けいちゃんと私、ときどきうみちゃん

里見しおん

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15 けいちゃんの話②

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 男はすぐに慶を車に乗せて村を出た。
 いいと言うまで頭を下げるつもりだったのに、びっくりだ。


「あの、頼んだのはわたしでございますが、よろしいのでしょうか」

「おいあぶねぇ、シートベルトしろ。もちろんだ、助けてやれるなら助けたくてきたんだ」


 山道を降りる車はがたがたと揺れ、慶の体はびょんびょん跳ねた。

「しーと、ベルトとはなんでしょうか」

「まじかよ。これだこれ。そこのそれ、それにはめろ。ぐーっと」


 男は自分のシートベルトを示し、助手席のシートベルトを指さした。
 もたもたとしつつなんとか締める。

 ちらりと男をうかがうと、男が笑顔で頷いた。
 慶は神の子の力なのか、暗いところでもよく目が見えるのだ。


 落ち着いてみると、男はおそらく40代ほどだろうか。
 大柄で筋肉質でヒゲモジャで、笑うと目尻に皺が刻まれた。




 男には村の住人であった祖父母から、数年前から何度も村に住むよう手紙が来ていたそうだ。

『神の子が生まれた。神の子に仕える若者が足りない、村に来なさい』『神の子が脱走するようになった。若者が足りず追いかけられない、早く来なさい』『神の子の夫になれ』


 別に暮らしていた母親にそれらの手紙を見せると、母親は青ざめた。
 結婚し、男が生まれてから父親の生まれ故郷に移り住んだが、あまりに常識の通じない村に耐えられず母親は逃げてきたそうだ。


「神の子を生むために、父以外の村の男と交われと言われたそうだ。神の子の血を引く男を相手にしろとか言っていたらしい」


 慶はそのときはっとした。
 実母は名乗ってくれて知っていたが、実母の夫は父親だと言われたことがなかった。


「住所を教えたことはない、と怖がっていたが、まぁ調べたんだろうなぁ。父は早くに死んでたから、じじいとばばあが死んで俺の母に連絡が来てな。それで……村の偉いやつなのかな、話を聞いた母が、神の子を助けてやれないかと言うんでな、俺が様子を見に来たんだ。自分から来るとは思わなかったが」



 慶は男の言葉が不思議でならなかった。


「助けてやりたい? なぜ、わがままなわたしを」


 自分は村中に大切にされている。外に出たいというのはわがままなのだとわかっていた。



 車の揺れがおさまる。山道を下りきったようだ。



「外で遊びたい盛りのこどもを狂信者が閉じ込めている。義務教育も施していない。これはな、村の外では虐待というんだ」


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