31 / 40
第ニ章 もう一人のヒーロー。
31 繋がり。
しおりを挟むついにこの時が……。
ようやく城を出て、人混みに混ざり飛空船へと向かう。兵士が道を作るように両サイドに立つも、多くの騎士と戦闘兵が疎らに移動するから上手いこと浮かずに済んでる。
けれどルーツは兵長だから皆ルーツに対して挨拶をかけている。止まることのない次から次へと挨拶が飛び交う中で、ルーツは誰にも返事さえしない。
「わぁぁぁあ~ルーツ様ぁ~!」
「ルーツ様! 今日もかっこいいですわ~!」
上級貴族か、体中に宝石を身に纏い真っ赤なドレスと金色のドレスを着飾った女性達がルーツに対して目を光らせている。
その中で唯一、シンプルで真っ青な一色のワンピースを着た小さな女の子が、
「ルーツ……様」
微かな声で貴族に逆らわないよう彼女らの声に被せず、ルーツの名を呼んだ。
「…………リリア??」
リリア?
今まで誰に声をかけられようと無視してきたルーツが唯一、その女の子にだけ反応を示した。それに気づいた女の子が、
「ルーツ様! いい加減にリベラ姉様をあの牢獄から出してください! でなければ、リリアは、リリアは……!!」
リベラ姉様って。
リリア、という女の子はまん丸な髪をまとめて二つお団子にしている。全体的に小柄だけれど丸顔でそれを更に頬を膨らませていた。そしてリリアはルーツのあぐらを掴むように胸元の白服を両手で引っ張り出す。
決死の覚悟でというように、海のように蒼い瞳をルーツに向けて睨んでいる。そんな必死な彼女に、ルーツは動揺を一切見せない。
「知らないよ。自業自得でしょ?」
何事もなく一蹴をしてみせるルーツ。
「でも、でも! 元々はリリア達、仲間だったじゃないですか! 短い間だったかもしれませんが……!! なのに、こんなのって無いです……自分の評価を上げるために、リリアの大事なリベラ姉様を使ってこんな目に合わせるなんて」
「何を勘違いしてるんだか。僕はリベラさんの望みを叶えてあげただけ。彼女は君と居たいんじゃない、目的はベル兄さんなの。いい加減に邪魔しないであげたら?」
ルーツは、これ以上僕に逆らうなというようにリリアの顎を上げて、額同士が触れそうなぐらいに近づきながら、圧をかける物言いで脅す。リリアは圧倒されたのか、瞳を潤ませ黙り込んでしまった。
彼女を見ていてとても不憫に感じながらも、私はリベラの目的のほうが気になってしまった。
「目的は……ベル、兄さん」
声を洩らすと、リリアが私に気がついた。
「ルーツ様……また、新しい女の人」
涙を溢れさせながら、リリアは改めてルーツに目を向ける。
「兄弟揃って、酷い女垂らしなのです! リリアは許しません! ちょっとそこのお姉さん!? お言葉ですけどこの兄弟に惑わされちゃ駄目ですからね!!」
おね、お姉さんって私のこと……?
そしてリリアの言葉が容赦なく胸に刺さってしまう。
待って……待って。整理しよう。
リリアって子は元々ルーツ達の仲間だった。つまりカルミア盗賊団の一員だったという事で合ってるのかな……? それでベルやリベラの事も知っている。
や、でも大事なリベラ姉様って言ってたからリベラとはもっと深い仲にあって……ん、姉様……? 姉妹……??
姉妹なら、元々海族? ということはリリアは元人魚姫。人魚は精がないと人間になれない……。
となると、――――このどっちからか、貰った。
「悪意なく女を地獄に落とす兄と、悪意丸出しで女を地獄に落とす弟で有名なんですから――あれれ? ありゃ? はわわわ……!!」
リリアは二人の兵士に両サイドを挟まれ、腕を捕まれて連れられてしまう。
「リリアさんっ……!」
「仕事が残ってるでしょ。行くよ?」
私はルーツに首輪についた鎖を引っ張られ、無理矢理リリアから逆方向へと連れてかれる。
「リリアさんって、リベラさんの妹なんじゃ」
「いや、ただの幼馴染。リリアはリベラさんのひっつき虫」
「ひ、ひっつき虫って」
「まぁリベラさんの事がどんなに好きだろうと、彼女は僕無しじゃあもう生きていけない」
「……要はルーツが二人の間に入って邪魔をしてるのですね。リリアさんはどうしてルーツ無しじゃ生きていけなくなるのですか?」
リリアはルーツのお気に入りか何かか……。
にしても、最後のリリアの言葉が引っかかる。
悪意丸出しで女を地獄に落とす弟……。そして、悪意なく女を地獄に落とす兄……。前者は何となく分かる。でも後者は一体……。
「彼女の兄が僕のおかげでここの騎士になれたんだ。――ちょっと気に入らないけど、僕より強いんだよねぇ……。けれど彼の生命線も僕にある。彼が崩れればヒモ女も崩れる。そういう事さ!」
「あ……兄!?」
「丁度、飛空船の入り口で人員チェックしてるよ。あれがリリアのお兄さん。今では国を代表する騎士と言われるほど名高い、ジン・シルキーさん」
国を代表する騎士……。
兄もリリアと同じ赤髪。サラサラで整った髪に、ルーツと同じくスラッとした体型。更に細い赤眼鏡をかけて、ジトっとした眠そうな蒼い瞳。喜怒哀楽がなさそうな無の表情。
あれって……もしかして……。
「あ……ああ……あ……」
私の足元が震え上がってきた。
そうだ……思い出した……。あの人だ……。
私から人生を奪った……王妃の形見を盗んだ時に私を見つけて捕まえた。そして、牢に閉じ込めた……あの人だ……!!!!
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
転生先は男女比50:1の世界!?
4036(シクミロ)
恋愛
男女比50:1の世界に転生した少女。
「まさか、男女比がおかしな世界とは・・・」
デブで自己中心的な女性が多い世界で、ひとり異質な少女は・・
どうなる!?学園生活!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる