29 / 101
2章 騎士団学校
29 魔法制御の講義
午前の教室は、魔力理論の講義でぎっしりだった。
黒板には魔力の流れを示す複雑な図。セラフィナ先生が淡々と説明を続ける。
「いい? 先天魔法は生まれつき授かる魔法。幼い頃から自然に使えて身体にも馴染んでる。だから戦闘レベルまで持っていくのも早い。一年生の復習ね」
クラスが真面目に頷く。
「一方で後天魔法は厄介よ。魔力の流れが身体に合わないから、習得に数年。消費量も大きい。先天魔法の倍と思いなさい。何年やっても使い物にならない人の方が多いのが現実」
(……フレアの言ってた通りか。俺が一晩で覚えられたのは、スキルと遺伝の影響だろうな)
もちろん、フレアが付きっきりで教えてくれたおかげでもある。
「アレックス、ついてこれてる?」
小声でフレアが囁く。
「……まあ、なんとか」
本当はほとんど理解できていない。心配させたくなくて、強がる。
---
訓練場に移動すると、セラフィナ先生が的を指した。
「じゃあ先天魔法の基本を出してみて。“拳くらい”の大きさで安定させること。制御を見るからね」
クラスメイトたちは次々と成功させていく。
リリアは整った火球。
シオンは青白い雷の玉。
カイルは荒削りな岩。
ルーナは小さいが安定した水球。
そしてフレア。
掌の上に、拳ほどの火球が静かに浮かぶ。揺れもなく綺麗な形だ。
(……さすがだな)
先生も頷く。
「いいね、フレア」
少し照れたように笑う彼女を見て、負けていられないと思う。
そして俺の番。
掌を前に出し、息を整える。
(拳サイズ……落ち着け)
「――火球」
空気が震えた。
次の瞬間、掌の上に現れたのは拳どころではない火球だった。
深紅の塊が膨れ上がり、熱が一気に広がる。
「でか……」
「魔力濃度、高すぎないか……?」
ざわめきが起こる。
セラフィナ先生が眉を寄せた。
「アレックス、デカすぎ。“拳くらい”って言ったよね?」
火球がゴウッと揺れ、熱気が押し寄せる。
「くっ……!」
「アレックス、抑えて!」とフレア。
必死に魔力を絞る。
火球は揺れながらも、ようやく消えた。
先生がため息をつく。
「放課後居残り。このままだと自分の魔法で死ぬよ?」
(容赦ないな……)
---
放課後の訓練場は静かだった。残っているのは俺と先生だけ。
「来たね。さっきのは危なすぎ。魔力は強いけど、制御が赤ちゃん以下」
「……すみません」
「謝るより練習。じゃないと大切な人も巻き込むよ」
胸が痛む。フレアを傷つける未来だけは避けたい。
「もう一回。拳サイズ」
詠唱する。
「――火球」
現れたのは、まだ大きい火球。
先生が額を押さえる。
「だからデカいって言ってんの」
その時。
「アレックス!」
振り向くとフレアが駆け寄ってきた。
「心配で見に来たの」
先生が言う。
「いいところに来た。お手本見せて」
フレアは掌を掲げる。
「魔力を細く流して……形をイメージ」
拳サイズの火球が安定して浮かぶ。
「それが基準。やってみな」
もう一度詠唱。
今度は、手のひらに収まる火球。
先生がわずかに笑う。
「いいじゃん。その調子」
「やったじゃない!」とフレア。
胸の奥が温かくなる。
(もっと上手くなりたい)
---
帰ろうとした時、先生に呼び止められた。
「アレックス。あんた後天魔法なんだって?」
心臓が跳ねる。
「……はい」
「一晩で覚えたって?」
「……必死だっただけです」
先生は俺の掌を見る。
「その魔力の流れ、“暴走”そのもの。でも形になってるのは異常。騎士団でも見たことない」
胸がざわつく。
「制御できれば、相当強くなる。ちゃんと鍛えな」
「……はい」
「よし、帰りな。フレアが待ってるでしょ」
廊下を見ると、彼女が静かに待っていた。
黒板には魔力の流れを示す複雑な図。セラフィナ先生が淡々と説明を続ける。
「いい? 先天魔法は生まれつき授かる魔法。幼い頃から自然に使えて身体にも馴染んでる。だから戦闘レベルまで持っていくのも早い。一年生の復習ね」
クラスが真面目に頷く。
「一方で後天魔法は厄介よ。魔力の流れが身体に合わないから、習得に数年。消費量も大きい。先天魔法の倍と思いなさい。何年やっても使い物にならない人の方が多いのが現実」
(……フレアの言ってた通りか。俺が一晩で覚えられたのは、スキルと遺伝の影響だろうな)
もちろん、フレアが付きっきりで教えてくれたおかげでもある。
「アレックス、ついてこれてる?」
小声でフレアが囁く。
「……まあ、なんとか」
本当はほとんど理解できていない。心配させたくなくて、強がる。
---
訓練場に移動すると、セラフィナ先生が的を指した。
「じゃあ先天魔法の基本を出してみて。“拳くらい”の大きさで安定させること。制御を見るからね」
クラスメイトたちは次々と成功させていく。
リリアは整った火球。
シオンは青白い雷の玉。
カイルは荒削りな岩。
ルーナは小さいが安定した水球。
そしてフレア。
掌の上に、拳ほどの火球が静かに浮かぶ。揺れもなく綺麗な形だ。
(……さすがだな)
先生も頷く。
「いいね、フレア」
少し照れたように笑う彼女を見て、負けていられないと思う。
そして俺の番。
掌を前に出し、息を整える。
(拳サイズ……落ち着け)
「――火球」
空気が震えた。
次の瞬間、掌の上に現れたのは拳どころではない火球だった。
深紅の塊が膨れ上がり、熱が一気に広がる。
「でか……」
「魔力濃度、高すぎないか……?」
ざわめきが起こる。
セラフィナ先生が眉を寄せた。
「アレックス、デカすぎ。“拳くらい”って言ったよね?」
火球がゴウッと揺れ、熱気が押し寄せる。
「くっ……!」
「アレックス、抑えて!」とフレア。
必死に魔力を絞る。
火球は揺れながらも、ようやく消えた。
先生がため息をつく。
「放課後居残り。このままだと自分の魔法で死ぬよ?」
(容赦ないな……)
---
放課後の訓練場は静かだった。残っているのは俺と先生だけ。
「来たね。さっきのは危なすぎ。魔力は強いけど、制御が赤ちゃん以下」
「……すみません」
「謝るより練習。じゃないと大切な人も巻き込むよ」
胸が痛む。フレアを傷つける未来だけは避けたい。
「もう一回。拳サイズ」
詠唱する。
「――火球」
現れたのは、まだ大きい火球。
先生が額を押さえる。
「だからデカいって言ってんの」
その時。
「アレックス!」
振り向くとフレアが駆け寄ってきた。
「心配で見に来たの」
先生が言う。
「いいところに来た。お手本見せて」
フレアは掌を掲げる。
「魔力を細く流して……形をイメージ」
拳サイズの火球が安定して浮かぶ。
「それが基準。やってみな」
もう一度詠唱。
今度は、手のひらに収まる火球。
先生がわずかに笑う。
「いいじゃん。その調子」
「やったじゃない!」とフレア。
胸の奥が温かくなる。
(もっと上手くなりたい)
---
帰ろうとした時、先生に呼び止められた。
「アレックス。あんた後天魔法なんだって?」
心臓が跳ねる。
「……はい」
「一晩で覚えたって?」
「……必死だっただけです」
先生は俺の掌を見る。
「その魔力の流れ、“暴走”そのもの。でも形になってるのは異常。騎士団でも見たことない」
胸がざわつく。
「制御できれば、相当強くなる。ちゃんと鍛えな」
「……はい」
「よし、帰りな。フレアが待ってるでしょ」
廊下を見ると、彼女が静かに待っていた。
あなたにおすすめの小説
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
【聖女の不倫を全画面表示】理科室に捨てられた俺、世界の全機密をハックして裏切り者を公開処刑する。
寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
ファンタジー
「剣で斬るより、この暴露(データ)一つの方が、よっぽど残酷に人を殺せるんだよ」
影の組織の使い捨て実験体として、地図にも載らない閉鎖国家の理科室に捨てられた少年。
だが、死を待つだけの彼に訪れたのは、絶望ではなく覚醒だった。
右目に宿ったのは、世界のあらゆる情報を引き出し、書き換える超越スキル――神の瞳。
埃を被った理科室の端末を叩けば、この世界の機密はすべて俺の所有物(データ)となる。
民衆の前で清純を装う聖女が、裏で溺れる醜悪な不倫の記録。
国を愛するふりをした王太子が、私欲のために結んだ売国の密約。
すべては見えた。すべては握った。
「――さあ、社会的抹殺(フクシュウ)のカウントダウンを始めようか」
一歩も動く必要はない。剣も魔法も必要ない。
ただ理科室で指先を動かすだけで、傲慢な聖女は民衆の石打ちに遭い、強大な組織は一夜にして内部崩壊する。
隠し資産を奪い尽くし、弱点を握り、自分を裏切ったすべてを絶望の淵へと突き落とす。
閉鎖国家の片隅から始まった少年のハッキングは、いつの間にか世界の運命さえも掌握していた。
今さら泣いて許しを請うても、もう遅い。
これは、情報の神となった少年による、無慈悲で完璧な一方的蹂躙(ざまぁ)劇。
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
仲間を勇者パーティーから追放したら、実は有能だったらしい。俺が。〜ざまあされて隠居したいのに、いつの間にか英雄にされていた件〜
果 一@【弓使い】2巻刊行決定!!
ファンタジー
ラルド=ヤメタイーナは勇者を辞めたい。魔王討伐の使命とか正直面倒くさいし、魔族と戦うのだって怖いし。
しかし、勇者に選ばれてしまった以上、魔王討伐に動かねばならない使命があって――
「だったら、有能な仲間を追放して、無能勇者としてざまあされればよくね?」
さっそく理由をつけて有能な仲間を追放し、パーティーメンバーの反感を買ってパーティー解散を狙うラルドだったが。
実は追放された有能な仲間は、潜入して命を狙っていた魔族で。
反感を買うつもりが、有能な勇者と勘違いされて周囲からの好感度がどんどん上がっていき――!?
これは、勇者なんて辞めたいダメダメ主人公が、本人の意図せぬ結果を出して最強の勇者に上り詰める、勘違い英雄譚である。
※本作はカクヨムでも公開しています。