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【第二章 宰相閣下はコミュ症の天才魔術師を溺愛する】
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「手紙が来てるぞ」
そう言われて、上司に手渡された両親からの手紙には、予想外の事が書いてあった──婚約者が決まったと。
「!!¿¥&**#@∆?」
「アレクシス、どうしたんだ?」
「父から手紙が来まして──こんやくしゃが決まったと……」
「すまん。最後の方が聞き取れなかった。こんにゃくがどうしたって?」
僕の棒読みゼリフに上司であるオブライアン・フォルトナー伯爵は眉間にしわを寄せ、眉を吊り上げた。僕の実家が侯爵家でなければ、「もっと、はっきりしゃべれ」と言われていただろう。
「こ、婚約です。婚約して、来月には結婚らしいんです」
「婚約して結婚? 誰がだ?」
「ぼ、僕です」
「ん? そうか。今まで婚約者はいなかったんだな? いくら、侯爵家の3男とはいえ、サリエル侯爵家の人間に今まで婚約者がいなかったのが不思議だな。それで、相手は誰なんだ?」
「ジル・サクフォン宰相閣下です」
「ぶっ……」
オブライアン様は、すすっていたコーヒーを吹き出していた。
「何だって?!」
「き、汚いです。オブライアン様」
「ああ。すまない、すまない」
オブライアン様は、零したコーヒーを拭きながら僕を見て不思議な顔をしていた。
「宰相閣下といえば、仕事が出来る有能な人物と言われているが──今まで、政治に利用されるのが嫌で結婚していないと聞いていたよ。たしか、40歳くらいだったよな?!」
「知っています。食堂で女性達が、よく騒いでいましたから。独身貴族だって」
「何となく政治的理由がある様に思えてならないのだが──お前は、それでいいのか?」
「親が決めた相手と結婚すると決めていますので大丈夫です。それが貴族の務めですから……」
「そうか」
「それに……」
「何だ?」
「僕は、出来損ないなんです」
「お前は、またそんな事を──魔術学会で論文が認められて魔術勲章を受章してただろ? 天才魔術師と謳われているお前がそれを言ったら、聞いた人間によっては嫌味に聞こえるぞ」
「その、ここだけの話にして欲しいのですが、僕のバース性はオメガ性らしくて……。でも、成人するまで一度も発情したことがないんです。だから、婿に出すのかどうかとか、両親はぎりぎりまで迷ったんだと思います」
「あれ? 成人したのか?」
「はい、きのう……」
「それは、おめでとう。まあ、成人しても発情しないオメガは今の時代、少なくないらしいからな。そこは、あまり気にするなよ」
「はい、ありがとうございます」
「宰相閣下も、来年には甥っ子に今の公爵家の地位を譲るらしいからな──タイミング的には、ちょうど良かったのかもな?」
「……?」
「まあ、お前がいいと言うなら何も気にする事はない。お幸せにな?」
「はい、ありがとうございます」
僕は一礼すると、自分の机に戻り実験の続きをしていた。昔から魔術理論を考えるのが得意だった僕は、2年前に学園を卒業して国の魔術機関に就職した。今は国王夫妻が住んでいる隣の建物の研究棟で働いている。
何日も研究室に寝泊まりして、実験に夢中になっている僕の、どこが良かったんだろう? 宰相閣下なら相手は選び放題だというのに……。分からない事だらけだ。僕は頭を振ると、再び実験に集中したのだった。
そう言われて、上司に手渡された両親からの手紙には、予想外の事が書いてあった──婚約者が決まったと。
「!!¿¥&**#@∆?」
「アレクシス、どうしたんだ?」
「父から手紙が来まして──こんやくしゃが決まったと……」
「すまん。最後の方が聞き取れなかった。こんにゃくがどうしたって?」
僕の棒読みゼリフに上司であるオブライアン・フォルトナー伯爵は眉間にしわを寄せ、眉を吊り上げた。僕の実家が侯爵家でなければ、「もっと、はっきりしゃべれ」と言われていただろう。
「こ、婚約です。婚約して、来月には結婚らしいんです」
「婚約して結婚? 誰がだ?」
「ぼ、僕です」
「ん? そうか。今まで婚約者はいなかったんだな? いくら、侯爵家の3男とはいえ、サリエル侯爵家の人間に今まで婚約者がいなかったのが不思議だな。それで、相手は誰なんだ?」
「ジル・サクフォン宰相閣下です」
「ぶっ……」
オブライアン様は、すすっていたコーヒーを吹き出していた。
「何だって?!」
「き、汚いです。オブライアン様」
「ああ。すまない、すまない」
オブライアン様は、零したコーヒーを拭きながら僕を見て不思議な顔をしていた。
「宰相閣下といえば、仕事が出来る有能な人物と言われているが──今まで、政治に利用されるのが嫌で結婚していないと聞いていたよ。たしか、40歳くらいだったよな?!」
「知っています。食堂で女性達が、よく騒いでいましたから。独身貴族だって」
「何となく政治的理由がある様に思えてならないのだが──お前は、それでいいのか?」
「親が決めた相手と結婚すると決めていますので大丈夫です。それが貴族の務めですから……」
「そうか」
「それに……」
「何だ?」
「僕は、出来損ないなんです」
「お前は、またそんな事を──魔術学会で論文が認められて魔術勲章を受章してただろ? 天才魔術師と謳われているお前がそれを言ったら、聞いた人間によっては嫌味に聞こえるぞ」
「その、ここだけの話にして欲しいのですが、僕のバース性はオメガ性らしくて……。でも、成人するまで一度も発情したことがないんです。だから、婿に出すのかどうかとか、両親はぎりぎりまで迷ったんだと思います」
「あれ? 成人したのか?」
「はい、きのう……」
「それは、おめでとう。まあ、成人しても発情しないオメガは今の時代、少なくないらしいからな。そこは、あまり気にするなよ」
「はい、ありがとうございます」
「宰相閣下も、来年には甥っ子に今の公爵家の地位を譲るらしいからな──タイミング的には、ちょうど良かったのかもな?」
「……?」
「まあ、お前がいいと言うなら何も気にする事はない。お幸せにな?」
「はい、ありがとうございます」
僕は一礼すると、自分の机に戻り実験の続きをしていた。昔から魔術理論を考えるのが得意だった僕は、2年前に学園を卒業して国の魔術機関に就職した。今は国王夫妻が住んでいる隣の建物の研究棟で働いている。
何日も研究室に寝泊まりして、実験に夢中になっている僕の、どこが良かったんだろう? 宰相閣下なら相手は選び放題だというのに……。分からない事だらけだ。僕は頭を振ると、再び実験に集中したのだった。
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