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⑨ー2
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あつあつジューシーな骨付きチキンに、がぶりと食らいつく。
「わぁ! うま!」
やきたてのチキン、おいしい!
結婚式後の食事会、なんとホテルのお庭で昼下がりのバーベキューである。
シェフが焼いてくれるのでドレスでも安心、安全である!
乾杯したあと、各々好きなものを焼いてもらって食べている。
「おいしいですね。これはシャンパンよりもビールですね。君、ビールを。れいなは?」
「私はシャンパン飲む、ありがとう」
ソファに並んで座ったジュリオは片手を上げウェイターに声をかける。
くいっとシャンパングラスを傾ける。
玲奈は結婚式に備え、ダイエットのため少し酒を控えていたのだ。
今日は久しぶりにたくさん飲んじゃおーっと!
「おねえちゃん、おにいさん、ここいい?」
「みーちゃん、どうぞ! わぁハンバーグもおいしそうだねぇ」
ハンバーグの皿を持ったみーちゃんが、向かいのソファに座った。
みーちゃんはピンク色の、ノースリーブのカジュアルなワンピース姿だ。
マウリッツ王子とくっついたせいか、さらにかわいくなっだ気がする。
ちなみに未唯奈は、ホテルの部屋でジュリオがにゅるりとスマートフォンに入り、アルケイディアから連れて帰ってきた。
入国審査とかしてないけどいいんだろうか。
留学中なのに、未唯奈のパスポートには出国履歴すらない……。
「おねえちゃん、すっごくすてきな式だったね! 私の結婚式にも来てくれる?」
「もちろんだよ! お父さんたちは……呼べないよね……」
「うん、むこうではエンディミオンの娘ってことになってるしね……。まぁまだ先だし、色々考えるよ。まずは卒業しなきゃね。あっハンバーグ、おいしい!」
フォークを口に運んだ未唯奈が頬に手を当ててふにゃっと笑う。
かわいい。明らかに所作がお上品になっている。
「私、マウリッツとずっとあっちに住むつもり。あの、おにいさん、おねえちゃんのスマホと繋がってるのって、続くの?もし壊れたら?あとアプリがサービス停止になったりとかしたら……」
未唯奈が不安げにジュリオに目を向けた。
それは私も気になっていたことだった。
『クリスタル・リリーを君に』の運営は半年前に突然現れた謎のキャラクターミーナ・エンディミオンが何者かさっぱりわからず、ジュリオ氏のルートはcoming soonのままデータに触れず。公式ブログは2人に関する質問に答えられずに炎上するし、このアプリ大丈夫かとだんだん心配になっていた。
玲奈もジュリオに視線を向ける。
「大丈夫、心配しないでれいな、ミーナ。繋がりは私の魔術で完全に掌握しました。機種変更しても私がいれば大丈夫ですよ。パソコンにも、テレビにも繋げます。でも持ち運びに便利だからやはりスマートフォンがいいですよね。あぁ、サービス停止になっても影響はないですよ、私がいれば」
「……おにいさんが万が一死んじゃったら?」
「うーんちょっとわかりません」
ジュリオはグラスに口をつけながら首を傾げた。
「えええ……な、長生きしてね。それで魔術でなんとかして?!」
「かわいいミーナがいますからね。なんとかしましょう。あぁ、ありがとう」
ウェイターからビールのグラスを受け取りながら、未唯奈の訴えにジュリオは軽く頷いて見せた。
玲奈と未唯奈は揃って安堵の息を吐いた。
ジュリオ氏がなんとかするというならなんとかなるのだ。
「あの会社、経営がよろしくないんですよ。あのゲームをリリースしてすぐ女性社員が亡くなっているんですが、それからバグは続くし会社の入ってるビルは浸水するし社長は妻に逃げられ自棄になるしで、社内では死んだ女性社員の呪いなんて言われてます。まぁそんなわけないですがね、ビルは古かっただけだし社長の妻は5年も不倫してたし」
バグの大半はジュリオ氏が世界をひっくり返す魔術使ったせいだしね……!
「すっごい詳しいね」
「ふふ、インターネットを媒介する魔術で情報取り放題ですから。おかげで会社がやばそうだなとわかって、先回りで対策をしていました。運営からの干渉も私が運営であると上書きすることで掌握し、ついでに強制力も強くしてあります。手出ししてませんが、ゲームの内容をいじることも、攻略対象になっている人物に意志に反した言動を取らせることも可能です。あちらの世界は文字通り私の手の中ですよ」
「おにいさんマジ魔王」
「ジュリオ氏ってほんとめちゃくちゃ」
「過大な褒め言葉をありがとうございます」
世界の支配者・ジュリオはビールを片手ににやりと笑うのだった。
「どうです、私とっても偉いでしょう? 初夜にボーナスつけてくださいね」
耳元で囁かれた声に玲奈の背中はぞく、と甘くしびれ、頬が赤く染まった。
だーかーらー、私たちぜんぜん初夜じゃないから! 昨日もしたし!
あと聞こえてなくても、みーちゃんの前で初夜とか言うのやめてください……!
あと声が良すぎますよ……CV! 一体誰だったんですか……!
「樹里夫!玲奈さん!ケーキカットするよー」
「ふぁ!? は、はーい!」
パパの声に、手を繋いでソファから立ち上がる。
若いウェイターがハート型のケーキが乗ったワゴンを押しているのが見えた。
ケーキカットをして、ファーストバイトで食べさせあって。玲奈がやってみたかったいかにもな演出にもジュリオはにこにこと付き合ってくれた。
いつものにやりもかっこいいけど、ジュリオにはこんなふうに笑っていてほしいな。
大きな声で笑うのだって、当たり前でいてほしいな。
……ボーナスって、なにしたら喜ぶんだろう?
なんでもしてあげるから、なにしたいのかちゃんと教えてよね、旦那様!
酔っぱらったら初夜が台無しだから、やっぱり今日もお酒は控えめにしようっと!
「わぁ! うま!」
やきたてのチキン、おいしい!
結婚式後の食事会、なんとホテルのお庭で昼下がりのバーベキューである。
シェフが焼いてくれるのでドレスでも安心、安全である!
乾杯したあと、各々好きなものを焼いてもらって食べている。
「おいしいですね。これはシャンパンよりもビールですね。君、ビールを。れいなは?」
「私はシャンパン飲む、ありがとう」
ソファに並んで座ったジュリオは片手を上げウェイターに声をかける。
くいっとシャンパングラスを傾ける。
玲奈は結婚式に備え、ダイエットのため少し酒を控えていたのだ。
今日は久しぶりにたくさん飲んじゃおーっと!
「おねえちゃん、おにいさん、ここいい?」
「みーちゃん、どうぞ! わぁハンバーグもおいしそうだねぇ」
ハンバーグの皿を持ったみーちゃんが、向かいのソファに座った。
みーちゃんはピンク色の、ノースリーブのカジュアルなワンピース姿だ。
マウリッツ王子とくっついたせいか、さらにかわいくなっだ気がする。
ちなみに未唯奈は、ホテルの部屋でジュリオがにゅるりとスマートフォンに入り、アルケイディアから連れて帰ってきた。
入国審査とかしてないけどいいんだろうか。
留学中なのに、未唯奈のパスポートには出国履歴すらない……。
「おねえちゃん、すっごくすてきな式だったね! 私の結婚式にも来てくれる?」
「もちろんだよ! お父さんたちは……呼べないよね……」
「うん、むこうではエンディミオンの娘ってことになってるしね……。まぁまだ先だし、色々考えるよ。まずは卒業しなきゃね。あっハンバーグ、おいしい!」
フォークを口に運んだ未唯奈が頬に手を当ててふにゃっと笑う。
かわいい。明らかに所作がお上品になっている。
「私、マウリッツとずっとあっちに住むつもり。あの、おにいさん、おねえちゃんのスマホと繋がってるのって、続くの?もし壊れたら?あとアプリがサービス停止になったりとかしたら……」
未唯奈が不安げにジュリオに目を向けた。
それは私も気になっていたことだった。
『クリスタル・リリーを君に』の運営は半年前に突然現れた謎のキャラクターミーナ・エンディミオンが何者かさっぱりわからず、ジュリオ氏のルートはcoming soonのままデータに触れず。公式ブログは2人に関する質問に答えられずに炎上するし、このアプリ大丈夫かとだんだん心配になっていた。
玲奈もジュリオに視線を向ける。
「大丈夫、心配しないでれいな、ミーナ。繋がりは私の魔術で完全に掌握しました。機種変更しても私がいれば大丈夫ですよ。パソコンにも、テレビにも繋げます。でも持ち運びに便利だからやはりスマートフォンがいいですよね。あぁ、サービス停止になっても影響はないですよ、私がいれば」
「……おにいさんが万が一死んじゃったら?」
「うーんちょっとわかりません」
ジュリオはグラスに口をつけながら首を傾げた。
「えええ……な、長生きしてね。それで魔術でなんとかして?!」
「かわいいミーナがいますからね。なんとかしましょう。あぁ、ありがとう」
ウェイターからビールのグラスを受け取りながら、未唯奈の訴えにジュリオは軽く頷いて見せた。
玲奈と未唯奈は揃って安堵の息を吐いた。
ジュリオ氏がなんとかするというならなんとかなるのだ。
「あの会社、経営がよろしくないんですよ。あのゲームをリリースしてすぐ女性社員が亡くなっているんですが、それからバグは続くし会社の入ってるビルは浸水するし社長は妻に逃げられ自棄になるしで、社内では死んだ女性社員の呪いなんて言われてます。まぁそんなわけないですがね、ビルは古かっただけだし社長の妻は5年も不倫してたし」
バグの大半はジュリオ氏が世界をひっくり返す魔術使ったせいだしね……!
「すっごい詳しいね」
「ふふ、インターネットを媒介する魔術で情報取り放題ですから。おかげで会社がやばそうだなとわかって、先回りで対策をしていました。運営からの干渉も私が運営であると上書きすることで掌握し、ついでに強制力も強くしてあります。手出ししてませんが、ゲームの内容をいじることも、攻略対象になっている人物に意志に反した言動を取らせることも可能です。あちらの世界は文字通り私の手の中ですよ」
「おにいさんマジ魔王」
「ジュリオ氏ってほんとめちゃくちゃ」
「過大な褒め言葉をありがとうございます」
世界の支配者・ジュリオはビールを片手ににやりと笑うのだった。
「どうです、私とっても偉いでしょう? 初夜にボーナスつけてくださいね」
耳元で囁かれた声に玲奈の背中はぞく、と甘くしびれ、頬が赤く染まった。
だーかーらー、私たちぜんぜん初夜じゃないから! 昨日もしたし!
あと聞こえてなくても、みーちゃんの前で初夜とか言うのやめてください……!
あと声が良すぎますよ……CV! 一体誰だったんですか……!
「樹里夫!玲奈さん!ケーキカットするよー」
「ふぁ!? は、はーい!」
パパの声に、手を繋いでソファから立ち上がる。
若いウェイターがハート型のケーキが乗ったワゴンを押しているのが見えた。
ケーキカットをして、ファーストバイトで食べさせあって。玲奈がやってみたかったいかにもな演出にもジュリオはにこにこと付き合ってくれた。
いつものにやりもかっこいいけど、ジュリオにはこんなふうに笑っていてほしいな。
大きな声で笑うのだって、当たり前でいてほしいな。
……ボーナスって、なにしたら喜ぶんだろう?
なんでもしてあげるから、なにしたいのかちゃんと教えてよね、旦那様!
酔っぱらったら初夜が台無しだから、やっぱり今日もお酒は控えめにしようっと!
応援ありがとうございます!
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