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第23話 「嘘の代償」
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四月十八日。
目覚まし時計が鳴る前に目が醒めた。夜中に一度も目が醒めないで、ぐっすり眠れたのはいつぶりだろう。心が冴えているし、身体が軽い。気持ちよく起き上れた。枕元には電池切れになったスマホ――亜由美のおかげ。また助けられちゃった。
「今日、学校で亜由美にお礼を言わなきゃ」
私は自然と笑顔になっていた。
朝の教室の扉を開けると、いつもより軽くて冷たい声が広がっていた。その笑い声は同じ方向を向いている――私に。でも……亜由美にも向いている。なんで?
私は、なるべく目を合わせないように席へ向かった。もう席に座っている亜由美、それだけで私の胸の奥が少し緩んだ。でも、すぐに怖くなる。寄りかかりたくないのに、寄りかかってしまうから。私は、亜由美の横に立った時、「平気」、と小さく呟いた。本当は、『ありがとう』って言いたかったのに、いつもの癖が出てしまった。素直になれない自分を、自分でもどう扱ったらいいか、わからなくてため息が出てしまう。
「……うん」
亜由美が小さく頷いたのが見えた。
一時間目が終わった途端、教室にざわめきが戻ってきた。
――やっぱり変。この軽い笑い声、あの時に似てる。でも、なんで私だけじゃなくて、亜由美にも?
私が亜由美に話しかけようか迷っているうちに、他の子が亜由美に話しかけてしまった。
(佐原…… 話に加わりたくない)
私は、咄嗟に立ち上がって、教室を出た。少しして教室に戻ると、私の横を通りすぎて、急ぎ足で亜由美が飛び出していってしまった――逃げるみたいに出ていく背中。泣いてる?
追いかけようとすると、さっき亜由美に話しかけていた佐原が、今度は私に絡んできた。
「水野っ!」
「――!」
いきなり腕を組んできた。腕を組まれるほど仲良くないのに、急にくっつかれて、身体が強張ってしまう。
「これ、あげる」
小さな紙を渡された。その紙には、『#近いの嫌』と書かれている。
(ハッシュタグ?)
私は、急いで検索してみる。すぐにSNSに投稿された音声にたどり着いた。
(イヤな予感がする……)
イヤフォンを取り出して、聞いてみる。
『美沙は、美沙だよ。私、そういう噂の中心にいる人と近いの嫌』
#近いの嫌 #常盤高校 #朝倉 #水野
聞いた瞬間、息が止まった。そして、遅れて早い鼓動が打ちつけてくる。
(亜由美の声?)
――でも、これ、一回音が切れてる……切り取り? また? 今度は、亜由美が?
私は、さっき飛び出していった亜由美を追いかけようとした。でも、足が震えてしまって、足に力が入らない、走れない。
(でも、ここで追わないと亜由美がひとりになってしまう)
――亜由美はいつでも私を助けてくれたじゃない!
私は目を閉じて、息を整えた。昨夜、亜由美が言ってくれたように、まず、息を吐き直して、吐ききると、自然に肺いっぱいに空気が入ってくる。自分を奮い立たせるように足に力を入れると、歩き出す。視線が降り注がれるのを、体中に感じた。背中に笑い声を浴びながら、私は飛び出していった亜由美を探す。見つけた――廊下を曲がった所、階段の窓際に、隠れるようにして。亜由美が力なく壁にもたれかかっているのを、見つけた。
「亜由美」
亜由美はなかなか私を見てくれない。視線を落とすと、亜由美の手指の間から、握り潰された紙が見えた。
「――!」
亜由美の体が小刻みに震えている。私は、それを見て分かってしまった。亜由美は聞いちゃったんだ。私は亜由美の隣に立って、壁に寄り掛かった。
「……それ、見た」
言った瞬間、自分の声が平らで、でも揺れているのが分かる。
「……うん」
亜由美の、沈んでいく音のような「うん」、私は胸が痛くなった。
私は、いつも私を助けてくれる亜由美のように、私も亜由美を助けたかった。でも、どうしたら亜由美の力になれるのか、わからない。亜由美の負担にならなければ、亜由美の助けになる? ――どうしたらいい?
私は、一泊おいてから、亜由美に笑顔を向けた。
「平気だから」
目を合わそうとしなかった亜由美が急に顔を上げて、私をまっすぐに見つめてくる。
「平気じゃないでしょ?」
そんなことを言われたら、私の笑顔が崩れてしまう。だから、私は、私の次の『盾』を口にした。
「大丈夫だから」
そう言った私から、亜由美はスッと目を逸らして、呟いた。
「……あれ、私が言った」
「え?」
「私が、噂、流したって言った」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が冷えた。亜由美の声の温度が違う、言い慣れていない声の響きをしてる。
――亜由美、嘘つくの下手すぎ。すぐにわかってしまった。
一瞬、否定しようか迷って、でも私は否定しないことにした。否定したら、きっと亜由美が崩れてしまう。亜由美が崩れたら、私も崩れる。だから、私は、亜由美の嘘を受け入れた。『今の亜由美』を守るために。守るための顔をして、守りたいものを増やさないために。
私は亜由美を真っすぐ見た。
「なんで?」
「止めたかった」
「美沙が、夕紀のことで噂されるのが嫌だったの」
私はため息を吐いた。
(亜由美は、やっぱりどこまでも優しいんだね)
「……亜由美、優しいふり」
「ごめんね」
――亜由美が悪いんじゃないのに。切り取りした人たちがいけないのに。亜由美は私を守ろうとしてくれているだけなのに。なんで謝るの?
「……じゃあ、亜由美が悪いの?」
私はつい、言ってしまっていた。出てしまった言葉を戻すことはできなくて、すぐ後悔した。
「……うん」
――こんな風に言ったら、亜由美を追い詰める。そうじゃないのに……自分の不器用さがイヤになる。
「……だったら、もういい」
「美沙」
「平気、大丈夫だから」
私は、言い捨てて、私は教室へ戻った。戻るしかなかった。
教室に戻ると、興味津々の笑顔に迎えられた。私は、何事もなかったように、席に座って、教科書を開く。開いたのに、文字はただの形にしか見えなくて、意味が全然頭に入ってこない。頭の中で繰り返されるのは、廊下での亜由美の声。
――『あれ、私が言った』
亜由美のバレバレの嘘。それでも私は頷いて受け入れた……受け入れてしまった。
授業のチャイムが鳴って、先生が入ってくると、表面だけは静かになった――板書の音、ページをめくる音。その『普通』に守られている間だけ、私は息ができた。でも、先生が黒板に向いた瞬間、机の下でスマホが光る――小さな振動、小さな笑い、その小ささが、たくさんの針になって体中に刺さってくる。亜由美は? 私は授業中ずっと、隣に座る亜由美の様子が気になって、横目で亜由美を見てばかりいた。
休み時間になると、誰かが私の机の横を通りながら、わざと聞こえるように言ってくる。
「水野、今日静かだね」
亜由美に聞こえるように、わざと言ってるのがわかる――イヤなやり方だ。
(入学してから、亜由美と以外、あまり話したことないから、いつも静かなんだけど)
そう思ったけど、わざと返事をしなかった。その反応を面白く思ったのか、教室中にまた笑い声が転がっていく。そして、転がっていく先に、私の名前が混ざっている。
授業が始まると静かになって、休み時間になると冷ややかな騒めきが戻るのを繰り返して、午前中が終わった。
昼休みになると、また騒めきが戻ってくる。一人ひとりの鼓動の音のように、多数のスマホの振動が脈打ち、どこまでも冷たく乾いた空気が教室を満たしていく。
私は、思わず、机に突っ伏してしまった。何も感じていないふりをして、背筋を伸ばして座っている、それだけなのに、午前中だけで、疲れてしまった。顔を上げると、亜由美は教室を出て行ってしまっていた。
スマホを見て笑う人たちに囲まれて、亜由美がいない教室で、私はお弁当の蓋を開けた。味がしない、噛んでいるのに、噛んでいないみたいだ。私は弁当を食べきれないまま、箸を置いた。
窓の外は晴れているのに、私の中だけ雨が降っているみたい。
亜由美に伝えたい――私を守ろうとして嘘をついたこと、本当はわかってる、って伝えたい。でもそうしたら、亜由美のことだから、きっとまた嘘を増やしてしまう。そうなるのもイヤ。私は、逃げられないトラップに陥ってしまったみたいに、行き詰りながら、救いを求めて手を握りしめた。
「ねえ、水野」
顔を上げると、佐原が私の机の横に立っていた。いつもどうでもいい話をしてくる噂好きの子。にこにこしているのに、目が忙しい。
「……佐原、なに?」
佐原は、忙しなくスマホを触っていた手を止めて、スマホを机に置く。
「ね、朝倉、今どこ?」
「知らない」
私は短く言った。
「え、知らないの? ふーん。でも水野って、朝倉と仲良いよね」
「……」
「仲良いのに、あんなこと言われて平気なの?」
(どう答えるべき?)
私は、教室全体の耳が立っているのを身体中で感じていた。答えたら、誰かが聞き取りやすい形に変換するかもしれない。私は胃がキリキリ痛くなった。
「水野? 聞こえてる?」
「……うん」
「朝倉って優等生っぽいけど、実はこういうとこあるのかな?」
――こういうとこ。どういうとこ? 中身のないイヤな言葉だ。
私は笑えなかった。笑ったら、同意になる。亜由美が私を守ってくれるなら、私も亜由美を守る……守りたい。机の端を掴むと、指先に木目のざらつきを感じて、現実にしがみつきたい私を現実に戻してくれた。
「……やめて」
私の声は、思ったより小さくて、小さすぎて、怒りにもなっていなかった。お願いにもなっていない。佐原は、少しだけ目を丸くする。そして、すぐに『理解したふり』をする顔になった。
「ごめんごめん、心配してただけ」
――心配。刺しておいて、刺してないことにできる便利な言葉だ。
佐原は、去り際、軽く笑いながら、机に置いていたスマホを持ち上げた。その瞬間、一瞬、画面が見えてしまった――黒い背景と赤の波形。
(今、録音してた?)
――もしかして、佐原が亜由美の声を録音して拡散した?
イヤな可能性に、冷たい汗が背中をつたって寒気がする。私は、亜由美に言おうと思って、教室に帰ってくるのを待っていた。でも、お昼休みが終わっても、亜由美は教室に戻ってこなかった。
亜由美がいない午後の授業。先生の声が遠くて何を言っているのか聞き取れない。私は、一生懸命、黒板を書き写しているけど、何をノートに書いているのか、頭が追いついていけないでいた。シャーペンの芯がポキと折れる。その小さな音が、やけに大きく聞こえて、私は急いでカチカチと芯を出して、何事もなかったふりをした。
休み時間、私は、あまり人の来ない隠れ場所へ急いだ。――入学してすぐに、亜由美と見つけたふたりだけの場所――屋上へ続く踊り場。すぐに、スマホのメッセージ画面を開く。
亜由美に連絡したい。でも連絡したら、亜由美に負担が増える。増えた負担の分だけ、亜由美はまた嘘を強くするかもしれない。画面上で人差し指が、無意味に宙を彷徨う。迷って、それでも私は、指を動かしてしまった。
『亜由美』
でも、その後がなかなか書けない。名前だけ送るのは、助けを求めるみたいになってしまう。これ以上、亜由美に負担をかけちゃいけない。私は慌てて続きを打つ。
『今、どこ?』
――隠れていたいのかもしれない。消して、打ち直す。
『どうして』
送信。
――どうして嘘ついたの?
そして、すぐに「どうして」と送ったことに後悔した。亜由美が嘘をついていると分かっていて、私は受け入れた。なのに、受け入れた瞬間から、私の中で何かが軋んでいる。受け入れた瞬間から、私は『真実の側』から一歩ずれてしまっている。
少し待ったけど、既読はつかなかった。階段を降り始めると、スマホが震えた。一瞬、心臓が跳ねる――亜由美からだ。
『ごめんね』
たったそれだけ。それだけなのに、胸が潰れそうになる。『ごめんね』は、亜由美の癖だ。癖で済ませてはいけない場面でも、亜由美は自分を小さくして、相手を守ろうとする。私は、その癖を利用した。利用して、嘘を成立させた。その自覚が、息より重い。
それに、これは、私の「どうして」の返事じゃない。亜由美は、優しさで答えてくれない。それが分かってしまう。今、亜由美は自分のことでいっぱいいっぱいなはずなのに、それでも私の言葉を受け取って、優しさを返してくれている。私は、亜由美に『悪い役』をやらせてしまっている、亜由美を苦しさへと追い詰めてしまっている。
私は、怖かったから、亜由美の嘘を否定しなかった。私の都合で、亜由美の嘘を成立させた。成立させた瞬間、亜由美の嘘は『戻れない嘘』になった――全部、私が、亜由美の嘘を受け入れてしまったせいだ。その代償なんだ。
私は返事を書こうとして、指が止まる。返せば、また嘘が続く。返さなければ、亜由美が一人で抱える。どっちを選んでも痛い。痛いのに、私はまた短い言葉を選んだ。
『もういい』
送信。送った瞬間、指先が冷たくなる。
――『もういい』は終わりの言葉だ。終わらせたかったんじゃない。でも、終わらせないと、亜由美の嘘がこれ以上増えていってしまう。それが怖かった。
嘘の代償が私に重くのしかかってくる。亜由美が言った時に止めていたら良かったのに、私は止めなかった。
――守るための嘘ほど、いちばん大切な人を傷つける。
そのことを、私は、自分の息で覚え直していた。
「水野」
廊下を歩いていると、担任に呼び止められた。
「はい」
「放課後、職員室に寄ってくれ」
「……はい」
「それから、朝倉は今、保健室で休んでるから」
「……わかりました」
教室の扉を開けると、騒めきと笑い声がどんどん大きくなっていく。教室のざわめきが、私に直接当たって痛い。その中を、私は、まっすぐ席に向かって一歩ずつ歩いていく。わずか三メートルの距離なのに、今の私にはとても遠かった。私は、呼吸を浅くして、標的にならないように、目立たないようにした。
席に座ると、佐原がまた近づいてきた。今度は、声を落として、秘密を共有する顔で、話しかけてくる。
「ねぇ水野、朝倉、保健室にいるんだってね。ぶっちゃけさ、朝倉が保健室行ったのって、やっぱ、あの音声が原因?」
私は、息を吐いた。
「……知らない」
「え、でも水野なら知ってると思った。だって、午前の休み時間、朝倉と水野、廊下の端で何か話してたじゃん」
私は視線を上げた。佐原の目の奥に『面白い』が宿っているのを見つけた。『面白い』は、誰かの痛みで膨らむ。でも、黙ったら、黙った形で噂になるし、言ったら、言った形で切り取られてしまう。だから、私は、なるべく誰の噂にもならない言葉を選んだ。
「授業のチャイム、鳴ったよ」
佐原は一瞬だけ黙って、すぐ笑った。
「水野ってさ、意外と強いよね」
――強い? 私が? 冗談でしょ。
私はとても笑えなかった。
「保健室だってさ」
「朝倉、やばくない」
「水野が黙ってるとつまんない」
小さな囁きと好奇の目は、先生が入ってくるまで続いた。
終礼が終わると、教室のざわめきは一層濃くなった。自由にスマホを見ていい時間、その『解放』を待っている目が、教室のあちこちで容赦なく光る。
亜由美の返事を見て、私はため息を吐いた。
『私は、美沙には美沙のままでいてほしい』
こんなことまで言わすなんて、全部私のせいなのに。私は、空いたままの亜由美の席を見た。
(亜由美、ごめん)
思っていても、亜由美には伝わらないけど、なんとかしなきゃいけない。
夕方の光が廊下に差し込んで、影を長く落とす中、私は職員室へ急いだ。長く息を吐き、職員室の扉をノックする。
「先生」
「来たか」
「ちょっとこっちへ来てくれ」
職員室の端にあるテーブルへ導かれた。
「今日は、大変だったな」
「……」
「今、あまり状況は良くない。疲れていると思うが、水野が知っていることを教えてくれ」
「わかりました」
「まず、誰が『始めたか』心当たりはあるか?」
「……これは確証ではないのですが、佐原さんかと思います。今日、何度も私に話しかけてきて、スマホで録音をしている画面がチラッと見えました」
「そうか、わかった」
「あと、朝倉とのことだが」
「……朝倉さんは、私を庇ってくれているんです。朝倉さんは悪くないんです」
「だろうな」
その後、私はいくつか質問をされ、すでに学校が対応し始めていること、コメントを残さないこと、と言われた。
私は、今日起こったことを整理したくて、心を落ち着けたくて、歩いて帰った。ゆっくり歩いて、途中で公園のベンチに腰を下ろし、風の音を聞きながら呼吸を整える。空を見上げると、さっき夕方だったはずなのに、いつの間にか日が沈んでいた。低い雲に覆われた空から雨の匂いがする。
――どうしたらいい? 私に何が出来る? 何かできることはある?
止まりそうになる思考で、いくら考えても、何もいい案が浮かばなかった。
(今の私に出来ることなんて、ない……)
明日、学校へ行ける気がしない。でも、亜由美は来るはず。それに、私が行かなかったら――逃げたことになる。何も悪いことをしていないのに、逃げたことになる。それだけは、イヤだ。
(……これだ。今の私に出来ることは、明日学校に行くことだ。明日学校へ行くことを前提にしよう)
そのために、今日は早く寝て、少しでも回復しよう。
そう決めて、私はもう一度だけ深く息を吐き、力強く立ち上がった。
パラパラ降り始めた雨が、心の中の霧を少しだけ洗い落としてくれているようだった。
目覚まし時計が鳴る前に目が醒めた。夜中に一度も目が醒めないで、ぐっすり眠れたのはいつぶりだろう。心が冴えているし、身体が軽い。気持ちよく起き上れた。枕元には電池切れになったスマホ――亜由美のおかげ。また助けられちゃった。
「今日、学校で亜由美にお礼を言わなきゃ」
私は自然と笑顔になっていた。
朝の教室の扉を開けると、いつもより軽くて冷たい声が広がっていた。その笑い声は同じ方向を向いている――私に。でも……亜由美にも向いている。なんで?
私は、なるべく目を合わせないように席へ向かった。もう席に座っている亜由美、それだけで私の胸の奥が少し緩んだ。でも、すぐに怖くなる。寄りかかりたくないのに、寄りかかってしまうから。私は、亜由美の横に立った時、「平気」、と小さく呟いた。本当は、『ありがとう』って言いたかったのに、いつもの癖が出てしまった。素直になれない自分を、自分でもどう扱ったらいいか、わからなくてため息が出てしまう。
「……うん」
亜由美が小さく頷いたのが見えた。
一時間目が終わった途端、教室にざわめきが戻ってきた。
――やっぱり変。この軽い笑い声、あの時に似てる。でも、なんで私だけじゃなくて、亜由美にも?
私が亜由美に話しかけようか迷っているうちに、他の子が亜由美に話しかけてしまった。
(佐原…… 話に加わりたくない)
私は、咄嗟に立ち上がって、教室を出た。少しして教室に戻ると、私の横を通りすぎて、急ぎ足で亜由美が飛び出していってしまった――逃げるみたいに出ていく背中。泣いてる?
追いかけようとすると、さっき亜由美に話しかけていた佐原が、今度は私に絡んできた。
「水野っ!」
「――!」
いきなり腕を組んできた。腕を組まれるほど仲良くないのに、急にくっつかれて、身体が強張ってしまう。
「これ、あげる」
小さな紙を渡された。その紙には、『#近いの嫌』と書かれている。
(ハッシュタグ?)
私は、急いで検索してみる。すぐにSNSに投稿された音声にたどり着いた。
(イヤな予感がする……)
イヤフォンを取り出して、聞いてみる。
『美沙は、美沙だよ。私、そういう噂の中心にいる人と近いの嫌』
#近いの嫌 #常盤高校 #朝倉 #水野
聞いた瞬間、息が止まった。そして、遅れて早い鼓動が打ちつけてくる。
(亜由美の声?)
――でも、これ、一回音が切れてる……切り取り? また? 今度は、亜由美が?
私は、さっき飛び出していった亜由美を追いかけようとした。でも、足が震えてしまって、足に力が入らない、走れない。
(でも、ここで追わないと亜由美がひとりになってしまう)
――亜由美はいつでも私を助けてくれたじゃない!
私は目を閉じて、息を整えた。昨夜、亜由美が言ってくれたように、まず、息を吐き直して、吐ききると、自然に肺いっぱいに空気が入ってくる。自分を奮い立たせるように足に力を入れると、歩き出す。視線が降り注がれるのを、体中に感じた。背中に笑い声を浴びながら、私は飛び出していった亜由美を探す。見つけた――廊下を曲がった所、階段の窓際に、隠れるようにして。亜由美が力なく壁にもたれかかっているのを、見つけた。
「亜由美」
亜由美はなかなか私を見てくれない。視線を落とすと、亜由美の手指の間から、握り潰された紙が見えた。
「――!」
亜由美の体が小刻みに震えている。私は、それを見て分かってしまった。亜由美は聞いちゃったんだ。私は亜由美の隣に立って、壁に寄り掛かった。
「……それ、見た」
言った瞬間、自分の声が平らで、でも揺れているのが分かる。
「……うん」
亜由美の、沈んでいく音のような「うん」、私は胸が痛くなった。
私は、いつも私を助けてくれる亜由美のように、私も亜由美を助けたかった。でも、どうしたら亜由美の力になれるのか、わからない。亜由美の負担にならなければ、亜由美の助けになる? ――どうしたらいい?
私は、一泊おいてから、亜由美に笑顔を向けた。
「平気だから」
目を合わそうとしなかった亜由美が急に顔を上げて、私をまっすぐに見つめてくる。
「平気じゃないでしょ?」
そんなことを言われたら、私の笑顔が崩れてしまう。だから、私は、私の次の『盾』を口にした。
「大丈夫だから」
そう言った私から、亜由美はスッと目を逸らして、呟いた。
「……あれ、私が言った」
「え?」
「私が、噂、流したって言った」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が冷えた。亜由美の声の温度が違う、言い慣れていない声の響きをしてる。
――亜由美、嘘つくの下手すぎ。すぐにわかってしまった。
一瞬、否定しようか迷って、でも私は否定しないことにした。否定したら、きっと亜由美が崩れてしまう。亜由美が崩れたら、私も崩れる。だから、私は、亜由美の嘘を受け入れた。『今の亜由美』を守るために。守るための顔をして、守りたいものを増やさないために。
私は亜由美を真っすぐ見た。
「なんで?」
「止めたかった」
「美沙が、夕紀のことで噂されるのが嫌だったの」
私はため息を吐いた。
(亜由美は、やっぱりどこまでも優しいんだね)
「……亜由美、優しいふり」
「ごめんね」
――亜由美が悪いんじゃないのに。切り取りした人たちがいけないのに。亜由美は私を守ろうとしてくれているだけなのに。なんで謝るの?
「……じゃあ、亜由美が悪いの?」
私はつい、言ってしまっていた。出てしまった言葉を戻すことはできなくて、すぐ後悔した。
「……うん」
――こんな風に言ったら、亜由美を追い詰める。そうじゃないのに……自分の不器用さがイヤになる。
「……だったら、もういい」
「美沙」
「平気、大丈夫だから」
私は、言い捨てて、私は教室へ戻った。戻るしかなかった。
教室に戻ると、興味津々の笑顔に迎えられた。私は、何事もなかったように、席に座って、教科書を開く。開いたのに、文字はただの形にしか見えなくて、意味が全然頭に入ってこない。頭の中で繰り返されるのは、廊下での亜由美の声。
――『あれ、私が言った』
亜由美のバレバレの嘘。それでも私は頷いて受け入れた……受け入れてしまった。
授業のチャイムが鳴って、先生が入ってくると、表面だけは静かになった――板書の音、ページをめくる音。その『普通』に守られている間だけ、私は息ができた。でも、先生が黒板に向いた瞬間、机の下でスマホが光る――小さな振動、小さな笑い、その小ささが、たくさんの針になって体中に刺さってくる。亜由美は? 私は授業中ずっと、隣に座る亜由美の様子が気になって、横目で亜由美を見てばかりいた。
休み時間になると、誰かが私の机の横を通りながら、わざと聞こえるように言ってくる。
「水野、今日静かだね」
亜由美に聞こえるように、わざと言ってるのがわかる――イヤなやり方だ。
(入学してから、亜由美と以外、あまり話したことないから、いつも静かなんだけど)
そう思ったけど、わざと返事をしなかった。その反応を面白く思ったのか、教室中にまた笑い声が転がっていく。そして、転がっていく先に、私の名前が混ざっている。
授業が始まると静かになって、休み時間になると冷ややかな騒めきが戻るのを繰り返して、午前中が終わった。
昼休みになると、また騒めきが戻ってくる。一人ひとりの鼓動の音のように、多数のスマホの振動が脈打ち、どこまでも冷たく乾いた空気が教室を満たしていく。
私は、思わず、机に突っ伏してしまった。何も感じていないふりをして、背筋を伸ばして座っている、それだけなのに、午前中だけで、疲れてしまった。顔を上げると、亜由美は教室を出て行ってしまっていた。
スマホを見て笑う人たちに囲まれて、亜由美がいない教室で、私はお弁当の蓋を開けた。味がしない、噛んでいるのに、噛んでいないみたいだ。私は弁当を食べきれないまま、箸を置いた。
窓の外は晴れているのに、私の中だけ雨が降っているみたい。
亜由美に伝えたい――私を守ろうとして嘘をついたこと、本当はわかってる、って伝えたい。でもそうしたら、亜由美のことだから、きっとまた嘘を増やしてしまう。そうなるのもイヤ。私は、逃げられないトラップに陥ってしまったみたいに、行き詰りながら、救いを求めて手を握りしめた。
「ねえ、水野」
顔を上げると、佐原が私の机の横に立っていた。いつもどうでもいい話をしてくる噂好きの子。にこにこしているのに、目が忙しい。
「……佐原、なに?」
佐原は、忙しなくスマホを触っていた手を止めて、スマホを机に置く。
「ね、朝倉、今どこ?」
「知らない」
私は短く言った。
「え、知らないの? ふーん。でも水野って、朝倉と仲良いよね」
「……」
「仲良いのに、あんなこと言われて平気なの?」
(どう答えるべき?)
私は、教室全体の耳が立っているのを身体中で感じていた。答えたら、誰かが聞き取りやすい形に変換するかもしれない。私は胃がキリキリ痛くなった。
「水野? 聞こえてる?」
「……うん」
「朝倉って優等生っぽいけど、実はこういうとこあるのかな?」
――こういうとこ。どういうとこ? 中身のないイヤな言葉だ。
私は笑えなかった。笑ったら、同意になる。亜由美が私を守ってくれるなら、私も亜由美を守る……守りたい。机の端を掴むと、指先に木目のざらつきを感じて、現実にしがみつきたい私を現実に戻してくれた。
「……やめて」
私の声は、思ったより小さくて、小さすぎて、怒りにもなっていなかった。お願いにもなっていない。佐原は、少しだけ目を丸くする。そして、すぐに『理解したふり』をする顔になった。
「ごめんごめん、心配してただけ」
――心配。刺しておいて、刺してないことにできる便利な言葉だ。
佐原は、去り際、軽く笑いながら、机に置いていたスマホを持ち上げた。その瞬間、一瞬、画面が見えてしまった――黒い背景と赤の波形。
(今、録音してた?)
――もしかして、佐原が亜由美の声を録音して拡散した?
イヤな可能性に、冷たい汗が背中をつたって寒気がする。私は、亜由美に言おうと思って、教室に帰ってくるのを待っていた。でも、お昼休みが終わっても、亜由美は教室に戻ってこなかった。
亜由美がいない午後の授業。先生の声が遠くて何を言っているのか聞き取れない。私は、一生懸命、黒板を書き写しているけど、何をノートに書いているのか、頭が追いついていけないでいた。シャーペンの芯がポキと折れる。その小さな音が、やけに大きく聞こえて、私は急いでカチカチと芯を出して、何事もなかったふりをした。
休み時間、私は、あまり人の来ない隠れ場所へ急いだ。――入学してすぐに、亜由美と見つけたふたりだけの場所――屋上へ続く踊り場。すぐに、スマホのメッセージ画面を開く。
亜由美に連絡したい。でも連絡したら、亜由美に負担が増える。増えた負担の分だけ、亜由美はまた嘘を強くするかもしれない。画面上で人差し指が、無意味に宙を彷徨う。迷って、それでも私は、指を動かしてしまった。
『亜由美』
でも、その後がなかなか書けない。名前だけ送るのは、助けを求めるみたいになってしまう。これ以上、亜由美に負担をかけちゃいけない。私は慌てて続きを打つ。
『今、どこ?』
――隠れていたいのかもしれない。消して、打ち直す。
『どうして』
送信。
――どうして嘘ついたの?
そして、すぐに「どうして」と送ったことに後悔した。亜由美が嘘をついていると分かっていて、私は受け入れた。なのに、受け入れた瞬間から、私の中で何かが軋んでいる。受け入れた瞬間から、私は『真実の側』から一歩ずれてしまっている。
少し待ったけど、既読はつかなかった。階段を降り始めると、スマホが震えた。一瞬、心臓が跳ねる――亜由美からだ。
『ごめんね』
たったそれだけ。それだけなのに、胸が潰れそうになる。『ごめんね』は、亜由美の癖だ。癖で済ませてはいけない場面でも、亜由美は自分を小さくして、相手を守ろうとする。私は、その癖を利用した。利用して、嘘を成立させた。その自覚が、息より重い。
それに、これは、私の「どうして」の返事じゃない。亜由美は、優しさで答えてくれない。それが分かってしまう。今、亜由美は自分のことでいっぱいいっぱいなはずなのに、それでも私の言葉を受け取って、優しさを返してくれている。私は、亜由美に『悪い役』をやらせてしまっている、亜由美を苦しさへと追い詰めてしまっている。
私は、怖かったから、亜由美の嘘を否定しなかった。私の都合で、亜由美の嘘を成立させた。成立させた瞬間、亜由美の嘘は『戻れない嘘』になった――全部、私が、亜由美の嘘を受け入れてしまったせいだ。その代償なんだ。
私は返事を書こうとして、指が止まる。返せば、また嘘が続く。返さなければ、亜由美が一人で抱える。どっちを選んでも痛い。痛いのに、私はまた短い言葉を選んだ。
『もういい』
送信。送った瞬間、指先が冷たくなる。
――『もういい』は終わりの言葉だ。終わらせたかったんじゃない。でも、終わらせないと、亜由美の嘘がこれ以上増えていってしまう。それが怖かった。
嘘の代償が私に重くのしかかってくる。亜由美が言った時に止めていたら良かったのに、私は止めなかった。
――守るための嘘ほど、いちばん大切な人を傷つける。
そのことを、私は、自分の息で覚え直していた。
「水野」
廊下を歩いていると、担任に呼び止められた。
「はい」
「放課後、職員室に寄ってくれ」
「……はい」
「それから、朝倉は今、保健室で休んでるから」
「……わかりました」
教室の扉を開けると、騒めきと笑い声がどんどん大きくなっていく。教室のざわめきが、私に直接当たって痛い。その中を、私は、まっすぐ席に向かって一歩ずつ歩いていく。わずか三メートルの距離なのに、今の私にはとても遠かった。私は、呼吸を浅くして、標的にならないように、目立たないようにした。
席に座ると、佐原がまた近づいてきた。今度は、声を落として、秘密を共有する顔で、話しかけてくる。
「ねぇ水野、朝倉、保健室にいるんだってね。ぶっちゃけさ、朝倉が保健室行ったのって、やっぱ、あの音声が原因?」
私は、息を吐いた。
「……知らない」
「え、でも水野なら知ってると思った。だって、午前の休み時間、朝倉と水野、廊下の端で何か話してたじゃん」
私は視線を上げた。佐原の目の奥に『面白い』が宿っているのを見つけた。『面白い』は、誰かの痛みで膨らむ。でも、黙ったら、黙った形で噂になるし、言ったら、言った形で切り取られてしまう。だから、私は、なるべく誰の噂にもならない言葉を選んだ。
「授業のチャイム、鳴ったよ」
佐原は一瞬だけ黙って、すぐ笑った。
「水野ってさ、意外と強いよね」
――強い? 私が? 冗談でしょ。
私はとても笑えなかった。
「保健室だってさ」
「朝倉、やばくない」
「水野が黙ってるとつまんない」
小さな囁きと好奇の目は、先生が入ってくるまで続いた。
終礼が終わると、教室のざわめきは一層濃くなった。自由にスマホを見ていい時間、その『解放』を待っている目が、教室のあちこちで容赦なく光る。
亜由美の返事を見て、私はため息を吐いた。
『私は、美沙には美沙のままでいてほしい』
こんなことまで言わすなんて、全部私のせいなのに。私は、空いたままの亜由美の席を見た。
(亜由美、ごめん)
思っていても、亜由美には伝わらないけど、なんとかしなきゃいけない。
夕方の光が廊下に差し込んで、影を長く落とす中、私は職員室へ急いだ。長く息を吐き、職員室の扉をノックする。
「先生」
「来たか」
「ちょっとこっちへ来てくれ」
職員室の端にあるテーブルへ導かれた。
「今日は、大変だったな」
「……」
「今、あまり状況は良くない。疲れていると思うが、水野が知っていることを教えてくれ」
「わかりました」
「まず、誰が『始めたか』心当たりはあるか?」
「……これは確証ではないのですが、佐原さんかと思います。今日、何度も私に話しかけてきて、スマホで録音をしている画面がチラッと見えました」
「そうか、わかった」
「あと、朝倉とのことだが」
「……朝倉さんは、私を庇ってくれているんです。朝倉さんは悪くないんです」
「だろうな」
その後、私はいくつか質問をされ、すでに学校が対応し始めていること、コメントを残さないこと、と言われた。
私は、今日起こったことを整理したくて、心を落ち着けたくて、歩いて帰った。ゆっくり歩いて、途中で公園のベンチに腰を下ろし、風の音を聞きながら呼吸を整える。空を見上げると、さっき夕方だったはずなのに、いつの間にか日が沈んでいた。低い雲に覆われた空から雨の匂いがする。
――どうしたらいい? 私に何が出来る? 何かできることはある?
止まりそうになる思考で、いくら考えても、何もいい案が浮かばなかった。
(今の私に出来ることなんて、ない……)
明日、学校へ行ける気がしない。でも、亜由美は来るはず。それに、私が行かなかったら――逃げたことになる。何も悪いことをしていないのに、逃げたことになる。それだけは、イヤだ。
(……これだ。今の私に出来ることは、明日学校に行くことだ。明日学校へ行くことを前提にしよう)
そのために、今日は早く寝て、少しでも回復しよう。
そう決めて、私はもう一度だけ深く息を吐き、力強く立ち上がった。
パラパラ降り始めた雨が、心の中の霧を少しだけ洗い落としてくれているようだった。
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