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第一章 出会いと別れ
7 捕紋。 ※微
しおりを挟む私は、ベルのことが好きなのでしょうか?
強引だけど、優しくて気持ち良いのがやめられなくてしまいそうだった。
今までこんなこと味わった経験が無かったからかな。誰かにこんなに必要とされた事なんてなかったから。認められている感じがして、素直に嫌になれない。
ベルの思考は異常だけど真っ直ぐに愛してくれるような目が忘れられない。凄くドキドキしてしまう。
ベルも本当に、そういう気持ちであるのなら、
――――ん? あれ? 私は何を欲しているの?
「ありがと」
ベルは私の頭をそっと撫でた。
甘いミルク味の後に唇が離れると、ぎゅっと私の事を抱き締めてくれた。
「あ……の、ベルさん、朝は働きにどちらへ……?」
「城を出ると、西側に大きな池があってさ。そこに……ヘデラっていう真っ赤な果実が密集してあるんだ。それを俺達が摘んで、金持ちに売り込むんだよ」
「えっ……地上に出られて、上級の人とも取引ができるのですか?」
「取引は兵士の仕事。俺らは摘むだけだ。地上に出られるったって、抜け出せるわけじゃない。俺らの足の裏には捕紋があるだろう」
「捕……?」
私とベルの足裏に、黒い円が薄く染み込んでいた。
「ああ、これ……ただの汚れだと、あまり気にしていませんでした」
「これがある事によって、逃げ出したとしても追跡できちゃうのさ」
「なるほど……そんな効果が」
「それだけじゃない。一定の距離を離れると、体を麻痺させて気絶させる事もできんだ」
それが本当であれば、ここを抜け出すなんて無理なのかな。
この補紋を解くにはどうしたら。足裏の皮を削る――なんて無謀な事は怖くてできないし。
「……ま、たったの、それだけだ」
「たったの?」
ベルは、はぁ、と大きな溜息をつく。私の頭に息が吹きかかった。
「実は、この補紋は兵士にもあるんだ。ただ、兵士の場合だと一定の距離を出ても何も起きない。……そして、使えないことに、この追跡能力は人物を特定する事ができないんだ」
適当なマップ上に、補紋がある人の居場所が光って星のように点々と映るだけらしい。一定の距離に達した人には、赤い点が表示されると。
この牢獄内には監視管理官が存在していて、三人体制となっているらしい。更に、受刑者が労働に出たりする場合は周りに何十人もの兵士が監視をしているようなので、監視管理官の需要も低く三人の中で交代制で行っているとの事。
「そう言われると、セキュリティは低そうに聞こえますね」
「そ。だから地上で少しくらいなら遊べるかもしれないな。中級土地までなら俺達も行ける」
「……! ほ、ほんとですか? 受刑者なのに、そこまで入れるのですか?」
「そう。他の奴らは下級土地までだと把握してるが、実はそこまで行ける。恐らくそれを知ってるのは俺とほんの一部の人間だけだろうが」
「うーーん……何故そこまで入れるのでしょう。受刑者も下級と対して変わりがありませんね」
「そこは色々あって……な。つーか、さっきから目が輝いてるけど……お前、遊びに行きたいの?」
眉を潜めて言うベルの前で、私はこくりと頷いた。
「遊ぶというより……、昔からお花を育ていたので、その様子を見に行きたいのです。あと、中級土地も見てみたい……!! 一体どんなのがあるんだろうって」
上手くいけば抜け出す方法も見つけられるかも。
「ああ……そういう興味。……で、花?」
「アイビーっていう、小さなピンクのお花です」
へへへ……と、思わず笑みが溢れた。ハッ、私とした事が。
ニ、三秒ほど沈黙が流れる。ベルは私に目を背けながら、口を開いた。
「俺の本名と一緒」
「え?」
「ベルナード・アイビー。それが俺の本当の名前」
「ベルナード」
「自分で言っておいてアレだが……あまり人前でその名前を出さないでくれよ?」
「……はい!」
いい子。そう告げると、私達は再び唇を重ねた。
舌が気持ちいい。ちゅ、ちゅ、と音が部屋中に充満するようだった。
「こ、んなに、んっ……キスして頂けらの、んっ、ふ……初めてれふ……! んん、ぷはっ!」
唇が離れると、ベルはくすりと子供のように笑う。
「連れてってやるよ。お前の行きたいところ。こうやって、俺の前でいい子にしてればな? ――――今日の夜は恐らく、集合で飯を食うことになる。お前も参加するんだ。いいな?」
「し、集合って? まさか、他の受刑者とご一緒するのですか? そ、そんな、私」
「そう! 週に一度の牢屋のお掃除デーなんだよ。……ま、お掃除という名のチェックだがな。丁度いい! ダチがいるんだ。紹介してやる」
お掃除という名のチェック……って、抜け出さない為に部屋の中を確認するのか……な? それに急に張り切っちゃって、どうしたんだろう……?
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