無能と追放された俺、死にかけて覚醒した古代秘術を極めて最強になる

仲山悠仁

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1章 追放

15 黒い霧の影

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村を出て街道を歩き始めると、
昨日の激戦が嘘のように、森は静かだった。

フレアが横で伸びをしながら笑う。

「ふぅ……やっと帰れるわね。
 でも、昨日のアレックスは本当にすごかったわよ」

「いや、フレアがいなかったら倒せてないよ」

「ふふん、もっと褒めてもいいのよ?」

フレアは得意げに胸を張る。
俺はそんな彼女を横目に見ながら、
頭の片隅に残る“黒い霧”のことを考えていた。

(……魔物をクラスアップさせる黒い霧か)

確実に森の奥で何かが起きている。
そんな予感が胸の奥に残っていた。

---

街に戻り、ギルドの扉を開けた瞬間――

「アレックスさん! フレアさん! 無事だったのね!」

受付のニーナが、ほとんど飛びつく勢いで駆け寄ってきた。

「依頼内容は“ゴブリン討伐”だけだったのよ!?
 なのにホブゴブリンとシャーマンって……どういうことなの!?」

フレアが腕を組んで怒る。

「それはどういうことですか?
 ……依頼にはゴブリンしか書いてないですよ?」

ニーナは目を丸くする。

「それはこっちのセリフよ!
 他のDランク冒険者なら間違いなく殺されてたわよ?」

「そ、それは……ギルドの調査不足ですね……申し訳ございません……!」

ニーナはしゅんと肩を落としたが、
すぐに真剣な表情に戻った。

「……そういえば、黒い霧の話は本当ですか?」

アレックスは頷く。

「村長が言ってた。
 霧に触れた魔物がクラスアップするって」

ニーナの顔色が変わる。

「……最近、その報告が増えているんです。
 ファングウルフの件もそうですし……
 森で何かが起きているのは間違いないですね」

ギルドの空気が一気に重くなる。

---

「騒がしいな。どうした」

低い声が響き、
奥の扉から白髪で大柄な男が姿を現した。

ギルドマスター、ガルド。

鋭い目つきでアレックスを見つめる。

「お前が……アレックスか」

「はい……そうですが」

ガルドはしばらくアレックスを観察し、
何かを見透かすように目を細めた。

「……お前から“おかしな気配”がするな」

フレアが慌てて前に出る。

「ちょ、ちょっと! アレックスは悪い人じゃ――」

「わかっている。
 だが……何かを“持っている”のは確かだ」

ガルドは報告書を受け取り、低く唸る。

「黒い霧……か。
 これは放置できん。調査隊を組む必要があるな。
 ……まさか奴が目覚めたのか……?」

---

「と、とにかく! 依頼達成おめでとうございます!」

ニーナが慌てて笑顔に戻り、
ゼニがパンパンに入った報酬袋を差し出す。

フレアはそれを受け取ると、ぱぁっと顔を明るくした。

「よーし! 今日のご飯は私が奢るわ!」

「え、いいのか?」

「もちろん!
 アレックスのおかげで助かったんだから!」

フレアの笑顔を見て、
アレックスの胸の奥が少しだけ温かくなる。

---

宿に戻り、ベッドに腰を下ろしたアレックスは、
ふとスキルボードを開いた。

そして――目を疑う。

【スキルボード:アレックス】

古代秘術 Lv.2
┗身体強化
┗ 千里眼
┗ ???

剣術Lv.3
┗ 基本剣技
 ┗ 連撃
 ┗ 反撃

「……また増えてる……」

フレアが覗き込み、目を丸くする。

「ちょ、ちょっと待って!
 アレックス、それ一般スキルじゃない!?」

「わからない。
 剣を使ってたから増えたとしか……」

フレアは信じられないという顔で呟く。

「新しいスキルって、相当実戦と訓練を積まないと増えないのよ……
 それを……冒険者登録して数日で増やすなんて……
 本当にアレックスは規格外ね……」

アレックスは黙ってスキルボードを見つめた。

(……俺は、本当に何者なんだ?)

---

フレアは少し照れたように笑う。

「……じゃあ、私のも見せるわね。
 アレックスには見せてもいいと思うし」

【スキルボード:フレア】

剣術Lv.6
┗ 基本剣技
 ┗ 連撃
 ┗ 反撃

火魔法 Lv.2
┗ 火球ファイヤーボール
┗ 炎槍ファイアーランス

「……すごいな。剣術がここまで高いとは」

「小さい頃から剣ばかり振ってきたからね。
 魔法は……やっと使えるようになってきたけど」

「フレアは本当にすごいよ」

フレアは少しだけ頬を赤くした。

「……ありがと」

二人の間に、静かで温かい空気が流れる。

---

その時――
アレックスの視界の端で、何かが揺れた。

(……?)

千里眼が微かに反応する。

窓の外、遠くの森の方角。
闇の中に、黒い“揺らぎ”のようなものが見えた。

(……黒い霧……?
 いや、これは……)

フレアが心配そうに覗き込む。

「アレックス、どうしたの?」

「……森の方で、何かが動いた気がした」

「黒い霧……また出てるのかしら」

「かもしれないな」

(黒い霧……
 あれは、ただの自然現象じゃない)

(何かが……動いている)

フレアが静かに言う。

「……アレックス。
 また依頼に行くなら、私も一緒に行くからね」

「ああ。頼りにしてる」

二人は静かに頷き合った。

「ところで……なんで相部屋なんだ?」

フレアは顔を真っ赤にして睨みつける。

「し、しょうがないじゃない……部屋が空いてないんだから!」

俺たちはまだ知らなかった。
これから先、過酷な運命へと巻き込まれていくことを――。

---
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