治癒魔法で恋人の傷を治したら、「化け物」と呼ばれ故郷から追放されてしまいました

山科ひさき

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七話

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 目を開けると、白い天井が視界に入った。私の家ではない。

──私、死んでない? それに、ここは一体。

 混乱してベッドの中で辺りを見回す私の視界に入ったのは、よく見知った顔。

「……ハドリー?」

 私の顔を心配そうに覗き込むその人は、意識を失うほんの直前まで頭に思い浮かべていた、私の恋人だった。
驚いて起きあがろうとする私を、ハドリーはベッドにやんわりと押し戻した。

「まだ寝ていたほうがいい」
「えっと、わかった。でも、どういう状況……? ここ、どこ?」

 わかった、と言いながらも完全に横になったままでは話しづらいため、ゆっくりと起き上がってベッドの背に体を預ける形で彼と向かい合った。
 さっぱり現状が把握できていない私に、彼はここに至るまでの経緯を説明してくれた。

「君が町を出てしばらくしてから、馬で追いかけたんだ。といってもどこに向かったのかがわからなくて探し回っていたから、もう少しで手遅れになるところだった」

 私たちがいる場所は、隣町の宿屋だったらしい。彼が意識を失っている私を見つけ、ここまで運んできたのだという。
 彼が私が町を追われることを知っていて、その上で助けないことを選んだのだと思っていたが、聞けばどうやらそうではなかったらしい。ドラゴン討伐に共に向かった彼の仲間たちが、私の状況を彼に伝わらないようにしていたらしいのだ。
 どうやら彼は彼の仲間に対してかなり怒っている様子だった。普段温厚な彼にしては珍しいことだった。

「僕は君のもとに帰ってこれたことに浮かれて、周囲の雰囲気に気づけてなかった。あいつらは僕より冷静だったから君に向けられた視線が不穏なことに気づいていたけど、君を庇えば僕も攻撃されると思って騒ぎから引き離したらしい」
「なるほどね……。でもきっと、それが彼らなりの最善だったんだろうね」

 別に彼らをかばうつもりもなかったけれど、その行動は理解できるような気がした。
 それに私に対する態度から考えれば、仮に彼も「化け物の味方」として排斥の対象になっていた場合、町を出る際の準備の時間を与えられたかどうかも怪しい。彼は最低限の準備は整えられたようだし馬もあったが、私と一緒に追い出されていたとしたら最悪二人でのたれ死んでいたのではないか。
 もちろん彼らはそこまで考えていたわけではなく、単に自分たちの仲間を守ろうとしただけだろうが。

「僕はそんなことは頼んでいない。君を一人で死なせるくらいなら、一緒に追い出された方がマシだ」
「ハドリー……」

 もしそうなっていたら、きっと二人がここで生きていることはなかっただろう。彼もそれをわかっているだろうに、それでも私と一緒に来ることを選びたかったと言ってくれる、彼の気持ちが嬉しかった。
 彼は、真剣な面持ちで続ける。

「君を失うかもしれないと思いながら必死に探している間、怖くて仕方なかった。……もう君を、一瞬たりとも離したくないんだ。君の事を愛している。どうか、これからの人生を共に歩んでいってくれないか」

 自分の顔がじわじわと熱を持っていくのを感じながら、じっと彼の目を見つめた。

「それって……プロポーズ?」
「うん」

 そう短く答え、どこか不安そうにこちらの表情をうかがう彼。そんな顔しなくても、私の答えなんて最初から決まっているのに。

「私も、あなたと一緒に生きていきたい。結婚しましょう、ハドリー」

 その瞬間、ベッドまで乗り上げてきた私はハドリーに抱きしめられた。急なことで驚いたけれど、やはり彼の体温は暖かくて心地よかった。体調のことを気遣ってか体重をかけないようにしてくれていることもわかって、なんだかくすぐったいような気持ちで腕を彼の背中に回した。
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