無能と追放された俺、死にかけて覚醒した古代秘術を極めて最強になる

仲山悠仁

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1章 追放

05 スキル覚醒

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世界が静まり返っていた。
音が消え、色が薄れ、時間が止まったように感じる。

「……っ……え……?」

黒い人影が立っていた。
輪郭が揺らぎ、顔も分からない。
ただ“そこにいる”という存在感だけが異様に強い。

次の瞬間――
耳ではなく、頭の奥に直接“何か”が落ちてきた。

言葉なのか音なのかすら分からない。
ただ、その響きが熱い針のように胸の奥へ突き刺さる。

「………………」

意味は理解できない。
それなのに息が詰まり、視界が揺れ、
世界の色がさらに薄れていく。

――呼ばれている。

「……どうなっているんだ……?」

さっきまで地面に倒れ、
ブラッドベアの爪が迫っていたはずだ。
だが今、巨体は石像のように動かない。

胸の奥が熱い。
心臓が暴れるように脈打つ。

ドクン。
ドクン。

その鼓動に合わせて、
体の内側から光が滲み出すような感覚が広がる。

次の瞬間――
頭の中に文字が浮かんだ。

---

【スキルが覚醒しました】

古代秘術 Lv.1
身体強化

---

「……スキル……? どういうことだ……?」

理解が追いつかない。
だが、体は確かに変わっていた。

光が消え、止まっていた時間が動き出す。
視界が鮮明だ。
空気の流れが見える。
ブラッドベアの動きが、遅く見える。

「……いける……!」

地面に転がっていた木の棒を掴む。
軽い。
まるで別の武器みたいだ。

投げ槍のように構え、
全ての力を腕に込めて投げつけた。

ズガァッ!

木の棒は空気を裂き、
ブラッドベアの肩に深々と突き刺さる。

「グガァァァァァアッ!」

悲鳴が森に響く。

「まだだ……!」

地面を蹴る。
さっきまで重く動かなかった足が、
信じられないほど軽い。

ブラッドベアの懐に飛び込み、拳を握る。

「これで……トドメだ!」

ドガァッ!!

巨体が吹き飛び、木に叩きつけられる。
そのまま動かなくなった。

俺は拳を見つめた。

「……これが……古代秘術……?」

胸の奥で、まだ熱が脈打っていた。

ブラッドベアの巨体は沈黙したまま動かない。

「……はぁ……っ……はぁ……っ……」

拳を握ったまま、しばらく動けなかった。
全身が熱い。
血がまだ沸騰しているみたいだ。

さっきまで死にかけていたのに、
今は――生きている。

「……俺……本当に……勝ったのか……?」

信じられない。
無能と笑われた俺が、ブラッドベアを倒したなんて。

足元がふらつき、膝をつく。
地面に手をついた瞬間、ようやく痛みが戻ってきた。

「……いっ……いってぇ……」

折れた肋骨。
裂けた手のひら。
全身の打撲。

でも、さっきまでの“死の痛み”とは違う。
生きている痛みだ。

視界の端で光が揺れた。

――スキル。

頭の中に浮かんだ文字が、まだ残像のように焼き付いている。

《古代秘術》

今まで一度もスキルなんて持っていなかった。
魔力ゼロと笑われ、
魔法も使えず、
足手まといだと追放された。

その俺が――
今、スキルを持っている。

「……どういうことだよ……これ……」

胸に手を当てる。
まだ熱が脈打っている。
まるで体の奥に“何か”が眠っていて、
それが目を覚ましたみたいだ。

さっきの声。
光。
黒い人影。

全部が現実味を帯びてくる。

でも、不思議と怖くはなかった。
むしろ――

「……やっと……スタートラインに立てた気がする……」

そう思えた。

森の風が、汗ばんだ頬を冷やす。
戦いの熱がゆっくりと引いていく。

俺は立ち上がり、
倒れたブラッドベアを見下ろした。

「……ありがとう。お前のおかげで……俺は一歩踏み出せた」

深く息を吐き、歩き出す。
新しい力と、まだ知らない自分を抱えたまま。

恐怖はない。
あるのは――ワクワクと喜びだけだ。

---
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