Game of the KILLER QUEEN

南蛮 義卿

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序章

街を照らす偽善と暗闇に潜む悪意

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彼女が朝起きると見知らぬ天井であった。
体を起こし、背伸びをする。
顔を洗い、軽く服のシワを直す。
鏡を見ておかしな所がないか確認すると
ステッキを手に持ちくるくると回して見せる。
仮面を付け、時計で時間を確認。
彼女は満足したのか客人の元へ戻る。
彼女の客人は猿轡をかまされ縛られ、床へ転がされていた。
目は恐怖で大きく見開き、汗が額を伝う。
彼の隣にはロングコートを着た黒髪の人物が倒れていた。彼のものと思われる血が灰色のカーペットを真紅に染め上げ、
艶々と肉が赤く輝く。
彼女はつかつかと革製のブーツを鳴らし、客人の猿轡を取ってやった。

「か、金ならやる!!助けてくれ!」

客人は命乞いを始める。その姿はかつて正義の象徴と呼ばれ、
悪を徹底的に弾圧し、処刑した騎士の威厳は跡形もなく、私はそのギャップにとても快感を覚えた。

「残念ながら私は金ごときに興味はないんですよ」

私はポケットから金色の懐中時計を見せる。

「じゃあ敵討ちか!?それとも恨み!?」

「いいえ」

「じゃあ何なんだ!!」

客人は半狂乱であった。

「楽しいからです」

私はメスを弄ぶ。オーダーメイド品だ。
そして彼女は客人におもむろに近づくと顔を大きく歪め笑顔と思われる表情をした。

「貴方の顔が苦痛で恐怖で怒りで屈辱で悲痛で後悔で」

そう捲し立てると落ち着きを取り戻し、

「歪むのを眺めるのが好きなんですよ」

とニコリと笑った。

「狂人め」

なんて事だ。私が狂っているとは心外だ。

「私が狂っている?
いえいえ、私は至って正気ですよ。
だって自分が狂っていると知っているのですから」

「化け物め!地獄に落ちやがれクソ野ゴッ!?」

客人が悪態をつき終わる前に私は客人の口に手を突っ込むと舌を切り落とした。

「申し訳ありません。あまりにも五月蝿かったもので。まあどうせこの後死にますし、いいですよね」

彼は客人の顔が真っ赤になって魚のように口をパクパクとさせ、もがく姿をみると

「では芸術品を作ろうではありませんか。
大丈夫ですよ、貴方みたいな野蛮人も芸術にすれば美しいものです」

私は舌を親指と人差し指で挟み、プラプラと振ると、彼の腹にメスを入れた、、、。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ではご機嫌よう、私は先に失礼いたします」
扉を後ろ手に閉めると帽子を身につけ外に出た。
暫くして絶叫が辺りに響き渡った。
私はその叫びに大変満足した。
「ふむ、そろそろ朝食にしますか」
私はお気に入りの|喫茶店(カフェ)へ向かって歩き始めた。


この店の紅茶は素晴らしい。
日が当たる席に座ると
私は来る途中で買った新聞を広げる。
新聞に書かれているのはもっぱら転生者についてだ。
多種多様な住人が集う世界。
新聞の見出しには転生者への賛美。
戦争を終わらせた、凶悪な犯罪者の逮捕、新技術の開発。
私は小馬鹿にするような笑いを思わずあげてしまった。
彼らのようにこの世界に利益を与えるものも入れば、
私のように悪意を撒き散らす者もいる。
まあ仕方ないのだ。それ悪意こそが私の全てであり、両親から受けた悪意愛情なのだから。
私の客人についての記事はない。
少しがっかりした後、
紅茶を飲み終わりお代とチップを渡すと喫茶店を後にした。

「そこのお兄さん、ちょっと楽しいことして行かない?」

女に声を掛けられる。
行きつけの喫茶店は高い値段設定がされている為、私が金持ちだと目をつけたのだろう。
どうやら私の男装は完璧なようで彼女は私が女であると気づきもしない。
私は歯を噛みしめ表情が表に出るのを必死に抑える。
「、、、吐き気がする」

「えっ?どうしたんだい?」

「いえいえ何でも。では行きましょうか」

私は筋肉が強張るのを抑えてにこやかに笑う。

彼女らは路地裏に消えていった。

次の日

「売春婦がバラバラにされて見つかった。

目撃者はなし。腹を刃物で縦に裂かれ、
大腸や小腸などの臓器を
アクセサリーのように彼女に散りばめられていたという。
しかし死体からは子宮だけが持ち去られていた。王国憲兵隊が捜査を開始。」
新聞の右端にそう書かれていた。
彼女の芸術に、遊戯ゲームに未だ誰も気づかない。
やがてこの事件を発端に殺人鬼達の血の宴が、暴力的自由が世界に蔓延するなど
誰が想像できようか。
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