38 / 49
【第五章 辺境伯爵令息は婚約者である王子殿下を溺愛する】
伯爵令息の到着
しおりを挟む
次の日の朝。朝早く起きた私は、顔を洗った後にメイクをしてもらうと、インクで顎に偽のほくろを書いてもらった。自分で言うのも何だが、ほくろをつけると壁に飾ってある肖像画のハリス殿下と私は、瓜二つだ。
「基本的には、お部屋から出ないようにと言われております。申し訳ありませんが、こちらで朝食をお召し上がりください」
食事を出したメイドに頭を下げられ、丁寧な扱いに慣れていない私は、戸惑ってしまう。
「じゅ、十分です。ありがとうございます」
パンとスープの朝食を食べ終えると、私はベッドに横になり病人のふりをした。何もすることがなくて退屈だったが、横になっていると次第に眠くなってきた――眠りに落ちる寸前、廊下から誰かが怒鳴る声が聞こえた。
「お待ちくださいっ……。侍医から絶対に誰も近づけてはならないと言われております。レオンハルト様に万が一の事があれば、私達は死んでもお詫びしきれません」
「そのようなことを言うな。死んではならん――私が、いいと言っているのだ」
声はだんだん大きくなり、部屋の扉が開け放された。
「な、何事ですか?」
私は咳き込むふりをしながら身体を起こした。メイクで顔を青白くしてもらっているので、少しは具合が悪そうに見えるはずだ。
「婚約者が重病に冒されているというのに、見舞わない奴がいるか? それこそ、問題だと思う」
「感染したら大変です。レオンハルト様、お引取りください」
小さい頃に会ったきりだと言っていたので、大丈夫なのだろうと思っていたが、間近で顔を見られてドキドキしてしまう。
「思ったより、元気そうで安心した。おいっ、そこの……。俺は元気になるまで、毎日見舞いに来るからな? 2週間とかいう、期間は関係ない」
レオンハルト様は、そう言い捨てると部屋を出て行った。私はメイドと二人、顔を青くしたのだった。
※※※※※
「大変申し訳ありません」
午後になってから、トルネスさんが私の部屋へ謝りに来ていた。
「頭を上げてください」
「それで、その──大変申し上げにくいのですが……」
「伯爵令息が帰るまでは、城にいてくださいとかでしょう? 一度、乗りかかった船ですし……」
「申し訳ありません。延長分は必ずお支払いします」
「私が思うに、話に聞いたレオンハルト様と少々違う印象を受けたのですが……」
「それがその……。私どもにも、よく分からないのです。普段は温厚な方なのですが、もしかしたら何か勘づいているのかもしれません」
「そうですか……」
もし何か気づかれたりしていたら、色々と厄介だ。ボロを出さないように、気をつけなければ――昨日より胃が締めつけられるように痛くなった私は、夕食にお粥を食べて、そのまま眠りについたのだった。
「基本的には、お部屋から出ないようにと言われております。申し訳ありませんが、こちらで朝食をお召し上がりください」
食事を出したメイドに頭を下げられ、丁寧な扱いに慣れていない私は、戸惑ってしまう。
「じゅ、十分です。ありがとうございます」
パンとスープの朝食を食べ終えると、私はベッドに横になり病人のふりをした。何もすることがなくて退屈だったが、横になっていると次第に眠くなってきた――眠りに落ちる寸前、廊下から誰かが怒鳴る声が聞こえた。
「お待ちくださいっ……。侍医から絶対に誰も近づけてはならないと言われております。レオンハルト様に万が一の事があれば、私達は死んでもお詫びしきれません」
「そのようなことを言うな。死んではならん――私が、いいと言っているのだ」
声はだんだん大きくなり、部屋の扉が開け放された。
「な、何事ですか?」
私は咳き込むふりをしながら身体を起こした。メイクで顔を青白くしてもらっているので、少しは具合が悪そうに見えるはずだ。
「婚約者が重病に冒されているというのに、見舞わない奴がいるか? それこそ、問題だと思う」
「感染したら大変です。レオンハルト様、お引取りください」
小さい頃に会ったきりだと言っていたので、大丈夫なのだろうと思っていたが、間近で顔を見られてドキドキしてしまう。
「思ったより、元気そうで安心した。おいっ、そこの……。俺は元気になるまで、毎日見舞いに来るからな? 2週間とかいう、期間は関係ない」
レオンハルト様は、そう言い捨てると部屋を出て行った。私はメイドと二人、顔を青くしたのだった。
※※※※※
「大変申し訳ありません」
午後になってから、トルネスさんが私の部屋へ謝りに来ていた。
「頭を上げてください」
「それで、その──大変申し上げにくいのですが……」
「伯爵令息が帰るまでは、城にいてくださいとかでしょう? 一度、乗りかかった船ですし……」
「申し訳ありません。延長分は必ずお支払いします」
「私が思うに、話に聞いたレオンハルト様と少々違う印象を受けたのですが……」
「それがその……。私どもにも、よく分からないのです。普段は温厚な方なのですが、もしかしたら何か勘づいているのかもしれません」
「そうですか……」
もし何か気づかれたりしていたら、色々と厄介だ。ボロを出さないように、気をつけなければ――昨日より胃が締めつけられるように痛くなった私は、夕食にお粥を食べて、そのまま眠りについたのだった。
21
あなたにおすすめの小説
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
執着騎士団長と、筋肉中毒の治癒師
マンスーン
BL
現代日本から異世界へ転生した治癒師のレオには、誰にも言えない秘密がある。
それは「定期的に極上の筋肉に触れて生命力を摂取しないと、魔力欠乏で死んでしまう」という特異体質であること!
命をつなぐため、そして何より己のフェティシズムを満たすため、レオがターゲットに選んだのは「氷の騎士団長」と恐れられる英雄ガドリエル。
「あぁっ、すごい……硬いですガドリエル様ッ!(大胸筋が)」
「……っ、治療中にそんな熱っぽい声を出すなッ」
生きるために必死で揉みしだくレオを、ガドリエルは「これほど俺の身を案じてくれるとは」と都合よく勘違い
触られたいムッツリ攻め×触りたい変態受け
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます
ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。
しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。
——このままじゃ、王太子に処刑される。
前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。
中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。
囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。
ところが動くほど状況は悪化していく。
レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、
カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、
隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。
しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。
周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり——
自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。
誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う——
ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。
転生?憑依? 中身おっさんの俺は異世界で無双しない。ただし予想の斜め上は行く!
くすのき
BL
最初に謝っておきます!
漬物業界の方、マジすまぬ。
&本編完結、番外編も!
この話は――三十路の男が、ある日突然、ラシェル・フォン・セウグとして異世界におりたち、ひょんな事から助けた8歳の双子と婚約して、ゴ◯チュウもどきから授かった力で回復薬(漬物味)を作って、なんか頑張るコメディーBLです!
異世界オークションで売られた俺、落札したのは昔助けた狼でした
うんとこどっこいしょ
BL
異世界の闇オークションで商品として目覚めた青年・アキラ。
獣人族たちに値踏みされ、競りにかけられる恐怖の中、彼を千枚の金貨で落札したのは、銀灰色の髪を持つ狼の獣人・ロウだった。
怯えるアキラに、ロウは思いがけない言葉を告げる。
「やっと会えた。お前は俺の命の恩人だ」
戸惑うアキラの脳裏に蘇るのは、かつて雨の日に助けた一匹の子狼との記憶。
獣人世界を舞台に、命の恩人であるアキラと、一途に想い続けた狼獣人が紡ぐ、執着と溺愛の異世界BLロマンス。
第一章 完結
第二章 完結
竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】
ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる