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【第二章 宰相閣下はコミュ症の天才魔術師を溺愛する】
大事なもの
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数日後。王家主催のパーティーに招待された僕達は正装をしてパーティー会場へ来ていた。今日は宰相閣下が迎えに来てくれたので、髪の毛のセットは宰相閣下のお付きの人に手伝ってもらった。けれど、会場へ移動する馬車の中で、宰相閣下は何故か僕の頭を撫でていた。
(今日は髪の毛をセットしてもらったから大丈夫なはずなんだけどな……)
「あの、髪の毛まだ跳ねてますか?」
すると、宰相閣下は虚を突かれたような顔をして目を細めると、再び僕の髪を撫でていた。
「いや。アレクシスは今日も可愛いなって、思ってね」
思いもよらない殺し文句に、僕は何も言えないまま口ごもってしまったのだった。
※※※※※
会場へ着くと、宰相閣下は僕をエスコートしながら、すれ違う職場の方々に挨拶をしていた。国王陛下への挨拶を済ませると、宰相閣下は秘書の人に呼ばれた……。どうやら、仕事の用事があるらしい。
「アレクシス、すまない。仕事の話をしてくるから、少しの間ここで待っていてくれないか?」
「分かりました。いってらっしゃい」
僕はスイーツの置かれているテーブルまで行くと、白いお皿とフォークを手に取ってケーキをお皿の上にのせた。
「ほら、あの宰相閣下の……」
「政治か……」
陰で噂されているのを感じていたが、僕は気にすることなくケーキを食べていた。これぐらいで気が滅入ったら、宰相閣下のパートナーなんて務まらないだろう。
「また会ったな……」
「あなたは──スミス様」
この間と違って、正装をしているスミス様は貴族と言われてしっくりくる『何か』があった。侯爵令息としての僕に、その『何か』があるのかは分からないが……。
「いいのかよ。みんな、言いたい放題だぜ?」
「何がですか?」
「お前が、媚薬を盛ったとか、惚れ薬を使っただとか……」
「媚薬? まさか。そんなことあるわけないでしょう。親同士が決めた婚約ですよ?」
「親同士が決めたら、仕方がないのか?」
「それが、侯爵令息としての責務です」
「叔父上が可哀想だな……」
「でも……」
「でも、何だ?」
「僕は──その、宰相閣下に好意を抱いています」
「なら、もっとはっきりしろよ。お前みたいな奴が、叔父上の隣に立てるのか? 言われっぱなしで……。そんなんじゃ、社交界でも足を引っ張るだけだろう?」
「そんなことありません。言いたい人には言わせておけばいいんです。僕には、宰相閣下がついてますから……。彼を信じて、ついて行きます」
「好きなだけで、何とかなる世界じゃないんだぞ……」
「分かっています」
「スミス!!」
宰相閣下が、人の波をかき分けてこちらへ来るのが見えた。
「俺は認めないからな……」
宰相閣下が、こちらへたどり着く前にスミス様は去って行った。宰相閣下は僕の手を掴むと、こちらを心配そうに覗き込んでいた。
「大丈夫? 何か言われた?」
僕は頭を振ると宰相閣下を見つめた──声が出ない。宰相閣下の青い瞳を見ていると安心したのか、いつの間にか目に涙が溜まっていた。
「大丈夫です。あの方は、宰相閣下の事が好きで、気にかけているのでしょう」
「それで、僕の大切なアレクシスが泣いてしまっては意味が無いよ。帰ろうか。仕事も終わったし」
「……はい」
僕が宰相閣下の手を取ると、その日はそのままパーティー会場を後にしたのだった。
(今日は髪の毛をセットしてもらったから大丈夫なはずなんだけどな……)
「あの、髪の毛まだ跳ねてますか?」
すると、宰相閣下は虚を突かれたような顔をして目を細めると、再び僕の髪を撫でていた。
「いや。アレクシスは今日も可愛いなって、思ってね」
思いもよらない殺し文句に、僕は何も言えないまま口ごもってしまったのだった。
※※※※※
会場へ着くと、宰相閣下は僕をエスコートしながら、すれ違う職場の方々に挨拶をしていた。国王陛下への挨拶を済ませると、宰相閣下は秘書の人に呼ばれた……。どうやら、仕事の用事があるらしい。
「アレクシス、すまない。仕事の話をしてくるから、少しの間ここで待っていてくれないか?」
「分かりました。いってらっしゃい」
僕はスイーツの置かれているテーブルまで行くと、白いお皿とフォークを手に取ってケーキをお皿の上にのせた。
「ほら、あの宰相閣下の……」
「政治か……」
陰で噂されているのを感じていたが、僕は気にすることなくケーキを食べていた。これぐらいで気が滅入ったら、宰相閣下のパートナーなんて務まらないだろう。
「また会ったな……」
「あなたは──スミス様」
この間と違って、正装をしているスミス様は貴族と言われてしっくりくる『何か』があった。侯爵令息としての僕に、その『何か』があるのかは分からないが……。
「いいのかよ。みんな、言いたい放題だぜ?」
「何がですか?」
「お前が、媚薬を盛ったとか、惚れ薬を使っただとか……」
「媚薬? まさか。そんなことあるわけないでしょう。親同士が決めた婚約ですよ?」
「親同士が決めたら、仕方がないのか?」
「それが、侯爵令息としての責務です」
「叔父上が可哀想だな……」
「でも……」
「でも、何だ?」
「僕は──その、宰相閣下に好意を抱いています」
「なら、もっとはっきりしろよ。お前みたいな奴が、叔父上の隣に立てるのか? 言われっぱなしで……。そんなんじゃ、社交界でも足を引っ張るだけだろう?」
「そんなことありません。言いたい人には言わせておけばいいんです。僕には、宰相閣下がついてますから……。彼を信じて、ついて行きます」
「好きなだけで、何とかなる世界じゃないんだぞ……」
「分かっています」
「スミス!!」
宰相閣下が、人の波をかき分けてこちらへ来るのが見えた。
「俺は認めないからな……」
宰相閣下が、こちらへたどり着く前にスミス様は去って行った。宰相閣下は僕の手を掴むと、こちらを心配そうに覗き込んでいた。
「大丈夫? 何か言われた?」
僕は頭を振ると宰相閣下を見つめた──声が出ない。宰相閣下の青い瞳を見ていると安心したのか、いつの間にか目に涙が溜まっていた。
「大丈夫です。あの方は、宰相閣下の事が好きで、気にかけているのでしょう」
「それで、僕の大切なアレクシスが泣いてしまっては意味が無いよ。帰ろうか。仕事も終わったし」
「……はい」
僕が宰相閣下の手を取ると、その日はそのままパーティー会場を後にしたのだった。
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