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1章 記憶喪失な異世界転移者
1-1 私の名前は
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チリチリと日の光が差し込み熱さを感じる。眩しさから逃れるように布団の中に潜り込む。
「……ん……」
ふんわりと枕に頭が沈むと、微かなスズランの香りがした。枕がいつもと違う。
「……?」
目を開くと見覚えのない天井が見える。視線を横にずらすと見たことが無い格子の窓。
飛び起きて周りを見渡して胸がキュッとした。
「ここは……」
静かな部屋でごくりと唾をのむ音が響いた。震える身体を強く強く抱きしめた。
何もわからない
***
周囲を見渡しても見たこともない部屋。穏やかな日差しが室内に差し込み、カーテンがゆらゆらと揺れている。
「……っ。」
起きようとして腕に鋭い痛みが走り、すぐにベッドに身体が落ちた。左右の腕には丁寧にガーゼが貼られていたので、どうやらケガをしているらしいことがわかった。腕を持ち上げて眺めていたところ視線を感じたので顔を向けてみると、開いたドアの前で一人の男性がこちらを見ていた。
「目が覚めたか。」
ツカツカと私の元までやってきて、喉は乾いていないかと問われたので顔を少し動かして頷いた。薄いブラウンの髪で身長は170cmくらいか、それいでいて細身だけど、肩幅がガッチリしていた。知らない顔つきなので外国の方なのかもしれない。
「あっ…」
「ちょっと待て。」
声が出なかった私に透明な液体を入れたグラスをくれた。
「大丈夫。水だ。」
うなずいて受け取り、口に水を含ませた。
「……ありがとうございます。」
喉が潤ったからか、少し弱弱しいけれど声が少しでるようになった。
「擦り傷がたくさんあった。打撲もしていたようだが、痛みは?」
「動くと少しだけ……」
「何があった?」
窓際のイスに座った彼は優しく問いかけた。
「この辺りではみかけない服を着ていたようだが……。」
ハッとして自分の服を見る。クリーム色のシンプルなワンピースを着ていた。
「あっ、着替えは侍女がしたから安心するといい。」
服の違いもわからなくてワンピースを見つめたけれど、それを着替えの心配をしていると思ったようだった。
「わからないのです。」
怪訝そうにみる彼を向いてもう一度言う。
「何もわからないのです。」
***
私はどこからやってきたのか、どうして森の中にいたのか全く分からないと話した。
「名前は?」
「わからない……」
「年齢は?」
「わからない……」
彼から質問されてはじめて自分のことさえ何もわからないことに気がついた。わからないことが増えていくごとにどんどん不安になり胸が苦しくなっていった。気がついたら目の前が滲んでいた。
「大丈夫だ。」
彼はやさしく私の頭をなでて、医者を呼ぶからちょっと待ってくれと言った。
「待って。」
部屋を出ようとする彼の背に向かって声をかけた。今一人にされたら怖い。一人ぼっちが怖い。そんな私の気持ちが伝わったのか、彼は少しだけ目を細めてすぐ戻るから大丈夫だと宥めるように言った。無表情だった彼が少し微笑んでいるかのように見えた。
***
彼が呼んだ医者に診察をしてもらうと、ケガをしたときの衝撃かその時のストレスなどで記憶喪失になっているのではないかということだった。
「君の服装はこの辺りではみなし、ケガをして倒れていた状況から何かの事件に巻き込まれたということもあるかもしれないな。」
再び二人になると、私が倒れていた状況について教えてくれた。彼の家から馬車で1時間くらいの森の中で倒れていたこと、近くにオオカミがいたので警戒してみていたところオオカミの視線の先に私がいたことを知った。
「ありがとうございます。」
背中がゾクっとして身体が震えた。
「とりあえず今日はゆっくり休むといい。あれから2週間ほど寝ていたのだから、まだ体力ももどっていないだろう。続きはまた明日にしよう。」
「……はい。」
いろいろと話して疲れてしまったのか、身体がひどく重く感じた。
「私はオリバー。君は……。」
「えっと……。」
名前を思い出せないので言葉に詰まってしまった。
「リリィ。君が名前を思い出すまでの仮の名前だ。」
「リリィ?」
「そう。君が倒れていた場所には沢山のスズランの花が咲いていたんだ。」
目を細めてほほ笑むオリバーを見て顔が熱くなった。
「リリィ……素敵な名前ですね。」
「……ん……」
ふんわりと枕に頭が沈むと、微かなスズランの香りがした。枕がいつもと違う。
「……?」
目を開くと見覚えのない天井が見える。視線を横にずらすと見たことが無い格子の窓。
飛び起きて周りを見渡して胸がキュッとした。
「ここは……」
静かな部屋でごくりと唾をのむ音が響いた。震える身体を強く強く抱きしめた。
何もわからない
***
周囲を見渡しても見たこともない部屋。穏やかな日差しが室内に差し込み、カーテンがゆらゆらと揺れている。
「……っ。」
起きようとして腕に鋭い痛みが走り、すぐにベッドに身体が落ちた。左右の腕には丁寧にガーゼが貼られていたので、どうやらケガをしているらしいことがわかった。腕を持ち上げて眺めていたところ視線を感じたので顔を向けてみると、開いたドアの前で一人の男性がこちらを見ていた。
「目が覚めたか。」
ツカツカと私の元までやってきて、喉は乾いていないかと問われたので顔を少し動かして頷いた。薄いブラウンの髪で身長は170cmくらいか、それいでいて細身だけど、肩幅がガッチリしていた。知らない顔つきなので外国の方なのかもしれない。
「あっ…」
「ちょっと待て。」
声が出なかった私に透明な液体を入れたグラスをくれた。
「大丈夫。水だ。」
うなずいて受け取り、口に水を含ませた。
「……ありがとうございます。」
喉が潤ったからか、少し弱弱しいけれど声が少しでるようになった。
「擦り傷がたくさんあった。打撲もしていたようだが、痛みは?」
「動くと少しだけ……」
「何があった?」
窓際のイスに座った彼は優しく問いかけた。
「この辺りではみかけない服を着ていたようだが……。」
ハッとして自分の服を見る。クリーム色のシンプルなワンピースを着ていた。
「あっ、着替えは侍女がしたから安心するといい。」
服の違いもわからなくてワンピースを見つめたけれど、それを着替えの心配をしていると思ったようだった。
「わからないのです。」
怪訝そうにみる彼を向いてもう一度言う。
「何もわからないのです。」
***
私はどこからやってきたのか、どうして森の中にいたのか全く分からないと話した。
「名前は?」
「わからない……」
「年齢は?」
「わからない……」
彼から質問されてはじめて自分のことさえ何もわからないことに気がついた。わからないことが増えていくごとにどんどん不安になり胸が苦しくなっていった。気がついたら目の前が滲んでいた。
「大丈夫だ。」
彼はやさしく私の頭をなでて、医者を呼ぶからちょっと待ってくれと言った。
「待って。」
部屋を出ようとする彼の背に向かって声をかけた。今一人にされたら怖い。一人ぼっちが怖い。そんな私の気持ちが伝わったのか、彼は少しだけ目を細めてすぐ戻るから大丈夫だと宥めるように言った。無表情だった彼が少し微笑んでいるかのように見えた。
***
彼が呼んだ医者に診察をしてもらうと、ケガをしたときの衝撃かその時のストレスなどで記憶喪失になっているのではないかということだった。
「君の服装はこの辺りではみなし、ケガをして倒れていた状況から何かの事件に巻き込まれたということもあるかもしれないな。」
再び二人になると、私が倒れていた状況について教えてくれた。彼の家から馬車で1時間くらいの森の中で倒れていたこと、近くにオオカミがいたので警戒してみていたところオオカミの視線の先に私がいたことを知った。
「ありがとうございます。」
背中がゾクっとして身体が震えた。
「とりあえず今日はゆっくり休むといい。あれから2週間ほど寝ていたのだから、まだ体力ももどっていないだろう。続きはまた明日にしよう。」
「……はい。」
いろいろと話して疲れてしまったのか、身体がひどく重く感じた。
「私はオリバー。君は……。」
「えっと……。」
名前を思い出せないので言葉に詰まってしまった。
「リリィ。君が名前を思い出すまでの仮の名前だ。」
「リリィ?」
「そう。君が倒れていた場所には沢山のスズランの花が咲いていたんだ。」
目を細めてほほ笑むオリバーを見て顔が熱くなった。
「リリィ……素敵な名前ですね。」
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