃんに普段食べてる量を聞いたらこんなになっちゃって」
 ヴェノルの分だけ異様に多く並べられ、いつもなら少し広く感じるテーブルが狭く感じられ、エリシアは思わず苦笑した。
 あの細い身体にどう見ても似合わぬ量だが、ティミーは見慣れたのか、気にせずにコップに水を注ぎ、それぞれの席に並べていく。

「ヴェノル、本当に沢山食べるんですよ。いつもウォックが旅費と睨めっこしてます」
「だろうな。食費の方がかかっているだろう」

 苦笑いしつつもヴェイトも席につき、軽く息を吸った。
 久々に家で食べれる料理に、内心ホッとしているのだろう。

「久々にゆっくり夕食が取れそうだ。エリシア、色々とありがとうな」
「良いのよ。さぁ、みんな召し上がれ」
「いただきます」

 全員お行儀良く両手を合わせて食事の挨拶を交わすと、それぞれ自分のペースでご飯を食べていく。
 他愛の無い話をしつつ、食べ散らかすヴェノルに手を焼きながらも、あっという間に楽しい食事の時間は過ぎていった。



「美味しかった。ご馳走様でした」
「ご馳走様でしたー!」


 食事が終わると、ヴェノルとシエンはソファーに飛び乗り、お互い戯れ合うように擽りあっている。
 ティミーは苦笑いすると、食器をまとめてキッチンに入り、シンクの上に優しく並べるとエリシアは腕をまくり、ニッコリと微笑んだ。

「さ、早く洗っちゃいましょう。私洗うから、ティミーちゃん拭いてくれるかしら?」
「は、はい。ありがとうございます」

 エリシアは手早く汚れた食器を洗っていき、ティミーは何処か懐かしさを感じながら、渡された食器を拭いていった。



 一方ヴェイトは着替えの準備をすると戯れ合うシエンとヴェノルの元へ行き、シエンに声を掛けた。

「シエン、一緒にお風呂入ろうか」
「本当!? パパとお風呂だ~! やったぁ」

 シエンはヴェイトの足元にしがみつき、甘えるようにヴェイトを見上げる。
 一方ヴェノルもヴェイトに飛び付き、ヴェイトは慌てて足に体重を掛けて体制が崩れないように足に力を入れた。

「コラっ、ヴェノル」
「俺も一緒に入る~!」
「何言ってるんだ、一人で入りなさい」
「や~だ! 一緒に入るの入るの~! 良いでしょ!」
「良くない! 一人で入りなさい」

 ヴェノルを摘み上げソファーに下ろすと、シエンはヴェイトのズボンをグイグイと引っ張り、眩しいくらいの笑顔を見せた。

「パパ、ヴェノルお兄ちゃんも一緒じゃ駄目なの?」
「駄目だ。お風呂が狭くなるだろう?」
「狭く無いもん! 広いじゃん!」
「それでも駄目。シエンはどっちと入りたい?」
「どっちも!」
「あのねシエン」
「ねー! シエンも良いって言ってるし良いでしょ良いでしょ! お願いだよ~!」
「あーも、わかったわかった!」

 駄々を捏ねるヴェノルが面倒になったのか、つい許可を出してしまう。
 やってしまったと思いつつも、嬉しそうなシエンの顔を見ると気を許してしまった。

(早く済ませてゆっくりしたい所だが......出来るかな)

 ヴェイトはシエンとヴェノルを風呂場へ連れて行き、なるべく手早く済ませようと心に決めた。


 そんな賑やかな声が聞こえ、ティミーはヴェノルを気にしつつも、全ての皿を拭き終え、ふぅ、と一息吐く。

「エリシアさん、終わりました」
「ありがとう。ふふ、ヴェイトったら、三人でお風呂に入ったのね」
「すみません、ヴェノルが迷惑かけてしまって」
「良いのよ。賑やかな方が楽しいもの。さぁ、お茶でも飲んでゆっくりしましょ」
「はい」

 ティミーは出された紅茶を一口飲み、ソファーに深く身体を沈めた。
 今日一日、色々な事が有り心も身体も疲れてしまったのだろう。
 少しだけ瞼が重くなるのを感じ、慌てて目を擦り身体を真っ直ぐに伸ばした。
 その様子を見ていたエリシアは、仕草が面白かったのか軽く吹き出し、思わずティミーは顔を赤くする。

「え、エリシアさん笑わないで下さい」
「ふふっ、本当に可愛いわねティミーちゃん」
「そ、そんな事無いですってば」

 ティミーは反論するも、エリシアはニコニコと微笑み、思わず頬を膨らませてしまう。

「もう、からかわないで下さい!」
「ごめんなさい、でも可愛くて......ふふ」
「うー......」

 恥ずかしくなってしまったのか、俯きクッションで思わず顔を隠そうとする。
 エリシアはティミーの頭を撫で、ごめんなさいと苦笑いしながら呟いた。

「ふふ、女の子ってやっぱり良いわね」
「そ、そうでしょうか?」
「えぇ。私も次は女の子が欲しいわ。ティミーちゃんみたいなね」
「そ、そんな......事......」
「可愛いし、素直で良い子だし、私は貴方の事とても好きよ」

 エリシアの言葉に、ティミーは目を見開いた。
 エリシアは首を傾げ、不思議そうにティミーの表情を見詰める。

「どうしたの?」
「いえ......その」

 ティミーはソワソワしながら、クッションをぎゅっと握りしめ、小さく息を吸う。
 
 聞きたい。
 本当に私は......。

「私、良い子ですか......?」

 不安そうにエリシアを見上げながら、ティミーは問い掛ける。
 その瞳は先程よりも何処か不安定に揺れている様にも感じた。
 しかしエリシアはニッコリと微笑み、即答する。

「良い子よ。とっても素直だし、言いたい事もキチンと言える。それに、礼儀も正しいしね」
「そう、でしょうか......エリシアさんには、そう見えますか?」
「勿論。どうかしたの?」
「......それなら、どうしてお父さんとお母さんは私を......」

 ティミーは途中まで言いかけた言葉にハッとし、唇を強く噛む。

 これ以上、自分の事を話して良いのだろうか。
 話した所で、どうにもならない。
 なら、話さない方が良いのだろうか。

 話した所で、迷惑を掛けてしまうのでは無いだろうか──。

「あっ、えっと、何でもないです! えへへ」
「......そう? 何かあったら遠慮無く話してね。暫くはウチにいるんだから」
「は、はい。ありがとうございます」

 ティミーは丁寧にお辞儀をすると、お茶を飲み干し一息吐いた。
 
 すると同時に、廊下からドタバタと音が聞こえ、ティミーとエリシアは扉の方へと視線を向ける。

「あら、男性陣がお風呂から出たみたいね」
「そうですね。でも、なんでしょう......なんか凄く嫌な予感が......」

 ティミーは背筋がゾクっとするのを感じ、扉を開けてはいけないと直感する。
 しかし時は既に遅く、扉が勢い良く開かれた。

「わーーー!! パパがいじめる~~!」

 ティミーとエリシアの目に、全裸で部屋に入ってくるヴェノルの姿が飛び込んだ。
 隠すべき所が隠れていない状況に、エリシアは目を丸くして、あまり驚いてはいない様だが、ティミーは固まり、思わず大声を上げる。

「キャーーーー!! ヴェノル! 何してんの!」
「ティミー! 助けてよパパが頭乱暴に拭くの~!」
「ちょっ、こっち来ないで! とにかく服を着て来なさい!!」
「ふぎゃ!!」

 ティミーはクッションをヴェノルの顔面に当て、ヴェノルはその衝撃で部屋の外まで吹っ飛ばされてしまった。
 廊下で怒鳴り声でヴェイトがヴェノルの名前を叫んでいて、ティミーは顔を赤くしてもう一つのクッションに顔を埋める。

 こんな調子で三週間もここに居られるのか、別の意味で不安になって来た。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

処理中です...